ウマ娘プリティダービー ~月毛のウマ娘~    作:蒙駄目猫

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♯30.悪意と善意

『第4コーナーのカーブから直線に入ってブロッサムツイート、ラストスパートに入りました! アイネスフウジンを振り切れるか!』

 阪神レース場にて開催されている朝日杯フューチュリティステークスも、残すところ僅か400mを切っていた。

(作者注:朝日杯フューチュリティステークスは、2013年まで中山競馬場開催でしたが、作中では現在の開催場準拠となる阪神競馬場開催とさせていただきます。ご理解のほどよろしくお願いします)

 スタート後すぐ先頭をキープしていた12番ブロッサムツイートは、第三コーナー手前からずっと、体半分後ろに付けるアイネスフウジンを振り切れないまま最終直線へ入っていた。

(っ……! 走りづらい!)

 ぴたりと追跡してくるアイネスフウジンに、ブロッサムツイートも負けじと第四コーナー終わりでリードを付けて見せる。後は、誰よりも先に決勝線を通過するだけ、のはずだった。

(……後ろの娘は……よし、まだ距離はある。これなら!)

 アイネスフウジンはちらりと後ろを確認すると、再び前を向く。残る相手はもう、目の前を走るブロッサムツイートただ一人だけだ。

『アイネスフウジン差し切った! アイネスフウジン先頭! ブロッサムツイート二番手を懸命(けんめい)に粘る! 再び差し返すか!』

 アイネスフウジンは、残り150m地点でブロッサムツイートを差し切る。そしてブロッサムツイートを抜き去った勢いが(おとろ)えることはなく、そのまま決勝線を駆け抜けた。

『アイネスフウジンゴールイン! アイネスフウジン、勝ちました! 粘りを見せたブロッサムツイートは二着!』

 アイネスフウジンはブロッサムツイートに二バ身半もの差をつけて完勝してみせた。そしてその勝ちタイムは――

『勝ち時計1分34秒4! あのマルゼンスキーと同じ1分34秒4で駆け抜けましたアイネスフウジン! まさに快挙です!』

 興奮した実況を聞きながら、神谷は体力を使い果たしたアイネスフウジンへと掛け寄った。

「アイネスフウジン! ()く、良く最後まで……!」

「……あはっ、トレーナー……やったのー……」

 神谷の方へ顔を向けたアイネスフウジンは、満足そうな笑みを浮かべると、そのまま芝の上にへたり込んだ。

「アイネス!?」

 突然の出来事に、神谷は思わずアイネスフウジンを愛称で呼んでしまう。愛称で呼ばれたアイネスフウジンは、笑みをますます深くして喜んで見せた。

「あはっ……そう呼んでくれた方が、壁がなくなった気がして嬉しいの……。ヴァイスも、今後、他に担当する娘もそう呼んであげて欲しいな……その方がみんな喜ぶと思うよ?」

「む……う」

 アイネスフウジンの言葉に俯いた神谷は、二の句が継げずに黙り込む。そんな神谷に「しょうがないなぁ」といった顔をして、アイネスフウジンは再び笑う。

「と、とにかく、一度控え室に戻ろう。……歩けそうか?」

 ()ずかしさを誤魔化(ごまか)すかのように、早口な神谷からの問いかけに対して、アイネスフウジンは自力で立ち上がる。しかし、全力を使い果たした体に力が上手く入らず、そのまま蹈鞴(たたら)を踏んで神谷の肩に撓垂(しなだ)れかかった。

「あ、あれ……?」

「おっ、と……大丈夫か?」

 ふらつくアイネスフウジンの身体をしっかりと受け止めた神谷は、心配そうに彼女を見る。アイネスフウジンはバツが悪そうに(ほほ)をかいて苦笑いをして見せた。

「アハハ……ちょっと休まないとダメみたい。体にあんまり力が入らないかも……」

「……そうみたいだな」

 アイネスフウジンの言葉通り、彼女の体には全く力がなかった。いくら初のGⅠ挑戦で全力を出したとは言え、消耗(しょうもう)があまりにも激しいことを神谷は不思議に思う。

 昨年同じレースを走ったヴァイスシュトルムはレース後、ここまで消耗しているようには見えなかった。

「……いや、考えるのは後にしよう」

 そう口の中で呟いた神谷は、アイネスフウジンの膝裏に腕を入れるとそのまま優しく抱き上げた。

「わわっ……! トレーナーさん、降ろして!」

 突然の浮遊感に、アイネスフウジンは目を白黒させた。神谷の顔は近く、背中と膝裏に回された意外としっかりした腕の感触に、お姫様抱っこをされていると理解したアイネスフウジンは、気恥ずかしさから神谷に降ろすように頼むが、返ってきた答えは「ダメだ」だった。

「今のアイネスフウジンには無理をさせられない」

 そう言って早歩きで控え室へと向かう神谷に、アイネスフウジンは何も言えないまま、いまだに力の入らない体を預ける他なかった。

 

 

『朝日杯フューチュリティステークス アイネスフウジン堂々勝利!』

『アイネスフウジン、GⅠ初挑戦で完勝! 勝ちタイムはあのマルゼンスキーと同じ。来年度クラシック路線の本命に躍り出た!』

『神谷輝征トレーナー、朝日杯勝利! GⅠ勝利数は早くも四つに』

『若手トレーナーの星、神谷輝征トレーナー。昨年惜しくも逃した朝日杯を見事奪取! 早くもGⅠ勝利数を四に』

「すご……、どの新聞もフーとトレーナーさんのことしか書いてないや」

 リハビリテーションセンターを含めて、URAが管理、運営する施設には、新聞(一般誌・スポーツ紙)とトゥインクル・シリーズを専門に扱う雑誌が毎日届けられている。それらは食堂や娯楽室に()えられた新聞ラックに整然と並べられ、施設利用者は好きに読むことができる。

 その新聞ラックを前にして、各紙の一面を飾る見知った顔に、シュプリュレーゲンは圧倒されていた。

 特に勝ちタイムがマルゼンスキーと同時計なのが白熱させているらしく、それに関するコメントが多くを占めていた。

「へぇー……ん? 『アイネスフウジンは筋肉の付き方が甘く、トレーナーの手腕に疑問が残る』……?」

 一社の新聞を手に取り、立ったまま読んでいたシュプリュレーゲンは、気になるコメントに目を留める。シュプリュレーゲンは近くのソファに腰を下ろすと、じっくりとそのコメントが書いてあった記事を読み始めた。

 ――マルゼンスキーと同時計を記録した結果は、確かに素晴らしい。

 しかし、レース後に自力で歩くことも困難になっていた姿を見ると、とても素質が高いと手放しで()めることはできない。むしろ、せっかくの素質を無駄(むだ)にしているようにさえ映った。こんな体たらくを(さら)しているようでは、とてもマルゼンスキーのように大成することはないだろう。

 他の出走ウマ娘に比べると、アイネスフウジンの体つきは一回り程度(おと)って見えていた。パドックで調整不足だと感じたとおり、最後には全力を使い果たして、コース上に倒れ込むというみっともない姿を衆目に晒す始末だ。あの状態でよくGⅠに挑み、勝利したものだとさえ思える。

 今の不完全で、全く足りていない状態で出走させることを決めた神谷トレーナーは、せっかくの才能を無駄にする可能性があったということを肝に(めい)じて、二度と調整不足などといった不甲斐(ふがい)ない結果を出さないで貰いたい。

 ただでさえ、神谷トレーナーはヴァイスシュトルムのケガに気が付くのが遅れ、未来あるウマ娘をダメにしてしまったという前科があるわけだから、なおさらである。

 もちろんこれは、他の陣営、特にGⅠという特別な舞台に(のぞ)む全ての陣営に言えることでもある――。

 辛辣(しんらつ)で、人を見下したような悪意ある文体で書かれてある記事を読み終えて、シュプリュレーゲンは頭に血が上るのを感じた。それと同時に、自分の冷静な部分が記事の内容を一概に、全て否定しきれないことも理解していた。

 素晴らしい結果を勝ち取ったアイネスフウジンと神谷であるが、確かに万全の状態だったとは言い(がた)い。そこは記事内の指摘通りだとシュプリュレーゲンも思う。

 それでは、他のウマ娘たちの仕上がりは万全だったか、と言えばそれも違う。

 アイネスフウジンよりも状態が上だったと記事内で評された、他の出走ウマ娘たち。だが彼女たちにも足らないところや調整不足な部分があることは、トレーナーとして未熟なシュプリュレーゲンの目にも明かだった。言ってしまえば、皆どこかしら足りてない部分のある未熟なものだと見受けられた。

「でも、レース経験も少なく未熟な今の時期は、それでいいと思うけど……」

 そもそも、ある程度経験を積んだウマ娘でさえ、完璧(かんぺき)な状態でレースに臨めることは、ほとんどない。どこかしら足りていないコンディションを、知識や経験で補っているのが実情だ。

 この記事を書いた自称有識者は、ジュニア級のウマ娘、それもまだ四戦目の娘に対して、一体何を求めているのだろう。

 記事内で名前を()げていたように、マルゼンスキーの再来だからこその期待の裏返しだろうか? それにしては、人をバカにしすぎているようにも思えるし、とても今後に期待しているような文章の書き方ではない。

「……あ、トレーナーさんが気に食わないのか」

 アイネスフウジンの仕上がり云々(うんぬん)は、神谷を叩くための都合が良い口実でしかなく、叩ける要素があれば何でも良かったのだろう。

 きっとこのライターは、既にGⅠを三勝しているヴァイスシュトルムのレース後であったとしても、何かしらの穴を見つけてグチグチとした記事を書き上げたに違いない。

 そう考えると妙に納得のいったシュプリュレーゲンは、読み終えた新聞をたたんでソファから立ち上がる。

「だからって、ヴァイスが二度と走れないと決めつけて良いわけじゃないけど」

 耳を絞っていたシュプリュレーゲンは、手にしていた新聞をラックに仕舞い、そのまま温泉の方へと足を向ける。

 ギプスと松葉杖から解放されてからずっと、やる気が(みなぎ)り続けている親友のお目付役、それがシュプリュレーゲンに今任されていることだ。

「……ヴァイスがはしゃいで、温泉で滑ったりしたらトレーナーさんが悲しむからね」

 そう呟いたシュプリュレーゲンは、想像上のヴァイスシュトルムに笑うと、歩調を早めた。その足取りはとても軽く、シュプリュレーゲン自身の喜びをも表すように、彼女自慢の烏羽色(からすばいろ)をした尻尾は高く上がり左右に揺れていた。

 

 

 シュプリュレーゲンが神谷の下でトレーナー見習いとして学び始めてから、早くも一年を迎えようとしている。この短い期間で彼女は、技術と知識を確実に身につけていた。

「ヴァイス、今日はここまでにしよう」

「もう?」

 シュプリュレーゲンの声に、ヴァイスシュトルムは物足りないと言った風な顔をした。

「これ以上はダメ。まだギプスが取れて一ヶ月も()っていないんだから、無理は厳禁」

「……はーい」

 柔らかく微笑(ほほえ)みながらそう告げるシュプリュレーゲンに、ヴァイスシュトルムは渋々といった様子でクールダウンを始める。それを見てからシュプリュレーゲンは、手元のクリップボードに目を落とした。

 流石にまだ、レースに出走して通用するようなタイムではない。しかし、一昨日よりは昨日、昨日よりは今日と、確実にタイムは良くなりつつあった。

「……今の調子なら、ダービー卿チャレンジトロフィーか大阪杯目指せるかも」

 神谷の判断次第にはなるが、復帰レースとしては相応しいのではないだろうか、と考えながら手元のトレーニング計画表に今日一日分の総評を(まと)めていく。そして、神谷への一言提案という形で復帰レースのことまで書き記してから、ペンを走らせる手を止めた。

「何か言ったー?」

 入念に足回りのストレッチを行っていたヴァイスシュトルムは、顔だけをシュプリュレーゲンの方へと向けて問いかける。

 シュプリュレーゲンは彼女に何でもないと手を振り、再び計画表に目を落とす。記入した内容を確認し、問題ないと判断したシュプリュレーゲンがクリップボードのカバーを閉じるのと、ヴァイスシュトルムがストレッチを終えて戻ってくるのは、ほぼ同時だった。

「それで、さっきは何て言ってたの」

「今のところ、順調にリハビリできてるから嬉しいなって」

「ふうん……?」

 シュプリュレーゲンの発言に、(いぶか)しむように首を(かし)げたヴァイスシュトルムだったが、それ以上は何も言わなかった。

 この親友が口を(つぐ)むときは決まって、まだ時期ではないだとか、ヴァイスシュトルムが気負わないようにするためだとか、彼女の中で明確に「話さない理由」があるときだった。

 そのことを幼い頃から良く知っているヴァイスシュトルムは、これ以上いくら彼女に聞いても無駄だと理解していた。

(……ま、必要ならその内教えてくれるだろうし、今は良いや)

 ヴァイスシュトルムがあっさりと引いたことに驚くでもなく、シュプリュレーゲンは無意識に口角を上げる。ヴァイスシュトルムは昔から、こちらから一線を引いた部分に踏み込んでこようとはしなかった。

 ヴァイスシュトルムの今も変わらない態度に、シュプリュレーゲンは嬉しそうに、部屋へと戻る彼女の後を追って歩き始めたのだった。

 

 

 すっかり辺りが暗くなり、ウマ娘達の声がほとんど聞こえなくなったトレセン学園では、トレーナー室の明かりも一つ、また一つと消えていく。そして、夜間練習のためにコースを煌々と照らしていた投光器の電源も落とされる時間になっていた。それにもかかわらず、とあるトレーナー室の窓は明々と点っていた。

 昼間の喧騒も、賑やかさもなりを潜め、静寂(せいじゃく)に包まれたトレーナー室で一人パソコンに向かっていた神谷は、目の疲れを感じてようやく画面から視線を外した。目頭を軽く揉んでから窓の外に目をやった神谷は、驚いたように目を瞬かせる。神谷の体感ではまだ十七時頃だったが、どう考えても夕方という時間ではなかった。

「あー……どれだけ集中していたんだ」

 自分に(あき)れたように呟いて時計を確認すれば、もう顔なじみとなった警備員が巡回を始める時刻だった。

 あと数分もすれば警備員が扉をノックして、お決まりとなった挨拶(あいさつ)を交わして静かになる。神谷がそんなことを考えているとタイミング良くトレーナー室の扉が控えめにノックされた。

「はい」

 返事をした物の、普段よりも控えめで丁寧なノックに神谷は(いぶか)しんだ。いつもの警備員ではないのだろうかと思いながらも、神谷は帰り支度(じたく)をしない。そうしていると聞き慣れた「失礼します」という声と同時に扉が静かに開いた。

「……」

 現れた声の主に、神谷は何も言えずに固まることしかできない。ニコニコとした人好きのする笑顔に、緑色のスーツと(そろ)いの帽子という出で立ちの、トレセン学園理事長の美人秘書――駿川たづなその人――がそこには立っていた。

「神谷トレーナーさん。私の言いたいこと、わかりますよね?」

「いや、その……えーっと……」

 たづなは、その満面の笑みを崩さずに、優しく穏やかな声音で神谷へ話しかける。それが神谷にとっては恐怖でしかなかった。たづなが浮かべる笑顔は、まるで般若の面を付けているように神谷には見える。笑顔に押し込められた怒りが透けて見えるようで、神谷は何も言えずにたじろぐしかない。時計の秒針が規則正しく刻む音が、やけに大きく聞こえる中、たづながもう一度、笑顔を崩すことなく口を開いた。

「神谷トレーナーさん?」

 笑顔で首を傾げるたづなが、何も喋ろうとしない神谷に対して一步いっぽ近付いてくる。これが普段ならば、たづなの仕草にどぎまぎしていたことだろう。しかし、今の神谷にとっては別の意味で落ち着かないものだった。

「その、ですね……」

 たづなの顔を見ることができず、床へと目を落とした神谷の耳に、たづなが小さく息を()いた音だけが聞こえた。

「最近、ちゃんと寮にお帰りになっていませんよね?」

 何を言うべきかほんの一瞬迷ったたづなは、率直に切り込むことにした。この数日、どこよりも遅くまで明かりが点いている部屋の主は、誰よりも早く出勤して業務をこなしている。と、ほんの二週間ほど前までたづなもそう信じていた。

 しかし、そうではないと気が付いたのは、ほんの偶然の出来事だった。たまさか日も昇らぬ早朝に、学園へと出勤してきたたづなが、何気なくトレーナー室の方へ目を向けた際に、偶然明かりが()いた部屋があり、その部屋がたまたま神谷のトレーナー室だった、というだけの話だ。

 ただそれだけのことが、何となく気にかかったたづなが、それからほとんど毎日のように確認し、確認した日全てで神谷が出勤して来ていないのに、彼のトレーナー室の明かりが点いたという、ただそれだけの話である。

 忙しい時期に三、四日トレーナーが帰宅しない程度ならば、たづなも良くあることだと流したかもしれないが、二週間以上もそれが続けば心配にもなる。更に言うならば、神谷は泊まり勤務の申請を全く出していなかった。それはつまり、申請しても却下されると理解していたことに他ならない。

 今年一年で重賞四勝、しかもその全てがGⅠという優秀な成績を上げているトレーナーが、そのような無茶をしているという事実は、理事長秘書としても、駿川たづな個人としても、とても看過できるような状況ではなかった。

「神谷トレーナーさん。担当するウマ娘たちを大切にするのは良いことですが、ご自身のことも同じくらい大切にして下さいね?」

 たづなの言葉に、(うつむ)いていた神谷は恐る恐るといった風に顔を上げ、たづなを見る。まるで(しか)られている子供のような仕草に、たづなは仕方ないとばかりに一息入れると、神谷の腕を取ってトレーナー室を出る。

 突然たづなに腕を取られた神谷は、目を白黒させて抵抗しようとしたものの、とても神谷の力では(かな)いそうもなかった。

「た、たづなさん?」

「聞き分けの悪い神谷トレーナーさんには、上司から晩ご飯を(おご)られる強制パワハラの刑です♪」

 楽しげにそう言ったたづなは、力強くぐいぐいと神谷を引っ張り上げると、そのまま神谷の腕に自身の腕を絡ませてがっしりと捕まえる。

 神谷は、あまりにも距離が近いたづなにどぎまぎしながら、たづなのそれはパワハラとは言わないだとか、たづなさんに奢らせるわけにはだとか、様々なことが脳裡(のうり)に浮かんでは消えていく。しかし、それよりも神谷が気になったことは、成人男性一人を軽々と抱き上げてしまえる力強さについてだった。たづなの細腕に、そのようなしっかりとした筋肉が付いているわけではないことも、現在進行形で神谷は確認している。そうしてふと思いついた言葉が、神谷の口をついて出ていた。

「……たづなさんって、実はウマ娘だったりします?」

「ふふっ、ナイショです♪」

 満面の笑みで、至極(しごく)楽しそうなたづなにそう言われてしまっては、神谷はそれ以上何も言えなくなっていた。そうして神谷は、たづなに腕を取られたまま、大人しく彼女行きつけのラーメン屋に連行されたのだった。




えー、失踪してませんでした。
大変長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
今年一年体調を崩してまともに執筆できてませんでした(言い訳)。
来年はこんなに長く投稿間隔が空かないようにしたいなと思っていますので、気長にお待ちいただければ幸いです。
それではまた、次回お楽しみに。
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