万丈「やっぱマスターのコーヒーはなんかわかんねえけどめちゃくちゃうめえ!!」
惣一「だろ〜?宇宙飛行士やめてから働いてたバイト先の店に対抗して豆から育ててコーヒー淹れてるからな。そこらへんの店とは比べもんになんないだろ!」
戦兎「ってかなんでまたマスターが出てきてんだよ!せっかく今日はちょっとシリアスな感じで行こうと『天才』の言い方もちょっと静かめにしてたのに!」
万丈「お前あれわざとやってんのかよ。」
戦兎「そりゃ俺が天ッ才なことを強調するための天才的手段なんだから仕方ないでしょうが!それよりマスターと美空から成分を取り出したら美空が倒れちゃって今大変なの!もうさっさと第10話行っちゃって!」
惣一「そんなことが本当に…。まさか…」
戦兎はパンドラボックス発見からこの新世界の創造、そしてそれに対する自身の考察などを全て惣一に話した。元宇宙飛行士なだけあって、戦兎の長々とした話も一度で理解できたようだ。
戦兎「信じてくれないかもしれないが全て本当だ。俺も、ここにいる万丈もその記憶を持ってこの世界にやって来た。…とは言ってもマスターにとっては今日会ったばっかだし信じては…」
惣一「いや、信じるよ。」
惣一は近くにある小棚からとあるものを取り出しながらそう言った。
万丈「…なんでそんな簡単に信じられんだよ。」
惣一「そうだな。機密情報の美空のバングルのことを知ってたし?一応俺の中にも根拠となるものがあるからな。」
惣一は先ほど取り出した物を戦兎たちの前に差し出す。
惣一「もしそれが本当の話なら、このボトルはお前たちのもんだろ?」
戦兎「これは…CDロストフルボトルとハサミロストフルボトル…。」
惣一「やっぱりそうか。」
惣一が差し出したのはまさかのロストフルボトルだった。惣一と美空はそれぞれハサミロストフルボトルとCDロストフルボトルを一本ずつ、万丈と同じく10年ほど前にロストフルボトルを見つけて保管していたらしい。
惣一「これは俺たちが持っておくよりもお前たちが持ってた方が安全だ。下手に盗まれて怪物になられでもしたら困る。」
戦兎「分かった。」
そして戦兎は惣一から2本のロストフルボトルを受け取る。
惣一「それとお前たちを信じられた最大の理由は…なんか懐かしい感じがしたからなんだよ。今日初めて出会ったのに、なんだか昔から知ってたような気がしてな。美空も初対面なのにお前たちのことをここに連れて来たのはそう言う理由があったからじゃないかって。」
戦兎「マスター…」
惣一は少し照れて、後頭部を手で掻きながらそう言った。
惣一「そういや、起きたら美空にもこの話してやらないとなぁ。」
万丈「それはやめとけ。」
戦兎「どうしたんだよ急に…」
万丈は珍しく低い声で惣一に忠告をした。
万丈「前の世界じゃ美空は普通の女として生活してえって言ってた。もし今の美空にこのことを伝えたら美空は良く思わねえかもしれねえ。むしろ今のまま何も言わねえ方がきっと美空にとって1番幸せだと思うんだよ。だから…」
言葉に詰まった万丈の肩を惣一は軽く叩いた。
惣一「分かった。美空にはこのことは内緒にしとく。でももし美空がフルボトルの成分採取とかでお前たちに何か協力したいって言って来たら、快く協力させてあげてほしい。」
戦兎「分かった。そこは美空の意思を尊重する。」
そこまで言ったところで万丈が「あっ!」と大きな声を上げた。
万丈「やべえ!そういや俺やらなきゃいけないことあったんだ!悪い戦兎!俺先帰る!」
そう言うと万丈は逃げるように走ってnascitaを出ていった。その様子をおかしく思った戦兎だったが、だいぶ話し込んでいたのか、もう19:00を過ぎていた。
惣一「もう夜も遅いし、お前も帰った方が良いんじゃないのか?親御さん心配するだろ?」
戦兎「心配はしないかもしれないけど…もう外もだいぶ暗いしそろそろ帰るよ。」
惣一「またなんかあったら来いよ。コーヒーは奢らないけどな。」
戦兎「じゃあなマスター。」
そして戦兎もnascitaを去り、惣一はその日の営業を終えて一息ついた。美空もその日に無事、目が覚めて体調は回復したようだ。
ーーー翌日
戦兎「よっ、万丈。昨日は大丈夫だったか?」
万丈「おう、なんとか間に合ったよ。」
万丈と戦兎は雄英高校へ一緒に登校していた。登校し始めてわずか数日。たまたま電車が一緒だったのもあり、一緒に登校しているようだ。
戦兎「ならよかった。話は変わるけど…今日の昼、職員室に来てくれないか?先生たちからもボトルの成分を回収しようかと思って。」
万丈「分かった。ついでに俺も職員室で用事あるからそん時に済ませてくるよ。」
戦兎「用事?どんな用事だ?」
万丈「それは…」
「オールマイトの授業はどんな感じですか!?」
万丈が質問に答えようとした瞬間、突然女性記者から2人共にマイクを差し出されそう質問された。その女性記者はボブショートの髪型で、やはり見たことのある顔だった。
万丈「さ、紗羽さん!?」
女性記者、滝川紗羽の顔を見た万丈は思わず声が出てしまった。戦兎が慌てて万丈の口を塞ぎ、『なに言ってんだよこのバカ!』と耳打ちする。
紗羽「えっと…どこかで会ったことありましたっけ?って君の隣にいるの!もしかして佐藤太郎さん!?どうして雄英高校に…!?」
少し興奮気味に話す紗羽。戦兎はため息をつきながら
戦兎「俺は桐生戦兎。佐藤太郎と顔が似てるからよく間違われるんですよ。」
と常套句を言う。『そっかぁ…』と紗羽のテンションは少し下がってしまったが、それでもめげずにオールマイトのことを聞いてくる。あまつさえ戦兎たちの腕さえも掴んできた。
紗羽「ね?ちょっとだけだから!」
戦兎「放課後話しますから今は離してくださいよ!」
紗羽「放課後だと他のマスメディアに負けちゃうから!ね?ほんの少し、どんな感じだったかだけ話してくれれば…」
万丈「今じゃねえとダメなのかよ!」
紗羽「今じゃないとダメなの!」
わちゃわちゃしているうちに他の雄英生徒たちもどんどんと登校してくる。その度に記者やジャーナリストに捕まっては質問されていた。
戦兎「もうこれじゃあ埒が明かない!無理矢理にでも突破するぞ万丈!」
そう言って戦兎は掴まれていない左手でビルドドライバーを巻き、パンダフルボトルとロケットフルボトルを取り出す。
紗羽「あっ!そのボトル!もしかして!」
紗羽は戦兎の持つフルボトルに反応して、ポケットの中を探り、入っていた物を取り出した。
紗羽「これって君たちのじゃない?」
戦兎「シマウマロストフルボトル…。やっぱり持ってたか…。」
なんと紗羽はシマウマロストフルボトルを持っていた。こちらもやはり10年前に拾った物だそう。戦兎はこれまでに出会ったビルドメンバーが全員ロストフルボトルを持っていたことから、紗羽も持っているだろうと予想していたようだ。
紗羽「もし取材に答えてくれたら…これ、君にあげようかな〜?なんてね。」
万丈「戦兎、どうする?」
戦兎「…5分だけだ。5分話したら学校に行かせてもらうからな。」
紗羽「もちろん!」
紗羽は満面の笑みでそう言った。その時、紗羽から水色の粒子が出現。いつものように戦兎のポケットに入っていたエンプティフルボトルに収納され、それが水色に発光した。
戦兎「カメラフルボトルか。使ったことないな。」
紗羽「へぇー。それが君の“個性"なんだ。ってそれよりも取材取材!教壇に立つオールマイトの様子はどうだった!?」
紗羽からはいかにもジャーナリストと関連のあるフルボトルが精製された。しかし紗羽はそんなことをお構いなしに戦兎たちに質問攻めを行う。
結局5分だけという取材は遅刻ギリギリにまで長引き、それぞれの担任に怒られてしまった戦兎と万丈であった。
また、HRではA組B組ともに生徒による投票で学級委員長決めが行われたが、戦兎も万丈も自分に投票したために、結局学級委員長は原作通り、それぞれ飯田、拳藤が務めることになった。
そして昼休み。戦兎は興奮しながら職員室から出てきた。追い出されたという表現が正しいが戦兎自身は気にしていない様子である。
戦兎「最ッ高だ!たくさんフルボトルが採取出来た!早速試したい…!」
万丈「だから人で試そうとすんなって言ってんだろうが!」
戦兎「実験してみたくなるのが天才物理学者なの!しょうがないでしょうが!」
職員室前でごちゃごちゃと話していると、突然『セキュリティ3が突破されました』と言う警告が放送された。職員室からブラドキングが出てきて、戦兎たちを職員室で匿った。幸い、ただのマスメディアによる侵入であったため、戦兎たちはすぐに解放された。
万丈「びっくりした…。一瞬ヴィランかと思ったぜ。」
戦兎「でも待てよ…。ただのマスメディアにこんなことが出来るのか?」
万丈「何でもいいだろ?とにかく飯食いに行こうぜ。腹減っちまった。今日はラーメンでも食おうかな〜」
戦兎「いっつも食べてるでしょうが。たまには別の食べないと強くなれないぞ〜。」
万丈「お前は俺のお袋かよ…。」
多少のもやもやが戦兎の中には残ったが、まだ昼飯を食べていない2人は食堂へと行くことにした。しかし食堂に行く道でパニックが起こっていたため、結局2人は昼ごはんを食べることができずに次の授業が始まってしまった…。
ーーー東京 某所
「遅いぞ新入り。例のものは持ってきたのか?」
「しょうがないだろう?こっちはちゃんと授業受けてるんだ。ま、ちゃんとお望みのものは持ってたぞ。死柄木。」
新入りと呼ばれた男は死柄木に向かってUSBメモリを投げ渡した。
「これで俺を仲間にしてくれるんだろう?敵連合の仲間に。」
死柄木「それはこの資料が正しいかどうかが分かってからだ。」
黒霧「それにあなたは雄英生徒。あなたを容易に信頼するわけにはいきませんので。」
黒いもやを全身に纏う敵、黒霧はグラスを拭きながらそう言った。
「おいおい、俺は信用がねえってのか?確かにお前たちがこれから行う"作戦"には参加しないし俺が雄英生徒だから信頼しないってのもわかる。でも雄英にスパイがいた方が得だとは思うけどな。」
『彼の言う通りだよ弔。雄英にスパイがいれば彼らの情報を知ることができる。内部から壊すのも面白いと思わないかい?』
死柄木「そうだな。先生の言う通りだ。この作戦が終わったら今度は内部からズタズタに引き裂いてやろう…。」
「交渉は成立のようだな。となればお前たちに忠誠を誓おう。誓いの印に、その脳無とやらを強くしてやる。」
そして彼はその改人を外へ連れ出してゆく。
死柄木「世間はどう言う反応をするかな…?平和の象徴、オールマイトが敵に殺されたら…。」
死柄木はニタニタと不気味な笑みを浮かべる
強大な悪意がまた鼻の先に迫っている。今日も夜は暗闇に包まれていく。