ミッションタイマー物語   作:ゆっくり霊沙

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デジタルとの出会い

 エアエンジェルがチームリギルに

 

 メジロファンタジーがチームスピカに入った

 

 リギルの選抜レースに参加していた内の半数が何処かしらのスカウトの目に止まりチームに所属していった

 

 例年より早いペースだ

 

 それだけ今年のウマ娘が注目されていることを意味する

 

 私も必死に頑張り、アピールするのだが誰も拾ってくれない

 

 逆アプローチをしても梨の礫……返答なし

 

 片耳の事を耳飾りで隠し、骸骨の様な顔を化粧で隠そうと努力もした

 

 模擬レース、選抜レースが有れば毎回の様に出場し続けた

 

 そうこうしているうちに5月が終わり、6月になっていた

 

 チームが決まっていないのはクラスで私を含めて3人……他クラスを含めても20人いくかいかないかくらいだ

 

 売れ残り……その言葉が頭に過る

 

 売れ残りは悲惨だ

 

 新人トレーナーの研修用として扱われ、ろくにレースに出れないで学園を去っていく

 

 私はレースに出たくてここに来たんじゃない

 

 認められたくて来たんだ

 

 しかし現実は残酷だ

 

 結局私は新人トレーナーが集まる模擬レースの招待状が届くのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 模擬レースは左回り芝2000とダート1600、芝1400の3レースのどれかに参加しなければならない

 

 私は模擬レースや選抜レースでまだ2000を走ったことが無かった

 

 しかし長距離ならもしかしたらがあるかと思い、作戦も何時もの逃げから追い込みにシフトしてなるべく新人でもいい人に当たれば良いなぁと思いながら模擬レースに出場する

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ今日もウマ娘ちゃん達に振られちゃったな~。ウマ娘のトレーナーは走らないって迷信信じちゃってる子が多いこと多いこと……」

 

 わたしことアグネスデジタル……今はバ名じゃない本名だと黒井白子はウマ娘のスカウトに上手くいっていなかった

 

 新人研修の成績ではダントツでトップだったが、新人で経験が無い、現役の時のトレーナーは定年で引退していてコネも無い、それにわたし自身がウマ娘だから迷信を信じてる子からいい返事が貰えなかった

 

 もう今年はめぼしいのが取られて駄目かなぁって時に新人研修の話が出てきた

 

 新人で担当ウマ娘が決まっていない人が後学のためにウマ娘をスカウトする制度で俗に言う売れ残りのウマ娘ちゃん達を救う最後のセーフティネットだ

 

 ただやっぱり売れ残りっていうことあってこの新人研修から大成したウマ娘ちゃんは日本国外のアメリカでサンデーサイレンスさん以外聞いたことが無い

 

 つまり日本で大成したウマ娘ちゃんはまだ居ない

 

 それだ質が低いって事

 

「でもでももしかしたらもしかするかもしれないし! そんな子を一流にするのが今のわたしの仕事……あぁ、どんなウマ娘ちゃんが走ってくれるのかな?」

 

 できれば素直な子か努力を惜しまない子が良いなぁと思いながら模擬レース当日を迎える

 

「へー、ほー、ふーん」

 

「よおアグネスデジタルトレーナーじゃん。お前もここに居るってことは」

 

「柴田トレーナーじゃん。そそ、わたしも振られちゃったウマ娘ちゃん達に」

 

「迷信は根強いからなぁ」

 

「でもでももしかしたらがあるかもしれかいでしょ良いの居ないかなぁ?」

 

「あの子はどうだ? ダートに出るモコモコタッグは?」

 

「地方ならなんとか1勝できるんじゃないかなぁってのがわたしの分析かな」

 

「見ただけである程度予測できる頭脳は本当にチートだな」

 

「私が現役の頃からどれだけウマ娘ちゃんを見てきた事か……タキオンの研究室でデータもいっぱい見てきたし」

 

「経験が違うってか……」

 

「おぉ!?」

 

「ん? どうした?」

 

「いや何でもない」

 

(原石ちゃん見っけ!! まさか本当にまだ取られてない子が居るとは……)

 

 はばっと出場者名簿を捲る

 

(芝2000に出場のミッションタイマーか……柔軟性を上げて、適切にトレーニングすれば重賞勝てる肉質はしてるね……どちらかというと2400以上のステイヤーって感じかな?)

 

(模擬レースや選抜レースだと逃げ戦法を得意としているか……声かけとこっと)

 

 

 

 

 

 

 

「1、2、3、4、5、6、7、8……よし」

 

「もう少し股関節の柔軟をやった方が良いよ」

 

「へ!?」

 

「ふむふむ……独学でトレーニングしてきたにしては中々の肉質で」

 

「ひゃ、ひゃい!? 誰ですかあなた」

 

「これは失敬! デジたんことアグネスデジタルだよ!」

 

「アグネスデジタル……アグネスデジタルってG1 6勝の!?」

 

「そうわたしがデジタルです!」

 

「はわわわ凄い人がどうして此処に」

 

「デジたん今年からトレーナーだからねほら」

 

「と、トレーナーバッチ……本当だ」

 

「たぶんこの面子ならミッションタイマー……あなたなら勝てるよ! そんな気がする」

 

「ほ、本当ですか」

 

「もし良かったらわたしのチームに入ってくれない? レース後に誘われるより今誘った方が印象良いでしょ」

 

「ほ、本当ですか! デジタルさんみたいな実績のある人に育てて貰えるなんて嬉しいです」

 

「まぁとりあえずレースには出てよ。走り方を見て修正するからさ」

 

「は、はい!! 頑張ります」

 

 まさかこんな所にあの有名なデジタルさんが居るなんて……しかもチームに誘っていただいた!! 

 

 本当に? 骸骨みたいな私で良いのかな……

 

 とりあえずレースに集中しよう! 

 

 言われた股関節の柔軟もしっかりして……よし! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デジたんの予想的中」

 

「あの骸骨みたいな子か? 確かミッションタイマーだったか」

 

「唾着けたのわたしだからね柴田トレーナー」

 

「あ、あぁ……本当に取るのか? もっと可愛い子なら沢山居るだろ」

 

「あの子有ったら目がギラギラしてた。凄まじい何かを持っている気がする……だから取るんだ」

 

「そこまで言うか……その子がどんな成長をするか楽しみにしてるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 こうして私はアグネスデジタルトレーナーに引き取られた

 

 ここが私の人生の第一のターニングポイントになったのは言わずもがなである

 

 本当に嬉しかった


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