ロドスへ侵入!、、、しなきゃよかった 作:アークナイツと東方にドはまり
『見捨てられた街』
それはこの世で多くある天災の跡地の一つ。
中でも唯一、本来行われるはずだった救助活動が国によって放棄された場所である。
元々この街が位置していた国は、貧困の格差が目立つ治安の悪い国だった。
上に立つ者が皆富裕層で、そんな彼らに搾取されるものが皆貧困層。
そんなあり方を国自身がよしとしていたこともあり、その国では貧困層によるデモやテロ活動が毎日行われていた。
そんな中、その国に起こった悲劇が小隕石による天災。
空から数多く降り注ぐ理不尽の権化は、中でも唯一まともだった富裕層貧困層を支えていた中枢区画へと降り注いだ。
その絵はまさに地獄絵図。阿鼻叫喚に溢れ、蔓延した感染症悪化により当時は至る所に死体が転がっていたという。
しかし天災は鎮めることができれば、オリジウムという新たなエネルギーを確保により産業革命が期待できる。
最悪の地獄を味わった一般市民も、それだけが国を復興させる唯一の希望の光だと懸命に生きながらえてきた。
だがその期待は、国の根幹に根ずく悪性が許さなかった。
天災直後、最小の被害で済んだ貧困層のテロ組織が国に対して反乱を起こしたのだ。
彼らの狙いは多種多様、富裕層がため込んだ財産だったり、彼らでは許されない地位や権利、はたまた国自体。
それだけでも天災の被害を受けた一般市民は堪ったものではないのに、重ねて、国の上層部の腐れっぷりがその最悪に拍車をかけた。
富裕層が皆、全財産をもって他国へと亡命したのだった。
結果、街に残ったのは、ルールも法律もないただオリジウムが豊富にある荒野と、傷と病気と感染症で苦しむ人々と、内部分裂の果てに徒党を組んだ集団のみ。
今では立派なスラム街と同様。
「今日、そんな見捨てられた街で時刻19より、レユニオンを含む武装組織による、大量虐殺が行われると情報を得た。」
ロドスの会議室では、そんな悲惨な街における悲劇の予兆が議題としてあがっていた。
「初め、私たちはテロ組織の狙いが、街の人々を仲間に勧誘することとその街に未だに残るオリジウムの両方だと思っていた。
感染者の割合が7割を超えたこの街なら、その心の傷に彼らが触れることなんて容易いからね。
しかし、、、」
ドクターの背後にあるモニターにいくつかの写真が写し出される。
「先日、アーツユニットを含む多くの武器が、彼らの手元に集められていることを知った。」
騒がしくなる会議室。
「加えて、現地にいる調査員の報告によると、テロ組織は誰一人として街の人々を確実に勧誘していない。」
状況の可笑しさはドクターの一言でその場にいる全員に伝わった。
「痕跡を見つけられなかった?では?」
「いいや、まずもってそんなことをしていなかった、が正しい。
街で流れていたのが、そんな組織がいるという噂のみだったのを調査員が確認している。そして相手も一部地域以外で全く姿を現していない。
そこでようやく私は作戦の根本を見直すべきだと考えた。」
そしてモニターに、今回の事件の最重要人物である青年、ヨルノの写真が写し出された。
「そんな時、ここにいるものは知っていると思うが、この男がロドスに侵入した。」
ドクターは真面目な表情で事実の身を伝える。
「彼の身辺調査と尋問により分かったのが、彼はテロ組織の刺客、というのは大袈裟だが十中八九、テロ組織の雇われ者だ。」
「彼の狙いは分かっているのですか?」
「勿論だ、彼の所持品を検査したところ、中身が空のusbには特殊なウイルスが入っていた。
彼がコンピューター室にいたことから、恐らく彼が依頼されたのは、ロドスのネットワークの混乱だったと推測される。」
ドクターの説明最中、一人の男が手を上げることで気になっていた質問を通した。
「一応、そのウイルスは除去済みなんだよな?」
「勿論。クロージャによる最終チェックも済ましている上に、泳がすための準備もつい先程完了した。」
「ならそれがどう、テロリストどもの殲滅に繋がるんだ?」
ドクターはモニターにヨルノの身辺調査の結果を大画面に表示する。
「私は彼を調べている最中にこう思った。
何故今からテロを行おうとするものが、特に名も知られていない者をロドスにまで送り込んだのかと。
確実性と効率を求めるなら流石に不自然だ。いくら蜥蜴のしっぽにするにしても、私ならそんな信頼もできない者を雇わない。
だから私はもしかしたら彼になにか特別な繋がりがあるのではないかと考えた。」
文で書かれた詳細のうえに貼り付けられたのは、50代後半の一人の男に武装した数人と金を渡す姿。
「予想通り、ロドスに侵入した男『ヨルノ』には上司のように、見捨てられた街の第3地区を仕切る男が上にいた。
私は調査員にこの男とテロ組織の繋がりがあると確信し、秘密裏に調査を依頼した。」
ドクターはマスクで顔を隠すも、その怒りに満ちた雰囲気を露にする。
その気配を悟った面々に緊張が走った。
「結果、この男は物資をテロ組織に流すなど諸々の面倒ごとを引き受ける変わりに、自分の地区にいるものだけを殲滅から対象外にする契約を結んでいることが判明した。」
そしてその怒りの理由が言葉を聞かずとも全員に届く。
「ようはテロリストどもは、住民を殺戮してこの地を占拠することに決めたんだ。」
ここにいる者の敵も定まった。
「ここまで聞けば気づいているものもいると思うが、奴らは私達も殲滅の対象内に入れている。」
この場にいる全員もやる気と熱意に満たされる。
「、、、他国への救援要請は済んでいる。加えて、私達は最初から最悪を想定して動いてきた。正直に言おう、何一つ問題はない!」
ドクターから発せられる事実が、安心感による自信を彼らに与えてしまう。
「再度、私達の勝利条件を告げる!
住民の避難完了に加え、救援到着までの時間稼ぎ!それか、テロリストどもの掃討のみ!」
この瞬間、ロドスの意志は一つの目的に集約された。
「作戦はすでに各自の端末に送ってある!ここで私が言うことはただ一つ!」
ドクターは胸の前に拳を突き出し、こう告げる。
「勝つぞ!皆!」
「「「おうっ!」」」
ーーーーーー
「というわけで、ヨルノ君、私達はテロリストを掃討することにしたから。」
「何が、というわけで、ですか。内容が物騒すぎるでしょ。」
ロドスに捕まってから三日目の朝、早速、ドクターから貰ったトランシーバーから厄介事の香りが漂ってきた。
「いや、正直にいうとね、これを君に話すか迷ったんだよ?事が事だしね。」
(そりゃそうだ、一応俺はロドスからしたらテロリストの一人だし。言う方が馬鹿だ。)
「けど車あげてる時点で、結構今さらかなって。」
ロドスから俺の街まで約4,5時間。
到底、歩きでは時間内に辿り切れない距離、普通なら車での移動が望ましい。
しかし、ロドスへの侵入の際、運輸のトラックに忍び込んだ俺に車のような便利道具はありはしない。
帰りも盗むか忍び込むかで帰ろうとしていたため、今の俺には帰るための足がなかったのだ。
そこで助け船をだしてくれたのが、個人的取引を交わしたドクターだったのだ。
「それに、情報をあげて君に恩を売るのも悪くないしね。」
「、、、俺がポロッとテロリストに溢すとか考えないんですか?」
「ないない、君のあの街での立場を考えれば、君はテロリストを恨んでいるからね。彼らのために成ることを自分から進んでやるとは思えないさ。」
(有り難いがそれ故に不気味だな。)
多分だがここまで来て取引を不履行にしたくない、という思いもあったのだろう。
目的のためなら多少の犠牲は厭わない、それこそお金で済むのなら。
ドクターらしい考えだが、状況だけ見れば借りになるのは俺。
「それに約束もあるからね。」
俺は車を貰う代わりに、俺の持つ秘密の一つ、報酬の使い道について話す約束を交わしたのだった。
「、、、。」
約束は希望論、正直、それを履行にしたところで契約を結ばなかったドクターのせいに出来る。
しかし、その選択は自分の信条を歪めるなとに成る。
金を優先して飲んだ条件、果たさねばなるまいて。
「ありゃ?黙り?、、、仕方ない、車起爆ボタンを「すこしぐらいは考える時間をくださいよっ!?というかやっぱりそんなものつけてたんですねっ!」冗談冗談www。」
焦りを静めるための深呼吸に、考えを整理するための時間を儲ける。
生命の危機を冗談で流されたが、この声は絶対に冗談じゃない。
信条と命を守るためにも口を開く。
「、、、報酬の使い道、それは外国での子供たちの人権確保です。」
それは法律で生きるドクターにとっては瞬時に理解できない言葉。
「人権確保?」
「、、、そうです、ドクターは外国の居住権にどのくらいのお金が必要か知ってますか?」
「言っても数万が最高金額だと思うけど?」
案の定、帰ってきたのは常識的な回答。
俺はそれに見捨てられた街に蔓延る問題が瞬時に分かるように返答した。
「そうですね、正式な手順を踏めばもっと安くなります。けど、こと俺の住む街の者においては、数百、数千万と桁が倍に成るんです。」
それは人としての生まれた瞬間にあるべきもの。
「俺の住む街はご存知の通り、今では無法地帯です。
国としては成り立っていませんし、治安は最悪の中の最悪、今生まれてくる子供たちはまともな教育を受けれません。
そのせいでこの街で生まれ落ちたものには皆、人権、ましてや、戸籍そのものがまずないんです。」
保証はなく、保険もなく、あるのは弱者は死に方すら選べないという事実のみ。
「最悪な環境で生きているという事実だけでも受け入れがたいのに、理不尽にも発症した感染症。
俺が調べた限りでは、自国の権利を無償で与えられる国はありませんでした。
事実、はした金では入国すら許されません。」
そんな中、無力な子供たちが生き残れるはずがない。
「しかし、国の中には必ずと言っていいほど金で動く輩がいる。逆に言えば、いくら邪道でも、金次第では権利や諸々を買うことが出来るんです。」
だから俺には金が必要だった。今すぐにでも、もて余す程の金が必要だったのだ。
「俺は依頼が終わり次第、教会の皆を強制的にでも連れてここを出ます。」
「、、、。」
「、、、報酬の使い道とドクターが気になっていた、俺が危険を省みなかった理由は、ここまで言えば分かったんじゃないですか?」
俺の長い説明にトランシーバーの向こう側は無音に成る。
恐らく考え事でもしているだろう。
一息おいて、ようやくドクターが返事を寄越す。
「あれだね、以外と君は馬鹿なんだね。」
「、、、あ?」
その言葉に俺は絶句した。
「いや、別にね、君のその選択自体はいいと思うよ。
計画は建てやすいし、実力次第では一番平和的に片付けられる。
けど問題は、君が取った行動だ。」
赤の他人が、俺の生き方に、俺の頑張りに、俺のやり方にイチャモンをつけてきた。
その事実にイラつくのが自分でも分かる。
「君は言った、強制的にでも連れていく、と。
この言葉から察するに、君、その選択を本人にも言わず、自分の中に押さえ込んでいるだろう?」
反論異論は経験した本人だからこそ沢山出てくる。
情報の流出阻止、教会のある地区のまとめ役の男にバレればそれは一貫の終わり、という事実をこいつは知らない。
「君からしたらその行動には意味があるんだろう。
君の実力が、君の経験が、君の自信がそれしかないと判断したのかもしれない。
恩人を守るための、恩人を幸せにするための、恩人を救うための行動が、それが君にとっても最善なのかもしれない。」
10歳近くの子供にそんな地獄を見せてなんに成る?
現実的に借金を持ち地区長に逆らえない運営者の爺さんに伝えてなんができる?
最悪な目に遭っても信仰心だけは捨てないシスターに伝えてなにが起きる?
俺以外に、、、、こんなこと誰ができる?
「けど断言して良い。その問題を一人で抱え込んだ君は、間違いなく、、、愚か者だ。」
説明したのは俺だ、自分の言葉で、自分の経験を語ったのは俺だ。
ドクターの勘違いの原因も、積み上げた苦労を、頑張り続ける辛さを、感じてきた痛みを、ちゃんと伝えなかった俺にある。
「まずは前提を改めよう、君が今、救おうとしている人間は何人かな?」
「、、、8人。」
「その数に対して救おうと動く人数は?」
「、、、1人。」
「それだけ背負って尚、何で自分一人が頑張れば全て上手く行くと思える?」
秘密がある。誰にも言えない、誰にも言ってはいけない秘密がある。
だから、納得させる説明が必然的に出来ない。
感情にまかせてはいけないことだと知っているから、必然的にドクターを納得させる反論ができなくなる。
「あ、あの街で俺だけが、、、っ!1%でもっ!それを達成できる可能性があったっ!それ以外に理由なんて、、、っ!」
「、、、やっぱり君は大馬鹿者だ。」
「な、、、っ!?」
ムカつく、イラつく、何様だ、お前に何が分かる、お前が何を知っている、
沢山の言葉が胸の中をどす黒く渦巻いていく。
「いい?再度言うよ、君が背負っているものは、紛れもない他人の人生だ。
本来、その人自身が背負うべき、ものなんだ。」
「あいつらは子供っ「子供であろうとも!、、、老人であろうとも、女であろうとも、己の人生を決めるんだよ?自分で決断させなくてどうする?」、、、っ。」
なぜ言葉が喉につっかえる?
なぜ想いが口から先に出ない?
トランシーバーを握る力だけがいやに強くなる。
それでもなんとか、喉を震わせる。
「相談してなんとか成る保証は、何処にもないっ!」
「ないよ、でも上手く行かない保証もない。」
こんな問答は言ったもの勝ち。
どちらも正解でどちらも間違っているから、否定したものが主導権を握る。
「大方、只でさえ低い成功率を下げないために、そんなリスクを負いたくない、って言うのが君の考えかな?
分かるよ、情報ってのはあるだけで厄介なものだ。
それをまだ未熟な子供に話せば漏洩する危険は高い。
でも、ならどうして、君が信頼するシスターには話さなかった?」
今はっきりと分かった。
俺がドクターを嫌うのは、ドクターの優秀な情報分析力が俺を苦しめるから。
「し、シスターに話しても「無駄だと思ったから、なんて言葉はやめてくれよ。」、、、っ!?」
ドクターの圧倒的な思考力が俺の価値観を狂わせるから。
「その言葉こそ、君の優秀さが生む傲慢さそのものだ。
現に君は何一つ状況を理解していない。
一人よがりの結果がどうなっているかも、、、。」
ドクターの想いが俺の弱さを顕にするから、、、俺はドクターが嫌いなんだ。
「君が慕うシスターは優しい人だ。その優しさからあの街にいる多くの人々から慕われているのを私は知っている。
子供たちを完璧に危険から遠ざけるほどの視野の広さだってあるのは君も保証できるんじゃないかな?」
俺は頷くしかない。事実しか言わないドクターの言葉を肯定する他ない。
「だったら私は、もし私が君の立場なら、シスターには安全な避難経路や逃走資金の確保、子供たちの避難訓練を頼む。」
間違いない、ここまで言われたら認めるしかない。
ドクターの案の方が正しいと。
だから、、、だからこそ、、、
「、、、私は君じゃない。君の気持ちは分からない。
君がどう言う想いで日々をすごしたかなんて分からない。
もしかしたら、君は彼らを想う気持ちから「ドクター。」、、、。」
俺はトランシーバーを確かな力で握り締め、確かな声量でこう呟いた。
「黙れ。それ以上は俺も我慢ならないぞ?」
負け惜しみと言うのは分かっている。
「、、、すまない。余計な、お世話だったね、」
それでも感情がそれを言わずにはいられなかった。
「、、、一つ、確認する。お前は、、、俺の敵じゃないんだな?」
負けたからこそ、生存本能が敵を定める。
「前も言ったと思うけど、私たちから害するつもりは全くないよ。」
全てを信じるわけではない。
ただ、抱いた嫌悪感が早くドクターとの関係を断ち切るべく、微かな信頼をもってその言葉を飲み込む。
「この言葉を忘れるなよ。」
俺は脅迫を残し、トランシーバの電源を落とした。
「、、、そう、私達は君を害することはない。
君の大切なものを傷つけることもない。
しかし、それと同時に私達が君を助ける道義もない。」
ドクターはトランシーバをもとあった場所に戻す。
「、、、これが、最後の気づくチャンスだったのに、君は最後まで、信じるべきではない人達を信じてしまったね。」
その表情には同情が浮かぶ。
「願っているよ、君の大切なもののために、君の運がまだ残っていることを。」
読んでいただきありがとうございました。
感想、評価お待ちしております。
(続きを書くモチベーションになります)
尚、次回の投稿は二週間後になりますが、次次回からは一週間になります!
お楽しみに!