サムライミ版のピーターに憑依した男っ!!   作:紅乃 晴@小説アカ

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エタってないです(戒め)


第二十一話

 

 

 

「ハァッ!すげぇ怖い夢を見た。めちゃくちゃ高いところから落っこちる夢」

 

ガバッと起き上がって思わず声を上げた。

 

ふぅ、なんて夢だ。長い夢を見ていたような気がする。

 

内容ははっきりと覚えていて、自分がスパイダーマンとなり、ウルトロンと名乗るマシーンと戦うわ、実弾飛び交うタイムズスクエアで大立ち回りを演じるわ、挙げ句の果てに宇宙に行こうとしたウルトロンを止めるためにグライダーをぶっ壊して一緒に高度8000メートル近くから落下するとか……。

 

夢にしても設定盛りすぎだろふざけんな。あと、なんだかずいぶんと昔のようなことに思えるんだけど……気のせいかな?

 

 

「いや、それ夢じゃなくて現実だったわけなんだが」

 

 

寝そべっていたソファの上でウンウン唸ってるとキッチンからコーヒーを注いだマグを二つ持ったハリーがやってくる。

 

その顔は「何言ってんだコイツ」みたいな顔で、マグを渡すときに「何言ってんだ、ピーター」と言われました。俺の親友、顔にも口にも出したよ!

 

 

「ありがとう、ハリー。ほんとギリギリではあったよ。マジで。もう二度としない」

 

 

あの後、ウルトロンと俺が乗るグライダーはハリーから託された小型爆弾で吹き飛ばされた。

飛行能力を持たず、鉄の塊でもあるウルトロンは墜落していき、爆発でウルトロンとは別方向にぶっ飛んだ俺は、意識を失っていた。

 

それを助けてくれたのが限界高度に昇ってきてくれたハリーだった。グライダーを補助するウェンディの協力のもと、落下した俺を受け止めてくれて……俺が目が覚めたのはぐったりしたハリーと共にセントラルパークの芝生の上で横になっている時で、すぐ近くにはハリーの乗っていたグライダーが地面に突き刺さっていた。

 

受け取ったまでは完璧だったけれど、限界高度を飛行していたグライダーが限界を迎えてハリーも墜落。地上ギリギリでエンジンは復活したが、俺を受け止めていることや疲労も重なり、姿勢を回復させることができずセントラルパークの芝生エリアに不時着。グライダーは芝生に突き刺さり、二人揃って投げ出されたことで俺は意識を取り戻し、逆にハリーはそれで気を失った。

 

 

「……二度もあんなことあったら本気で絶交するからな?」

 

 

ヒェ、怖い。今まで聴いたことない低い声でハリーはそう言った。なんだかゴブリンになった時くらいの凄みがないですかね?

 

あ、セントラルパーク墜落後は、オクタヴィアス博士とオズボーンさんが助けてくれました。グウェンは肋骨にヒビが入っていたけどピンピンしてたな。さすがスパイダーウーマンだぜ!!そういうと「あれだけの高度で戦った上で爆弾で爆破した衝撃に襲われてもすぐに起き上がれるピーターの方がおかしい」と言われてしまった。解せぬ。

 

 

「ウェンディ、ウルトロンの反応は?」

 

《上空15000メートルからの墜落後、反応は一切確認されていません》

 

「墜落してペシャンコになったのかしら?」

 

 

我が家の特製デスクトップに収まるウェンディからの報告に、リビングテーブルでブルックリンの高校から出された課題をこなすグウェンがそう声を上げた。

 

ちなみにここはオクタヴィアス夫妻が建てた家である。タイムズスクエアでのウルトロンの一件……ニューヨークを恐怖のどん底へと陥れた〝ウルトロン・オートマトン事件〟が収束してからというもの、オズコープには警察や政府調査委員会が殺到。捜査の結果、オズボーンさんが拉致監禁されていたことや、上層部の賄賂、軍部のとある派閥が徹底的に槍玉に挙げられ、オズコープは実質営業停止中。近いうちに資産を売却して倒産が告知されることになっている。

 

まぁあれだけの事件を起こしたわけだ。奇跡的に死亡者は出なかったけれど、怪我人は出たわけだし。

 

 

「奴は元々データの海に生きていた存在だ。まだどこかで息を潜めているかもしれない。しかし……オズコープは残念だったな」

 

 

グウェンの向かい側で論文をまとめているオクタヴィアス博士がハリーを気遣うようにそう言った。オズコープはハリーやオズボーンさんにとっては生活の一部だ。俺やグウェン、オクタヴィアス博士とは感じ方が根本的に異なっている。だが、ハリーはそこまでショックを受けている様子はなかった。

 

 

「まぁ仕方ないですよ。あんなことをしでかしたわけですし……それに父さんが色々動いてはくれたみたいだけど」

 

「どう?大企業の御曹司から一般人になった感想は」

 

 

俺がハリーにそう言うと、ハリーは「俺たちが一般人というのは烏滸がましい気がするな」と口にしてから改めて言った。

 

 

「言っただろ?父さんが動いてるって」

 

 

 

 

 

 

ハリーの言った通り、オズボーンさんは早々に動いていた。というか早すぎた。だってオズコープがデイリー・ビューグルや、他のメディアに吊し上げられて総叩きに遭ってる中、新会社立ち上げて新たなビルにオフィス構えてるなんて想像できないじゃん?

 

 

「いやぁ、オズボーンさんマジでオズボーンさんだったわ」

 

 

ニューヨークの一等地にあるオフィスビルの3フロアを押さえた新会社であるが、ここですら仮のオフィスらしく、現在新たなオフィスビルの建設計画が始まっているらしい。マジやばくね?それ聞いた時、ハリー以外全員背景に宇宙を背負って猫になってたもん。

 

 

「オズコープにあった利権関係は基本的に父さんの名で登録されていたからね。いつ裏切るかわからない上層部の人間を信用してなかったことが、ここにきて上手く働いたわけさ」

 

「ノーマンの人間不信が役立ったわけだな」

 

「オクタヴィアス博士、言い方……」

 

「おっと失礼」

 

 

ハリーの言った通り、オズコープでの特許のほとんどはオズボーンさんが取得しているし、ストローム博士や他の技術者の研究もバックにはオズボーンさんがついていたことから軍事関係の技術を除く全てをオズボーンさんが掌握。金になるが作り続けなければ儲けられない兵器産業は切り捨て、これまでの特許費用と資産を使い、総叩きにあって死んだ顔をするオズコープを尻目に新会社を立ち上げたのだった。それに加えて、俺とハリーがオクタヴィアス博士を迎えるために作った子会社も大いに役立っている。

 

 

「……で、オズボーンさんはなんて?」

 

「これからはアークリアクターを前面に押し出したエコロジー企業を目指すってさ」

 

 

ハリーから聞いた限りでは、以前のオズコープのような軍需複合企業からは脱却するみたい。まぁ軍産から手を引く=利益は下がるけど、過去の遺恨や負債抱えて再出発はダメだろって父さんは言ってたから順当でしょと、ハリーはあっけらかんと言っていた。

 

オズボーンさんと一緒に超兵士の薬品研究をしていたストローム博士をはじめ、オズコープにいた研究員もそのまま移籍してくれると言っている。これからの時代はやっぱりエコだな、エコ。

 

 

「エコロジー企業か。アークリアクターは素材が高価だから量産にはあんまり向かないし……どうする?とりあえず電気変換効率300%の太陽光発電システムでも作る?」

 

「ピーター、扱いに困る発明品は当面自粛して欲しいんだが……」

 

 

これらからの研究テーマをオフィスで提案すると、少し疲れた顔をしたオズボーンさんが部屋に入ってきた。どうやら新規取引先との交渉は終わったらしく、無事に受注も貰えたようだった。

 

 

「オズボーンさん、お疲れ様です!」

 

「アークリアクターのおかげで案件には事欠かないからな。起業時の説明会や確認会は相変わらず疲れるしいくつになっても緊張するものだ……さて、聞きたいのだがピーター、ハリー、オットー。この三人の中で役員に志願する者はいるのかな?」

 

「はいはーい、ピーター・パーカーは技術顧問がいいでーす」

 

「右に同じく」

 

「責任持たないで好きなものを作れる立場を作ろうとしてるよこの二人」

 

 

うるさいよ、ハリー。君だって企画部と設計部の技術顧問狙いでしょうが。あ、役員?責任とか色々あってめんどくさいのでパス。オクタヴィアス博士もトリチウムの研究は終わったとはいえ、新たに義手や材質関係の研究始めてるから書類仕事とか興味なさそう。たまにオズボーンさんに付き合ってゴルフには行ってるみたい。

なんでそんなこと知ってるか?こないだ研究に行き詰まった博士が不採用の書類の束をアイアンでぶっ飛ばしてたからかな?

 

 

「あと、僕らが部下とか育てて第二、第三のピーター・パーカーか、オクタヴィアス博士を生み出すのと、僕らに好き勝手に開発させるの、どっちがいい?」

 

「選びたくない二択だなぁ……!!」

 

 

頭を抱えるオズボーンさんと想像して心底嫌そうな顔をするハリー。それをみて晴れて新会社に入社したグウェンがケラケラと笑っていた。

 

 

「で?ノーマン。企業名はもう決めたのかい?」

 

 

そうオズボーンさんに問いかけるオクタヴィアス博士。え??まだ企業名決定してなかったんですか?てっきりオズコープ・リターンズとか、オズコープ・ライジングとか、オズコープ・ダークナイトとかそんな名前がつくのかと思ってた。そう考えてると何故かハリーに頭を叩かれた。こいつ……思考を読んでやがる!?(顔に出てるだけ)

 

しかし、オズボーンさんは俺たちを見て柔らかな笑みを浮かべてこう言った。

 

 

「それについては……私は君たちに任せようと思う」

 

 

オズボーンさんの人脈や実績や研究、特許や資金と大部分がオズボーンさんのおかげだが、俺とハリーが立ち上げた子会社や、アークリアクターのおかげもある。それに私が名前を考えると、再びオズコープのようなネーミングになる。それに遺恨は残したくないからな、とオズボーンは付け加えるように言った。

 

 

「心機一転ってところかな」

 

「また日本の諺かい?ピーター」

 

「こういうのは雰囲気が大事だからさ」

 

 

そんなもんかというハリー。何か候補は?と聞くオズボーンさんに、ハイっと元気よくグウェンが手を上げる。

 

 

「はいはいはーい!私はスペーリアカンパニーがいいと思います!」

 

「ちょっと上目な会社という意味か」

 

 

控えめでいいでしょ、というグウェン。すると横にいたオクタヴィアス博士がどこか神妙な顔をしていた。

 

 

「どうしたの?アナタ」

 

「いや、なんだか嫌な予感が……私が死んで復活して名乗る名前みたいな……」

 

 

なにそれこわい。オクタヴィアス博士の言葉に顔を顰めるロージー。まぁネーミング的にもあんまりピンとこないから却下ということで。

 

 

「えー、じゃあハリーは何がいいの?」

 

「俺か?そうだな……M.J……」

 

はいだめですぅー!最愛の彼女の名前をつけるとか正気!?後になって後悔することになるんだからな!?ただでさえM.Jとは今後どう転がるかわかったもんじゃないんだし!?

 

 

「な、いいだろ!?別に!」

 

「よくない!別れた後に死にたくなっても知らないわよ!?」

 

 

グウェン、それはちょっと言い方……ハリーもほら!落ち込まない!!

 

 

「ゴホン!じゃあオクタヴィアス博士は?」

 

「私か?じゃあそうだな……シニスターソリューションとかはどうだ?SSで略せるぞ?」

 

 

そもそもシニスターの意味が不吉とか邪悪じゃねぇか。却下です!却下!!なんだか変な電波を受信してるオクタヴィアス博士にロージーも、「アナタ大丈夫?どこか悪くなってない?具体的に言うと脊髄に埋め込まれた神経パルスを制御するチップが壊れたとか?」とか聞いていた。

 

うん、えらく具体的な例だな。

 

 

「はい!もうやめやめ!博士の案も却下!」

 

「じゃあどうするんだ?」

 

 

ハリーの声に全員が静かになった。新会社の名前が全員出てこない中……ふと、俺の中にあった思いが溢れた。

 

 

「……パーカー・エレクトロニクス」

 

 

ぼそっと呟いた言葉。思わずハッと顔を上げるとハリーやグウェン、オクタヴィアス夫妻、そしてオズボーンさんも俺の顔を見つめていた。それは「え?自分の名前をつけるの?」という引いたような顔ではなく……何かを察しているような顔だった。

 

 

「あ、いや……その……」

 

「ピーター?ここにきて言わないは無しだぞ」

 

 

的確にハリーに退路を断たれてしまった。ぐぬぬ。俺は一度息をついてから、改めて溢してしまった言葉の意味を整理し、みんなに話した。

 

 

「パーカーはベン・パーカーから取ったんだ。死んじゃったベンおじさんは昔、電気工事士だったし……パーカーが前面に出るからいい気しないかもしれないし……みんなが良ければ、だけど」

 

「いいんじゃないかな?」

 

 

即答したのはハリーだった。オズボーンさんまで頷いていて、オクタヴィアス夫妻も。グウェンはサムズアップをして、「うん。他の案で出たものよりもずっといいよ、ピーター」と言ってくれた。

 

 

「じゃあ決まりだな」

 

「パーカー・エレクトロニクスか。早速デザイナーに会社ロゴを依頼しないとな」

 

「父さん、ロゴは俺がデザインしてもいいかな?」

 

「ハリー?」

 

「ベンおじさんには、俺も世話になったからね」

 

「あぁ、もちろんだとも」

 

これから忙しくなるぞ、と全員が新たな企業……パーカー・エレクトロニクスの準備に向けて動き始めた。それ以上深く触れないにしろ、ここにいる全員が、不運にも亡くなってしまったベンおじさんのことを思ってくれている。それがたまらなく嬉しくて、俺は動き始めた全員に頭を下げた。

 

 

「みんな、ありがとう」

 

 

ハリーは恥ずかしそうにはにかんで俺の肩を叩いてくれる。オクタヴィアス夫妻やオズボーンさんも同じ、グウェンは背中をさすってくれた。やめろよ、泣いちゃうだろ。

 

よし!じゃあ新たな出発に向けて頑張るとしますか!!

 

全員の「おー!」という掛け声と共に始まったパーカー・エレクトロニクス……通称、P.E社は、のちに世界を席巻するエネルギー企業へと成長していくと同時に。

 

世界の平和を守る象徴となることを。

 

この時の創設メンバーの誰もが知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忌々しい虫ケラどもめ

 

まぁいい。これでこの世界の足がかりができた

 

私は負けることはない。この世にインフィニティ・ストーンがある限り……。

 

 

 

 

 

 

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