とある高校生徒「小金井結花」は、ふとしたきっかけでMTG……『マジックザギャザリング』の楽しさに目覚めた。
そんな彼女に待ち受ける、波乱なMTG対戦記。

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これ、2005年5月21日 にかいたやつ。

短編つーか、ダイジェストです。


gatherfriends青春日記

「……我名において命ずる! 汝邪を光に換え、そして汝ら、光を恐れん! ……《八ツ尾半》!」

 

 結花が唱える呪文にマナが呼応し場に《八ツ尾半》が出た。

 

「……ターン終了……よ」

「はっ!最後の悪あがきか? 小金井結花さんよ!」

 

 町田速人が結花を挑発しているのが、周囲のギャラリーも理解できた。あからさまに相手の神経を逆撫でさせる言動をこれだけ簡単に口にできるのだから、これはもう、才能だろう。

 

 小金井結花の土地で立っているのは、島×2、山、森の計4枚、タップ状態ではあるが《極楽鳥》もいた。そして、ライフは既に『3』となっていた。

 

「俺のターン……。ドロー2!!」

 

 対する町田の土地は山×5に《すべてを護るもの、母聖樹》。そして《吠えたける鉱山》が場に出ていた。典型的な『赤単バーン』という奴だ。

 

(……結花さん……ごめんなさい……負けないで……)

 

 ギャラリーの中に、香田晶子がいた。彼女の長い黒髪がかすかに揺れている。会場の熱気なのか、それとも彼女が震えているのか。いずれにせよ、このデュエルで結花が負けることになれば、香田は町田の「彼女」にならなければならないのだ。

 

 同じくこのデュエルを、香田の横で見ていた人物がいた。名前は「関内辰之助」。結花にM:TGを教えた、いわば師匠である。また香田も、彼にM:TGを教わった。

 

「結花は、相手の火力を意識しているな。あの土地の立ち方は、『カウンターを持っている』と相手にプレッシャーをかける方法で、良く使われる。……ブラフ(ハッタリ)でもな」

「……は、はい。でも結花さんのデッキは……」

 

 ハイランダー(一枚差し)だった。結花は多くのデッキを所持しているが、彼女が本気になると、何故かこのハイランダーを良く使う傾向がある。

 

「本当に結花さんはカウンターを引いているでしょうか?」

「……さあな。それに、相手は《母聖樹》がある。これでは……」

 

 彼らのヒソヒソ会話も、下品な高笑いによって中断された。声の主は町田だった。

 

「ひヒヒ……引いたぜ。お前を派手に、劇的に、メタメタにできる呪文をなあ!!」

 

 町田は手札の、今引いてきた《山》をセットした。そして6つの山を全てタップ、さらに《母聖樹》をタップし、マナを集約させた。かなり大きな呪文のようである。

 

「母なる樹よ、我がプレインズウォーカーの生血を吸い上げよ!我命に代え、他を退く力を我が術に授けよ!」

 

「……くそ! やっぱり《母聖樹》を使うか!これじゃ、結花は!」

 

 関内は舌打ちした。打ち消せない火力。残ライフ3。これでは彼女に既に勝ち目はない。

 

「……大地に生まれ流れ行くマナよ……」

 

 さらに町田の詠唱は続く。

 

「……その身を赤く煮えたぎる力に換え、全てを焼き尽くす炎となれ!! ……《インフェルノ》!!」

 

 マナを炎の力に変換し、その炎がさらに大地に流れるマナに呼応。世界に廻るマナを、全て熱に変換さえ、プレインズウォーカーもろとも一瞬で消し炭にする呪文である。まともに受ければ結花は負ける。

 

「ふん!せめてもの慈悲だ。お前さんのクリーチャーたちも一緒に連れて行ってやるよ!」

 

 周囲から見れば結花の負けは決定的だった。しかし結花はまだデュエルを続けた。結花は全ての土地をタップし呪文を唱えた。

 

「時をかけるマナよ!時の揺らぎを補正させ、そして呪法を打ち消さん! 《巻き直し》!」

「……ヴァカか!?てめえは!? 打ち消せるわけね……」

 

 町田はそのとき、目の前の結花と目が合った。彼女の目はまっすぐ町田を見ていた。その目はピュアで、誠実で、そして、完全に町田を『敵』と認識している獣の目だった。初めて町田は恐怖を感じた。

 

 結花の唱えた《巻き直し》は、迫り来る炎の塊を消し去る力を持っていたはずだが、《母聖樹》によって守られた炎は全く勢いを衰えさせす、この戦場に降りかかろうとしていた。

 

 炎によって飲まれた《巻き直し》は、しかし、最後に、プレインズウォーカー結花に大きな希望を残していった。

 

「……『土地を4つ、アンタップ』するわね。指定は……島×2、そして……『平地』!!」

 

 結花の土地……《平地》がアンタップされた。さらに、結花は呪文を唱える体制をとった。

 

「……町田さん、あなたの弱点を、今からお見せします……」

 

《平地》がひとつタップされた。

 

「……白く輝く正義を重んじるマナよ……私に力を貸したまえ……」

 

 純白のマナが結花の右手に集約されているようだった。少なくとも、香田晶子にはそう見えた。

 結花は手札からカードを1枚選択し、それを右手人差し指と中指の間に挟みこんだ。

 

「あなたは強い。けどあなたは自信過剰になりすぎる。だから、デュエル中もそういう態度しか取れないんです。あなたのデュエルは、人を悲しませることしかできない!!」

 

 結花は呪文を詠唱を始めた。

 

「……白きマナ、熱しき光を暖に換え、負の瘴気を希望に換えん……。『嵐にはたわんで耐え、同じやり方で応じよ』!!」

 

 関内は彼女の詠唱の意味を理解した。まだデュエルは始まったばかりであるが、この瞬間、関内は小金井結花の勝利を確信した。

 

「《神聖/Hallow》!!!」

 

 インフェルノの炎が、瞬時に結花の右手のカードに吸い込まれていく。そしてその、岩も溶かしてしまう高熱の塊を、体へ暖として吸収してしまった。

 傷だらけ火傷だらけであった結花の体は、みるみるうちに癒され、火傷なども完治したようである。それどころか、最初の状態より健康になっているようだった。

 

 ……全てが、解決した。

 

 町田は完全に固まっていた。香田晶子も同じく、場の状況を理解していないようであった。それはギャラリーも同じことである。関内はうつむき肩を小刻みに震わせていた。どうやら笑っているようである。

 

「……ええと、いいですか町田さん」

 

 結花の言葉で町田はようやく場を理解した。

 

「……ふ、ふざけるな!! こんなこと、あるわけないだろ!!」

「こういうカードはあるんです。ないわけないじゃないですか」

 

 結花は「ひい……ふう…… ええと、4×6の、24点回復」と、多少お茶らけた感じで、加えられるライフを数えていた。

 

「……ナ……在りえない!在りえない!」

「……『ありえないことが起こる』……それが『M:TG』じゃ、無いんですか?」

 

 結花は先ほど町田に向けたときと同じ目で町田を見ていた。

 が、すぐに柔らかな、微笑みかけているような目になり、彼女はこう続けた。

 

 

 

「でも……。そういうことがあるからこそ、マジックザギャザリングって、楽しいんだと思います。あなたはそう思いませんか?」

 


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