DIOの父親に転生したけど幸福に生きてみせるぞ   作:紅乃 晴@小説アカ

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その血のさだめ

 

 

それは、もう少し先の未来。

 

波紋と奇妙な運命に導かれたある青年の物語。彼は生まれながらにして悪であった。父と母の確かな愛を感じながらも、自分自身の中に渦巻く邪悪な野望を肯定して、それを受け入れてもいいという覚悟があった。

 

己の欲のために最善を尽くし、親を利用し、友を利用し、己の人生そのものすら利用した。

 

だが、彼は望んだものを手に入れることはできなかった。手にできるという確信があったにも関わらず、求めるものは伸ばした手からすり抜けて落ちていったのだ。

 

彼は誓った。

 

すり抜けたものを取り戻してみせると。

 

得られなかったモノを必ずや手にしてみせると。

 

そして、その瞬間が訪れようとしていた。

 

 

「父の宿業を断つのは波紋使いの戦士などでは無い!!このディオだ!!!」

 

 

闇夜にそびえる古城の上で、青年は雄叫びのような声を上げた。目の前に立つのはかつて、青年が越えようと目指し続けた者の末路であった。

 

青年が越えんと目指した相手は、その時にはあった輝きを全て無くし、まるで屍のようにそこに存在していた。死にたくても死ねない存在に成り下がったかのように、そこに存在しているソレが、青年には我慢ならなかった。

 

片腕を構える。その腕はもはや人間のものではなかった。超えるべき相手との決着をつけるために、青年はその腕をあえて見せつけるように前へと繰り出した!

 

 

「片腕だけが吸血鬼となったこのディオだが……貴様を殺すことに何の躊躇いなどありはしない!!」

 

 

人間では考えられない胆力と鋭利さを誇る手刀が古城の壁を抉り、切り裂き、破壊してゆく。青年による斬撃とも言える攻撃の嵐を、ソレは軽々と躱した。

 

青年は苛立つ。屍になってもその軽やかな動きが健在であるという事実に怒りが湧いて仕方がなかったのだ。

 

だが、その動きもそこまでだった。

 

 

「WRYYYYYYY!!」

 

 

片腕から発せられる冷気が男の脚をとらえたのだ。瞬時に水分が気化し肉体が氷結する現象。生身の肉体ではとてもではないが耐えられないが、青年の片腕は人外のもの。その一瞬の冷気にも耐えられる強さが備わっていたのだ。

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄!!」

 

 

足が止まったと同時に、青年はソレに拳と蹴り、全身を使った乱舞を繰り出す。動けないソレに叩き込まれた全ての攻撃は、男の体を削り、打ち、貫く。そこで青年は違和感を覚えた。連打していた拳の手応えがとある場面で急に変わったのだ。

 

ラッシュを終えて着地した青年は、ソレの肉体に起こり始めた現象を見て目を見開いた。ソレは内側から溶けるように燃えていた。その現象を青年は知っていた。

 

呼吸から得られるパワー、太陽の波紋と同じ波紋を受けた〝吸血鬼〟がそんなダメージを負って灰となり消える瞬間を。

 

だが、青年には波紋は備わっていない。あるのは片腕に宿る吸血鬼の力だけだ。だが、ソレは確かに波紋によるダメージを受けていた。ならば、導き出される答えは一つだけだ。

 

 

「なぜ、なぜ……自身の体に波紋を生んだのだ……なぜだぁああ!!」

 

 

ソレは元は波紋を扱う戦士だった。一呼吸で体内に波紋を生み出すことなど造作もないほどの戦士だった彼だが、屍に成り下がってからは波紋など扱えるはずがなかった。

 

扱えば即座に死ぬからだ。波紋エネルギーを受けた吸血鬼はそのエネルギーに耐え切れず自壊する。故に、屍になったなら波紋など扱うはずがないと思っていた。

 

だが、目の前の男はそれを躊躇いなく実行したのだ。胸……つまり肺から波紋のエネルギーが溢れ出し、胸が焼けるように崩れてゆく。

 

 

強くなったな、ディオ。

 

 

そんな言葉が聞こえたような気がした。加速する自壊はソレを破壊し尽くすには時間をかけなかった。

 

青年が見守る目の前で、ソレの屍の肉体は朽ち果てた。体の一部を残して灰となったソレの命は尽きたのだ。

 

青年はしばらく何も得ないまま、何もできないまま、その場に立ち尽くすことしかできなかった。

 

一陣の風が吹いた。その風は散り落ちたソレの残骸となった灰を夜空へと運び、やがて静かになった。

 

 

「俺は、吸血鬼になった父を救いたかった訳じゃあなかった!!その最悪の行いを超越する力を示したかった!!母を捨て、俺を捨て、人間を捨てたアイツを見返してやりたかっただけなのだ!!」

 

 

力いっぱいに地面を叩きつける。人知を超えた片腕の力は古城の床を完全にひび割れさせ、砕かんとするほどの威力を誇る。だが、そんな力など無意味となった。ソレを超えるために受け入れたはずの力、超えるために鍛え続けた全てが遠く、色褪せてゆく。

 

違う。

 

青年はゆらりと立ち上がって、色褪せてゆく全てを睨みつける。

 

そんな理由で、このディオは力を欲したはずじゃあない。

 

 

「貴様に息子だとか、愛してるなどと言った反吐が出るような言葉を……気の抜けるような情けをもらうために!!ここまで戦ってきた訳ではない!!」

 

 

青年は残ったわずかな肉体の一部を手にし、ナイフで切り裂く。わずかに残った血が噴き出した。それは吸血鬼のような腐った血の匂いではなく、波紋戦士として戦った誇り高き父親のものである。

 

 

「その宿業が運命の骨子を捻じ曲げたと言うなら、このディオが正してやろう!!貴様の血を生贄にしてな!!」

 

 

溢れる血を石仮面で受け止め、青年はためらうことなくその石仮面を被った。骨子が迫り出し、青年の肉体を完全なる人外へと変貌させるために脳のツボを押してゆく。青年は間違いなく、〝人間をついにやめたのだ〟。

 

役目を終えた石仮面が静かに落ちた。満月の夜がボロボロになった古城の跡を照らす。青年はゆるやかに夜風に身を晒しながら目を閉じた。

 

だが心にあるのは高揚感などではなかった。

 

 

「人間を超越したというのに、父を超えたというのに、ジョナサンも、波紋の戦士すらも上回ったというのに……」

 

 

手のひらを見つめる。震えているのがはっきりとわかった。空腹や喉の渇きではない。だが、それが何なのか青年には理解することができなかった。

 

 

「なぜ渇きが治らない。なぜ虚しさが無くならぬ。なぜ……こんなにも虚しさがあるというのだ……ッ!!」

 

 

月夜に慟哭する青年。何も答えてくれない世界を前にした青年は、鋭い眼差しのまま人間たちが生きる世界を見据えた。

 

 

「支配してやるぞ、人間ども。父が成し遂げなかったことを私が果たす。父を……人間を超越した、このDIOがな!!」

 

 

 

 

 

 

 

to be continued

 

 

 





個人的に体調を崩していたので更新が遅くなり申し訳ないです。
やっと更新できた……
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