サムライミ版のピーターに憑依した男っ!!   作:紅乃 晴@小説アカ

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第十六話

 

 

 

これまでのあらすじ。この世界でスパイダーマンになったと思ったらスパイダーグウェンがいました。あらすじ終わり。

 

 

「正解だけどほんとはスパイダーウーマンよ。ハロー、オズボーンさん」

 

 

現実逃避してる場合じゃねぇ!!スーパーパワーを持った俺を見ても何とか冷静さを保っていたノーマンさんが今に白目剥いて気絶しそうになってるし!!ずるいぞ!俺だって気絶したい!!いや、そんな冗談を言ってる場合じゃないんだって!!

 

 

「なななななんで、君……どうして!?」

 

「狼狽えるピーターって珍しいって思ったけど、割と予想外のことに見舞われると挙動不審になるのよね」

 

 

マスクを脱ぐとほんとにグウェンだった。ほげぇー!?スパイダーグウェンの世界では、彼女の父は助かるが、俺がマッドな実験の結果リザードになる運命にあるはずだったのに、なんでかこの世界にはスパイダー人間が二人もいるのだ。これは俺の死亡フラグ立った?というかウルトロンことMCUのゾラ博士もいるし、もうこれわっかんねぇな。

 

 

「だ、だから君……なんで!?どうして!?」

 

 

とりあえず説明を求めると、彼女はブロンドの髪を少しだけ指先で払ってから得意気に語り始めた。

 

 

 

 

OK。なら、最初から説明してあげる。

 

私の名はグウェン・ステイシー。遺伝子操作された蜘蛛に噛まれてスパイダーパワーを手に入れた、スパイダーウーマン。

 

ただ、私は本来はこんな力は手入れていない。

 

 

だって私は……死んだのだから。愛する彼、ピーター・パーカーの目の前で。

 

 

彼には私を救えなかったという大きな心の傷を与えてしまったと思う。けど、彼に対して恨みも何もない。彼は精一杯にやった。その結果でああなってしまったなら仕方ないと思えた。

 

けど、私の人生も彼の人生のように奇想天外だった。

 

私がこの世界に生まれ変わったとわかったのはハイスクールに入った頃。

 

警察官だったパパの運転するパトカーがピーターを跳ねたときだった。ピンっと何かの糸が張られたように私は前世……というより、別の世界で一生を終えたグウェン・ステイシーの記憶を思い出した。

 

それから、まぁ記憶の混乱とか、色々とあったけれど、なんとか取り直した私はこれから進むべき道を考えた。

 

ピーターと関わらずに生きていくという選択肢もあるだろうと思った。

 

この世界にピーター・パーカーは存在する。けれど、彼が私が愛した彼である保証はない。たぶん、全くの別人なんだと思う。だから気にしないで、私は彼と関わらない新たなる人生を歩むべきなのだろうかって。

 

だけど、答えは決まっていた。

 

私はピーター・パーカーに傷を負わせない。癒えない心のトラウマなんて与えない。今度こそ、私がスパイダーマンとして、ピーター・パーカーとしての彼を支える。

 

そう決意してから行動に移すのは早かった。

 

まず、この世界にいるピーター・パーカーの情報集めだ。彼を轢いてしまった父は気の毒ではあるが、彼との縁を繋いでくれたのだから感謝している。入院している病院を聞き、挨拶に出向いたのだが彼は退院しており、残っていたのは荷物を引き取りに来ていた彼の叔父だけだった。

 

なんとか話をして彼の住所や学校を教えてもらい、そこからは怪しさと引け目もあったけど尾行を開始した。ピーターがオズコープのラボに出入りしていることを知って私もインターンシップでオズコープを希望。彼の学校がコロンビア大学の研究見学をすると聞いて、知り合いの研究員に無理を言って潜り込んだ。

 

その時、私の運命は大きく変わった。

 

なんと私は、ピーターを噛んだ同じ蜘蛛に偶然噛まれ、彼と同じスーパーパワーを手に入れてしまったのだ。

 

全く予想していなかった展開にパニックになっていたけれど、前世での記憶が大いに役立った。ピーターのスパイダーマンスーツは直したこともあるし、間近で見たりもしていたので複製するのに苦労はなかった。

 

糸を出すガジェットの作り方は知らなかったので心配だったが、この世界のスパイダーマンは手首から糸を自家製で出せるのでラッキーだった。

 

それから、私は一人スパイダーウーマンとして活動を開始して、未だに現れないスパイダーマンを待ち続けて……いや、待ってはいないか。オクタヴィアス博士にお願いしてピーターと会って。

 

そこからは、まぁみんなもよく知ってるよね?

 

 

 

 

 

「そんな感じ」

 

 

グウェンの話を聞き終えて思わず頭を抱えた。どうなってんだこの世界はよぉっ!!不幸フラグのグウェンは実は転生者で別世界のグウェンで、しかもスパイダーウーマン!?ウルトロンはいるし、メガネの博士はいるし!!一体全体どうなってるわけなんだ!?

 

 

「あー、スパイダーウーマン……?」

 

「あ、グウェンで大丈夫です。オズボーンさん」

 

「あ、あぁ……じゃあ、グウェン?君は前世の記憶があるのだとか?」

 

「あー、正確には別次元の私の記憶ですね」

 

「アインシュタインの相対性理論の?」

 

「さすがオズボーンさん」

 

「まさか……パラレルワールドが実在するとは……」

 

 

そこの二人、俺が頭を抱えてのたうち回っている内に話を進めるんじゃないよぉっ!!しかし彼女の話を聞く限り、このスパイダーグウェンの出自もかなり特殊だ。

 

俺は前世となる人生ではスパイダーマンファンで、彼女は混じりっけなしのグウェン・ステイシーの生まれ変わり……というべきなのか?生まれ直しと言っても過言ではない。

 

MCUの世界とも因縁がある以上、この世界はすでにサムライミ版のスパイダーマンから離れつつある世界線となっているのだろうか?俺が何もしなかった場合……いや、俺がピーターの意識に入り込まなかったら、おそらくこの世界は映画と同じ運命を辿っていたのだろうか。

 

グウェンは前世に気づかず。オズボーンはグリーンゴブリンとなり、オズコープの重役や将軍は死亡し、ゾラ博士は人知れずデータの海に消えてゆく。オクタヴィアス博士はトリチウムの実験に失敗した怪物となり、ハリーは父の復讐のためにニューゴブリンとなる。

 

 

そんな世界になっていたのかもしれない。

 

そう考えれば、これでよかったのでは?と思う。ポジティブに考えれば、不幸と悲しみの運命にあった彼らの道を俺は変えた。変えてしまったのだ。叔父は救えなかったが、彼らは間違いなく正しい道を進んでいる。そうしたのは紛れもなく俺だ。

 

思い返す。大いなる力とは俺がこの世界に来た時点で授けられていたのかも知れない。だからこそ、その大いなる責任を背負い、果たさなければならないと。

 

 

「それよりもピーター、ウルトロンを止めないと。話はその後で」

 

 

グウェンの言葉で俺はぐるぐると回っていた思考から脱した。彼女はすでにオズコープ地下施設の見取り図を用意していた。遠回りになるが、ダクトを通れば地下から地上まで上がって行ける。

 

 

「僕より君のほうが頼りになるかも」

 

「あら、参考にしたのは貴方よ?スパイダーマン先生」

 

 

そう言って肩をすくめるグウェン。頼もしい限りだな、と返しながらダクトがある通路までスイングしようとした時だった。

 

 

「二人とも、待ってくれ。ピーター、私についてきてくれないか」

 

 

ノーマンがウルトロンを追おうとする俺たちに待ったをかけた。グウェンと顔を見合わせて、先に進んでゆくノーマンの後に続く。いくつかの角を曲がってたどり着いたのは地下にあるラボの入り口だった。

 

 

「マスターコードが変わっていなければいいが……」

 

 

そう呟きながら扉横のキーパネルを操作するノーマン。それを見かねたのか、グウェンがぐっと足に力を込めると、そのまま駆け出してノーマンが開こうとしていた扉を蹴りでこじ開けた。ドガン、と凄まじい音と共に吹き飛んだ扉と、手を払うグウェンをまじまじと見るノーマンに、グウェンは手をひらひらさせて答えた。

 

 

「時短になるでしょ?」

 

「……まぁ、鍵いらずで便利だな」

 

 

直すことを考えなければ、と付け加えてノーマンは部屋に入る。マスク越しにウインクしたグウェンを見て、彼女がマジでスパイダーパワーを有していることを再認識した。ノーマンに続いて部屋に入る。そこには彼の集大成でもあり、彼自身の代名詞とも言える代物が鎮座していた。

 

 

「これは……」

 

 

目の前にあったのはグライダーと、グリーンゴブリンが身につけていた装甲付きのウイングスーツだった。まだ緑色に塗られていない黒と白の無骨なカラーリングであるが、その完成度は非常に高かった。

 

 

「ウェンディの取引でこのプロジェクトは凍結となったんだが……私の一押しでな。改良を加えていたんだ」

 

 

三重構造体で軽くて強度のいい素材を使っており、武器はリストブレード。グライダーにも武装は備わっているが、あくまで今回はウルトロンを止めるためだ。全ての弾倉は相手の動きを封じる電撃性のある付着弾に変わっていた。

 

 

「オクタヴィアス博士とハリーにだけいい格好はさせられないからな」

 

 

それに、と彼は付け加えパソコンを操作し始める。すると今まで鎮座していたグライダーが独りでに動き始めた。その様子に驚いているとノーマンは悪さをした子供のように微笑みながら言った。

 

 

「私が何もせずに奴らに従っていたと思うか?」

 

 

エンターキーを押すと、グライダーはふわりと浮き上がり安定した動きを発揮する。その動きはまさに、俺とハリーが初めてウェンディをグライダーに搭載した時の動きのものだった。

 

 

「オズボーンさん!まさかウェンディを!?」

 

「データの大半はウルトロンに持っていかれたが、指向性の補助AIの一部は奪還できた。君とハリーが作り上げたものは取り返すことはできたつもりだ。奴が本体をクラッシュする前に間に合ってよかったよ」

 

 

そう言って彼はウェンディに指示を出すための小型のインカムを渡してきた。グライダーとウイングスーツを眺めて、俺は頭を下げてそれを手にとる。

 

スパイダースーツの上からウイングスーツを纏ったがごわつきもなく体にフィットしている。装甲で可動範囲は狭まるが、特に問題はないはずだ。

 

 

「ありがたく使わせてもらいます」

 

「ワァオ、ゴブリンとオクトパスの作ったスーツを着てグライダーに乗るスパイダーマンなんて……それなんてチート?」

 

 

そう茶化してくるグウェンに、俺はニヤリと笑って言葉を返した。

 

 

「これが、この世界のスパイダーマンさ」

 

 

 

 

 

 

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