結論から言おう。トガヒミコはキュリオスに辛勝した。初めこそ数の暴力とキュリオスの"個性"に圧倒され大怪我を負ったが、トガの"個性"が覚醒し、好きな人間に変身した時にだけその人物の"個性"を操れるようになった。麗日お茶子の"無重力"を使用してキュリオスを墜落死させたのち、市民の倉庫の中で力尽きたのだった。
トゥワイス「あぁ…なんて…ことだ…!」
それを真っ先に発見したのはトゥワイスであった。彼は仲間意識が強い。特に死柄木とトガに関してはまさにヒーロー側のそれである。だからこそ今目の前で瀕死に直しているトガに負い目を負っているのだろう。
トゥワイス「血がたくさんでてる!冷たい…アツイゼ‼︎拭いてあげなきゃ…諦めよう、この子はもう死ぬ…ダメだ!生きてくれ!」
なんとか止血をしようと、持っていたハンカチやトガのスカートの切れ端なんかを当てがう。圧迫止血法なんて知らなかったので適当であったが、それでも幾分は効果があったのかもしれない。彼が慌てふためきながら応急処置を施している最中、背後から足音が聞こえた。
「おっと…これは大変なことになってんなぁ」
トゥワイス「シンイリか!ちょうどいいところに来た!お前なんかいらねぇ!」
その不気味な声の主はスタークだった。連絡はついているとは言っていたが、まさかこのタイミングで現れるとは思っていなかった。
トゥワイス「トガちゃんがヤバいんだ!」
スターク「オレが診てやる。大したことはできねえが…お前よりは何とかなるだろう。その代わり外を見張ってくれ。解放軍のやつが来てるかもしれない」
トゥワイス「ああ、頼んだぜ」
そういうとトガから手を離して立ち位置をスタークと交代する。
トゥワイス「そういえばお前遅れてきたけど一体何やって…」
トゥワイスがスタークの方に振り向いた瞬間だった。スタークはトゥワイスの頬に殴りかかり、トゥワイスはぶっ飛ばされてしまった。
トゥワイス「…は?…え?は?…なんで…」
スターク「何でって…そりゃ目的のためだ。仕方ないだろう?」
トゥワイス「裏切ったのか…!?俺たちは仲間じゃ…」
スターク「よく言うよ。俺の素顔も見たことないのになぁ…。」
スタークはやれやれと首を振る。確かにスタークには不審な行動が多い。しかしそれは荼毘も同様だった。それのスタークも荼毘もどちらもヴィラン連合のために成果を残したのは事実。だからこそ荼毘同様、スタークも信頼していたのだ。しかしそれは今の発言で全てひっくり返ってしまったらしい。
スターク「あっ、そうだ。せっかくだし俺の素顔でも見せてやるよ」
スタークはトランスチームガンを取り出してコブラロストフルボトルを引き抜いた。
出会ってから半年以上、スタークは名前も顔も何もかも偽り倒していた。いや、正確には偽の姿を見せたり、真の姿を見せても記憶を消したりすることで彼らの記憶には一切として残っていない。いずれにしろ、スタークの正体について知っている者はヴィラン連合にはいなかった。そんな彼の素顔は…
トゥワイス「お…俺…?俺…なのか…!?」
額の中央に傷。金髪の短髪で少し角張った頬、髭の生えた面。間違いない。自分だ。
スターク「信じられないのか?だったら見せてやる。」
そういうと彼は手を前に出し、地面に向かって赤い粒子を放出し始めた。その粒子は次第に形を成し、最終的にもう一人の自分、分倍河原仁を生成し始めた。
トゥワイス「なんで…俺…いやでも…"二倍"…!…もしかして俺のコピー…?いや…目の前のソイツがホンモノなのか…?」
その光景を見たトゥワイスは動悸が止まらなくなった。呼吸は浅くなり、心拍が異常に早くなる。目の前の存在が、繰り出された"個性"が、スタークが分倍河原仁であることを証明してしまっていた。それどころか今生きている自分はホンモノなのか、それとも目の前の奴がホンモノなのか、自分の意思は存在しているのか…。
アイデンティティの消失。これまでトゥワイスが大怪我を避けてきたのも、自分がコピーであるかもしれないという不安から逃げるための行動だった。観測しなければ分からない。しかし今、目の前の存在を観測してしまったがために、自らがコピーである可能性が生まれてしまった。
スターク「これでわかっただろ?オレはお前だ。」
トゥワイス「なんで…なんでなんでなんで…!!!」
視界が白くなっていく。目眩がしてくる。あまりの辛さに胃の内容物を吐き出してしまった。自分が自分じゃないような、今までのこと全てが偽物であるような、その思いが己を襲う。トラウマの再来は彼にとって何よりも恐ろしいものだった。
スターク「やれ」
スタークは生み出した分身のトゥワイスに指示を出し、動けなくなったトゥワイスの腕の骨を折る。
トゥワイス「グァァァァァッ!!!」
バキッと音が聞こえる。骨が折れ、激しいほどの痛みが朦朧としていた意識を呼び覚ます。
トゥワイス「いてぇ!!!イテェよ!!!痛い痛い痛い!!!痛いのに…消えねぇよ俺!!!」
今までずっと大怪我は避けてきた。自分が消えるのが恐ろしかったから。コピーであるかもしれなかったから。なのに消えない。骨折しても痛みが自分が本物である事実を伝えている。まさに痛烈に実感している。
スケプティック『おい、あんまりやりすぎるなよ。分倍河原は解放軍に引き入れる』
スターク「ああ、わかっている。トガは殺してもいいんだろう?」
スケプティック『奴のトラウマを刺激するにはその方がいいだろう。死んでしまったキュリオスのためにもな。』
耳元にある小型通信機でスケプティックとやりとりする。彼の指示を受けてスタークはトガに近づく。
トゥワイス「やめろ!!!トガちゃんに近づくな!!!」
トゥワイスの懇願を全く効かず、ズカズカとトガの前に行き、トガの胸をグッと踏みつける。そしてグリグリと足を擦り付けてはガンガンと何度も踏みつける。
ずっと不安だった。自分が本物なのかどうか。しかし今日、消えなかったことで本物だと確信した。ならば目の前にいるシンイリはなんなのか。過去、自分が増やした時に消え損ねたコピーの末路。もしくは分倍河原ですらない別の存在。そして目の前の存在は今、仲間を殺そうとするくせに嬉々として無駄な痛めつけを行っている。少なくとも
スターク「…ん?なんだ…?」
後ろから伸びる人影の数が増える。不審に思ったスタークは後ろに振り向いた。
トゥワイス「どけよ偽物!オレは仲間を殺さない!"個性"二倍!その恐ろしさ思い知れや!!!」
増えた人影の正体は"二倍"による無限増殖した自身であった。目の前の存在は"二倍"で増えた己のコピーですらない。自分と語っているだけの偽物。だからこそ己のコピーを増やしても仲間のためになら協力できる。トガを助けられる。その確信を得たトゥワイスは自身のトラウマを克服したのだ。
スターク「おっとぉ…こりゃ不味いな…流石にこの量を抑えるのは無理だな…」
スケプティック『それでもやれ!本物以外なら殺して構わん!』
スターク「やれやれ…例のブツでもあれば話は別なんだがなぁ。」
スケプティックの無茶な指令と例のブツが届かないことによる腹立ちで呆れるスターク。しかし仕事はやらなければいけないので、トランスチームガンを取り出し、シャカシャカとコブラロストフルボトルを振る。
【Cobra…!】
キャップを正面に合わせ、トランスチームガンのスロットに挿し込む。不吉な音声がその場を支配する。
スターク「蒸血…!」
【Mist Match…!!!Co・Cobra…!Cobra…!!! Fire…!!!】
トリガーを引き、銃口を下から上に向けるように手を動かす。すると煙がスタークを包み込み、紅の稲妻が煙の中から光る。そしてコブラの複眼とコブラの胸の紋章が青緑に光り、パチパチとその2色の火花が飛び散る。
そしてそこにブラッドスタークが再度出現した。
スターク「さて、軽く遊んでやるか」
スタークはそういうと胸の紋章からコブラのエネルギー体を2体召喚。各々が尻尾でトゥワイスたちを薙ぎ払ったり、飲み込んだりして蹂躙していく。
【Rifle mode!】
さらにスタークはトランスチームガンにスチームブレードを合体させてライフルモードに変形。スコープを覗きながら一体ずつ仕留めていく。さらに…
【Steam Shot!!!Cobra…!】
スタークはトランスチームガンにコブラロストフルボトルを再装填。そしてトリガーを引くと、弾丸がグネグネと蛇行しながら大量のトゥワイスたちを貫く。
スターク「まるで豆腐みたいだなぁ!サクサク殺せる!」
軽く殴るだけですぐに消滅。分身を繰り返したトゥワイスたちは、スタークにとっては非常に脆すぎた。
スターク「とは言え量が多すぎるな…」
ライフルモードのトランスチームガンでトゥワイスたちを斬り倒しながらそう呟くスターク。もはや街のある一画がトゥワイスたちで埋まってしまっている。そんな彼らを殴殺しているうちに、コンプレス、荼毘のいるところにまで辿り着いた。
コンプレス「ちょっ、おいおい!どうなってんの!?なんでこんなに増えてんの!?そんで…なんでそれをシンイリが殺してやがるんだよ!」
トゥワイス「あいつ裏切りやがった!」「トガちゃん殺そうとしたんだ!」「許せねえよな!」「増えてんのは仲間助けるためさ!」「少ねえからこそ大事なのさ!」
スターク「裏切ったとは酷いねぇ。これも目的のためだ。」
荼毘「それが仲間のやることかよ」
スタークは弁明しつつもトゥワイスを殺す手を止めない。今もそう言いながら適当な腕の振りで一体を殺した。
荼毘「なんでもいい。オレはお前のことが気に食わないからな!」
スターク「悲しいねぇ」
荼毘はそう言いながら蒼炎を放つも、スタークは右手から深紅の炎雷を出すことで相殺した。
荼毘「…お前…そんな力まで使えるのか…!」
スターク「見せたことなかったっけ?すでに知られているものと思っていたんだがなぁ」
不気味な笑いとともに彼はそう言った。
「ブラッドスターク様、お迎えに参りました。」
スターク「おおっ!ついにきたか鷲尾兄弟!」
そこにやってきたのは難波重工から現れた鷲尾兄弟、そしてハードガーディアン50体だった。
風「タワーの頂上で内海様がお待ちです。例のブツもそこに…」
スターク「ブラボー!!!それじゃ行ってくる。chao♪」
荼毘「行かせるか!」
雷「お前たちの相手は俺たちだ」
スタークを行かせまいと彼に向かって蒼炎を放つが、鷲尾雷が銃撃でそれを阻止する。その間にスタークは走って逃げてしまった…。
風「私たちはここで彼らの足止めです。」
コンプレス「また新しい敵ってことね。やってらんねえよな」
荼毘「でもやるしかねえだろ」
難波重工が泥花市に現着。これを機にヴィラン同士の抗争はさらに激化していくことになる。