万丈「ところで俺たち以外のチームってどうなってんだよ。そこんとこ何も説明なかっただろ?」
戦兎「台本によると…だいたい原作通りらしい。変わってる点は常闇が泡瀬洋雪と入れ替わってて、青山の代わりに洋雪がいる…って書いてある。B組の黒色支配に似てるからチームに入れたとかなんとか…。」
万丈「意味わかんねえ。ってかそもそも原作ってなんなんだよ!」
戦兎「俺に言われても知るわけないでしょうが!台本にそう書いてあったんだからしょうがないでしょ。そんなわけで騎馬戦がついに開始。初動で透明になり宙へ逃げるもすぐに爆豪に見破られ、さらに轟にまでロックオンされてしまう!」
万丈「そしてついに轟の氷でサシでの対決を強いられてしまった俺たち!一体どうなる第17話!」
戦兎「だから俺のセリフ取るなって!」
プレゼント・マイク『残り時間5分!緑谷チームと轟チームがついに対面だぁ!見どころは今だぞマスメディア!見出しにしやがれ!』
多くの注目が集まる緑谷vs轟戦。1000万を維持するのは難しいと思われていた緑谷たちだったが、10分近く保持していたことから、彼への期待も高まる。
緑谷「万丈くんは引き続きダイヤモンドで防衛、戦兎くんは消防車で轟くん対策をお願い!」
2人「分かった!」
そういうと戦兎はボトルを引き抜き、消防車とハリネズミのボトルを取り出す。
ちなみに、戦兎がフォームチェンジできるのは、麗日の無重力状態によって万丈だけでも緑谷を支えることができているからだ。麗日もちゃんと役に立っている。
【Harinezumi!Shoubousha! Best Match!!!Are you ready!?】
戦兎「ビルドアップ!」
八百万「させませんわ!」
戦兎の変身を阻止しようと、変身中にも関わらず八百万は小型ミサイルを放つ。しかしビルドの装備を生成するスナップライドビルダーがそれを受け止め、変身の阻止はできずに終わった。
【レスキュー剣山 !!!ファイヤーヘッジホッグ !!!イェーイ!!!】
そして戦兎は仮面ライダービルド、ファイヤーヘッジホッグフォームへ変身。轟、八百万、上鳴の対策はバッチリだ。
戦兎「多分轟は氷しか使ってこない。左側で一定の距離を保っていれば勝てる。」
相手に聞こえないようにそう伝える戦兎。緑谷たちも理解し、その通りに動いた。戦兎も放水銃のマルチデリュージガンを轟の方へ伸ばし、こちらに容易に近づけないようにする。
轟(クソッ。完全に対策されてるな…。氷は飯田が引っかかるし炎で溶かされる。その上に上鳴や八百万は万丈に阻止される。しかも基本相手は守りに徹してるから、なにかそれが崩れるきっかけがねぇか…。考えろ…!)
今のままでも十分に予選を突破できる。しかし彼は完膚なきまでの一位を目指す。あの憎き親父に報いるために。
プレゼント・マイク『残り1分!なんとこの狭いフィールドを逃げ回ってるぜ緑谷チーム!』
なかなか進展せず、拮抗している間に残り1分となっていた。
飯田「皆、残り1分弱、この後俺は使えなくなる。頼んだぞ。しっかり掴まっていろ。奪れよ、轟くん!」
そういうと飯田は下半身に力を入れ、力強く地面を蹴った。
飯田「トルクオーバー!レシプロバースト!!!」
その瞬間、飯田は足から物凄い勢いの煙を発し、猛スピードで緑谷を横切る。そしてすかさず轟は緑谷の頭部にある1000万のハチマキを掴み、勢いよく奪い取った。
轟「飯田、何だ今の」
飯田「トルクと回転数を無理矢理上げ爆発力を生んだんだ。反動でしばらくするとエンストするがな。クラスメートにはまだ教えてない裏技さ。」
そして飯田がそう言ってから数秒、呆気に取られていた緑谷がようやく今起こった事態を理解した。0への転落。このままでは一位どころではない。最下位だ。
緑谷「突っ込んで!」
と緑谷が指示する前に、あらかじめ分かっていたかのように騎馬は動いていた。
戦兎「分かってる!取り戻すんだろ!?」
万丈「一位取り返してやるよ!」
麗日「絶対取ってねデクくん!」
3人は緑谷にそう伝えた。それを聞いて緑谷は、3人やオールマイト、母さんや応援してくれたいろんな人の期待を背負って今、ここにいるのだと強く強く思った。取り返さねばなるまい。
気づけば緑谷はハチマキを奪おうとするその右手にワン・フォー・オールの力を発現させていた。
緑谷(大丈夫だ!どのみち当てはしない!空を切るようにッ…!)
そんな緑谷に気圧されたのか、轟は無意識に炎を左腕に出してしまっていた。轟は一瞬、『俺は何を』と考えていたが、その隙を緑谷は見逃さない。
緑谷「おりゃあああ!!!」
と雄叫びを上げながら、1000万であろうハチマキを奪い取った。
緑谷「取った!取ったぁ!!!」
戦兎「待て!そのハチマキじゃない!」
戦兎にそう言われると、緑谷はハチマキの点を見る。70点だった。それを確認するやいなや、みんなは再び轟の方へ突撃する。
八百万「万が一に備えてハチマキの位置は変えてますわ!甘いですわ緑谷さん!」
さらに物間からハチマキを全て奪った爆豪が轟と緑谷の方へ単独で突っ込んでくる。この時点で残り10秒。
【Fullbottle! Steam Attack!!!】
万丈は上鳴の放電にいち早く気づき、ダイヤモンドの盾を生成。上鳴が使えなくなったがそんなことはもう関係ない。残り時間は5秒。緑谷はハチマキを取り戻そうと轟に腕を伸ばすが間に合わず…
プレゼント・マイク『Time Up!!!』
という声が会場に響き渡ってしまった。
自分たちの手持ちは70ポイント。明らかに上位4位には食い込まない。ああ、オールマイトの期待に応えられなかったと、緑谷の頬にふと涙が伝う。
プレゼント・マイク『早速上位4チーム、下から見てみようか!第4位、心操チーム!第3位、爆豪チーム!』
爆豪は点数が一位ではないことに怒髪天を突いていたが、そんな爆豪のことを緑谷は気にする様子もなく、ただどこか虚を見つめている。
プレゼント・マイク『そして第2位!轟チーム!!!』
ああ、ついに宣言されてしまった。と緑谷は思ったが、プレゼント・マイクの言葉に一同はみな驚愕した。
轟「俺たちが…2位…?」
訳がわからない。そりゃそうだ。確かにあの時、緑谷から1000万を奪い、そのまま自身の点数を維持していたはず。その認識は当然轟だけでなく、緑谷チームを含めた当事者たちも持っていた。
プレゼント・マイク『そして第1位は、10000600ポイント獲得の緑谷チームだ!!!』
彼がそう言った途端、会場が一気に湧きまくる。一度取られはしたものの、再び一位の座に返り咲き、予選を突破した緑谷たちに感動し、興奮しているのだろう。しかし当然、当事者の緑谷チームはおろか、そのハチマキを奪われた轟チームも納得がいかない様子だ。
緑谷「ちょっ、ちょっと待ってください!確かに残り1分くらいまで僕は1000万のハチマキを持ってましたけど、それは轟くんに取られてそのまま第二種目が終わったはずです!なのにその結果は…」
主審であるミッドナイトに異議を唱える緑谷。戦兎や万丈、轟、爆豪も加勢した。爆豪に至ってはただのいちゃもんではあるが、それでもこの結果は異常だと言えよう。しかしその文句もミッドナイトの次の一言で静まり返った。
ミッドナイト「あら?じゃあ
ニヤニヤと笑いながらミッドナイトは持っている棒で
万丈「クローズドラゴン…。確かに俺のだ。」
そこには1000万のハチマキを口に咥えたクローズドラゴンがいた。
実は緑谷が70Pのハチマキを奪っていた時、しれっとクローズドラゴンもハチマキを奪っていたのだ。ただ緑谷と轟の奪い合いの迫力に、誰もクローズドラゴンのことに気づいてなかっただけだった。
緑谷「よ、よかった〜!」
と緊張の糸と涙腺が切れ、涙をドバドバと流す緑谷。母親譲りの涙の量は噴水のようだった。
プレゼント・マイク『以上の4組が最終種目へ進出だ!!!1時間ほど昼休憩挟んでから午後の部だぜ!』
こうして無事に第二種目を終えた緑谷たち。反省をしながら生徒たちは先の2種目で消費したエネルギーを蓄える。食事の時間だ。
万丈「あ〜腹減った。飯にしようぜ戦兎!今日は何食おっかなぁ?」
戦兎「わり。今日は一人で食ってくれ。実はまだスパークリング完成してねえから作りたいし。」
万丈「じゃあ昼飯どうすんだよ。」
戦兎「作りながらおにぎりとか…?とにかく今から雄英の工房に材料とか取りに行ってくる。」
そういうと戦兎は駆け足で工房の方へ向かった。
万丈「まあいいか。おーい鉄哲〜!一緒に飯食おうぜ〜!」
戦兎にフラれた万丈は鉄哲と飯を食うことにした。B組の中では彼が一番仲がいいのだそう。バカ同士波長が合うのかもしれない。
戦兎「代替物質が上手く働いてくれれば、理論上はこれでいけるはず…。あとは組み立てて、ぶっつけ本番で行くしか…。」
一方、工房に材料を取りに行った戦兎は控え室に帰る途中だった。コスチュームの制作免許を最年少で取得しているため、ヒーロー科であるにも関わらず工房へ自由に出入りしたり、材料を自由に使えたりするのだ。もはやサポート科である。
戦兎「とにかく今から昼飯食いながら…」
ブツブツと独り言を話しながら歩いていると、何かにドンッとぶつかった。人だろうとなんとなく感じた戦兎は、『すみません』と一言言って去ろうとするが、ガシッと腕を掴まれてしまった。
「桐生戦兎…だな?」
そう言われて戦兎は顔を見た。マスメディアをあまり見ない戦兎でも知っている顔だ。
戦兎「あなたは…」
「焦凍の父だ。フレイムヒーロー、エンデヴァーと言った方がいいか?」
戦兎を引き止めたのはなんとエンデヴァーであった。オールマイトとの会話を終えたあとのようで少しだけ気が立っている様子である。
戦兎「俺になんの用ですか?今急いでるんですけど…」
エンデヴァー「焦凍のことだ。お前に頼みがある。…アイツに左の力を使うように指示しろ。」
左の力…。炎だ。戦兎も薄々気づいていたが、轟が炎の力をわざと使わないのにはそれなりの理由や過去があると考え、あえて今までそのことに触れて来なかった。
戦兎「あなたの言いなりになるつもりはありません。でも一つ聞きたいことがあります。…何故彼は炎を使おうとしないんですか。」
エンデヴァー「つまらん意地を張ってるだけだ。氷だけでヒーローになれるという甘ったれた考えを持ってる。それではオールマイトを超えるヒーローにはなれん。アイツにはオールマイトを超えるという義務があるのだ。」
戦兎はなんとなく事情を察した。轟が父親のことを嫌っているのには理由がある。その結果彼の思い通りにはなるまいと反抗しているのだろう…と。そうでなければ『つまらん意地』で炎の問題を片付けるはずがない。
戦兎「…あなたと彼にどんな関係があるか知りませんが、俺から轟に言えることは一つ。」
戦兎は右手でグッと拳を作って、エンデヴァーを睨みつけて口を開く。
戦兎「半端な気持ちで正義のヒーローになろうなんて思うな。」
『失礼します』と言って戦兎は控え室へと戻っていく。すれ違い様に緑谷に宣戦布告された轟が来た方向へ向かっていくのを見た。
轟「…話は一部始終聞いた。なに人のクラスメート買収しようとしてんだクソ親父」
エンデヴァー「お前が左を使わないからだろ。」
轟「うるせえ…。とにかく戦兎買収しようとすんな。」
そういうと轟は再びカツカツと歩いて去ってしまった。
一瞬ふと昔のことを思い出す。母さんと一緒にテレビを見ていた時のことだ。いつもあの時の母さんのセリフが思い出せない。なのにあの時、戦兎の言葉を聞いたあの時だけは、鮮明に母さんの言葉が浮かんだ気がした。
いつからだろう。俺がアイツを憎むことしか、アイツに復讐することしか考えられなくなったのは。俺の中から正義が消え失せてしまったのは…。
廊下を歩く轟の後ろ姿は、なんだか少し、哀愁が漂っていた。