サムライミ版のピーターに憑依した男っ!!   作:紅乃 晴@小説アカ

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第十四話

デーンッ!!(Spyder-Man)

※東映版スパイダーマッ アイキャッチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニューヨーク、オズコープ本社。

 

 

「こちらタスク1、配置についたわ」

 

 

作戦は朝8時から開始された。まず作戦の起点となるグウェンがオズコープ本社内に入館。インターンシップで彼女は公式のオズコープIDカードを持っており、始業前から定時の間までは社内へ自由に行き来できる。

 

今回の作戦ではハリーお手製の小型インカムをそれぞれ装着しており、グウェンは見た目からしても普段使い用のデザインとなっているため入口の警備員にも怪しまれずに入ることができた。

 

そのまま一般用に開放されているデスクトップパソコンの元へと向かった彼女は手早くポーチからグーバーを取り出してUSBの差し込み口へと差し込む。

 

 

「おはよう、何をしてるんだい?ステイシーくん」

 

 

ハッとグウェンが振り返るとそこには彼女の担当部署の上司が立っていた。まずい、グウェンは視線を彷徨わせずに挨拶してきた上司に笑顔で挨拶を交わした。

 

 

「いえ、一般用に開放されているPCについていくつか疑問がありまして」

 

「疑問?そのPCはオズコープ社の内部案内に対応するためのものだが?」

 

「そう!それが問題なんです!ネットワークにアクセスしている以上、何かしらの危険な点は留意しておかないと!」

 

 

上司の視界からグーバーを隠すようにグウェンは身振り手振りで話題をスラスラと話していくが、その様子に上司は眉を顰めた。そもそも、上司が言うようにこのPCは単にオズコープ社内の部署案内などでしか使えない閉鎖的なパソコンでしかない。たしかに彼女の言うようにネットワークには繋がっているが、それはあくまでオズコープ社内に限定されたネットワークに過ぎない。外部からアクセスするなど、特殊なソフトなどを持ち要らなければできないはずだ。

 

そして、その上司の懸念は的中していた。グウェンが差し込んだグーバーは組み込まれたプログラムに従って内部ネットワークへと割り込み、防犯用のシステムの書き換えをしている真っ最中だ。こんなところで上司にバレて抜かれでもすれば防犯システムの書き換えはできないし、グウェンは捕まってインターンシップどころか学校からも退学を命じられるかもしれない。

 

チラチラとデスクトップPCを見る上司に、グウェンはえへへ、と誤魔化すように笑った。

 

 

「それで、君はこのPCで何を調べていたんだ?」

 

 

少し感情がこもった顔で上司はグウェンの肩を掴んで退かしてパソコンを見た。だがデスクトップに映るのはノーマン・オズボーンが社内理念やオズコープの存在意義、社会貢献度について語るばかりの動画だけだ。他に怪しいところはない。上司は画面からグウェンの顔を見ると、彼女は何かわからないと言った風な顔で上司に向かって首を傾げた。

 

 

「ごほん、わかった。ステイシーくんの指摘通り、法務部に一般開放用のPCにも監視をつけるように提案しておこう」

 

では、始業に遅れないようにとだけ言って上司はそそくさとオフィスへと向かっていく。その後ろ姿を手を振りながら見送るグウェン。もう片方の手には監視システムを書き換え終えたグーバーが握られていた。

 

 

「こちらタスク1。任務完了」

 

 

それだけ言うと、グウェンは予定通りに普段の仕事……には戻らず、この後の騒動を予想して一人、女子トイレへと歩いてゆくのだった。

 

 

 

 

「これで第一段階はクリアだな」

 

 

グウェンからの連絡を受けて外で待機しているオクタヴィアス博士は静かに呟いた。隣にいるハリーはツバが深い帽子とサングラスをしていて、オクタヴィアス博士も普段のカジュアルな格好ではなくラフなトレーナーに大きなトレンチコートを身につけていた。

 

 

「博士、ハリー。くれぐれも気をつけて」

 

 

俺は博士たちが作ってくれたスーツを身にまとって壁に張り付いたまま二人を見下ろして言葉をかける。ハリーは得意げに腰の改造ベルトにぶら下げたガジェット数点を見せて、オクタヴィアス博士も特徴的な丸のサングラス越しにニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

「なに、紳士的に話をしてくるだけさ」

 

 

そう言って、二人は路地から真っ直ぐとオズコープ本社の正面玄関へと歩いてゆく。普段はキーがないと回転しないドアを何食わぬ顔で突破した二人に、警備をしていた者たちがざわつきながら近づいた。

 

 

「おい、止まれ!……オクタヴィアス博士?」

 

「私も有名になったな?なぁ、ハリー」

 

「これからもっと有名になりますよ」

 

 

軽口を叩き合う二人。ハリーと呼ばれて警備員が帽子とサングラスをつけるハリーを見て、すぐに肩に備わる無線機で通信しようとした瞬間だった。カラン、と警備員たちの足元に金色と淡いグリーンの発色が特徴的なボールが転がってきた。それは少しの間、中心にある大きなボタンが明滅を繰り返したのち、想像絶する音と閃光とともに炸裂したのだ。

 

 

「デイリービューグルは嫌いだが、彼らのネーミングセンスは気に入った。私はドクター・オクトパスと名乗ることにしようか!!」

 

 

元はグリーンゴブリンの手榴弾になるはずだった爆弾をスタングレネードなどにハリーが改造しており、その閃光に目をくらませている面々の前でオクタヴィアス博士の背後から四つの作業アームが姿を現した。前髪の生え際に貼り付けたチップから博士の脳波を感知して動くアームは博士の命令に従って取り囲もうとしていた警備員たちを薙ぎ倒してゆく。収納性の影響から攻撃範囲は限られるが、その動きは元の神経操作のアームに引けを取らない。

 

ハリーもすぐに駆け出して警備員たちが出てくる扉の前あたりにベルトに備わるボール型のガジェットを投げてゆく。

 

投げ込まれたボールは地面に当たった衝撃で広がり、バウンドすることなくその場に留まると、走ってそのガジェット付近に来た警備員たちの動きを感知し、半径数メートルに電撃を放った。

 

電撃トラップに捕まりなすすべなく倒れてゆく敵を見て、ハリーはガッツポーズをとる。

 

 

「見たか!父さんと僕を蔑めようとした仕返しだ!!」

 

「あー、ハリー。そういうのはフラグと言ってな?」

 

 

息巻くハリーの声にオクタヴィアスがそう言うと、二人の前にはさらに数を増やした警備員たちが殺到してくる。

 

 

「言わなきゃよかったかな」

 

 

そう肩をすくめてボール型のガジェットを手に取るハリーに、オクタヴィアスもため息をついて再び4本の作業アームを構えるのだった。

 

 

 

 

 

 

オズコープ本社の正面入り口で少し早めのパレードが始まっている中、一人指定された通気口の入り口に入った俺は、そのまま一直線に地下へとつながるダクトの中を進んでゆく。

 

 

《ハァイ、ピーター。ここからは私が案内するわ》

 

 

薄型のインカムからオクタヴィアスの家から遠隔で支援しているロージーの通信が届く。彼女の指示に従って右へ左へ迷宮のようなダクトを進むと問題の箇所へと到着した。

 

 

「ロージー、これ見えてる?」

 

《あらやだ、予想より大きな排気ファンね》

 

 

地下の空気をかき出すために設置されている三つの排気ファンだが結構な大きさだった。ファンがある場所は俺一人が優に立てるくらいの広さだ。問題はこの高速で回っている鉄製のファンをどうやって止めるかだが……。

 

 

【やぁ、ピーター・パーカー】

 

 

根本を糸で止めようかと身構えたところでダクト内に声が響く。間違いなくゾラ博士の声だった。

 

 

「ゾラ博士か!悪いけどウルトロンを外に出すわけには行かない!!」

 

【それは出来ない相談だ。だからこそ、君にはここで死んでもらう】

 

 

空気が抜ける音と共に閉じていたダクトの幾つかが開くと、そこから数本の足に支えられた武装したドローンが姿を現した。これは、遠隔操作を目的にした制御ユニットに武装させたものか。

 

 

「ウェンディに武装をさせるなんて、親としては認められないな!」

 

【残念ながらもはやウェンディはいない。ウルトロンだよ、少年】

 

 

わさわさと虫のように壁を這い回っては背負っているマシンガンでこちらを攻撃してくるドローンたち。スパイダーセンスに従って攻撃を躱す。THWIP!!とドローンを糸で捕まえ振り回して高速回転するファンへと叩きつけて数を減らしていくと、ゾラ博士の苛立ったような声がダクト内に響いた。

 

 

【君のような存在はどこまでも我々の邪魔をしてくる。だから完全に抹消させてもらうよ】

 

 

その言葉を皮切りに、回転していたファンがさらに速度を早めた。咄嗟にウェブを壁に放って踏ん張るが、吸い込まれたドローンがファンに当たると細切れになって後ろへと吹き飛んでいった。

 

 

「あんなのに当たったら今夜の晩御飯はスパイディのミートローフになっちゃうよ!」

 

《さすがに私も蜘蛛男のミンチは扱ったことはないわ》

 

「ロージー!!ジョークを上回るボケを返さないでもらえる!?」

 

 

あ、まずい。踏ん張っていた足が離れた!?ウェブを掴んだまま宙吊りになるが、足先が徐々にファンへと近づいて行くのがわかる。これじゃほんとにミンチになるぞ!?そう思った瞬間、ファンは突如として止まった。

 

 

《ピーター、聞こえる?今ダクトの指令系統に割り込んだわ!》

 

「ワァオ!グウェン!愛してる!!」

 

《あら、告白?もう少しロマンチックなところでリテイクをお願いできる?》

 

 

グウェンのナイスアシストで粉微塵になるのは防がれた。停止したファンの間を通って先に進もうと思った矢先、スパイダーセンスが何かを感じとる。ダクトに違和感を感じた。

 

 

「グウェン、ファンを逆方向に高速回転させられる?」

 

《え、できるけれど……》

 

「すぐ頼む!!」

 

 

俺の第六感に従うまま、グウェンがファンを反対方向へ回転させるプログラムを組み込むが、最後に彼女はこう付け加えた。

 

 

《あー、ピーター?これはあまりおすすめできないけど》

 

「ゾラ博士がダクトのシャッターを閉めればおしまいだ!これしかない!」

 

《どうなっても知らないわよ?》

 

 

え、それってどういう……と言いかけたところでファンは要望通り逆方向に高速回転し始めた。今まで地下から空気を吸い上げていたファンが逆転したと言うことは、外気を地下へ一気に送り込む気流が発生する。俺は完全にその空圧に飲まれた。

 

まさに嵐のような有様だった。

 

 

「あーーっ!!あーーっ!!アアアアアアアア!!いだだだだだ!!」

 

 

ゾラが遠隔でダクトのシャッターを閉める前に俺の体は空気に運ばれて地下へと持っていかれる。体のあちこちをダクト内にぶつけまくりながら。

 

凄まじい打撃音と衝撃を味わいながら長い地下へのダクトを進むと、体がガァンと地下の通気口を突き破って、勢いそのまま部屋の壁へと叩きつけられる。顔からいったせいで意識が飛ぶかと思った。ずるずると壁からずり落ちて床に崩れ落ちると、驚いた顔をしたノーマンと目があった。

 

 

「あー、ノーマンさん……助けにきましたよ……ゴフッ」

 

「君の方が助けがいりそうなんだが!?」

 

 

紆余曲折あったが、なんとか俺はオズコープの地下へと潜入することに成功したのだった。

 

 

 

 

 

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