無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~   作:ねむ鯛

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お久しぶりです。


第89羽 迎撃戦

 

 ドゥークと名乗ったコアイマとリブと名乗った女の子が戦闘態勢に入った様子に、お母様がこちらをチラリと見やる。

 

『チッ、さっきの話の続きはあいつらを片付けてからだな。……どうする?休んでいるか?』

 

『いえ、少し寝たので回復してます。動けますよ』

 

『……なら良い。無理はするなよ』

 

『ええ、わかっています』

 

 頷いた所で両手をポケットに突っ込んでいたドゥークが動いた。

 

「おら、死んどけ」

 

 無造作に片手を突き出しただけ。攻撃になり得るはずのないそれの直線上にいた私は、悪寒を感じ咄嗟にその場から飛び退いた。

 

 背後に衝撃音。さっきまで私がいた場所の背後の木にクレーターができあがっていた。避けていなければペシャンコだったでしょう。ササミサンドの一丁上がりです。止めて下さい。

 

「避けんなや」

 

『お断りです!!』

 

 翼を振り下ろし多数の羽を発射する。先ずは牽制して相手の手の内を見る。情報収集の時間です。

 

 私の羽に対し、前に出たリブが取り出したパチンコ玉のような物を指で弾いて上に飛ばした。

 

「大きくなあれ♪」

 

 落下したそれを声と共に大槌で殴れば突如巨大化、巨大な鉄球がこちらに飛来する。攻撃範囲が広い。避けられません。

 私の放った羽を全て弾き飛ばして迫るそれを脚でいなし、受け流す。

 

「なにそれ!?」

 

 それはこちらの台詞ですが。

 

『おい、こちらを無視するな? 《羽天》――――』

 

 そう言ってお母様が視界を埋め尽くすほどの羽を打ち出した。

 

「当たらねェよ!」

 

「遅くなあれ♪」

 

 ドゥークは身を翻して避け、リブは大槌を振るい不思議な力で羽を減速させた。余裕そうな表情を見せる二人にお母様がニヤリと笑う。

 

『《飛燕群秋(ひえんぐんしゅう)》』

 

 途端にドゥークを通り過ぎていた羽の群れが180度反転し、リブの目の前で減速していた羽が再加速した。……羽の操作性良すぎませんか?いえ、今は味方なので全然構わないのですが。

 

「ぐおッ!?」

 

「お、遅くなれッ!!」

 

 ドゥークは避けきれず剣山のように背中から羽を生やし、対してリブはもう一度減速させることでなんとか凌ぐ。

 

「こンくらい――――」

 

『離れていろよ? 《雷訪射(らいほうしゃ)》』

 

 私が距離を取れば上空の雷雲が光を放ち、まるで羽が避雷針になっているかのごとく落雷が降り注いだ。ドゥークは雷に飲み込まれ、リブはすぐ側まで迫っていた羽に落ちた落雷の余波で被弾。

 しかし両者共に実力者、未だ健在です。

 

「し、しびれ……」

 

「ぐおォッ!?さすがにこれは……。おい人間!あれでホントに弱くなってんのか!?」

 

 それには同意しつつ、羽を飛ばして追撃する。

 

「あたしの能力にもキャパシティがあるんです!!9割5分全部使ってあれなんです!!」

 

「10割使えや!!」

 

「使ってたらさっきの羽で死んでましたけどぉ!? あたしが死んだら天帝元に戻っちゃいますよぉ!?」

 

「チィッ!!」

 

『ほう、それは良いことを聞いた』

 

 リブへの攻撃が激しさを増す。しかしリブも巨大な木の枝を飛び移ることでなんとか回避している。

 

「ひゃあっ!?嘘ですよ!ホントはあたしが死んでも能力解けないですよ!!むしろずっと解けないですよ!!」

 

「なら十割使えや」

 

「ひぃっ!?」

 

 両者から詰められてオロオロしだすリブ。コワイ二人から板挟み、かわいそうに。別に助けませんが。

 

「……あ、あたしが死んだら皆不幸になりますよ!!」

 

 混乱の末、遂には訳がわからないことを言い出してしまった。かわいそうに。別に助けませんが。

 ですが少し考えものですね。そうですね……。

 

『お母様、殺してしまってはリスクがあります』

 

 そうお母様に進言すればリブが救いを見つけたような目で見つめてくる。

 

『なので生け捕りにした後説得(・・)して能力を解除してもらいましょう。……ねぇ?』

 

「ひぇ!?」

 

 リブと目が合えば怯えられた。なんですか?

 

「み、味方がいない……!?」

 

 かわいそうに。

 ……おっと。

 

 飛び退けば私とお母様が居た場所に不可視の攻撃が炸裂した。両手を突き出したドゥークが声を荒げる。

 

「とりあえず全部ぶっ殺せば良いだけだろ!?」

 

「あたしはダメですよぉ!?」

 

「しゃらくせえ!!」

 

 ドゥークが両の拳を打ち付けると彼を中心に不可視の攻撃が爆発する。

 

「うひゃあ!?」

 

 この狭い足場の中で広範囲の攻撃をされてしまえば、逃げ場もなく厄介なのでしょうが、生憎私たちには翼があります。怪しい行動を警戒してして余裕を持って空に飛び上がっていました。

 

 結果、巻き込まれたリブが軽く吹き飛んだだけなので、私達の被害はゼロです。

 

 協調性皆無のドゥークがリブを吹き飛ばしたおかげで、2人の距離が開く。目の前にはドゥークのみ。感情に流されて墓穴を掘りましたね。

 

『お母様、リブの足止めをお願いします』

 

『……ああ、わかった』

 

 闘気を生成し氣装纏鎧(エンスタフト)を発動する。あまり温存して時間を掛けても、疲労が溜まるだけです。ここは攻めましょう。ドゥークの攻撃で(なら)された枝の上を這うように一気に距離を詰める。

 

「邪魔すんな!!テメェはお呼びじゃねェ!!」

 

『私も倒せないのにお母様に手出しできるわけないでしょう?』

 

「チィッ!!潰れろ!!」

 

『それは無理な話ですね』

 

 突き出される腕を蹴り上げ、軌道がずれた不可視の攻撃が頭上を通り過ぎる。できた隙に翼を使って空中で体を捻り、回し蹴り。胴に直撃し、僅かに距離が離れる。

 

「ぐッ!? だがこれで!!」

 

 ドゥークが腕を引き、不可視の攻撃を放とうとする。離れた距離は僅かですが、このままでは私が対処する前に直撃を食らうでしょう。ですが手札はまだあります。

 

 羽毛に包まれた体が変化し、手足が現れる。人化です。

 

「ああ!?」

 

 これで足りなかったリーチが補われる。私の方が早い。

 マジックバックから槍を引き抜きざまに、再び腕をカチあげる。槍がドゥークの腕を浅く切り裂いた。やはり硬いですね、コアイマは。戦撃でないと大したダメージは期待できないでしょう。

 

「このォ!!」

 

 やけくそ気味にドゥークが反対の腕をなぎ払う。不可視の攻撃が腕の直線上に追従する。それを冷静に背面跳びで回避。背の下を衝撃が通り抜けて行くのを感じつつ翼で空気を叩き、横回転(ロール)。その勢いで側頭部をなぎ払った。

 

「ごっ!?」

 

「ヤバっ!負けちゃいそう……!援護を……」

 

『邪魔するな小娘』

 

「わひゃあっ!?」

 

 できた隙に闘気を高めたタイミングで、遠くで大槌を振り上げたリブをお母様が追い払っているのが視界の端に写った。ありがとうございます。

 阻まれることなく、戦撃を発動する。

 

「【一閃(いっせん)】」

 

 高速の突きが胴に吸い込まれていく。だがそれは直撃することはなかった。

 ドゥークがなにもない筈の頭上を掴み、振り下ろすことで現れた巨大な大剣に阻まれたからだ。

 

()ッ!?」

 

 接触と同時に爆発する衝撃。槍を突き出した格好のまま後ろに押しやられてしまった。足下の木の皮を削りながら、倒れないように翼を使ってバランスを取る。

 

 訪れた手の痺れに思わず眉をしかめた。戦撃が威力で押し負けてしまった。

 この威力、あの不可視の攻撃が乗っているのでしょうか……?

 

「俺にこいつを抜かせたな……。天帝にとっておくつもりだったのによォ!!」

 

 苛立ちと共に乱雑に振るわれた大剣は直ぐ側にあった、大樹の枝の一つを軽々と切り飛ばした。枝とは言っても、天衝くほど大きな木のもの。トラックが乗っていたとしても揺らがないであろうと思うほどの太さです。それを軽々と切り飛ばすとはかなりの威力。危険です。

 とはいえやりようはあります。

 

「それは失礼しました。ところでそれを使ったとしてお母様に届くとは思わないのですが?」

 

「ほざいてろ!」

 

 怒声と共に大剣が振るわれる。まともに打ち合えば押し負けます。戦撃でもそうだったのに通常の攻撃なら尚更。

 だからまともに打ち合いません。

 

 上から迫る大剣の刃先に、突き出すようにして槍の穂先をそっと添える。外に向けて力を加えてやれば、流れるように軌道を誘導されまともな威力を発揮する事も出来ず大剣が槍の上を滑っていく。

 最後に滑る大剣を力強く外に押し出せば、大剣に引っ張られる様にして彼の上体が流された。

 

「なッ!?」

 

「やっぱりあなたには無理なんじゃないですかね?【下弦月(かげんげつ)】」

 

 まともに動けない彼の脇腹に一撃がぶち当たる。これは流石に効いたでしょう。もんどり打って転がっていく彼に向かって駆け、立て直す時間を与えない。

 跳ねる様にして起き上がったドゥークが腕を突き出す。それを見て、足下を蹴り飛ばし加速の勢いを利用して翼で空気を掴み、地面を滑る。放たれる不可視の攻撃を回避し、そのまま接近していく。

 

「なんだそりゃあ!?」

 

「歩法です」

 

「そんなこと聞いてんじゃねェよ!」

 

 ドゥークが足下を不可視の攻撃で均してくれたおかげで滑歩(かっぽ)が使えます。初見での対処は難しいでしょう。キモいですからね。重心をずらしたまま動けるので。

 

「クソッ!!狙いが……」

 

「遅いですよ」

 

 予測を裏切る動きに翻弄され、戸惑いを見せたその隙に翼を振るい羽を射出。たまらずドゥークは腕を振るって羽を吹き飛ばす。再び出来たその隙に滑歩(かっぽ)を使って余波に巻き込まれないように回り込んだ。

 

 深く息を吸い、抑えていた闘気を高める。ずしりと重くなる体を無視して戦撃を発動。一歩踏み出し、足下が揺れるほどの勢いで踏み砕く。

 

「【魔喰牙(ばくうが)】!!」

 

「ごはッ!?」

 

 彼我の距離が一瞬でなくなり、超高速の方手突きが炸裂する。『つつく』の『貫通力強化』を併用して放たれたそれはドゥークの脇腹を抉り抜いた。ようやくの大きな手応えです。

 

「はぁ……、ふぅ……」

 

 再びもんどり打って転がるドゥーク。一旦接近する速度を落とし呼吸を整えなおす。強めの戦撃を使うと息が切れますね。瞬間的なスタミナでは無く、私の体力が切れかかっています。

 下手に長引かせると不利なのは私ですね。なのに彼の攻撃は無理に動いて食らってしまえば致命傷です。落ち着いて行きましょう。

 

 痛みに顔を顰め、脇腹を抑えて立ち上がったドゥーク。杖のように地面に突いていた大剣を両手で握り直すと、こちらを睨み付けた。

 

「クソがッ!!」

 

 額に青筋を浮かべ足下が抉れるほどの勢いで突貫してくるドゥーク。剣筋は感情任せな上段。非常にわかりやすいです。これなら返せる。

 

「【双爪(そうそう)】」

 

 振るわれた槍が高速で閃いて、上から押しつぶすように迫った大剣を無慈悲に外側に弾き飛ばす。返す刀でがら空きの胴体に槍が叩きつけられた。そこは先ほど抉られた脇腹。

 

「う゛!?」

 

 痛みに怯むドゥークに駄目押しの一撃。

 

「【一閃(いっせん)】」

 

 突きは狙い過たず体のど真ん中に吸い込まれていき命中。ドゥークは体をくの字に吹き飛んでいった。命中の瞬間、体を捻って傷口をまた抉られることは回避していました。

 

 体力がない今は強い戦撃を闇雲に打てません。彼は体が硬いので必然的に出来た傷口を狙うことになります。ちょっとあれですが、まあ襲ってきたのはあなたなので恨まないでくださいね。

 

「クソッ!! 俺が……押されてんのか!? 天帝でもないただのガキに!?」

 

 今起こっていることが信じられないと猛るドゥーク。

 それには大して意識を割かず、さらに肉薄。闘気を高め追撃する。

 

「【炸乱莫(さくらんぼ)】」

 

 戦撃を発動した瞬間、ズシリと体が重くなる。発動した戦撃は6連撃。闘気の消費もそれなりですから。

 

 前に踏み込み、始動の片手突き。ガードした大剣を押し退け、胴体に直撃。そこから息をつく間もない速さで左右の2連薙ぎ払い。左右に体を揺さぶられたドゥークへ、上から槍を叩きつけようとする。

 

 そこでドゥークが動いた。

 

「クソがァッ!!」

 

 体に走る衝撃を無視して気合だけで大剣を振り払う。腰も入っていない軸もブレブレな、不可視の攻撃が乗っただけの破れかぶれの攻撃。そんなものが通用するはずもなく、高速の叩きつけに弾かれるだけで終わる――――筈だった。

 

 その時、大剣と槍がぶつかり合い、槍が半ばから砕け散った。

 

「は……」

 

 完全な予想外の事態に目を見張り、思わず言葉にもならない吐息が漏れる。

 

 これまで酷使してきた槍がここで遂に限界を迎えたのだ。普段だったらいざ知らず、疲れた中での槍の使用で技のキレが落ち、負荷が抑えきれず、さらに撃ち合うだけでダメージが出るほどの力を纏った大剣と何度も競り合った。

 天帝との戦いで既に限界が見えていたのに、逆にここまで持ったのが奇跡だ。

 

 その結果槍が砕け、戦撃の途中で技が失敗(ファンブル)。体がその場に縛り付けられたように硬直する。

 

 戦撃として消費される筈だった闘気が体で行き場を失い、なお役目を果たそうとありもしない世界のシステムの指示を戦撃の動きだと誤認して、それをトレースしているのだ。

 

 つまり、あと2連撃分の時間体が動かせない。

 

 それはほんの一瞬の事。しかしそれを仮にもコアイマであるドゥークが見逃さずもなかった。

 彼には原理など知るよしもないが、動きを見せないなら隙を突くのは当然。

 突如訪れた幸運にドゥークの顔が愉悦に歪む。

 

「あはぁ……。死ねぇ!!!」

 

 振るわれるは高威力の大剣。動けない体に訪れるは致命傷。少なくとも戦線復帰は難しいだろう。きっととても痛いだろうなぁとどこか他人事のように迫る大剣を見つめ。

 

 衝撃と共に鮮血が舞う。

 

「――――え?」

 

 思わず吐息のような声が漏れたのは痛みのせいからではなかった。訪れた衝撃を受け止め、思わず尻餅をつく。

 

「お母……様……?」

 

 訪れた衝撃の正体。

 見下ろした腕の中には自らの翼を盾にして、切り裂かれた母の姿があった。

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