白骨化した宿儺の指   作:限界社畜あんたーく 

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リハビリと久々の仕事の板挟みで書く気が全く湧かなかったけど、段々とメンタル回復してきたので超久々に投稿。

内容忘れている人も多い(実際投稿者は所々忘れてた)と思うので、多少見返してから読むのをオススメします。


というかこの一年の間で本編の方が凄いことになってるんですけど・・・俺たちの可愛い宿儺を返してくれよ!



第24話 挑戦者と挑発者と友達とetc

 

 

 突如目の前に現れた男に対し、一同は臨戦態勢を取る。

 真希は背負った筒から薙刀を抜き、パンダはボクサースタイルを取り、狗巻は鼻下まで上げたチャックをズズと下げる。

 それぞれが一斉に攻撃を仕掛けられるように、それぞれが役割を果たせるように。

 一言も声を掛けずにこの連携。それなりの戦闘を積んだ跡が色濃く残っていた。

 

「凄いな、合図もなしにここまでの連携を取れるなんて。2年だったか?そんな短い期間にどれだけの経験を積んだ?」

 

 男はそう呟くと、ほんの少しのだけ後退し間合いを取る。どうやら三人の戦闘に対する練度を過小評価していたらしい。

 逆に言えば、その少しの間合いを開けただけでも3人を同時に相手取ることができる自信があるということでもある。

 

 これは厄介なことになったな。

 パンダの拳に込める力が増す。

 

 

 

 

 

「その服と髪の色。もしかしてアンタが噂の新入りってヤツか?すげーおっさんじゃね?」

 

 

 

 

 しかしその込めた力はたちまち霧散してしまう。

 

 

「おかか!」

 

「狗巻の言うとおりだぞ!見た目だけでおっさんと判断するじゃありません!」

 

「でもよー、見た目的に東堂と同レベの老け方してるぞこのおっさん」

 

「本人がいる眼の前でおっさんおっさん連呼しないでくれよ。いや別に良いんだが」

 

 

 刀を持たない方の手でポリポリとコメカミの辺りを掻きながら男はボヤく。

 

 

「それで、なんで京都の新入りおっさんが私たちに喧嘩売ってんだ?」

 

「私達?違うな、禪院真希。俺の望みはお前とサシでの手合わせだ」

 

 

 面倒くさそうに舌打ちする真希。

 一方の二人は互いに顔を見合わせ何をすべきか模索する。

 最優先事項はやはり伏黒と釘崎の二人だろう。

 この男の言うことが本当なら、ここは真希に任せても大丈夫なはず。

 

 

「はぁ、手合わせだぁ?出会い頭に何様だよ」

 

「真希も人のこと言えないけどな。・・・さて、関係ない俺達はアイツらを助けに行くとしますか」

 

「しゃけ」

 

 

 薙刀の切先をブレインに向けたまま喋る真希に対し、後方の二人は臨戦態勢を解き足早に去ろうとする。

 とはいえ今頃はボコられているだろうし、行っても行かなくても同じ───東堂の場合は除く───だとは思うが。

 

 騒いでいた二人が居なくなり、淀みのない静寂が走る。

 

 

「・・・何で私なんだ?」

 

「トウキョウの高専の中でも、一級相当の武術を持つと聞いてな」

 

「見る目あんじゃん。そいつにキスしてやってもいいね」

 

「それは言わん。・・・別に言ってもいいだろうが、どうせ得はないだろう」

 

「あっそ。まぁいいや、私とやりたいんだろ?いいぜ、少しだけ付き合ってやるよ。私もアンタに興味あるし、どうせ断っても問答無用って腹みたいだからな」

 

「その通り。話が早くて助かる」

 

 

 ブレインが刀をぐっと握り込む。

 その瞬間、薙刀の先がブルブルと震えだした。

 突如目の前にした闘気。それに身体が恐怖したのだ。

 

 

「っ!面白い・・・!」

 

「いつでも構わん。来い!」

 

 

 手首を回転させ薙刀を結界のように振るう。

 刀を収め見えない領域とは異なる卓越した結界を広げる。

 

 攻め方が分かりづらい真希と攻め時が分かりづらいブレイン。

 それは両者共に、相手にとってやりづらい攻め方。

 それを理解しているからこそ、両者の口角が更に高く上がる。

 

 性格があまりに悪い───

 

 

 

 

 ───だからこそ、気に入った!!

 

 

 

 

 その先制は真希。

 爛々と耀かせた瞳は帯を引き、迅速なる一撃を叩き込む───

 

 

 

「フッ!」

 

 

 

 が、それは抜刀したブレインの得物により、その勢いを斜め方向へとズラされる。

 薙刀は振り下ろすはずだったブレインの頭からほんの数センチ離れた場所へと落とされ、砂埃を立てる。

 そしてその砂埃が収まる頃には、既にブレインの刀が真希の喉元へと伸びていた。

 

 

「やんじゃねぇか」

 

 

 薙刀の軌道をズラし、間髪入れずに喉元への燕返し。

 驚くべきはブレインのその技量。

 残像しか残らない薙刀の勢いを多少殺しズラした。それも薙刀の刃と棍の付け根、その一点にその刀の先を押し当てた。

 自身の刀のコントロール、そして相手の薙刀を見切り、かつそれを成し遂げる肉体があってこそ成り立つ技。

 

 出来るかと言われれば自信は半々、成功する可能性も五分五分。

 少なくとも同じ状況で同じ手を使うかと言われれば、到底しようとは思わない。

 それほど難易度の高い技である。

 

 

「本気でやってないやつに言われてもな」

 

「それはお前もだろ?」

 

「殺す気がないんでな」

 

「・・・それは私が女だからか?」

 

「生憎女だからと手加減するほど人が出来ちゃいないんでな」

 

 

 刀を仕舞いながらブレインが呟く。

 言葉に嘘は紛れていない。が、後悔やトラウマ的なニュアンスは感じる。

 

(どんなハードな人生送ってきたんだこのオッサン)

 

 鬼妻にでも追われたのか。

 だとしたらこの強さも納得がいく。

 

 

「それより、さっさと次をやるぞ」

 

「はぁ?まだやんのか?」

 

「勿論。お前には別の用事があるのかもしれないが、俺にはあまり時間がないのでな」

 

「そりゃ一体・・・あぁなるほど」

 

 

 ズボンのポケットからチラりと見えたチケット。

 そこには東堂が好きなアイドルだかなんだかの名前である「高田」の文字が書いてあった。

 おそらく東堂に誘われた──正確には脅されたのだろう。

 

 

「そういうわけだ。それに、負けたままは嫌だろ?」

 

「勝ち逃げされるのも癪だかんな。しゃーね、もう少し遊んでやるよ」

 

 

 

 真希は薙刀を構える。

 ブレインも同じく刀を構えると、また高専内に金属音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 ◇■◇■◇

 

 

 

 

 

 

 

 呪霊の腕に術式を込めた振り下ろしを叩き込む。

 呪霊はガードしたものの、そんなものは七海の前では意味をなさない。その腕の肉が裂かれ、骨が露出した。

 感触的にはクリーンヒット、点をつけるなら10点中8点は出せる程の良い一撃だった。

 

 

「俺ちゃんと呪力で受けたよね?そういう術式?」

 

 

 呪霊は痛みというものを感じないのか。──そう思えるような素振りで折れた手をプラプラと振るう。その様子はまるで無警戒、隙しかなかった。

 

 

「『そういう』とは?他人任せな抽象的な質問は嫌いです」

 

 

 対して七海は呪霊の一挙手一投足を隅々まで観察している。当然警戒を解くわけもなく、隙を一切見せていない。

 

 

「良かった。お喋りが嫌いなわけじゃないんだ」

 

「相手によります」

 

 

 会話が成り立つ呪霊。

 五条の言う未登録の特級呪霊も喋れたという。

 無関係とは考えづらいが果たして・・・

 

 もっと情報を引き出したいところだが、その前に呪霊が口を開く。

 

 

「ねぇ。あんたはさ、魂と肉体どっちが先だと思う?」

 

 

 唐突におかしなことを聞かれた。

(魂と肉体・・・?)

 それが果たして何と関係しているのだろうか。

 少なくとも良い予感はしない。

 

 

「肉体に魂が宿るのかな?それとも魂に体が肉付けされてるのかな?」

 

「・・・前者」

 

 

 迷っていても仕方ない。ここは一先ず聞くしかないだろう。

 適当、といっても常識的範疇から前者を回答する。

 子は生まれた受精した瞬間に魂が宿る。逆に魂があるからといってそこに受精卵はないだろう。

 

 

「ブッブー。答えは後者。いつだって魂は肉体の先にある」 

 

 

 そして呪霊は、いとも容易く腕を治す。

 反転術式とも違う。

 まるで粘土をこねるように、一つの流動体のように元の形へと戻した。

 

 

 

 

「肉体の形は魂の形に引っ張られる。もうわかったでしょ?俺の術式。魂に触れその形を変える───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無為転変

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 口から吐き出した小さな人間。

 その形を面白おかしな形ヘ変える。

 まさしく人間を『弄んでいる』。

 

 嫌な予感は的中した。

 七海の攻撃は致命打には至らない。

 狙うのであればもっと広範囲──体全体を一撃で粉々になるような攻撃をするしかない。

 それでも倒せるかは分からないが、少なくとも先程のようにチマチマ叩くだけでは勝てるどころが、相手と自分の呪力消費しか狙えないだろう。

 

 七海は冷静に時計を眺める。

 時刻は18時30分。

 

 

「今日は11時から働いているので、何が何でも19時にはあがります」

 

「へぇ意外。もっと怒ると思ったんだけど。・・・もしかしたら、君ならもっとコンパクトに出来るかも!少し試させてよ」

 

 

 ナタをブンと振るう。

 呪霊が手をポキと鳴らす。

 徐々に互いの間は詰まり、間合いは遂に一メートル弱。一触即発の空気が漂う中、その手は同時に動き───。

 

 

 

 

 

 

 

ドゴゴゴゴゴ・・・

 

 

 

 

 

 突如小さな揺れが全身を襲った。

 地震、というにはそれは迫力──否威圧感がある。

 それに地面が揺れたというよりかは、下水道自体が揺れたような・・・。

 

 

「あちゃ?もしかして逃げたのかな?」

 

「逃げた・・・?」

 

「あぁ、君には関係ないんだけど・・・いや、関係あるのかな?」

 

 

 呪霊はその視線を震源の先、左手にある下水道に向ける。

 特別何か居そうな雰囲気は無いが、しかし嫌な予感がする。

 

 

「この下水道で過ごしてた時に見つけたんだ。最初はただの呪霊かと思ったんだけどね、戦ってみたらそれが意外!なんと人間の屍だったんだよ」

 

「・・・なんの話をしているんですか?」

 

「まぁまぁ聞いてよ。僕の術式は魂の形を変える、それは人間には勿論呪霊にも適応される。なのにアレには効かなくてね、色々イジった結果ね、なんと死体だって気づいたんだ」

 

「死体が動くわけ無いでしょう」

 

「術式でもないかぎりね。それは僕も思ったんだけど、それらしい小細工がされてる様子もなくて・・・というかソレも含めてさ、なんか最近僕らの周りで不可解なことが沢山起きてて、もうヤになっちゃうよ」

 

 

 会話の最中、七海は一時も呪霊から目を離さずに、同時に下水道の奥を見ていた。

 呪霊の言う「人間の屍」「不可解なこと」

 屍といえば自分の身の周りでも心当たりがある。

 

(動く屍・・・真っ先に思い浮かぶのはやはりゴウンさんでしょうね。それと、以前聞いた話では虎杖君らにも同じように骸骨と戦ったこと経験があると。そしてその時に戦った呪霊は・・・)

 

 宿儺の指を取り込んでいた。

 恐らく彼や虎杖の言う不可解な事象には間違いなく宿儺の指が絡んでいる。

 その動く屍というのも宿儺の指が召喚、呼び出しているのだろう。

 

(・・・と、この程度のことは五条さんでも分かっているでしょうね)

 

 別に宿儺の指が原因であることにはなんら問題はない。

 それより問題視すべき点。

 それは宿儺の指がこの近辺にあるということだ。

 

(その動く屍が何キロも下水道を歩き回るとは考えにくい。それよりも、この近くに宿儺の指がある、もしくは保有している者がいると仮定した方が納得できる)

 

 そして眼の前にいるのは会話を難なくすることができる呪霊。

 この2つが関係していないわけがない。

 

 

(この呪霊、或いはその仲間が指を保有しているのは確実。そして先程の反応から見て指が原因で屍を召喚しているとは気付いていない──と。しかし冷静に考えればこの原因が指だと気付きそうですが・・・いやゴウンさんのことを知らなければあまり結び付き難いか)

 

 

 宿儺の指はただ他よりも孕む呪力がとんでもないだけの呪物。

 そう──以前であればその認識だった。それが突然なんの理由もなく動く屍を召喚する呪物になるとは、それこそアインズのことを知らなければ思いもしないだろう。

 

 

 

(───つまり、これはチャンスですね)

 

 相手が指を保有している限り、例え残穢を巧みに消そうと屍が発生する。発生する屍のサイズや体数は分からないが、先程の揺れを鑑みると、少なくとも容易く隠蔽できるような存在ではなさそうだ。

 仮に屍の発生の原因に気付いても、指を捨てるリスクとデメリットを考えれば極力保有していたいはず。

 となれば必然的に屍を処理することになるが、戦いになれば残穢が発生する。

 

(残穢を完全に消すのは手練れの術師でも困難な代物。それが一回ならまだしも数回にも及べば、消し忘れをするかもしれません。いや、そもそもこれは宿儺の指が原因だと特定できた場合。発生した屍を放置することがあれば、それを頼りに後を追うこともできるかもしれない)

 

 未登録の特級呪霊らを一掃できる可能性を秘めている。

 この情報の価値は非常に高い。

 

 だが持ち帰るには、目の前の呪霊から逃げる必要がある。単に逃げても相手に指の秘密を知られる可能性もある。

 

 

(仕方ありませんね)

 

 

 

 

 なんの合図も前フリもなく、呪霊に向けてナタを振り下ろす。

 

 

「危ないなぁ、よそ見してるからって」

 

「隙を見せるあなたが悪い」

 

 

 本気で戦う。

 祓うつもりで戦う。

 だが死ぬ気では戦わない。

 あくまで生き残ることを最優先に、相手に自分が戦いに必死であることを伝える。

 勿論容易くできるとは思っていない。

 

 

(こちらも多少のリスクは負いますが・・・その程度問題ありません)

 

 

 ネクタイを緩ませ全身に呪力を込める。

 

 

「油断していると、祓われますよ」

 

「ありがと!これから気をつけるよ」

 

 

 両手を横に伸ばした呪霊。

 腕にはやはりツギハギ以外の外傷は全く無く、割れた肉や折れた骨が見えることもない。

 こちらも余所見している暇はない。本気でやらねば逆にこちらがやられる。

 

 ───ふと、呪霊とは別で注意するべき大事なことを、今この瞬間に忘れた気がした。モヤモヤしてかなり気になるが、それよりも今は目の前のことに集中すべきだろう。

 

 両拳に力を込めると、呪霊目掛け七海が駆けた──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇■◇■◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?なんか揺れた?」

 

「揺れたね。まぁ弱いし、そんな気にすることでもないよ。それよりも、虎杖君は映画好きなの?」

 

「ちょい事情があって最近は映画三昧。でもちゃんと映画館でってわけじゃねぇんだよな」

 

 

 吉野順平との初接触は好調──と言っていいのだろうか。

 

 蝿頭を使った「あなた今呪霊見たよね」作戦自体は蝿頭が逃げたことにより失敗に終わった。

 だが逃げた蝿頭を追った際、偶然にも吉野が蝿頭を視認したところを目撃。

 それからなんやかんやあって、二人は河川敷に場所を移し映画館で起きたこと→その時見ていた映画→今に至る。という流れだ。

 

 

「やっぱり映画館で面白い作品を引いた時の感動はデカいよ」

 

「最後に行ったのいつだっけ・・・?そういえばアインズさんは映画館に見に行ったこと・・・というかそっちの世界に映画館ってあるの?」

 

「フッフッフ。実は私達が住むナザリックにはシネマルームがあってだな」

 

「シネマルーム!?なにそれ?!スゲェ!」

 

 

 とリアクションを取った直後、隣から困惑する声が聞こえた。

 

 

「・・・え?何それ?骸骨の指輪、が喋ってる?」

 

「えーっと、この人は・・・いや人じゃないんだけど、ちょっと説明が難しいな」

 

「・・・ふむ。では自己紹介をしよう。私はアインズ、ただの自我を持った指輪だ」

 

 

 勿論嘘である。自分の存在を不特定多数に広めてもメリットは少ないからだ。仮にデミウルゴスたちが外界のどこかに居たとしても、彼等であれば自ら情報を発したりしなくてもアインズのことを──どのような方法かは予想がつかないが──特定してくれるだろう。

 

 

「自我を持った指輪!?なにそれ?!」

 

「え?そうだったの?!」

 

「虎杖君も知らなかったの!?」

 

「あー、虎杖には自己紹介をしたことがなかったか。初めて知って驚いたんだな」

 

「なるほど・・・」

 

 

 そこでようやく虎杖にも嘘を吐いた真意が伝わったようで、申し訳無さそうな顔で「ソーナンダハジメテシッター!」と棒読みをしている。

 

 

「というかそれよりも!シネマルームのことだよ!」

 

「アインズ・・・さんのインパクトが強すぎてつい忘れちゃってたよ。確かに家にシネマルームって凄いね。どれぐらい広いの?」

 

「確か、縦5席横12席のブロックが3ブロックだったか?」

 

「てことは180席?!広すぎというか、それもう普通の映画館でしょ!?」

 

「私も無駄に広くするのはと否定してはいたんだが・・・実物を作るのに拘る仲間が多くてな」

 

「しかも自作!?」

 

「だが、丹精込めて作ったわりにはあまり使わなかったな。見れる作品が少なかったのもあるが、決め手はほとんど貸し切り状態の映画というのが、存外寂しいものだったということだったな」

 

「なんか、もう次元が違う話しすぎて頭が痛いんだけど・・・」

 

 

 同じく頷く虎杖。

 と、そのタイミングで背後から若い女性の声が聞こえた。

 

 

「アレ?順平?珍しいね」

 

「母さん!」

 

(お母さん!?)

 

 

 

 

 若々しい見た目をしたその女性は、なんと吉野順平の母だった。

 アインズが思う高校生の母というのは、言い方は悪いがもう少し老けているイメージがあった。

 なのにそこに立っているのは若干ワイルドみを感じる若い女性。母というよりも、少々ヤンチャしている姉といったほうがまだ納得できる。

 

(元より思っていたが、この世界の顔面偏差値はどうやらかなり高──いと思ったがあの肥えた教師はそこまでだったな)

 

 痩せたらもしかしたら整った顔立ちをしているのかもしれないが、現時点で彼の顔はマイナスだ。以後精進するように。

 

 

 と一人で考え込んでいる間に、虎杖は吉野家の晩餐会に招待されたらしく、意気揚々としていた。

 

(・・・多分俺の出番は暫く無いかな?)

 

 出てもまた場を困惑させるだけだろう。

 ここは大人しく身を潜めた方が彼らのためだ。

 

 

「・・・だが、暇だな」

 

 

 虎杖の側に顔を出している時は、宿儺はその大抵が寝て過ごしている。自分と同じく別に睡眠を必要とする体質でも無いのだが、では何故寝ているかと問われれば、曰く酒に酔いしれた後に寝るのが大変心地良いかららしい。

 所構わず毎日呑みまくっている宿儺には昼夜は関係なく、気分によって起き気分によって寝ている。

 特にここ最近はそのズレが酷く、虎杖が起きている時は殆ど寝て、逆に虎杖が寝ている時は起きている。

 アインズ的にはずっと二人に向け、王の立場に相応しい態度を取らないといけないのであまり嬉しくはないのだが。

 かといってこういう唐突に現れた暇な時間というのも嬉しくはない。

 気を休めるにしてももう少し前フリが欲しいのだ。

 

 

「何をして過ごすか・・・」

 

 

 と、呟いたところで隣の椅子からギイと音が鳴る。

 あら珍しや。この時間帯に宿儺が起きるとは。

 

 

「・・・小僧は?」

 

「友人と食事をするようだ」

 

「ハッ、相変わらず小僧の方はつまらんな」

 

 

 欠伸をしながら脇腹を掻く宿儺。

 だがこんな腑抜けた態度だというのに、その身に纏う風格は崩れない。

 自分の目が腐っているのか、それともこれが本物の王なのか。

 

 

「あぁ、そうだ。宿儺に一つ聞きたいことがあるんだが」

 

「なんだ?」

 

「君のいた平安の時代。君の個人的なもので構わないが、美男美女は多かったか?」

 

「・・・なんだそれ」

 

 

 内容が内容だっただけに思わず目をパチクリさせる宿儺。

 だがそれも一瞬で、いつも通りの呆れ顔に戻った宿儺は顎の下に手を当てた。

 

 

「さして今と変わりはない。美と評される者は少なく、醜・凡と卑下される者はウジのように湧いている」

 

「意外だな。興味がないと一蹴するかと思っていたんだが」

 

「見た目の美醜に興味はない。ただモノとして使えるか否かは当然考えるだろう?」

 

「あぁ、なるほど」

 

 

 このような評価ができる宿儺の目が、あの世界の住人と同じく二枚目ばかりを見すぎて腐っているとは思えない。

 

(高専関係者だけイケメンになる呪いでもあるのか)

 

 だとしたらその呪いを考案した者は天才としか言いようがない。

 

(まぁそんなことはないんだろうな)

 

 

「・・・ところでアインズよ。俺からも一つ聞きたいことがあるのだが」

 

「珍しいな。なにが聞きたい?」

 

 

 宿儺の視線は黒い空に向かい、何かを思い出すかのような暫しの空白が流れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、思い出した。あの死の騎士(デス・ナイト)とやらに関してだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吉野家にて食事を済まし、順平のオススメの映画を見ると、虎杖は帰路に付く。

 見送りのため吉野も一緒に虎杖の横を歩いているが、歩幅が違うためかほんの少しだけ吉野の方が早歩きをしている。

 

 

酔っ払い(母さん)に付き合わせちゃってごめんね」

 

「全然いいよ。俺も楽しかったし」

 

 

 足の速度を落としながら虎杖が笑う。

 

 

「映画も面白かったな」

 

「ラストの展開は何度見ても鳥肌が立つよ。劇場で見た時は周りから息を呑む声が聞こえたぐらいだ」

 

「2もあるらしいし、今度借りようかな」

 

「正直2は賛否両論あるなぁ。正直苦手かも」

 

「まじか」

 

 

 談笑しながら肩を並べて歩いていると、目の前に伊地知が乗った車が現れる。

 乗っている伊地知はどこか悟ったような顔をしており、怒るどころが全ての感情が欠如しているように見える。

 

 

「伊地知さんどうしたの?」

 

「いえ、七海さんに怒られる覚悟をしていただけです」

 

「なんで怒られるの?もしかして俺のせい?」

 

「いえそのような。私の監督不行届が原因ですから・・・」

 

 

 ニコリと死んだ目で笑う伊地知。

 夜ということもあってか普通に怖い。

 

 

「ところで虎杖君。捕まえた蝿頭は何処に?」

 

「ああ、あの呪霊なら───あれ?」

 

 

 そういえばいつの間にか居なくなっていたような。

 河川敷の時点では確か居たはず───。

 

(あそこで逃がしちゃったかなー)

 

 

「まぁ、蝿頭は四級にも満たないですし、逃がしても問題は────

 

 

 

 

 

 

 

ドゴゴゴゴゴ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 その時、小さな揺れが三人を襲った。

 だがそれは河川敷の時の揺れよりも強く、虎杖でも多少踏ん張る必要がある程のものだった。

 

 車の中にいる伊地知も揺れの存在に気付いたようで、踏ん張る二人に声を掛ける。

 

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「な、なんとか・・・」

 

「強いっちゃ強いけど立てないことは・・・いや待て、この揺れ────

 

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 ────段々近づいてきてる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死の騎士(デス・ナイト)のことか。別に構わないが、アレの一体何が気になるんだ?」

 

 

 宿儺はそれまで頬杖にしていた右手を膝の上に置く。

 アインズも宿儺に向け身体を向け聞く体制を取った。

 

 

死の騎士(デス・ナイト)が発生したあの時、アレが真っ先に襲ったのは近くにいた人間でもなく、指を狙っていた呪霊だった。普通に考えれば人間を真っ先に殺すと思わないか?」

 

「先に邪魔になる存在を消したという線もあるが」

 

「では最初の呪霊を襲った後、その次も人間ではなく別の呪霊を、それも邪魔にならないような遠くにいたソレを襲ったのはなぜだ?」

 

「・・・ヤツの狙いは人間ではなく、その人間を襲う存在だった、ということか?」

 

「最終的にはその人間も襲おうとしたのだからありえん。それよりもより確実なのは──」

 

 

 

 

 

 

 

 

「指を守るため───か?」

 

 

 

 

 

 

 

「あくまで仮説だがな」

 

 

 理由としては確かに納得できるがしかし、自然発生した死の騎士(デス・ナイト)が指を守るような行動をするかという疑問も浮かぶ。

 自然発生でないというならまだ納得できるが、召喚されたにしてはしていた行動に自我が宿りすぎている。漠然とした命令が下されているなら話は別だが、そもそもその命令というのもどこから来ているか───。

 

 

「・・・宿儺は散らばった自分の指をどう思っている?」

 

「どう、とは?」

 

「封印されたり呪霊に喰われたり。好き勝手されることに対して何か思うところはあるか?」

 

 

 指の持ち主はあくまで宿儺。

 つまり宿儺が無意識に指を守ろうとしているのであれば、自然発生した死の騎士(デス・ナイト)にもその意志が宿る可能性がある。

 

 

「・・・別に。特に何も思わん」

 

「守りたいとは思わないのか?」

 

「守る?俺の指だぞ?傷つけることも消すことも、何人も叶わんさ」

 

 

 宿儺らしい回答だ。

 だがそれでは何故死の騎士(デス・ナイト)が指を守ろうとしているのか─────。

 

 

 

 

 

「───────あぁ、そういうことか」

 

 

 

 

 

 成る程腑に落ちた。

 

 何故指を死の騎士(デス・ナイト)が守るのか。

 それも宿儺となんの関係もない、かつピンポイントに死の騎士(デス・ナイト)という存在が守っているのか。

 

 

 

 

 

 

 

 ────アレは私のお気に入りだ。

 

 

 ────盾としては十分すぎる働きをしてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 そうか。そうだった。

 

 宿儺を友だと認識していた。

 守るべき対象であると勝手に思っていた。

 

 もう二度と失いたくないから。

 もう二度と無くしたくないから。

 

 そうやって無意識に呪いをかけていたのは。

 指を無意識に守ろうとしていたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私か。私が勝手にかけた呪いだったのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地面から、黒い憎悪が溢れ出る。

 

 地に罅が入り、床を突き抜け、真上にいた殺すべき対象を歪曲した鉄が貫く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ググオオオオォォォォォオオオオオオ! ! ! !

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 轟く咆哮は虎杖達が来た方角から。

 三人が同時に眼を向ければ、遠くでも目立つような大きな白煙が立っていた。

 

 

「あの煙の場所・・・僕の家がある場所だ!」

 

「火事・・・のようには見えませんね、それに先程の揺れもありますし。我々と関係ないとは言い切れません。虎杖君、早速吉野さんの家へ───虎杖君?」

 

 

 いつもであれば、言わずもがなで猪突猛進するはずの虎杖が、一言も発すること無くその場で立ち止まっている。

 怖気づいたのか──そう思ったが特にそういったようには見えない。

 

 

「・・・伊地知さん。ナナミンは?」

 

「七海さんなら高専で治療を受けています」

 

「治療!?怪我したの?」

 

「命に別状はないとのことですが・・・それより、それがどうかしたんですか?」

 

「・・・・・・」

 

 

 虎杖の額から冷や汗が流れる。

 

 この距離でも分かる。

 アレはあの時の憎悪の塊───その名は死の騎士(デス・ナイト)

 

 伏黒でさえ刃が立たなかった相手。

 あの時は宿儺が倒したが、その手も使うことは出来ない。

 虎杖一人で、そんな化け物と戦わなくてはならない。

 

 

 あの時は手を出すことすら出来なかった相手。

 その相手に、今どれだけ対抗することができるのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

上等(ジョートー)だ!」

 

 

 

 

 

 覚悟以上につき動かす力の源。

 一飯の恩のため。

 友の母を救うため。

 

 

 虎杖は煙の下へと駆ける。




全然次の話書いてないから次の投稿もかなり間が開くかも。
流石に一年は開けないのでのんびり待っていただけると幸いです。
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