そこで開催されるメインイベントの一つ「G29特盛 トレセン学園食堂記念」
この一大決戦に、一人の葦毛のウマ娘が挑む...!
(この作品は 雅媛 様{https://syosetu.org/user/349081/}の主催された「第二回短編合作合同 聖蹄祭」に提出させていただいた小説と同一のものです。)
天高くウマ娘肥ゆる秋、葦毛のウマ娘・オグリキャップとそのトレーナー・タマモクロスはトレセン学園の食堂のど真ん中に設けられた特設ステージの袖でその時を待っていた。
「オグリ、今どんな気分や?」
「これ以上ないくらいワクワクしてるぞ、タマ」
「そら何よりや。行くでオグリ!」
「ああ、行こう!」
二人の進む先にあるもの、それは...!
「さあやってまいりました!今年の聖蹄祭メインイベントの一つ、『G29特盛 トレセン学園食堂記念』!出走するのはこの娘、トレセン学園が誇る大食いウマ娘、オグリキャップだぁぁぁぁあ!」
食堂を埋めつくす観客と彼らの割れんばかりの歓声、そして直径4メートルの巨大テーブル。ここが彼女らの決戦の舞台である。
「オグリキャップ自ら理事長に直談判して誕生したと噂のこのイベント、そのオグリキャップと相対するは、トレセン学園の食堂を担う調理師の中でも選りすぐりの10人!」
実況のセリフと共に奥から現れたのは、オグリキャップをはじめとする大食いウマ娘たちと毎日のように激戦を繰り広げている
「なんやなんや、向こうさんもえらいメンツ出してくるやんけ。曜日に一人ずつのベテランを全員引っ張り出して来とる」
「タマ、あそこにいるのはクリークじゃないか?」
「ほんまや。なんでクリークがおるんや?」
「今日はレースじゃなくて、
「ああ。クリークの作る料理、楽しみだ」
いつもはターフの上でオグリや他のウマ娘と白熱した勝負を見せるスーパークリークだが、噂を聞きつけて飛び入り参戦となったらしい。そして、
「勝負は時間無制限!どちらかがギブアップを宣言するまで終わらないサドンデス形式で行われます!果たして勝利を手にするのはどちらか!対決スタートです!」
実況の合図とともに一斉に動き出す食堂陣営。選りすぐりの名は伊達ではなく、数分もたたないうちに大量の料理がオグリの前へ運ばれてくる。普通であれば何十人前になるだろうそれらを前にし、オグリは
「これ全部食べてもいいのか...理事長には感謝だな」
目を輝かせていた。
「では、いただきます」
「ッ!?」
オグリキャップが手を合わせ箸を手に取った瞬間、目の前の料理が一気に半分ほど減っていた。
瞬間、観客と食堂陣営に衝撃が走る。普段のオグリの食べっぷりを知らない観客はもちろん、それを知り尽くしているはずの食堂陣営までもが戦慄する速度。
「今日のオグリは想定してたより数倍速いぞ!どうなってる!?」
「おそらく今日のオグリちゃんはドンドン速くなると思います。出し惜しみは無しでいかないと」
「そうみたいだね。みんな!どんどんペース上げてくよ!」
リーダーの掛け声でペースを上げていく食堂陣営。しかしその様子を見てもタマモはオグリの勝利を信じて疑わない。
「(食堂陣営やクリークはお気の毒やな。あーなったオグリはもう止められへんで)」
タマモの予想通り、オグリの食べるペースはとどまるところを知らない。
1ポンドのステーキを一口で平らげ、巨大などんぶりに並々と盛られたラーメンは数秒で飲み干すように腹の中へ。クリークの作った50人前はあろうかという特製カレーも数分後にはすっからかん。その後も親子丼、カツ丼、ハンバーガー、ローストビーフ(塊)、そば、うどん、おでん、うな重、グラタン、肉まん、チャーハン、バケツプリン、ホールケーキなどありとあらゆる食べ物がテーブルに並べられては(いくつかは物理的に並べられなかったが)オグリの胃の中へ消えていった。そして、
「あーっと!ここで食堂陣営から白旗が上がった!オグリキャップの勝利!オグリキャップ、最後まで見事に逃げ切りました!!!」
勝負はオグリキャップの勝利で幕を閉じたのだった。
「オグリ、お疲れさん」
「ありがとう、タマ。どれもとてもおいしかったぞ」
「それはウチに言う言葉ちゃうやろ。あっち行って言ってやり」
「そうだったな。行ってくる」
タマモに促されオグリは厨房へと向かった。
「まあ、あんだけ幸せそうな顔で食べるんや。言葉にせずとも向こうさんわかってると思うけどな」
そう、あれだけの量の料理をすさまじい速度で食べながら、オグリはとても幸せそうな顔で終始食べ続けていたのである。当然厨房の食堂陣営にもその様子は見えており、その後のリーダーのインタビューによれば「負けたのに負けた気がしなかった」とのこと。
「レースでも大食いでも、勝負でオグリが負けるわけあらへん。だって、ウチのオグリは、」
スタミナSSSやからな。