サムライミ版のピーターに憑依した男っ!!   作:紅乃 晴@小説アカ

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お待たせしました。
最終回までのプロットができたので更新します!
感想もありがとうございました!!


第十九話

 

 

タイムズスクエアガーデンはあっという間に戦場と化した件について。サムライミ版でもグリーンゴブリンとの初ファイトがここではあったがあの規模を優に超える戦いがこの場では発生していた。

 

というか、ウルトロンが制御下に置くアーマーの攻撃がヤバい。こっちは肉体戦術だが向こうはバリバリの実弾兵装である。誰だ、イベントに出す用のアーマーに実弾兵器を詰め込んだの!これだから銃社会のアメリカは困る!

 

目の前にいる三体のアーマーが放ったロケット弾を近くにあるマンホールで叩き落としてからスイングの勢いそのまま叩きつけると火花を上げて三体のうちの一体が吹き飛んだ。

 

 

「ざまぁないぜ!って、え、オクタヴィアス博士?」

 

「手頃な武器が落ちていてな。有効活用しようかと」

 

 

俺がそう言うと次いで現れたのはパトカーを持ち上げたオクタヴィアス博士。え、博士そのパトカーをどうするつもりですか。

 

と思ったら扉やトランクの部品を作業用アームで千切っては投げ、千切っては投げ。最終的にボロボロになったパトカーを持ち上げて縦からまるで鉄槌を叩きつけるようにアーマーにぶつけていた。

 

 

「ハッハッハッ!これはなかなか爽快だな」

 

「あらやだ、バイオレンス」

 

 

スッキリした顔でペシャンコになったアーマーを見るオクタヴィアス博士に隣に着地したグウェンが口元を上品に押さえながらそう言った。博士って振り切ると奇行に走り出すから……。

 

実験で行き詰まった時に不採用の設計図の束を作業用アームで「ふぅぅん!」って言いながら引きちぎったり、気分転換にラボの通路でスケボーに寝そべりながら滑ったりとかしてるからね。天才故の産みの苦しみボディランゲージである。

 

普段は紳士的なオクタヴィアス博士しか知らないグウェンは「ヒェ」というリアクションをしつつも、残り一体のアーマーを相手取っていた。まず足にウェブを張り付かせて思いっきり転倒させるとそのままフルスイングで他のアーマーに向かってドミノ倒しのようにぶつけて吹き飛ばした。

 

 

「女の子だからって甘く見てもらっちゃ困るわね」

 

「君も大概バイオレンスだよね、おっとっ!」

 

 

澄まし顔で言うグウェンに呆れていると足元に銃弾が降り注いだ。オクタヴィアス博士は近くに落ちてたパトカーの扉で防ぎ、俺とグウェンはウェブで飛び上がって銃撃を避ける。目を向けると胸部に内蔵されたワイヤーでビルの壁に張り付いているアーマーがいた。すぐに追撃しようとウェブスイングをした時、グライダーに乗ったハリーが横を通り過ぎた。

 

 

「ほら、お返しだ!」

 

 

グライダーに備わる高振動ブレードを取り出したハリーはビルに縫い合わせてあるワイヤーを華麗な剣捌きで切り落とした上に装甲を溶かす溶解剤が入ったボールを落下するアーマーにぶつけてトドメを刺していた。

 

ニューゴブリンの時の戦闘センスから察するに、ハリーは中々のやり手である。しかも服装はゴブリンのガジェットが備わるベルトを腰に巻き付けているだけで、防具は最低限のサポーターだけだ。ウェンディの補助があるとはいえ、ウイングスーツも身につけていないのにハリーはグライダーを完璧に乗りこなしている。

 

再び残骸をアームで掴んで投げつけるオクタヴィアス博士に、ウェブを巧みに操ってアーマーを叩き潰すグウェン、そしてグライダーで体当たりやブレードでアーマーを切り裂くハリー。なにこれ、俺のチームメイト強いわ。

 

 

「これは負けてられないな!」

 

 

そんな中、俺は空中に止まるウルトロンへと殴りかかった。ゾラの精神プロセスがインストールされたウルトロンの動きは他のアーマーと違ってより人間的だった。ガツンと鋼鉄でできた頭部を殴りつけると、赤い眼光をギラギラと光らせるウルトロンが睨みつけてくる。

 

 

《どこまでも私の邪魔をする忌々しい虫ケラめ!》

 

「酷いな!全身メタルな爬虫類には言われたくないね!!」

 

 

腕から小型のロケットをぶっ放してくるウルトロンの攻撃を避ける。けどロケットが周りのビルとかに当たると危ないからウェブでキャッチしてそのままリリース!轟音と火薬特有の爆炎に包まれるウルトロンだが、何事もなかったように煙を振り払って反撃してきた。やっぱり生半可な攻撃じゃダメージは入らないらしい。

 

なら、特大ダメージを与えてやれば解決だ。

 

 

「オクタヴィアス博士!」

 

「老体には堪えるリクエストだな!」

 

 

あらかじめ地上で話をしていたオクタヴィアス博士は倒れた街頭の柱をアームを使って俺めがけて投げつけてくれた。それをウェブでキャッチした俺は、反対の腕でウルトロンにウェブを貼り付ける。俺の体重と柱の自重、さらに重力加速度を利用して、ピンと張り詰めたウェブ越しに一気に柱をウルトロンめがけて投げつける。

 

さまざまなエネルギーが蓄積された柱はそのままウルトロンの胴体を捉えて、堅牢な装甲に一部が突き刺さる。

 

 

《小癪な真似を!》

 

 

火花を上げて苦しみもがくウルトロンは突き刺さった柱を引き抜き投げつけてきた。真っ直ぐ飛んできた柱を紙一重で躱しつつ、側面に蹴りを入れて軌道を変える。落下した柱はグウェンに迫っていたアーマーを真上から貫いた。

 

 

「ウェンディ!あのアーマーの制御はどうなってるんだ!?」

 

《すべてウルトロンから送られてくるデータをもとに運用されています。外部からアクセスを試みましたがブロックされているようです》

 

何度かウェンディ自身がアクセスを試みたらしいが、オズボーン氏から得ていた事前情報通りウルトロンのシステムは最新のウイルス対策が施されている。それにゾラ自身が作ったシールドもあるので容易に肉体の制御権や、システムのハッキングは行えない。

 

つまるところ。

 

 

《ウルトロンを破壊すれば駆除は可能かと》

 

 

肉体言語での解決が最善ということだ。

 

 

「なら、ここから逃す前に仕留めなければならないな!」

 

 

そう軽快に言うオクタヴィアス博士は肉弾戦を挑んできたアーマーと力比べをしている。アーマーが両手を使って博士の作業用アームを捻り潰そうとしていたが、残念ながらそれは悪手じゃろうて。

 

 

「そんな貧弱なアームで私と戦おうと言うのかね?いささか力不足だ」

 

 

オクタヴィアス博士の宣言通り、逆にアーマーの腕が悲鳴を上げてひしゃげた。博士の作業用アームを舐めてはいけない。あれはトリチウムを扱うために開発したものだが、その膨大なエネルギーを受けても対抗できるほどのパワーモジュールが備わってある。しかも一つや二つではなく作業用アームに備わる250もの関節部全てに内蔵されているのだ。

 

あくまで化学的な実験の時しか用いられない代物ではあるが単純な握力は5000N。つまり510キログラム相当のエネルギーがあの細いアームには備わっているのだ。柔な装甲程度なら簡単にペシャンコにできる……実験用とは言え殺意が高すぎる。

 

そのままアーマーの腕を引っこ抜いた博士は「ほら。スパイダーマン、パスだ」と言って行動不能になったアーマーを投げてきた。

 

 

「ありがとう、オクトパス博士!それをウルトロンの顔にシュウゥウゥト!!」

 

 

思いっきりウェブで振り抜いたアーマーはウルトロンに直撃。火花を散らして五体が吹き飛んでいった。

 

 

「わぁお、超★エキサイティングね」

 

 

次いでウェブスイングをするグウェンがトゥーシューズでドロップキックをかまして、ハリーが電撃性を持つガジェットを投げつける。目まぐるしく追撃をしてくる俺たちにウルトロンはノイズが走る機械音で咆哮を上げた。あれだけのダメージを負っても敵はまだ健在だった。

 

 

《いい加減に目障りだ、捻り殺してくれる!!》

 

「そう簡単にはさせないぞ、ウルトロン!」

 

 

とにかく物理でダメージを与えていくしかない。全力で応戦してくるウルトロン相手に、オクタヴィアス博士から送られてくる質量弾を叩きつけながらニューヨークのど真ん中で俺たちは戦いを繰り広げてゆくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ええい、警備兵は何をしてるんだ!さっさとウルトロンもあの四人の化け物も殺せ!」

 

 

ウルトロン率いるアーマー軍団とスパイダーマンの戦いをバルコニーから見ていたスローカム将軍は携帯電話越しに金切り声を上げていた。電話相手は下で戦うヒドラの構成員だが、彼らもウルトロンから敵として扱われている。武装したアーマーとの戦闘でスローカム将軍の命令を聞くどころではなかった。

 

プロジェクトの集大成であるはずのウルトロンがまさかゾラ博士の精神を取り込んで反旗を翻すなど、将軍にとっては予想外であった。彼はヒドラの人間でもあり、ゾラ博士が立案したインサイト計画の主犯格でもある。計画でヒドラの邪魔者となる存在を消し去り、やがて政府内の最大武装派閥として世界征服を目論んでいた彼にとって、この事態は最悪であった。

 

このまま全てが露呈すれば自身の身の保証もどこにもないのだ。保身に走ったスローカム将軍はウルトロンや戦うスパイダーマン、そして目撃者を含めた全員を射殺しろと檄を飛ばしていた。

 

 

「それが貴方の正体ですか、スローカム将軍」

 

 

そんなスローカム将軍が声の方に視線を向けると、彼は目を見張った。オズコープの重役たちも息を呑んでいるのがはっきりとわかる。現れたのはオズコープの地下に軟禁していたはずのノーマン・オズボーンだったのだ。

 

 

「オズボーン!?なぜ貴様が……」

 

「逆にウルトロンに利用されていたことにも気づかない愚かな貴方やオズコープの重役たちを笑いに来たのですよ」

 

 

そう言って近くにある一人かけ用ソファに腰を下ろしたノーマン。だが、スローカムは彼の登場には驚いたものの余裕の笑みは絶やさなかった。彼にとってノーマンは何の障害にもならない。さらに言うならノーマンは絶好の隠れ蓑だった。

 

 

「ノーマン、貴様は最早終わりだ。ウルトロンの暴走とピーター・パーカーの叔父を殺した貴様は何もかも失う!だが、我々は失わない!ヒドラは頭を切り落とされてもまた別の場所から新たな頭が生えるのだ!」

 

 

今回の件はオズコープとスローカム将軍……強いて言えば軍部と軍事複合企業の癒着から起こった側面がある。軍部にとってはオズコープの重役たちなど利益のおこぼれをもらおうと集まった相手でしかない。オズコープが取り壊しになってもスペース・ロジック社や代わりの企業はいくらでもある。

 

だが、ノーマンは崩れなかった。ソファに座ったまま羽虫の音を払うように手を振った彼は感情的に声を荒げるスローカム将軍に促す。

 

 

「状況を理解していないようですな、将軍。どうです、テレビでもご覧になったら」

 

 

そう言ってノーマンは傍にあったリモコンを手に取りテレビの電源を入れた。テラスを設けた豪勢なゲストルームに設けられた特大のテレビモニターには、今まさに外で繰り広げられているウルトロンとスパイダーマンたちの戦いの映像が映し出されていた。

 

 

【デイリー・ビューグルが独占放送をしています!ご覧ください!あれがオズコープと軍が結託して作り出した殺人マシーン、ウルトロンです!】

 

 

女性アナウンサーの言葉にさっきまで余裕たっぷりだったスローカム将軍の顔から色が消えた。ウェブでスイングするスパイダーマンとそれを追うグライダーに乗るウルトロン。その映像から画面が切り替わると今回のプロジェクトに関わった軍上層部の面々の顔写真と、オズコープの重役たちの取引現場などが映された静止画像が次々とテレビを通して白日の元に晒されていく。

 

 

【この計画を主導したのは軍部のストローム将軍であり、政府も独断でこのような危険な兵器を製造していた将軍と、彼と手を組んでいたオズコープの上層部に対して逮捕状を出しています!】

 

「な、なんだ……これは!」

 

 

狼狽えるスローカム将軍に、ノーマンはまだ手のついていないウイスキーのグラスを手にして満面の笑みを浮かべて答えた。

 

 

「私が何もせずにここにノコノコと現れると思っていたのか?あの地下施設に監禁されていたときも、黙って従っていたと?」

 

 

そう。ノーマンは回収したウェンディや逆にハッキングしたオズコープのデータベースから情報を抜き取り、その全てデイリービューグルに送っていたのだ。ノーマン自身、あの悪徳編集長とは仲はすこぶる悪かったが……彼のことだ。美味いように料理をしてからメディアに出してくれることだろう。

 

 

「それで?すまない、もう一度聞かせてくれ。頭を切り落とされても……なんだったかな?」

 

 

耳を澄ますようなジェスチャーをするノーマンに顔を青ざめさせていたスローカム将軍は噴き上がる怒りの感情のまま懐にしまっていた拳銃に手をかけて叫んだ。

 

 

「き、貴様ぁああ!!……ギャアアッ!?」

 

 

将軍が拳銃を取り出すことはなかった。彼の胸に突き刺さった電極から高電圧が流れ、激情の渦の中スローカム将軍は意識を刈り取られたのだった。床に倒れ痙攣するスローカム将軍にテーザー銃を打ち込んだのは、ノーマンの後ろにいたオクタヴィアス博士の妻、ロージーである。

 

そのまま彼女は横たわるスローカム将軍に近づき、懐から取り出した近距離用スタンガンをバチバチと迸らせる。

 

 

「ウチの夫と、ピーターたちを侮辱した報いよ」

 

 

そのまま意識を刈り取られたスローカム将軍にダメ押しの一撃。足がびくびくと痙攣してスタンガンの餌食になる将軍は完全にオーバーキルであるが、キレたロージーを制する度肝は策略家の側面を見せたノーマンにはなかったのでそっと目を逸らした。

 

視界の端では自分を裏切り、スローカム将軍と結託していたオズコープの重役たちが部屋から逃げ出していく様子が見えたが、もはやダメだろう。今回の件に加えて脱税や贈賄の証拠をメディア各社に垂れ流している。彼らは社会的に死ぬことになるはずだ。

 

 

「あとはピーターたちに任せるしかないな」

 

【ウルトロンと戦っている、あの四人の人影は一体なんなのでしょうか!】

 

 

デイリー・ビューグルが独占放送するニュースを眺めながらノーマンはウイスキーのグラスを傾けた。彼は確信していた。彼らがウルトロンに確実に勝利すると言うことを。

 

 

 

 

 

 

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