無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~   作:ねむ鯛

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第88羽 ブッキングの二人

 

 紫の肌に縦に裂けた瞳孔。そして耳があるはずの場所に生えた角。コアイマの男が小さくなったお母様を見て嗤っている。

 

「さすがに俺といえど天帝相手に一人じゃ分が悪い。出直そうかと思ったが、面白い拾いもんをした。なあ人間?こうなっちまえば俺でも勝てそうだ。天帝を俺が殺せば邪魔が居なくなる上に、仲間内での評価も上がる。まさに一石二鳥ってわけだ」

 

 へぇ……。コアイマの言葉に思わず目が細まる。

 

『空気を読め下郎。今お前に裂く無駄な時間はない』

 

「おいおいおい天帝様ぁ。こいつの力で小さくなったお前は弱くなってるはずだ。側には弱そうなガキが一匹。この状況で威勢が良いってのは、空をどうこうする天帝のくせしてお前の方が空気読めてないんじゃねェか?くひゃひゃひゃ」

 

 顔を手で覆い、空を仰いで下品な笑い声を上げるコアイマ。非常に不快ですね……。

 

『貴様の声を聞くだけで気分が悪くなる。――――疾く消え失せろ』

 

 翼を振るい羽を飛ばしたお母様。

 顔めがけて飛んだそれは先ほどの威力はなく、確かに弱体化していることを窺わせる。

 

「こんなの効きや――――」

 

 羽を腕で払いのけるコアイマ。油断したうえ意識が羽に向いており注意が穴だらけです。その隙に一息で足下に潜り込み足払いをかけた。

 

「あ?」

 

 突然傾いた体、未だ状況がわかっていない様子。前のめりに倒れ込んできたコアイマの鳩尾を蹴り上げ体を宙に浮かす。

 

「ぐっ!? テメェ――――」

 

『《羽天:霹靂(へきれき)》』

 

 私の蹴りにコアイマは怯みながらも拳を振り上げた。しかし出来たのはそこまで。お母様が放った雷羽が顔面に突き刺さり行動を停止させる。その隙に準備を完了させていた私は右足に光を灯した。

 

『現在立て込んでいますので消えてください――――【貪刻(どんこく)】』

 

 腹部に刻まれた蹴りの威力で衝撃波をまき散らしながらコアイマは吹き飛び落ちていった。

 

「え……、つよ……」

 

 その様子を呆然と眺める女の子。この二人何しに来たんでしょうか。

 

『チッ、威力が出んな。やはり弱まっているか』

 

『そうなんですか? 最初のはともかくさっきの雷の羽、私に打ったのと同じくらいの威力でしたよ』

 

『お前の時は加減していたからな。だが今のはかなり本気で打った』

 

 ……手加減して貰ったのを喜べば良いのか、されたのを悔しがれば良いのか微妙なところですね。それとも弱体化してもこれほど強いのを喜べば良いのでしょうか?

 

『おいそこの小娘』

 

「ひゃい!?」

 

 お母様の声にビクリと反応した女の子。ピンクの髪を小さなお皿のようなものでツインテールにまとめてある。目鼻立ちは整っておりかわいらしい顔立ちだ。

 

『我をこんな姿にしたのは貴様だな?何者にも揺るがされることのない我に影響を与えるとは、かなり珍妙な能力の用だな。面白い。即刻元に戻せ。今ならペットにするだけで許してやろう』

 

「え、えっと……」

 

『それとも――――ここで死んでおくか?』

 

「はい!!戻させていただきますぅ!!」

 

 お母様からの圧にピシリと敬礼する女の子。ビクビクしながら一歩を踏み出そうとしたとき。

 

「――――待てや」

 

 制止の声と共に女の子の背後、その足下に現れた手に木がミシリと握りしめられる。そのまま体を引き上げるようにして現れたのは先ほどのコアイマだった。

 

「よくもやってくれたな、くそ野郎共」

 

『チッ……しぶといな』

 

「ああ!!ピンピンしてるぜ。嬉しいだろ!?」

 

 見たところほぼ無傷。もしかしたら前の女性のコアイマより強いかも知れません。

 

「い、生きてて良かった……!!いや、やっぱり良くない……?」

 

「なんだテメェ、文句があるのか? ア゛ァ゛ン゛!?」

 

「いえ、全くないですぅ!!」

 

「人類であるテメェを殺さず生かしてやってんのは目的が同じだからだ。じゃなきゃすぐに殺してる。俺の慈悲深さに感謝しろや」

 

「はぃい!!寛大なお心に感謝しますぅ!!」

 

 コアイマの恫喝に笑顔の仮面を貼り付けて、シクシクと涙を滂沱の如く流している。本当に何しに来たんですかこの子。

 

「……ところで天帝を小さくしたので頼まれたことはこなしたじゃないですかぁ。あとはお任せするので帰っても良いですか?」

 

「……お前が帰ったらあいつはどうなるんだ?」

 

「……遠隔で能力を使ったので距離が離れると元に戻りますよぅ」

 

「ダメに決まってンだろ。勝手に帰ったら殺すぞ」

 

「ですよねぇ、あはは……。はあ……」

 

 女の子はコアイマのあまりの形相に顔を背けてガクリと項垂れた。

 

「こうなったらヤケですよぉ!これもお仕事です!!例え着いてきた護衛が気づけばいなくなっていようと、コアイマには捕まろうと……!!」

 

「次コアイマっつったら殺す」

 

「ひい!?ごめんなさい!?」

 

「……そうだなぁ、折角だし自己紹介でもしとくかぁ?」

 

 女の子の言葉に突然キレたコアイマはその後思案するように顎に手を当てるとそう言った。

 

「俺はドゥーク。お前らを殺すもんだ」

 

「わ、私はリブですぅ。お仕事しに来ました……」

 

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