ロドスへ侵入!、、、しなきゃよかった 作:アークナイツと東方にドはまり
『情は弱み』
それに気づかされたのは、初めて最愛を失った時のことだった。
俺は過去、自分の中で最愛の人が皆、理不尽に自分の目の前で、自分のせいで死ぬという体験をしたことがある。
なんてことはない、このテラという世界においてはごく当たり前で理不尽な最悪だ。
しかし、そんな当たり前からでも、冷静になれば気づくことがあった。
『この絶望は自業自得だ』
別にこれは守れなかった後悔から来るものじゃない。
守れなかったその事実が消えることはないが、ただ単に観点の話で言えば、この絶望には他の見方があるということだ。
最悪の中、愛した者の死体を抱く中、俺が精査するために条件付けた現実はただ一つ。
俺だけが生き残っていること。
これからなにか分かるのか。
幼く、経験だけはいっちょまえな俺が導きだした答えは…。
『死んだのは本人の弱さのせい』
強ければ死なない。こんなのはごく普通の理論。
第三者からしても元凶は殺した本人にあるのは間違いないが、死においてこの現実は切っても切り離せない事実。
けど俺は最初、それを認めなかった。他者から理由もなく与えられた理不尽な死を、そんなものを正当化するようなそんな客観的思考、それ自体を許せなかった。
でも思いついてしまったのだ。
冷静さだけが残った思考の中で、抱き寄せた最愛を零れ落とした時に、こんな事実があることに気が付いてしまったのだ。
そんな時、俺の心を壊した張本人の言葉を聞いてしまう。
『お前のせいだ、お前がいたから皆が死んだんだぜ?』
まるで呪いだな、そう言い放った彼の言葉は全くもってその通りで、俺に俺の存在が危険であることを決定づける。
何もかもが事実で、何もかもが正しいからこそ、俺の心はこの瞬間、このままでは生きれないと限界を迎えたのだった。
しかし、俺は託された命の持ち主として、生きると言う目的を達成しなければならなかった。
身勝手な想いで死ぬことは許されず、愛した人たちが残した願いである『生きろ』と言う言葉を裏切ることは出来ない立場にいた。
だから気づけた。
心が死なないように少しでも前を向けるよう、俺は考え方を改めたことでこれに気づけたのだ。
『最初から愛さなければよかった』
何と独りよがりな考えか。
『あぁ、そうだ。愛さなければ傷つかない、関わらなければ俺のせいで誰も死なない』
でも生きなければならない現実に直面した俺はこの想いにすがる。
つまり、俺は情を弱点と知ったことで、もう誰とも関わらないことに決めたのだった。
敵を殺して生き延びて、寿命まで待ち独りで死ぬ。
それを初めて最愛を失ってようやく心に誓ったのだった。
しかし、世は思い通りには進まない。
俺が俺でいる限り、この体を求める輩がいる、敵がどれだけ殺しても尽きなかったのだ。
殺して、
殺して、殺して、
殺して、殺して、殺されて、
殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して…
気づけば、名も知らぬ街の教会で、助けられていた。
助けてといった覚えはない。
返せるものはを持っていたわけでもない。
それどころかいるだけで負担にしかならないのに、教会に住む人達は俺を救ってくれた。
汗をかきながら働いて、腹を鳴らしながら食べ物をくれて、俺の秘密を見ても手を握り俺を繋ぎとめる。
今思えば、振り払うことは出来たはずだ。
死力を振り絞り、彼らのもとから立ち去れたはずだ。
なのに俺は、気づたころにはまたも、彼らに絆されてしまっていたのだった。
後悔が押し寄せる。未来の不安が溢れ出す。涙が止まらない。
敵がどれだけいるかもわからないからこそ、彼らが死んでしまう未来があることが、とてつもなく憎らしい。
でも、俺は知っている。
この思いは止められない。この絆は千切れない。こんな俺じゃあ、見捨てるすら叶わない。
だから俺は決めた。腹を決めた。
この人達は何が何でも助けよう。
俺のせいで命が狙われるのだから、命を賭して守り続けよう。
助けてくれたのだから、何を使ってでも彼らに安心と安全を届けよう。
これなら、この覚悟があるなら、俺が結果的に死ぬことも、俺を愛してくれた人達なら許してくれるはずだ。
姉さん達なら優しく迎えてくれるはずだ。
達成したうえで寿命を迎えられたなら・・・
・・・
・・
・
「そろそろか…」
報酬の受け取り時間を知らせる携帯端末に設定されたアラーム。
暗い裏路地に潜んでいた俺はゆっくりと立ち上がる。
すぐ横の路地へ行けば取引の場所。
「毎度、この瞬間は慣れないぁ~」
俺は依頼をやり通したと証明される瞬間を前に心構えを整えていた。
何時もなら最低限の条件を守れたこともあり、依頼者が納得することにこんなに怯えることはなかったのだが、今回だけは事が事。
「大丈夫だといいけど…」
依頼の本命は恐らく対策はされただろうが達成済みと言えど、依頼主の情報を漏らすなと言う条件は守れなかった。
加えて、数日間と言えどロドスにいたことはバレていたはず。
向こうの依頼達成を確かめる術が、ウイルス経由でのロドスでのハッキングしかないのは分かっているものの、やはり失敗はバレてても仕方ない事実。
ゴリ押しと運でどうにか報酬を受け取ろうと画策しているからこそ、いつもより不安は3倍増しとなっていた。
「はぁ~、これも全てドクターが変なこと言わなければ」
抑えても抑えきれない不安の矛先は、自然に際ほどまで俺に説教垂れたドクターへ、俺の人生観を馬鹿にしたドクターへと向かう、
「…こんな嫌な予感は初めてだ」
頭のなかで整理されるのはドクターの数々の言葉、
それらは全ては間違っておらず、そして俺の予想していた成功率を正確な数字へと下げる効果を持っていた。
思考が最悪な未来を予想して止まない。
まるで早送りで何度もリピートしている映画を見せられてるようだ。
だが、ここで弱気になっては全てが無駄になる。
「いや、言い訳だな、最初から想定は出来てた。だからちゃんと準備もしたんだ」
いざとなったときに備えて教会の皆には武器を渡して、誰も知りえない逃走経路を教えている。
ドクターは知らないだけで、打てる対策はちゃんと打っているのだ。
だからこの脳裏に焼き付いた不安は、ドクターの不用意な発言によるもの。
俺がそう察したものではないと結論付ける。
「…大丈夫」
そう結論付けて、確かな握りこぶしを作る。
「お前ならやれる、やり通せる」
それは無力だった過去に押しつぶされそうな勇気を奮い立たせるための意思表示。
「あの時とは違うんだ、もうお前は強くなった」
声に出すことで確かなものにした俺は、路地から何人かの大柄な男の足音がしたのを捉える。
「便利屋!出てこい!いるのはわかってる!」
どうやらもう、グダグダと考えてる暇はないようだ。
「…行こう。」
重たい脚を動かし、明るいほうへと向かう。
路地へ抜ける前に顔を覗かせて、一応取引相手を確認する。
(さすがに武装してるか)
ガラの悪そうな男を筆頭にした5人の武装集団。
肩には全員がテロリスト特有の羽の生えた髑髏の入れ墨をしており、取引相手であることが確認できた。
(…多分、あいつら手駒だよな?)
そして小物感がする様相と取引成立時の偉そうな面々がいないことから代理が立てられていることを知る。
(大金の受け渡しに切り捨てられる駒を使うだろうか?戦争の前に顔を出すのを嫌がったか?)
どことなく妙な感覚を覚えた俺は、取引愛店も心の内を探る。
未確定で良い、あらゆる可能性を事前に想定しろ、そう思い資格から得られる外部情報をもとに分析しようとした瞬間、リーダと思われる大柄な男と目が合った。
「安心しろよ、金はちゃんと持ってきた」
筋肉が隆起した片手でアタッシュケースを軽々しく抱える男は挑発するような笑みを浮かべる。
ドクターとは違いただ純粋に悪意しかない笑み。
(こっちを侮っている…?)
まぁ、どちらにしろ雇ってもらっている側なのだから多少の礼節はわきまえなければならないだろう。
「…取引の際にいた人は?貴方方の顔に覚えはないんですが?」
「上の命令で俺たちが来たんだよ、今は無駄な時間を浪費している暇はないらしくてな」
「無駄…?」
だが、男は俺に対して嫌に喧嘩腰な態度を取ってくる。
「なんだ?自覚ないのか?いくら期限内とはいえ、 まさか3日も経ってようやくロドスから出てくるような仕事の遅い奴を待つのなんて無駄だろ?」
何でそんなに小物感満載の様子を振り撒くのだろうか?その理由は次の男の言葉ですぐ理解した。
「俺だったらもっと早く終わらせてるぜ?」
男達は出来ることならば、この仕事を自分等で成し遂げたかったのだ。
元々、彼らからした俺のした仕事は、ロドスに恨みを持つ彼ら自身がすべきこと。
しかし、今までの負け続きな実績と、手も足も出なかった経験からだろう。
男達の上に当たる人は、実績による確実性と万が一の失敗対策で、その仕事を俺に依頼した。
「まぁ、殺しの依頼だけは退ける甘ちゃんには無理な話なだろうがな」
ようは、逆恨みと言うわけだ。
「そうですね、でしたら次からはご自身でやってください。もう会うことはないでしょうが」
下らないと一蹴りして相手をわざと苛立たせても言い。
しかし、相手は暴力を厭わない組織、それで戦闘が起こり、報酬がお釈迦になったら本末転倒。
とは言っても、このままそうですねと認めるのも癪に触る。
よって俺は、適当に自身のプライドも守り、相手の図星を付く肯定で返した。
「…チっ、まぁいい、早速例のものを渡せ」
見せつけるように舌打ちをした男はとあるものを要求する。
「…」
俺はそれに答えるように腰から、ロドスのコンピューターにウイルスを侵入させるため使用した、携帯用タブレットを取り出した。
そして男の前へと差し出す。
男は俺が素直に要望に答えたのが面白かったのか、頬を引き上げタブレットを取ろうとするので…
「まだ駄目です」
持ち上げることでそれを阻止した。
すると男の顔がイラついたように歪み、流石の戦闘のプロの動きで、俺の頭に銃を突きつけた。
「…俺達に喧嘩を売る気か?」
なぜこんなのが、彼らにとって大事な交渉材料に成るのか。
これは『なぜテロ組織が戦争前に不用意に相対して報酬を渡さなければならなくなったのか』に繋がってくるのだが、それらは俺の本依頼とは別に受けた副次依頼に由来する。
その内容がロドスのネットワークセキュリティの解析データの収集。
遠隔から解析対策が万能なロドスに対して、現地に忍び込む俺でしか出来ない仕事であり、ロドスに対して恨みのある彼らからは喉から手が延び出るほど欲しい代物なのである。
「俺は高額な報酬を受け取る代わりに、この依頼を受けました。
貴方ですら頼まれなかった、一歩間違えれば死んでしまうような難しい依頼を、です」
ならば、それを簡単に手放す道理はない。
「俺は最初、この依頼を引き受けるきはありませんでした。
だって取引相手は武力ですべてを握り潰す野蛮な組織。
その上言葉一つ間違えれば、明日には理不尽に殺されてるかもしれず、報酬を払って貰える確証すらない。
俺の判断は客観的にみれば特に不思議なものじゃないでしょう。
それでも俺は、最終的には貴方方に信用を置きました」
特にこれで新たななにかを得るわけではないが、使いようによっては報酬が受け取れる確実性を上げられる。
「なぜかわかりますか?」
危険性の線引きは経験からの感覚でしかないが、俺は確率を上げるのに集中する、
「それは貴方方の組織のトップに立つものが、面と向かって交渉をしてきたからです。
真剣に話し合いの場を設け、武力で訴えるのではなく対等に接してきたからこそ、俺も紳士的にそれに応じたんです。だからこそ、俺は信用してこの場に来ました」
万が一の最悪が起こる確率は減らしておいて損はない。
俺は舐められないためにも少しばかり殺気を滲ませた。
「なのに結果はどうですか?蓋を開けてみれば感謝はまだしも誠意もない、極めつけは見たこともない相手が自分たちが受け取ると証拠もなしにほざく」
「回りくどいな…何が言いたい?」
俺は男の要望通りに直接的に想いをぶつける。
「これが欲しければ先に報酬を寄越せ、それが条件だ」
男のこめかみに力が入るのが見えた。
そして、再度俺に警告するように銃の先端を俺の頭へとねじ込む。
「そんなの、吞めるわけがないだろ」
…まぁ、それもそうだろう、この男は見た限りこの集団のリーダー。実質、上から命令された張本人ともいえる。
そんな男がたかが便利屋として働くだけの男に引き下がったとあればそれは恥。
暴力を好き勝手利用する者だからこそ、部下の手前、舐められるのだけはプライドが許さないのだろう。
それにこの条件を飲むということは、組織の大金を持ち逃げされる可能性を妥協するということ。
リーダーとしても、組織としても、この条件は男にとっては呑めるものではなかった。
「「…」」
しかし、俺だって引けない。怒らせすぎたら武力行使に出られる可能性があるが、俺が吹っ掛けたからには簡単には引き下がれない。
「状況はわかってるよな?」
それは男も理解してか、苛ついている様子をあえて隠さず俺に警告する。
こうなれば、もう俺に選択肢はない。
弱いところを見せれば敗けの世界、俺は虚勢でも堂々と見栄を張った。
「えぇ、ですが俺にも仕事にはプライドがあります。
苦労したらした分、タダ働きは絶対に許せないたちでしてね、もしそうなった場合、相手の利益は全て消去、そして一龍門弊でも多くの損害を死んでも出すことで報復としています。」
俺は危ない橋をわたっていると言う自覚を持ったまま、堂々と言い放った。
「数穴開ければ俺が死ぬと思ったら、大間違いだ。」
お互いに平行線、どちらかが妥協しなければ事は進まない。
しかし互いに譲れぬものがあり、妥協なんて許されない。
「「…」」
睨み合いが続く。沈黙のなか、何時でも動けるように、何時でも対処出来るように構えを続ける。
先に動きを見せたのは男の方だった。
「、、、武器を下ろせ」
男は銃を構えようとした仲間を一睨みで止め、持っている武器を手放すよう命令した。
そのお仲間さんは驚いた顔をしながらも地面に武器を置き実質的に無力になる。
そして男から金が入っているであろうキャリーバッグを受けとり、一人で俺の隣へと移動した。
「渡せ、今なら許してやる」
…なるほど、考えたな。ここだったら何があっても俺が最速で報酬を手に入れられて、何があっても彼らはその武力を行使できる。
恐らくこれが男にとっての最大限の妥協、
そしてこれ以上は譲渡出来ないと言う意味。
「…」
俺は警戒しながらも男にタブレットを差し出した。
「調べろ」
男は仲間に中身を調べさせる。
俺を視線から外さないあたり、ただの阿保ではないようだ。
これは戦闘を踏まなかった判断は正しかったようだ。
「隊長、データ確認しました、ウイルスの操作痕も確認済みです」
「偽造の可能性は?」
「復元の跡がありましたが、他におかしなところはなかったです」
男は俺を一瞥し、仲間からタブレットを受け取る。
銃を脇に挟み、中身を捜査しているところを見ると、恐らく最終確認をしているのだろう。
十数秒、息を呑み男の一挙手一投足に注意していると、男は面白そうに笑い、タブレットを再度仲間へと渡した。
「取り合えず、ご苦労、とだけは言っておこう。おい」
男が俺の隣にいる仲間へと合図を送る。
するとその仲間は手にあるキャリーバックを開く。
「…」
中にあるのは大量の札束、あまりの圧に唾液が喉をつっかえる。
しかし俺の同様をよそに、男の仲間がキャリーバッグを閉じて手持ち部分を向けてくる。
(よし!この金があれば…っ!)
俺は警戒もなく、そのバックに手を伸ばした。
「ガ…ッ!?」
それが悪手だったのにも関わらず。
バックに手が触れた瞬間、全身に電気が走った。
一瞬でも神経に錯覚として残る強大な痛み。
脳は電気に起因した痛みなどの瞬間的情報量を整理すべく、数秒間身体への命令を取り止める。
「そして、さようならだ、便利屋」
身体の硬直に逆らえない俺は、銃を向けられても逃げられない。
男の悪意ある笑みだけが視界を埋め付くし、聞きたくもない男の不快な声だけが耳を埋め尽くす。
「安心しろ、」
感情が混濁する海のように渦巻いていく。
何がなにかわからず、現実が現実なことだけがはっきりする。
だからこそ、聞き逃さなかった。
「寂しくないよう、ちゃんと全部送ってやる」
全部、その言葉が何を意味するのか。
全部、その言葉が何を示すのか。
全部送ってやる、それがどんな結果を産み出すのか。
そんなの考えずとも、聞いただけで全て理解できた。
だからこそ、意味がわからなかった。
だからこそ、余計に混乱した。
だからこそ、思考は停止した。
「…は?」
だからこそ、俺の頭は撃ち抜かれたのだった。
評価、感想、誤字報告、お願いいたします。
次回か、次々回辺りには戦闘シーンを入れる予定です。
お楽しみを