サムライミ版のピーターに憑依した男っ!! 作:紅乃 晴@小説アカ
どうしてこうなった。
オクタヴィアス博士との弾丸★アメリカ横断旅行から帰国して、デイリービューグルに2人で見たこともないアメリカンチョッパーを乗り回すところを「若き天才とドクターオクトパス、アメリカを走破する!」という見出しですっぱ抜かれて、「そのバイク何!?」と流行り始めたSNSやネットニュース上位を独占する事態に陥って2人揃ってオズボーン親子に怒られると言ういつものパターンから一週間後。
ハイウェイのど真ん中に雷神様のハンマーがドカンとあったので、この世界にファンキーな雷神様がいるとは予想していたが……。
「うぅ……父上ぇ……なぜですかぁ……」
なんで裏路地のゴミ捨て場に雷神様が寝っ転がってるんですかね!?先日、ローカル紙が謎のミステリーサークルがニューヨークに!?という記事を目にして「いやぁ?まさかぁ?」とは思ってたけど、まさかまさかだよ!?この世界ほんとにどうなってんの。げぇっ、まじでクリス・ヘムズワースのマイティ・ソーやないかい。セルヴィグ博士とジェーン・フォスターさんマジで仕事して?1人裏路地に持ってきたゴミ袋を両手に下げて天を仰ぐのは、我らがトビー・マグワイアピータースパイダーマン転生者ですよ。
ほんとどうするよこれ。放置してても絶対に厄介なことになるよなぁ、これえ。なんたって雷神様だもの。今の見た目は完全に流浪者のそれだけど。マジでふざけんなフ◯ックッ
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「というわけで拾ってきました」
「もう定員オーバーです。捨ててきなさい」
浮浪者は出荷よー。そんなぁ(´・ω・`)
と、そんなやり取りをするのは困った時に助けてくれると思っている友人のアルドリッチ・キリアン君です!!とりあえず肩に背負った流浪者ことソーをソファーに寝かせる。「あぁ!そのカバー買い換えたばっかりなのに!」とアルドリッチ……ええい、めんどいからアルでいいや。そうアルが喚くが、このカバー買ったの俺なんですけど?若干潔癖のきらいがあるアルの抗議を無視して、俺はこれからどうするかをアルに相談する。
「と言うわけでここで面倒見てくれない?」
「お前は一体何を言ってるんだ?」
だってしょうがないじゃーん。ウチのオフィスは今厳戒態勢(主に俺やオクタヴィアス博士がろくでもない……しかし利益にはなる発明をしないように)で、そんなところにズタボロのソーを持って行っても「また厄介ごとを持ってきたのか!夕刊の一面にするぞパーカー!」ってJ.J.ジェイムソンにブチギレられるのがオチだし。
ちなみにアルこと、アルドリッチ・キリアン……アイアンマン3でトニーの宿敵となる相手となぜこんなに仲良くなっているかと言うと、トニーの代わりに俺がアルのエクストリミス理論の話を聞いて、その出資をすることを決めたからである。
アイアンマン3では、トニーが約束をすっぽかしてアルを寒空の下で放置したのがきっかけで恨まれるんだけど、俺はそうはしなかった。と言うか、ほっといたら厄ネタ間違いなしなエクストリミス理論をどうして放置できるか?
アルとの出会いは、俺がハリーとオクタヴィアス博士とでアークリアクターを作ってから、オズボーンさんから若くてエネルギーのある新鋭研究者をヘッドハントしろという指示を受けたのがきっかけで、アルは募集をかけた面接にきた研究者の1人だったのだ。同席していたハリーはあんまりリアクションしてなかったけど、俺がアルと出会った時のリアクションは驚愕そのものだった。というか、この時代から君エクストリミスの研究してたの?マジか?時代的にはトニーが若くてブイブイ言わせてた時期だから、あまり間違ってもいないと言えなくもない……。
と、そんなわけで俺はアルをヘッドハント……というか、アルが希望したA.I.Mの出資を申し出たのだ。もちろん、金を出すだけではなく技術的な協力も惜しげもなく行った。エクストリミスは画期的なバイオテクノロジーだけど、いかんせん危険がやばすぎる。失った四肢を取り戻せるけど、適合しなかったら人間爆弾になるとか欠陥もいいところだ。
俺はアルの研究理論を聞き、安全なエクストリミスの開発に乗り出したと言うわけだ。まぁ安全マージン取ってるから研究自体は遅々として進みが悪いけど、そこで急かして人間爆弾ッが爆誕したら元も子もないので、出資は潤沢に研究をしてもらってる。
面接しにきた時のアルはそれはもう酷い姿だったが、パーカー・エレクトロニクスとの共同研究になってからはかなり身持ちも小綺麗になっている。まだエクストリミスが完成してないから杖生活だけど、顔立ちはガイ・ピアースなので小綺麗にするだけでイケメェンになってるよ!!
「あのな、ピーター。いくら君の頼みとは言え……浮浪者をここに置くのはどうかと思うぞ。A.I.Mは慈善事業団体じゃない」
「いやまぁそうなんだけど……」
「それになんでこんな浮浪者を……ピーター、君の優しさは私も評価しているが、これは少々やりすぎだぞ」
うむむ、そう言われるとグウの根も出ない。しかしここで、「この人はアズガルドの王子で雷神ソーなんですよ!!訳あって今は神の力を無くしてるけど放っておくと厄介なネタしかならないから匿ってくれない?」って正直に言えば、今度こそアルにぶん殴られる。いやぶん殴られるくらいならマシか?最悪これまで築いた関係もぶっ飛びかねん。
やはりソーは俺の手でどうにかするしか……。
そう考えていると、のそりとソファに横たわっていた人物が起き上がった。
「………」
ひぇ、クリス・ヘムズワースが俺とアルを見てる。かっこよ……じゃねぇわ。2人揃って浮浪者風貌のソーを見ていると、「ぐぅ〜〜」と部屋に大きな音が鳴り響いた。
「あー……とりあえず母さんが作ったミートローフがあるけど、食べるかね?」
おっかなびっくりで言うアルに、浮浪者風のソーは静かに頷いた。ちなみに余裕ができたのか、今作のアルドリッチ・キリアンは割とマザコンである。
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それから、アルのお母さんが用意してくれたであろうミートローフを平らげた上に、予備で置いていたシリアルとココナッツミルクを完食、まだ足りないようだったので懇意にしている中華料理の出前を頼んで、300ドル分くらいの料理をペロリと平らげたソーは、備つきの手拭いで顔を拭いてから俺とアルに「うまかった」と感謝の意を示した。
おかわりを要求する時にグラスを叩き割ったときはどうなるかと思ったけど、俺がアルを宥めてことなきを得たからよかった。ちなみにおかわりをしたいならそう言ってくれと言ったら素直に従ってくれたので、ソーは根は真面目な奴なのは変わらないらしい。
さてお腹も膨れて落ち着いたのか、ソーは自分の身の上話をし始めた。自分はアズカルド、オーディンの息子、ソーである
〜中略〜
巨人族に喧嘩を売ったことを父に咎められ、その罰に力を奪われて、ハンマーと共にこの地球に送られたと。俺とアル?壮大に話すソーの話を聞きながらポップコーンを食ってたよ?
そんで、最初はニュー・メキシコ州に送られて天文学者のセルヴィグ博士やジェーンと出会ったらしいが、ハンマーのことを知り、1人アメリカを横断。ハイウェイにあったハンマーを持ち上げようとしたが、力が奪われた今では持ち上げることもできず、失意の中、意気勇んでジェーンたちの元を去ったことからおめおめと帰るわけにもいかず、そのままニューヨークまでたどり着いたところで力尽きたと。
おま、なんでここまで来るんだよ!?(率直な意見)
ちゃんと序盤でセルヴィグ博士とジェーンに会えてるならそのまま戻ればよかったのに……あっ、そう言えばこの世界にシールドがないもんな、ハンマーも監視対象になってなかったから捕縛されるようなこともなかったから、そのまま荒野を彷徨ってたら哀れに思ったトラックの運ちゃんに西海岸側まで送ってもらったと。逆方向や運ちゃん……!!
「……あー、そのー、それで?アズカルド人の君はこれからどうするつもりだい?」
ちゃんと相手の設定(と思ってること)に合わせてくれる我が友アルくん。そう優しく諭すようにいうアルに、ソーは「わからない」と小さく呟く。
「死にそうになりながら……まぁ、俺は簡単に死なないが……荒野を彷徨い、あの鉄の箱を運転する男に助けられ、そしてこのニューヨークにやってきた。1人で死にそうになりながら……まぁ、俺は簡単に死なないが……色々考えた。なぜ父上は俺の力を奪い、この星に送ったのだろうかと……」
人間……と言っていいだろうか?兎にも角にも、生き物というのは死に直面すると色々と考えてしまうらしい。それはアズカルド人も例外ではないようで……偉大なる雷神ソーはニューヨークの街を彷徨いながら自分自身に向き合っていたようだ。
自分はなぜ力を失ったのか。なぜハンマーを持ち上げられなくなったのか。なぜ、この星に送り込まれたのか。
考えれば考えるほど、父の考えがわからなくなっていくソー。それからほどなくして彼はゴミ捨て場に倒れ、それを俺が発見したという。なんという運命の巡り合わせ。トビー・マグワイアピーターの運命を変えたらアベンジャーズの世界になるなんて誰が予測できたか。いや、まだトニーとアメリカのケツがいない。ソーがいるだけだ。まだワンアウト。まだ慌てる時間ではない。
するとソーは立ち上がり、「お前たちには命を救われた。ジェーンやセルヴィグに次ぐ地球の友だ」と感謝される。そう言って出て行こうとするソーに、アルは問いかけた。
「これからどうするのかね?」
「わからない……だが、ここにいてはお前たちには迷惑をかけてしまう」
「ソー。君の話が本当ならば、君は父君の投げた試練を越えなければならないのではないか?」
そう言ったアルにソーは目を見開く。アルも……言い方は失礼だが振り切った方の天才だ。障害のこともあるので、相手が自分をどう思ってるかを見極める力を持っている。……まぁ、トニーの時は憧れの相手に会えたことや、アルに余裕がなかったのもあるだろうが……それでも、アルにはソーが嘘を言っているようには見えなかったらしい。その割にはポップコーンたべて楽しんで聞いてたけどさ!!
「君の傲慢さが父の怒りを買ったのなら、その傲慢さこそが君の力を取り戻すきっかけになるんじゃないのかね?」
「俺の……傲慢さ……」
「親からの試練なんてものは、案外足元に答えがあるものだよ。私の経験則だがね」
そう言ってアルは少し待っていたまえと自室に入ると、使い古しの服をいくつかソーに渡す。
「その見た目ではどこに行っても爪弾きものにされる。せめて見た目は整えたほうがいい」
「ありがとう、地球の友よ」
「アルドリッチだ。親しい奴はアルと呼ぶ。隣のこいつのようにな」
そう言ってアルが俺のことを杖でついた。割と痛いからやめて?そんな様子を見てソーが小さく笑い、口を開いた瞬間。
ニューヨークに地響きが鳴り響いた。