天才物理学者と筋肉バカのヒーローアカデミア   作:いぷしろん

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プロローグ編
−e^iπ=1話


戦兎「ここは…どこだ…?」

 

エボルトとの最終決戦を終え、新世界を創造したはずの戦兎は、明らかに自分の部屋とは異なる幼稚な子供部屋の景色にうろたえていた。

 

戦兎「ここが新世界…?いや、だとしたらこれは失敗か?」

 

自分の手にある白いパンドラパネルとエンプティボトル2本を見てそう呟く。

 

戦兎「それにしてもなんかこのボトルデカくないか?パンドラパネルも自分の身長の三分の一くらいになってるし…。訳がわからない。どうすれば物体が質量を保ったまま巨大化するんだ…?それとも…」

 

自分の手足を見ながら、どれほどの大きさになっているのかを確かめていたそのとき、戦兎に一つの仮説がよぎった。

 

戦兎「もしかして…俺が小さくなっちゃってる…!????」

 

一見とんでもない仮説のように見えるが、物体を叩いたときの音から密度は変化していないように感じたこと、既存の物理法則が成り立たなくなる特異点の影響が出た可能性があることを踏まえると、そのような仮説も考えられる。

 

戦兎「いや、他の可能性も考えられるはず…。とにかく鏡で確認すれば何かわかるか?いや、生物だけが小さくなっている可能性もある。それか一つ一つの素粒子が少し大きくなったとか…?」

 

さまざまな可能性を考えながら部屋を出て、鏡のある場所を探した。部屋以外の景色も戦兎にはまるで見たことがない場所だった。そして鏡を見つけた戦兎は一つの結論に辿り着く。

 

戦兎「体が…幼児になってる…!?」

 

身長は大体100cmほどの可愛らしい園児になっていた。しかしその顔には若干佐藤太郎の面影が残っている。

 

戦兎「なるほど、幼児になっていたから相対的に様々な物が巨大化してるように見えたのか。だとしたらどういう物理法則で幼児になってるんだ?テロメアか?活性酸素か?それとも…」

 

巧(世界が再構築された影響だよ。)

 

体内に宿る葛城巧が精神世界で彼に話しかける。唐突に現れた彼に戦兎は腰を抜かすが、再び立ち上がり椅子に腰掛ける。

 

戦兎「世界の再構築か…。いや、それは説明にならないはずだ。確かに俺たちはエボルトの存在しない世界を融合させて新世界を作り出したが、その差異は"エボルトが存在するかしないか"ということにしか影響しない。」

 

巧(普通ならそうだ。)

 

戦兎「普通なら…ってことはここは普通じゃないのか?新世界の創造はやっぱり失敗したのか?」

 

巧(成功はしてるみたいだね。でも完璧じゃない。確かにエボルトはいなくなった。でも変わっているのはこれだけじゃないはず。組み合わせる平行世界がほとんど異なっていた影響で僕たちにも多大な影響を及ぼしていると考えるべきだ。とはいえ何が変わっているのか、僕には何も分からない。これはまだあくまで仮説の域だ。父さんのデータになかったことから、こういったことが起きているのは父さんにも予想外だったんだろうね。)

 

戦兎「あのとき合体させた平行世界には確かにエボルトもいなかったはずだし、パンドラタワーもスカイウォールも無かった…。出現した平行世界が無数のエボルトがいない平行世界から無作為に選ばれた物であるなら確かにそう考えられる。その結果俺が若返ってるってことは生き返った人々も…」

 

巧(おそらくこの世界の影響を受けている。なんらかの作用が働いて、前世界では大人のはずの人々がこの世界では早く誕生したり、遅く誕生したりしていると考えられる。なんらかの作用というのはまだ不確かで分かりようがないが、この世界で調べればすぐに分かるだろう。)

 

戦兎「なるほど…。しかし俺には何故か前世界の記憶がある。それは…」

 

巧(君の特異さのせいだ。本来、平行世界同士の合体により同じ人同士が合体し、前世界の記憶を持たずに前世界とは別の人生を送ることになる。しかし君はエボルトにより生まれた存在だ。ということはエボルトが存在しない世界には君は存在しない。合体先がないから君は未だに記憶を保有しているということになる。)

 

戦兎「じゃあ今度は俺以外のみんなが記憶を無くしてるのか…。」

 

複雑な思いになった戦兎は万丈や一海、幻徳たちのことを思い出す。

そのとき、見知らぬ女性が部屋に入ってきた。

 

女性「戦兎、病院行くわよ。」

 

戦兎(この人は俺の母さんか?)

 

名前は桐生(きりゅう) 兎苺(うい)。この世界での戦兎の母親にあたる人物である。

 

兎苺「何ぼーっとしてんの?今日は"個性"診断の日でしょ。さっさと行くよ。」

 

そして何が何だかわからぬまま、戦兎は病院に連れられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

医師「"個性"がない、もしくは今はまだ使えない可能性がありますね。」

 

その言葉を聞いて兎苺は戦兎の方をじっと見つめた。そしてわしゃわしゃと頭を撫でる。

 

医師「そう落ち込まないでください。昔の話ですが、足の小指の関節を見れば"個性"があるかどうか分かる…という話があったのは覚えてますでしょうか?その話に基づけば…残念ながら"個性"がないということになります。」

 

戦兎「そもそも"個性"ってなんだ?」

 

戦兎は明らかに子供とは異なる口調で尋ねた。

 

医師「"個性"って言うのは、一人一人に遺伝的に現れる特別な力みたいなことだよ。」

 

戦兎「特別な力…」

 

人類に"個性"という異能力が与えられていて、エボルトがいない平行世界。平和ではあるが、異能力による犯罪が跋扈している世界。それが無作為に選ばれた平行世界であった。

戦兎は葛城の言葉を思い出し、その個性による影響で多くの人々の誕生時期が大幅にずらされたことを悟る。

 

医師「ところでご両親の"個性"は…」

 

兎苺「私の"個性"は“兎”です。と言っても脚力が少し上がったり…うさ耳とか尻尾とかを自由に発現させたりとかしかできませんけど…。(いくさ)は…夫は手を大砲に変化させて弾を撃ちます。」

 

そう言って兎苺は白い耳を発現させる。その時戦兎のポケットが発光した。

 

戦兎「これは…」

 

ポケットから発光していたエンプティボトルを取り出す。すると兎苺から赤い粒子が出現しエンプティボトルに収容されていく。そして赤く発光したエンプティボトルはラビットフルボトルへと変化した。

 

医師「"個性"…発現したようですね。何かあったらまた診察を受けに来てください。今日はもう帰られても大丈夫ですよ。」

 

兎苺はほっとして胸を撫で下ろした。そして戦兎を連れて待ち受けで待機する。

 

戦兎(ラビットフルボトル…。なんで何も無かったのに…。もしかして"相手の'個性'から成分を抽出してフルボトルを作り出す'個性'"が俺にはあるってことか?)

 

巧(分からない。そもそも"個性"自体がこの世界特有の遺伝子によって発現している能力だとするなら"個性"自体は遺伝していくはずだ。しかし君は両親の"個性"を引き継がなかった。突然変異という可能性もあるが…。)

 

戦兎(前世界でも成分の抽出は誰にでもできた。ボトルに60のエレメントに対応する"個性"の成分を抽出するのは誰にでも出来るかもしれない。)

 

巧(だったら今日兎苺さんにもう一つのエンプティボトルを渡して戦さんの"個性"の成分を抽出して貰えば良い。おそらく戦車のフルボトルが出来上がるだろう。)

 

戦兎「早速ベストマッチ来たー!!!!!」

 

テンションが上がったのか、後頭部の髪の毛をぴょこんと立たせて、立ち上がってそう叫んだ。戦兎にみんなが注目する。

 

兎苺「静かにしなさい戦兎」

 

戦兎「すんません」

 

戦兎は軽く謝った後恥ずかしそうに座った。

 

巧(君は興奮すると周りを考えられなくなる。少しは静かにしたらどうだ。)

 

戦兎(お前だって発明品ができた時には叫んでるだろ。お互い様だよお互い様)

 

巧(君ほど騒いではないさ。あれは…)

 

そう言ったところで、金に輝く粒子が一海や幻徳と同じように精神世界の巧から出現した。

 

戦兎(これは…)

 

巧(もうそろそろお別れのようだね)

 

戦兎(そっか、お前はどっちの世界でも存在するはずの人間だから消えるのか…。)

 

葛城巧の存在はエボルトの存在に関与しないため、いずれは統合されて葛城巧は前世界の存在を忘れてしまうことになる。

 

巧(君のような人間に会えて良かったよ。父さんのことはまだ許してはいないけど、ライダーシステムを正義のために使い、エボルトを倒してくれた君には感謝してる。それに、君たちと過ごした日々は楽しかった。桐生戦兎、いつかまた君に出会えることを望むよ。)

 

戦兎(ああ、俺もだ。葛城巧。)

 

2人は握手を交わし、そして戦兎の目の前から巧は消え去った。

 

兎苺「ほら、何ぼーっとしてんの。帰るよ、戦兎」

 

兎苺は戦兎の頭を軽く撫でて腕を握った。

 

戦兎「分かったよ母さん。」

 

前世界の記憶を保有する人物が桐生戦兎、ただ1人になった瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー11年後

 

国立雄英高等学校にそびえ立つ大きな校舎を見て戦兎はニッコリと笑った。

 

戦兎「さあ、実験を始めようか。」

 

ラビットとタンクのフルボトルを手に校舎へ向かう。その時だった。1人の少年が駆け寄ってきた。

 

少年「戦兎…?おい、戦兎じゃねえか!!!」

 

そう言われて振り向くと、そこには見慣れた顔があった。

 

戦兎「万丈…!!!」

 

万丈「おい戦兎!どうなってんだよこの世界!!!なんか俺小さくなってるし、気づいたら空のボトル持ってるし、そっからなんか分かんねえけどドラゴンフルボトルが出来るし、みんな"個性"とかいうわけわかんねえ能力持ってるしよ!!!」

 

そう言って万丈は戦兎にドラゴンフルボトルを見せる。

戦兎は後ろ髪の一部をぴょんと立たせて、自分の髪をわしゃわしゃした。

 

戦兎「…最ッ高だ!」

 

こうして天才物理学者桐生戦兎と筋肉バカのヒーローの物語は幕を開けた。

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