王直属護衛軍が余の胃を殺しにきてる   作:小指の魔術師

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増えないねぇハンター2次増えないねぇ!
うごごご、増えろぉ。

私の中のパリスはこういう感じ、貴方のパリスはどういう感じ?


思惑と道筋

 受け取ったイヤカフから聞こえる軽薄で胡散臭い声。まず一刻も早く外して握り潰すべきか悩んだ。話術で対抗出来る気がしないと言うのが一つ、もう一つは単純に好きじゃない。

 

〔やぁはじめまして! ボクの名前はパリストン。ハンター協会の副会長をやらせて貰ってます!〕

 

 知ってる。だが直通で声が聞けるとは予想外。虚をつかれたと言うべきか、正直この展開を全く予見出来なかった。此奴は何を考えている。

 

「パリストンとやら、何故余たちに付き纏う?」

 

「ま、待て、これは受信しか出来ないんだ。あっちに声は届かない」

 

 いやそんなはずはない。イヤカフには確かにマイクの機能はない。けれど声を拾うマイクなら目の前にあるんだ。この目の前のおっさんこそマイク。

 

 襟を捲り上げて小さいそれを拾い上げる。おっさんもそれには驚いている。反応からして察していたがやはり知らされていなかったようだな。

 

「盗聴器、か?」

 

「聞こえているなパリストン。質問に答えよ」

 

 くつくつと笑う声が耳を打つ。

 

〔うん隠す気はなかったんだけど、改めてよろしく!〕

 

「よろしくするかは余が決める。して、相応の説明の準備は出来ておろう?」

 

 通信越しで名前を名乗り返す様に言われる。嫌だと突っぱねれば残念だと戯ける。道化を演じるのが上手いやつだ。だが腹に一物も二物も抱えている様な道化は遠ざけるくらいが丁度いい。だが視界から外すとまた余計な一計を投じられると言う全く傍迷惑で厄介だ。

 

〔それで何故付き纏うか、でしたっけ? 簡単な事ですよ。我々はハンターですから! あとボクの個人的な興味、ですかね!〕

 

「其方の趣味の為に割く時間は余にはない」

 

〔やぁ嫌われちゃいましたか? でも考えてもみてください。そちらは突如現れた人類への脅威、ボクらは不安なんですよ〕

 

 だからストーキングしていいとはならないと思う。あと興味について全く触れない。匂わせるだけ匂わせておいて。

 

「それに対して一定の理解を示そう。だがそれだけだ」

 

〔ははっ、ですよね! そこで本題なんですが、ボクら手を取り合いませんか?〕

 

 何がそこでなのか分からない。脈絡もあったものじゃない。手を取り合う要素は何処に転がっていた。

 

「蟻の確保が狙いだと聞いたが?」

 

〔情報が不足していたんです。回ってくる情報は危険な蟻としか無くって、困っちゃいますよね! だからこそ確保と銘打った〕

 

 理屈は通るか。蟻を駆除したいお偉いさん、けれど融和を図りたいパリストンと言う構図。表立って敵対の意思を示さない為に、けれどお偉いさんにも不信感を与えない乃至軽減する為にも確保と言う言葉を用いた。

 

 やや無理がある気がするが駆除や捕縛または捕獲と言う言葉を避けて確保なら分からない話じゃない気もする。

 

 ただパリストンじゃなければもっと純粋に喜べたんだがな。融和を図りたいなんて思ってないだろ絶対。良くて私兵に、悪くて奴隷。そんなところだと思っておこう。

 

〔ですがほら、蓋を開けてみれば蟻には理知がある。ボクもうんと悩んで出た答えは手を取り合うことだったんです。ボクらは言葉を介して対話が可能なんですよ〕

 

〔それに送り出した人員は誰一人として死んでなかった、と言うのも大きい。この時点で警戒はしていても争う気がないとわかりましたからね〕

 

「もっともらしい事ばかり出てくるな。余っ程面の皮が厚いとみえる」

 

〔奇遇ですね、ボクもそう思います! けれど全て本当の事ですよ〕

 

 少し言葉を交わしただけではあるが既に私はかなり疲労している。何だこの人。全力で押して来たと思えば脱力、また押して来たと思えばフェイントを入れてまた押し込んでくる。

 

 何が対話だ、こんな無茶苦茶な対話があるものか。キャッチボールどころかボールすら持ってないぞ。私の頭の中に住み着くパリストンはエアガンを取り出した。それは当たってもボールとして扱わない。レギュレーションを守ってくれ。

 

〔ではメリットを提示しましょう!〕

 

 手を取り合うことで得られるメリット。パリストンは大きくわけて3つを提示した。

 

 1つ目は保護を求めるキメラ=アントの受け入れ。これは原作のコルトたちがそうだったわけで、私にとっては然程旨みは感じない。少なくとも会長派は受け入れてくれるはずだ。

 

 2つ目はそもそも敵対しないこと。これは純粋にパリストンを信頼出来ない。騙して悪いがとか、適当にお茶を濁して背後からブスリと刺すのが似合ってる。しかも血で汚れていない清々しい笑顔もセット。

 

 3つ目はハンター試験の受験資格。これは正直欲しい、欲しいがそれをパリストンの一存で決められるわけが無い。それに此奴は自身を副会長と名乗った。正しくは副会長と()()名乗った。

 彼はハンター協会の副会長であると共に12人いる最高幹部の1人十二支んだ。けれど彼は副会長とだけ名乗った。それは何故か。

 

 パリストンは私に誤認して貰いたいのだろう。

 

 パリストンはハンター協会のNo.2です、と。

 

 確かにパリストンはハンター協会のNo.2だが、それは少し権限が広いだけだ。だから決定権を高く見せたいがために十二支んの肩書きを伏せた。十二支んと名乗れば他のメンバーと同等の発言権しか持たず発言力も据え置きと捉えられる。実際の所は違うが、あくまでパリストン側からしたら私にそう捉えられる恐れがある。

 

 なんせ副会長と十二支んが分けられてないから。十二支ん第一席次とかなら分かるが、()では十二支んメンバー間の立場に優劣がないとみえる。選挙編の際も副会長だから自分の方が立場が少し上だとパリストン自身が発言してる処から、十二支んと言うだけではそう言った身分の上下関係はないのだろう。

 

〔その他にも提案して頂けたらその都度更新しましょう。出来る限り尽力しますよ!〕

 

 内心この男を散々こき下ろしたが、此処で断ると言う選択肢はない。再三言うがパリストンのような道化は目を離した時が一番厄介極まりない。此処は適切な距離から隙を見せないよう心がけるのが吉とみた。

 

 だから私はこのメリットどころか、デメリットしかない申し出を受けようと思う。

 

「よかろうその口車に乗ってやろう。そのよく回る舌に感謝するといい」

 

〔全くですね! では早速メリットの履行の為に動きましょうか〕

 

「まず監視の解除からだ。連絡は各街に置いたハンターを通じれば如何様にもとれよう」

 

〔それだとこちらから連絡が取れませんが?〕

 

「言外で必要ないと言っている」

 

 王様をやっているが臣下は3人で領土もない金もないの無い無い尽くしの私に連絡を取ってどうする。求められても何も出せないぞ。と、建前で言っておこう。

 メリットだけ言ってデメリットを言わないうちに了承したのはこういう風に誤魔化しつつゴリ押す余地を作るためだ。徴兵とか言い出しそうで怖いし。

 

 どうせ契約書一つ介さない口約束。損することは覚悟した上で如何に得するか考えるとしよう。

 

「故に監視を即刻中止するとよい」

 

〔はい分かりました。今監視能力を持つ手駒に連絡をとりましょう〕

 

 手駒って言ったよなこの人。

 

「それと同時にその能力者の場所を教えよ。余は確実性が欲しい」

 

 実は監視は続いていましたじゃこの申し出を受けた意味が無い。兎に角この男の監視の目から外れたい。一時的だとしても。

 

 結果としてパリストンは私に監視能力保持者の場所を教えてくれた。初めから監視を止める予定だったのか、実は何人か監視能力保持者が居るのか、そもそも嘘なのかは分からないが。

 

 私には真実に思えた。声や呼吸しかヒントが無いのは些か心許ないが。

 

「無論、監視が続いたと余が判断したならその場に赴きその者を殺す」

 

 真実とした上で脅しを入れる。勿論形だけ。私だったらその能力者を別の場所に移すし本当に形だけ。ただ武力行使も辞さないと伝われば万々歳。

 

〔フフ、どうぞそうなさってください〕

 

 意味深に笑っているだろう表情がありありと目に浮かんでくる。

 

 

 その後はそれ程気を揉む内容でもない。

 

 しばらく諸国漫遊の旅に勤しむため保護される気はないこと。これはそうしたいだけで出来るとは思わない。どうかさせてくれ。

 

 基本的に敵対はしないこと。これは本当。だが素振りを見せた瞬間一気にアクティブだ。私は幽霊ドッキリされたら驚き余って拳が出るタイプだ。本当にフリでも止めろ。

 

 ハンター試験については時間がかかること。達成出来そうもないマニフェストを掲げる立候補者と同じ位にしか見てないから全然いい。あわよくば欲しい。あらゆる融通が利く優待券、欲しくないわけない。

 

〔ではそういう手筈で!〕

 

 おっさんを不法投棄し一息つく。どっと疲れがくる。出来れば金輪際関わりたくない。この身をここまで疲弊させるなんてなんて恐ろしい男。

 

「良かったのですか?」

 

「お前には思う所があるのかピトー?」

 

「さしたる根拠を提示出来ません。ですが関わるだけで害になると感じました」

 

 ピトーの野生の勘はバカにできない。それに私も概ね同じ考えではある。けれど監視者を連れたままになるのはこの先精神を削る。行動に制限も掛かる。私自身疚しいことは無いしこの先するつもりもないが、それでもしないと断言させてくれないのがこの世界だ。

 

 あと普通に監視されてるの嫌だ。普通に気分悪い。

 

「互いの信頼の上だけで成り立つ口約束だ。幾ら結ぼうと都合次第で何時でも破棄できる。そもそも余は人の理の外に在る。問題はない」

 

「いざとなればハンター協会そのものを襲撃し落とす。それだけのこと」

 

 違うぞと言えないこの口が恨めしいな。ただそれをするとパリストンを喜ばせるだけだと思う。私だけが分かること故に何も言えないが。あと脳筋に生きすぎだぞプフ。

 

「さて、では向かうぞ」

 

「何方へ向かいましょう?」

 

「知れたこと」

 

 今まで散々覗き見していた念能力者と顔合わせと洒落込む。私は確実性が欲しい。パリストンには監視を続けている場合という条件で伝えたが実は最初からそんな気はサラサラない。それに上記の条件以外の理由で赴かないとも言っていない。

 

 つまり全く問題ない。

 

 あといざ条件通りになってから向かう事になれば、待ち伏せから即死コンボが飛んでくる可能性が高まる。無力化するなら今しかない。

 

 雲上を進み真っ直ぐ飛行する。オーラを吹かす事でスピードを高め続け、先端を鋭角に形成することで風の抵抗を減らす。音もない、痕跡も残さない、さながらステルス機。

 

「此処だ」

 

 雲の海を突き抜けた先は荒野。人が住んでいるようには見えない場所だがそれ故に気付かれないのだろう。更に保護色で建物自体が視認しずらい。

 

 急拵えなら上等な方か。

 

 扉はカードキーを必要とするようだがプフからすればザル。内側から開けてもらい堂々と不法侵入。最近私の中で犯罪のハードルが低過ぎる気が。

 

 まだまだ生活臭が薄い。おそらく此処で過ごして来た期間は一週間あるかないか。そして生活圏も狭い。この分だと食事とトイレ、睡眠以外で部屋間の移動はないな。掃除はここに来てからして居ないだろう。

 

 段差が少なくスロープに手すり、冷蔵庫には出来合いの食事、点字ブロックと来たら盲目なのだろうと分かる。

 

 人の気配を探っていくと1人の少女が立っていた。目は布で覆われている。念能力者だ。

 

「あらお客様ですか? ここに来てからは初めてですね」

 

 少女はいっそ清々しいほど無警戒だった。実際ロックは厳重だったしここまで来た人間を味方だと思うのはある意味当然なのかもしれないが、それにしても無警戒だ。監視する能力を持つとは思えないな。

 

「其方が余を監視していた能力者か?」

 

「其方?」

 

 そこに食いつくのか。

 

「監視していたって……もしかして」

 

 やっと侵入者が目の前に立っている事を認識したのか少女はプルプルと震えだした。私の外見も振るう力も凶悪故に仕方ないか。

 

「もしかしてお空をピョンピョン跳ねてた御方!?」

 

 あぁなるほどそういう見え方。本当だがそう聞くと私がメルヘンな存在に聞こえるな。

 

「今お茶を入れます! アイタッ! 確か此処にお茶が、おおっとォ!」

 

 躓いたりぶつかったり忙しない。落ち着きもないし、侵入者と判明した状態でなお無警戒。とても凄腕の念能力者には見えない。それどころかハンターにさえ見えない。

 

「茶はいい」

 

「いいよねお茶、私も好きなの!」

 

「いやいらない」

 

「すーぐ出来るから、あちゃちゃ!?」

 

 オマケに人の話を聞かない。

 

 このまま怪我をされても気分が悪い。

 

「どれが必要なのだ?」

 

「え? 手伝ってくれるの? じゃあ人数分の湯呑みをお願いします!」

 

 なんで一人で過ごす家に数人分の湯呑みがある。ここに居るのは確かにこの少女一人のはず。鼻歌交じりにお茶を注ぐ少女に緊張の色や嘘を言っているようには見えない。時々プフにアイコンタクトを送るが能力越しでも嘘が無いらしい。

 

「その様子だと余の監視の任は解かれたようだな」

 

「えぇ実はつい先程連絡が」

 

 プフを見る。嘘はついていないらしい。ひとまず安心だな。

 

 差し出されたお茶の香りを嗅いでみれば華やかな香りがした。湯呑みに口を付けようとしたその瞬間。後ろで静観していたピトーの毛が逆立つ。訝しんだ私は直ぐに気付いた。

 

 空に何者かがいる。

 

 空からの奇襲。

 

 メルエム。

 

 ピトーの野生の勘。

 

 盲目の少女。

 

 私は咄嗟に自分でも何がなにやら分からないまま、少女を抱き寄せ庇っていた。だがその咄嗟の行動は正解だった。空から降り注ぐ龍は天井を貫通し地面を穿つ。

 

 私は外に誰がいるのか大方察した。




たぶん以降出るともしれないので盲目の少女について。
盲目の少女は念能力者である。だが監視用の能力を有しているわけじゃない。彼女は何時も自分に見れない世界を観ている。たまたま監視が可能なだけで少女は何時も自分には見ることの叶わない景色を観ている。ただそれだけなのである。

感想評価ありがとうございます。
作者自身余り賢くないですし原作の理解度が未熟な為にパリストンがらしく書けているか分からないのが悩み。いいのかこれで?
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