無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~   作:ねむ鯛

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あけましておめでとうございます。今年初更新。今年もよろしくお願いします。

皆さんのおかげでついにお気に入りが100突破しました!いつもありがとうございます!!

「テラス」→「バルコニー」に訂正しました。


第75羽 塔の上の聖女様

 私の怪我を治してくれるとの幼女からの申し出。少々迷いましたがこの申し出を受けることにしました。

 理由としては2つ。

 まず、大した怪我ではないとはいえこのままだと長距離の飛行には支障が出ること。吸血鬼の『高速再生』に頼るにはどこか洞窟のような光を遮る事のできる場所が必要です。そうでなければ自力で治すために夜まで待つ必要があります。休憩が必要とはいえ今はまだ朝。夜になるまでには結構な時間があり待っていてはかなりのロスになります。

 そして二つ目が悪意や敵意を感じないこと。

 同じように言ったメリィさんとは敵対することになりましたが、まあアレはノーカンで良いでしょう。出会ったときは本当に敵意は感じませんでしたし。

 

 彼女の提案を受けたときに存在するデメリットは限りなく少なく、メリットの方が圧倒的に多い。治して貰えるなら願ってもないことです。

 

 飛び立つのを止めて翼をたためば女の子がそろそろと近づいてきました。一応警戒はしてあります。

 私を刺激しないようにか、身を屈めてゆっくり側にやって来た女の子。やさしく伸ばしてきた両手から暖かな光があふれ、患部に接触する。

 

 心地良い……。

 

 さっきまで感じていた痛みがほどけていき傷が修復されていく。なんて清らかな魔力なんでしょうか。この娘の心根の優しさが伝わってくるようです。

 助かりました。ありがとうございます。

 

 お礼……は言えないので代わりに翼で頬をなでてペコリと会釈。翼が当たらないように距離を取ってそのまま飛び立とうとすれば「あっ……」という声が。そちらを見ればこちらに手を伸ばし、まるで捨てられた子犬の様な表情をした女の子が。

 そんな顔をしてもですね、私は行かなくては……。

 

 …………。

 ……………………ッ!!。

 ………………………………ッ!!!!。

 

 遂には幼女の曇りのない瞳がうるうると揺れ始めた。

 これを捨て置けと??私には……無理ですッ……!!

 

 待ってください。別に私は情に絆されただけでこの選択をしたわけではありません。元々私はどこかで休息するつもりでした。さっきまでどこかに行こうとしていたのは、彼女が誰かに知らせて追っ手が来ることを嫌ったためです。

 しかし彼女は誰かに伝えようとしてもいないし、私を害そうともしていない。どこかに行くにしてもここより条件に良い場所を見つけられるとは限らない。

 ならばここを休息場所として選び、かつ幼女の相手をする。それは非常に合理的で理性的で、お礼もできる人道的で完璧な行動では????

 

 この理論に到達したとき完璧すぎて私は思わず震えました。私の目的が全て達成でき幼女の笑顔も守れる。良く考えついた、グッジョブ私の灰色の脳細胞。

 そうと決まれば早いです。飛び立つのを止めて幼女に向き直れば「行かないでくれるの?」と。

 少しならと頷けば悲しそうだった幼女の顔がパアッと華やいでいく。くっ、天使か!?

 

 この娘、よく見なくても美少女です。

 

 肩まで伸ばしたシルクのような髪は目に柔らかで、先ほどの彼女の魔力と同じ優しさを感じさせてくれる。ぱっちりとした大きな瞳は暖かなトパーズ色で、小さなお鼻がちょこんとかわいらしいです。眩しい笑顔が似合う、いまだ幼い顔は庇護欲をかき立てるでしょう。将来は美人さんですね。

 

 女の子が笑顔でこちらに駆け寄ってこようとしたその時。

 

「あっ!?」

 

 ――危ない!?

 

 足下が疎かになっており女の子が地面につまずいてしまった。体が浮いて、次いで落下を始める。痛みを覚悟してか、反射的にギュッと目をつむって地面に倒れ込む直前、咄嗟に女の子を抱き留めていた。

 

 待てども来ない痛みにおそるおそる開けた女の子の目が私のそれと合う。抱き留めるために人の姿になっていた私と。

 

 ……気まずい。

 

 突然現れたように見えるであろう私に大量のハテナを頭の上に浮かべた女の子と見つめ合うこと数秒。黙ったままだとしばらく固まっていそうなので声をかけることにした。

 

「えっと、怪我を治してくれてありがとうございます。怪我はないですか?」

 

「ふわ、うん。大丈夫です。女の子……?え、でもさっきの鳥さんは……。え?」

 

「はい、私がさっきの鳥です」

 

 そう答えても理解が追いついていないのか女の子は目をパチクリと見開いて惚けていた。まあ魔物が人の姿を取ることを知らなければ、さっきまでいた鳥が消えて突然人が現れるなんてものを見るとそういう反応になりますよね。

 

 まあ見られてしまった以上仕方ありません。手札を隠しておきたかったのですが、あくまでもできればといったレベルですし。

 

 それにしてもこの塔、そこそこ高いですし風も強い。このままこの娘をバルコニーに出したままだと風邪を引いてしまうかもしれません。胸に抱いたままの女の子に視線を落として問いかけた。

 

「すみません。お部屋に入れていただいてもよろしいですか?」

 

「え、はい。大丈夫です」

 

「ありがとうございます。お邪魔しますね」

 

 良くわかっていない様子の女の子を抱き上げて、開いていた大きな窓から部屋に向かう。私の方が若干身長が高いですが、それでも普通に抱き上げると足を引きずってしまうので必然的にお姫様抱っこの格好になります。

 

 女の子のために少しの間ここに留まることは確定しているので、風が吹き込むことのない室内でこの娘が元に戻るまでゆっくり待つことにしましょう。

 

 

 

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ 

 

 

「どうぞ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 反対側に座った女の子の前のテーブルに暖かいスープが入ったコップを置く。女の子を部屋にあった豪華なソファーに下ろした後、マジックバックから取り出した自前の魔導コンロと粉末になったスープを使って入れたものです。流石に部屋の備品を勝手に使うわけにはいきませんから。

 

 コップを受け取った女の子は慎重にフーフーと息をかけて熱を冷まし、僅かに魔力を使った後口を付けた。

 

 ……ふむ。

 

 スープを飲み込んで、ほう……と女の子が人心地ついたところで声をかける。

 

「落ち着きましたか?」

 

「あ、はい!ありがとうございます」

 

「どういたしまして。それにこちらこそ怪我を治していただいてありがとうございました」

 

「そんな……!」

 

 ペコリと頭を下げて感謝を伝えれば、わたわたと手を振って慌てていた。

 

「わたし、さみしくて、優しくすれば仲良くなれるかなって。それで……!!」

 

「それでも助けて貰ったことに変わりはないですよ。ありがとうございます」

 

「あう……」

 

 心からの言葉だと伝わるように笑顔で答えれば女の子は恥ずかしそうに頬を染めて俯いてしまった。

 他人を助ける。それはとても尊いことです。助けた本人に利益があるからと偽善だという人はいますが、そんなことは関係ないのです。

 助けてくれた。それだけで十二分にありがたいのです。なにより自分の事を大切にするのは当然の権利。他人を助けて自分にも利益をもたらす。実にクレバーな行動だと言えるでしょう。

 だから恥じることはないのですが……。まあこれは本人がとても謙虚なのでしょうね。

 

「それで貴女はほんとにさっきの鳥さんなのですか?」

 

「ええ、ほら」

 

おずおずと不思議そうに聞いてきた女の子に、背中から翼を生やしてみせる。

 

「うわぁ……。触っても?」

 

「良いですよ」

 

期待を隠しきれない上目遣いがあざとかわいいです。許可を出せばさささっと横に滑り込んできた。女の子の優しい香りがふわりと舞う。

 

「んっ」

 

こちらを傷つけないようにと配慮してくれているのか、優しい手つきが逆にくすぐったい。

 

「すごい……。ふかふか」

 

さすがはお母様ゆずりの羽毛です。どうやら夢中にさせてしまったようですね。

目を輝かせて私の羽に釘付けだ。両手で羽毛を()いたり挟んだり揉んだりしている。とはいえさすがにくすぐったいので話を変えましょう。

 

「んぅ……。と、ところでさみしい、とは?」

 

先ほどの発言、気になっていたので聞いてみれば膝に手を乗せて悲しそうに俯いてしまった。むむ、失敗しましたか?

 

「それは……ここは人もあんまり来ないし、友達もいないので……。あ、わたし、アモーレといいます。えっと、大聖女をやってます」

 

「私はメルと呼ばれています。よろしくお願いしますね」

 

 大聖女ですか。「大」とつくからには聖女も存在するのでしょう。数人の聖女がいて、その上に大聖女がいる。それが彼女。白蛇聖教の中でもかなり高い位置にいる可能性が高いです。

 

「わたしは聖女の中でも特に大きな力を持っているらしくて、大聖女として扱われてるんですがむやみに外に出ては危ないからと、ここに来てからほとんど外に出してもらえなくて」

 

そういうことですか。大切にまもられているからこそ、外に出ることができず友達も作る機会ができない。この様子だときっと親もここにはいないでしょう。

この娘はまだこんなにも幼いのに。歳はおそらく10歳ほど。それでいてこの聡明さです。そうならざるを得なかったのでしょうね。

 

「さびしかったですね……」

 

アモーレをギュッと抱きしめる。私の胸の中で彼女はコクリと頷いた。

 

「ね、アモーレさん。もし……なんですけど」

 

歯切れ悪く言葉を濁した私にアモーレさんが胸の中から上目遣いで見上げてくる。感じたのはこれから言う言葉に対する少々の照れ。深呼吸して意を決し、アモーレさんの目をしっかりと見つめる。

 

「私で良かったら友達になりませんか?」

 

ポカンと何を言われたかわかっていなかったアモーレさんの顔が喜色に染まっていく。

 

「うんッ!!なる!!」

 

そして太陽のようなかわいい笑顔で元気に頷いた。




ちなみに「灰色の脳細胞」ってのはただの誤訳らしいので実際に使うときは注意です。
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