王直属護衛軍が余の胃を殺しにきてる 作:小指の魔術師
これでハンタ小説がもっと増えれば尚いい。
感想や評価でいただくお言葉の数々とても私の自己顕示欲……じゃなくってモチベーションを高めるいい助けになっています。ありがとうございます。ただ退路を塞がれた気分ですが……
拘束したハンターたちを美味しく、頂いたりは勿論しない。人間美味しくない、ノットイート。ただオーラを喰らい強制的に絶状態にする。生かしておけば再び敵対する可能性もある、戦力を削ぐためにも此処で脱落してもらう。いやノヴった以上もうハンター引退も有り得るが。
あと金は貰う。
無一文は不安だからな、前世でもキャッシュは多めに財布に入れておいたものだ。カードや電子で決済する事が多かったから使う機会はあまり無かったが、それでも御守り程度にはなっていた。まして今は状況が状況、普段に増して所持しておきたい。
ハンターライセンスも貰っていきたいが、流石に可哀想だった事とパリストンが発信機を付けていそうで怖かったから置いていく。
殺さずに置く事に難色を示された。プフだけじゃなくて3人全員から。ズルいとは思ったが『余負けない』と威圧して黙らせた。最悪ぶん殴る必要が出て来てしまうから引き下がってくれるのは素直に有難い。
場所が割れたのは確かだ。直ぐにでも街を離脱し次の街に移る。正直あまり歓迎できない状況だが、こうなれば愚痴をこぼしても好転するわけもない。逃げるように去ろう。
「しばらくは森に紛れながら進む」
周辺の地理を把握した。次の街への道は見晴らしのいい草原地帯、そんなところを堂々と歩けば狙ってくださいと言っているようなもの。ギリギリまで森の中を進み追手に時間を使わせる。相手はハンターだ、撒けると自信を持って言えない。
接敵すればその都度拘束しオーラを喰らう。厄介な相手なら全力で退避する。本気で跳躍すれば三次元的な逃走も可能、距離も稼げる。星付きのハンターがポンポンと出てくるわけもないが、想定はしておく。
パリストンが私を正しく認識したのならどうするか、少なくともハンター数人を相手して廃人を量産した個体として注目されているだろう。あの男なら利用してくるか、新しい遊び相手としてじゃれてくるか。更に蟻の王だと知られたらもう予想も出来ない。
とにかくパリストンと会うなんて選択肢はない。出来れば一生関わりを持ちたくない。ジンに遊んでもらえ。
「王様」
「余も感知した。だが対応が迅速に過ぎる」
虫の知らせが敵の存在を伝える。
「此方を監視出来る術者がいるのかもしれません」
「なるほど。ならば試してみるか」
脚に力を込める。更に《凝》により脚力を強化。
「ついてまいれ」
足元から聞こえた破裂音、瞬間視界は切り替わり、只人の身なら圧し折れてしまうかもしれない程の風圧をオーラで掻き分ける。そして気付けば空の上の風景を見ていた。
この身なら一瞬で富士山を登頂出来そうだ。雲海も美しい。しばらく景色に見惚れていれば護衛軍があとを追ってきた。翼のないピトーはユピーの肩に乗って来た。
尾をユピーの足に絡ませ滞空を指示する。
「これなら肉眼で視認できない。遠視する術があろうと雲が隠れ蓑となる」
人の目なら振り切れる。能力なら範囲外まで脱出、仮に距離が関係ない能力による監視だとしてもこの行為は無意味じゃない。少なくとも雲の向こうに攻撃する手段がないこと、追ってくる手段がないことが分かるわけで、つまりは空または雲の上は私たちだけに許されたセーフゾーンという事になる。
何処よりも遠く、何処よりも近いセーフゾーン。
キメラアント編に出てくるメンバーでもここまで来れるのは極限状態のシュートかネテロ、ゼノくらいのものだろう。それ以外は自力では来れないし攻撃も届かない。いやゴンさんが怪しいが、流石にないと思いたい。
ここまで確認出来たなら降りる。着地位置はプフの能力で擬態した分身を複数作り巧妙に隠す。これで追って来れるならそういう事なんだろう。その時は刺客をその都度無力化する。
「どうやらどの分身体にも当たってこない模様」
「王様、《円》での索敵を提案します。真っ直ぐ向かってくる相手なら直ぐにでも特定出来ます」
「《円》の索敵を許可する」
ピトーの円が森を包む。不定形でソナーのように探られるそれはやはり存在も役割も大きい。そしてピトーの瞳は一層の鋭さを放つ。すかさず向いた方向こそ敵が居るのだろう。
「真っ直ぐ向かって来ています」
「そうか、ユピー正面を張れ。プフは上空。ピトーと余は左右より挟む。目的は拘束、故に殺すな」
最後の言葉を強く言い含めておく。そうでもしないとうっかり殺しかねない。流れでカニバるのも御免だ。護衛軍の残虐性を舐めてはいけない。ピトーは脳クチュするし、プフはコムギの暗殺を企てる。救いはユピーくらいだ、と言っても今は人間を蠅程度にしか考えていないが。
刹那の《円》展開、位置を把握し大きく回り込む。タイミングはユピーが接敵する際に木を薙ぎ倒すから分かりやすい。きっとそろそろ派手に音が……音が、ない?
《円》を再度展開する。どうやらその場に留まってる。ユピーは既に突入してる。けれど戦闘している動きがない。
意を決して飛び込むと、死屍累々の戦場跡があった。いや死人は居ないようだが、倒れ伏していたり膝を着いていたりだ。気絶している者はまだいい、起きている人の方が見てられない。ゲリラ豪雨にでも降られたかのような大量の汗に現在進行形で行われている嘔吐、中には自分の髪を毟っている者まで。
ホラー映画のロケ現場は此処かと言いたい。だが茶化して反応してくれる人間は此処には居ないようだ。
しかしつい最近も似たような事例を見た。ノヴったハンターたちだが症状は違えど似たようなものだろう。
起きているマシなハンターの顔を持ち上げて顔を合わせる。ガチガチと歯をかき鳴らすばかりで会話は出来そうにない。
「怖がらせ過ぎだにゃユピー」
「いやオレが来た時には既にこんなだった。ひ弱だな人間ってのは」
「この人間たちもまた王のオーラに敗れたのでしょう」
そこまで禍々しいオーラなのか。試しに手のオーラを強めてハンターに押し当てる。どうやら本当に私が原因らしい、痙攣しはじめた。
結果として猟奇的な人体実験の様になってしまった。
「斯様な《発》を作った覚えはない」
天然の念能力者は四大行の修行を修める前に《発》が出来てしまってることがある。ネオン=ノストラードが最たる例だろう。産まれた時、もしくは女王の胎内に居た時から念能力者だっただろう私は天然の念能力者と言えなくはない。
無意識の内に《発》が作られた?
扱い難い能力や制約と誓約があった場合が厄介だ。
そもそも効果がハッキリしない。《発》では無い可能性も捨てきれないか。オーラの総量が高い故の現象、オーラによる彼我の差が起こす現象と言う可能性もある。
技術の範囲で収まれば寧ろ儲けものだと思っておこう。
「これらのオーラを喰らう、集めろ」
「はっ」
人の肉が喰えない代わりにオーラを喰う。正直私としてはこっちの方が扱いやすいと思っているし、下位互換とも思っていないわけだが。何より精神衛生上楽でいい。何故かオーラを喰らっている間明らかにプフが嬉しそうだし、彼の中で王様像と重なるものがあったんだろうか?
オーラを喰らうと言う表現の通り口からでしか吸収が出来ない。このまま戦闘に使おうとすると噛み付き攻撃になってしまうのがネックだが、念弾などオーラ構成されているものなら攻撃性があれど喰らえる。
対象が絶状態になればオーラを全て平らげたことが分かる。喰ったオーラは私に還元され、進化する。
「星付きのハンターは居るか?」
「いえ居ないようです」
「むぅ、なんだか張り合いがないにゃあ。これならあの人形の方がマシ」
ピトーの発言に胃がキリっとした。そしてこれまで私とまともな戦いも出来ない人員を送り続けるパリストンの意思も掴めずこれまたキリキリ。今の私は人間だった私と比べて胃の頑健さも折り紙付きなのだが、ストレス胃痛に打ち勝てないのか。
「む?」
足に違和感がある。特に足首。続いて腹、肩、腕。様々な箇所に違和感が広がる。見るとそこには紫色のロープが巻きついている。そして徐々に視線が下がる。
下には闇色のベールに包まれた空間があり、今は踝まで飲まれている。感覚がある、恐らくワープホールのような念能力かノヴのような念空間を利用したものか。試しに引きちぎってみる。
「王!?」
「騒ぐな、どうやら対象に取れるのは一人までのようだな」
引きちぎろうとすれば素直に引きちぎれた。いや正しくは弾け飛んだ。何かに反応したかの様に、風船が割れるように乾いた音を鳴らしながら。試しにオーラを昂らせると全身のロープは呆気なく全て弾けた。
そして足元の闇色のベールもスーッと消え失せて行く。いや待て。
何処が端なのかは分からないが閉じゆくベールに手を突っ込む。迂闊だとは思うが永遠に付き纏われる方がリスクが大きい。ことある事に緊縛されてはかなわない。
何か掴んだ。
持ち上げていく、ベールの外まで引きずり出す。恐らくもがく事で抵抗しているが私の膂力の前では赤子の手をひねると同義。
そしてなんということでしょう。ベールから一人のおっさんが出てきた。私が掴んでいたのはその頭だった。すかさず裸絞。
「これで
おっさんは
ライセンスがそう示す以上そうだと受け入れる他ない。だが星付きの印象がコレだとすると相当弱い。依然強者の扱いにしよう。気を抜いてはいけない。
「これは情報源だ。場所を移す」
プフにおっさんを預け、再び上空に飛ぶ。安全地帯でゆっくり話を聞こう。次は鱗粉に頼らず。
「ここ、は?」
「見回して見れば直ぐに分かる」
おっさんは未だ気だるいのか散漫な視界で周りを確認する。そして直ぐに目を見開いた。起きたら雲海が広がっているのだからその反応も無理もない。私も夢の続きを疑う。だが意識がハッキリしたのは僥倖だったな。
「お、オレをどうする気だ? まさかこのまま落とすのか?」
悪魔でも見てしまった声色と顔色で私にそう問い掛ける。そもそも念能力者は上空から落とした程度で死なないと思うが。意識の誘導か何か。まんじゅうこわいみたいな物かもしれない。
おっさんの鼻を摘む。
「余の質問以外で喋るな。次不用意に口を開けば鼻を削ぐ」
おっさんは黙って頷く。本当はそんな事をする気はないが、この見てくれだと説得力があるから有効。
「お前は
「ああ、オレは
まぁ知っていたことではあるが、ショックだ。これじゃあ護衛軍に人間の脅威を理解して貰えない。余りに脆弱過ぎる。頭を抱えている理由を護衛軍含めてこの場では誰も理解できていないだろうな。
やはりネテロしか居ないのか、該当者は。
「パリストンの手の者か?」
「……あぁ、そうだ」
何だ、何か腑に落ちない。
いやそうか、そういう事か。
「雇い主の存在をバラしても良いのか?」
前回は鱗粉を用いてパリストンの存在を聞き出した。だから何も感じなかった。しかし今回は違う。無理矢理催眠で聞き出していない。こういった場合雇い主の存在を易々とバラすとは思えない。例えパリストンが嫌いだろうと一度は抵抗して、情報を守ろうとしたという言い訳を作る。少なくとも私はそう言った予防線を用意する。
「その雇い主に聞かれたら答えろと言われたんだ。敵味方関係なくな。そしてこの事さえ伝えろと言われている」
あぁこれは気持ち悪い。
自分の存在を明かして公的であると言いたいのか、後暗いことは何も無いと。それとも私に対して挑発してるのか。
「どう見るプフ?」
「挑発だと思います。御身の強さはあの街で明らかになった、しかしながらこうして追ってきている。こんな雑兵を用いてまで」
「この者共はメッセンジャーだとでも?」
「敵わないならば手を引けば良かったのです。けれどそれをしなかった。あまつさえ名を知らせてきた、明らかにアピールしてきてる、私はそう思います」
挑発か。パリストンは何を考えている。知恵比べなんて私には荷が重いんだがな。
「余たちを監視する能力者がいるな?」
「居るのは知っている。だが場所は知らないんだ。遠隔で指示を出してる」
明らかに優秀な監視能力、場所を知らせず保護するのは当然か。だがずっと見られるのは困る。動向が常に筒抜けでは何処までもパリストンに追われそうだ。
「連絡手段は?」
「このイヤカフだ。だが一方通行でこちらからは話が通じない」
手隙のピトーに視線を送り取るように指示する。渡されたイヤカフは小さいが大きさにしてはやや重い気がする。ほんの僅かで意識しないと分からないが。
耳に着ける。
「受信方法は?」
「2回タップするだけだ」
ワイヤレスイヤホンの様なものか、言われた通りにタップする。するとザザッとノイズが聞こえた後、軽薄を装った男の声が聞こえた。
継承戦でパリストンとかジンが出張ることがないから全く資料が足りない。すっごい困る。連載再開して(切望)
私の中で王様が人間賛歌を信じ続ける化け物になりつつある。人間だろうお前もっと出来る頑張れみたいな。お前が強過ぎんよ……
最後の男の声は誰なんだろう……