天才物理学者と筋肉バカのヒーローアカデミア   作:いぷしろん

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2((e^π)-π)≒40話

万丈「はぁ…はぁ…。なあメリッサ、一体どこまで走りゃ良いんだよ!」

 

138階の通路にて、万丈、緑谷、麗日、メリッサの4人は上階へ向けて走っていた。先ほどから他のみんなが残ったサーバールームがらズドーン!と大きな音が聞こえ続けている。

 

メリッサ「もうちょっと走って!そしたら少しは楽できるから!」

 

メリッサの言うがまま、がむしゃらに走っていく。そうしてたどり着いた場所は…

 

メリッサ「風力発電システム。ここからならあそこにある非常口から上層部へと向かうことが出来るわ。」

 

万丈「なるほど!頭良いな!でもどうやって…」

 

メリッサ「お茶子さんの触れたものを無重力にする"個性"ならそれが可能よ。」

 

手をプルプルと震わせながらメリッサはそう言った。怖いのだろう。しかし今はそうも言っていられない。

 

麗日「分かった。やってみる!2人とも万丈くんに掴まって!」

 

仮面ライダークローズとなっている万丈はガタイが良く掴まりやすいからだろう。メリッサと緑谷はガシッと万丈にしがみついた。そして3人に麗日が触れると無事に足が地面から離れフワッと上昇。上手くいくかと思われたが…

 

万丈「麗日!後ろ後ろ!」

 

麗日の後ろのドアから警備ロボが大量に接近。流石にこの数を1人で相手にはできない。

 

緑谷「麗日さん!"個性"解除して!早く!」

 

麗日「できひん!今そんなことしたらみんなを助けられなくなる!」

 

万丈「だったら…」

 

万丈は急いで懐からトランスチームガンを取り出し、麗日の方へ投げた。麗日はガタンと音を立てて地面に落ちたトランスチームガンを拾った。そうしている間にも背後にはゾロゾロと大量の警備マシンが近づいている。

 

万丈「それ使ってなんとか俺たちが上に上がるまで凌ぎきれ!」

 

麗日「わ、分かった!」

 

麗日はトランスチームガンを握りしめてトリガーを引いた。指先で触れているため、無重量状態となっているトランスチームガンの反動は凄まじく麗日は吹き飛ばされてしまった。尻餅をついた麗日はどうにかしようとするも迫り来る幾多のマシンには勝てないと恐怖を抱いた。もうダメだと飛びかかってくるマシンを目の前に目をギュッと瞑った。その瞬間、カンッ!となにか弾が鉄に当たったような音がした。

 

「大丈夫か?」

 

麗日はゆっくりと目を開いた。すると目の前にはコウモリを模した真っ黒な戦士がいた。ナイトローグだ。その後ろには他の警備マシンと戦っている爆豪、轟、切島の姿が見えた。

 

幻徳「コイツらは俺たちが足止めするぞ!」

 

爆豪「うっせえ髭!俺に命令すんな!」

 

緑谷「ありがとう!みんな!」

 

なんやかんやでナイスコンビネーションを発動する4人。そのおかげでなんとか緑谷ら3人が上空へ到達するまで耐えきれそうだ。そう誰もが思った時だ。

強風が吹き始めた。緑谷たちは風に煽られて非常口まで段々と遠ざかっていく。よくよく考えればここは風力発電システム。当然風が吹く場所に設置しなければ意味がないので強風に煽られないことの方がおかしい。

 

轟「爆豪!プロペラを緑谷に向けろ!」

 

爆豪「だから俺に命令すんな!」

 

文句を言いながらも機転を効かして爆豪はプロペラを爆破で無理矢理捻じ曲げて緑谷の方に向けた。すると轟はプロペラに向かって炎を打ち込んだ。プロペラ付近の空気が熱せられ一気に膨張。暖かい空気は上に向かって行くため、少しではあるが上向きの熱風が発生した。その影響でなんとか遠ざかりすぎる前に上昇できるだろう。

しかしその影響が悪い方向にも働いた。熱風で進行方向が変わったためか、今度はビルに衝突しそうになった。

 

万丈「ここは俺に…」

 

緑谷「いや、ここは僕に任せて!」

 

みんなにだけ頼って自分だけ力を温存するわけにはいかないと、緑谷は右腕に100%のワン・フォー・オールを巡らせた。

 

緑谷「デトロイト・スマッシュ!!!」

 

彼はその渾身の一撃で壁をいとも簡単に崩壊させ、そのままの勢いで3人ともビルの中に投げ出された。メリッサのフルガントレットのおかげか、右腕に負傷は全くない。

 

麗日「中に入った!解除!」

 

指の肉球同士を合わせて"個性"を解除すると重力が復活してドシンと地面に打ち付けられた。

 

万丈「いってぇ〜!2人とも大丈夫か?」

 

緑谷「僕は平気。メリッサさんは?」

 

メリッサ「私も大丈夫。ちょっと掠っただけだから。」

 

万丈「なら良かった。にしてもここは…非常階段か。」

 

どうやら入った先は非常階段だったらしい。階数は198階。一気にショートカットできたようで、目標の屋上まであと2階だ。そう思ったその時だ。

 

「はぁぁ!!!」

 

という叫び声と共に謎の男が剣のような左腕を突き刺そうと3人に襲いかかってきた。万丈は慌てて腕をクロスしてガード。緑谷はメリッサを抱えてゴロンと回避した。

 

緑谷「お前は確か…」

 

パーティー会場にて、ボスらしきヴィランにソキルと呼ばれていたヴィランだ。

 

ソキル「胸糞悪いガキどもが!ヒーロー気取ってんじゃねえぞ!」

 

万丈「うるせえ!そっちこそヴィラン気取ってんじゃねえ!」

 

クロスした腕をバッと広げ、相手に隙が生じたその瞬間に腹に一発、渾身のストレートをお見舞いした。生身で仮面ライダーの攻撃を受けたためか、階段に強く身体を打ち付けるほどにぶっ飛び、そのまま気絶した。

 

緑谷「もう少しで最上階だ。急ごう!」

 

3人はそのまま階段を駆け上がる。199階、そして200階。警備員はいたもののロボよりも丈夫さを持ち合わせておらず、突破するにはあまりに簡単すぎた。

そしてタワー最上階。中央エレベーターの前にあるという制御室へ、なるべく音を立てないよう慎重かつ迅速に動いていた。しかしその途中のことだった。

 

緑谷「待って、誰かいる!」

 

メリッサ「パ、パパ…!?どうして最上階に…!?」

 

陰から中をそっと覗くと、そこには保管庫にて機器を操作しているメリッサの父、デヴィットとその助手、サムがいた。連れて来られたように見える。ヴィランの狙いはこの保管庫の中にあるものなのだろうか。

とにかく様子を見守ってみる。

 

デヴィット「コードを解除できた。1147ブロックへ」

 

サム「はい。」

 

サムはデヴィットの指示通り、1147ブロックの前に行った。ロック解除を確認し、ロッカーからスーツケースを取り出した。

 

サム「やりましたね博士!全て揃っています!」

 

スーツケースを開けるとそこには何やら特殊な機器が大事そうに入っていた。

 

デヴィット「ついに取り戻した。この装置と研究データだけは誰にも渡さない。渡すものか…!」

 

サム「プラン通りですね!ヴィランも上手くやってるみたいです!」

 

デヴィット「ありがとう。彼らを手配してくれた君のおかげだ。サム」

 

万丈「ちょっと待てそりゃどういうことだよ!!!」

 

ついいたたまれなくなり、万丈は物陰から飛び出してデヴィットの胸ぐらをガシッと掴んだ。それを見た2人もゆっくりと彼らの元へと出てきた。

 

デヴィット「誰だ君は…ってメ、メリッサ…!」

 

メリッサ「"手配した"ってなに?もしかしてこの事件パパが仕組んだの?その装置を手に入れるために…?」

 

懐疑の目を向けられるデヴィット。しかし彼はしかめ面をして何も話さない。

 

万丈「何も話さねえってことはそうだってことだろ。コイツもグルだった。アンタメリッサの親父なんだろ?ここに来るまでにどんだけの人が不安になったか、その頭で分かんなかったのかよ!なぁ!!!」

 

メリッサ「やめて!万丈くん!」

 

万丈はついカッとなり、掴んだ胸ぐらを激しく持ち上げた。そんな彼を止めに万丈の手を取った。

 

デヴィット「…いや、良いんだ。メリッサの言う通りこれは私が仕組んだことだ。」

 

デヴィットはそう告白した。万丈はとりあえず持ち上げた手を離した。デヴィットはドサっと尻餅をつき、床に手をついた。

 

緑谷「どうして…どうしてあなたがそんなことを…!」

 

サム「博士は奪われたものを取り返しただけです。機械的に"個性"を増幅させる画期的な研究を。」

 

緑谷「"個性"を増幅…」

 

サム「ええ、そうです。まだ試作段階ではありますがこの装置を使えば薬品などとは違い、人体に影響を与えることなく"個性"を増幅させることができます。しかし…」

 

サムはこの事件の成り行きを全てを話した。発明と研究データがスポンサーによって没収、凍結させられたこと。偽物のヴィランを雇い、彼らが奪ったことにすることで細々と研究を続けることができること。それを今回のレセプション・パーティーで実行に移すこと。

 

メリッサ「嘘でしょパパ…嘘だと言って!私の知ってるパパはこんなことしない!なのにどうして!」

 

デヴィット「オールマイトのためだ。お前たちは知らないだろうが、彼の"個性"は消えかかっている。」

 

5年前にAFOと対決した時の弊害でオールマイトは"個性"の制限を余儀なくされ、緑谷に"個性"を譲渡したことでその制限がいっそう厳しくなってきている。しかしこの装置があれば現状維持はもちろん、全盛期の力を取り戻すことだって可能だ。そしてNo.1ヒーローとしてより長く君臨し人々を救うことが出来る。デヴィットはそう主張した。

 

デヴィット「お願いだ!せめてこの装置をオールマイトに渡させてくれ!そのあとならどんな裁きも…」

 

メリッサ「命懸けだった。囚われた人たちを助けようとデクくんや万丈くん、彼らのクラスメートのみんながここに来るまでにどれだけの犠牲が出たと思ってるの!!!」

 

デヴィット「犠牲…?どういうことだ?彼らは全て芝居のはず…」

 

「もちろん芝居をしてたぜ。偽物ヴィランという芝居をな。」

 

誰かが入ってきた。ヴィランを演じていたはずの大柄でマスクを被っている男、ウォルフラムだ。

すぐに緑谷と万丈は戦闘態勢に入るも、突如として現れた鉄の柱に雁字搦めにされてしまった。鋼鉄なだけあって中々頑丈である。

 

ウォルフラム「サム、装置は…」

 

サム「ここに」

 

サムはそう言ってデヴィットの手の中にあったスーツケースを奪い取った。

 

デヴィット「サ、サム…お前まさか最初から…!」

 

サム「だ、騙したのはあなたです。あなたは手に入れるはずだったもの…全てを失ってしまった。せめてお金くらいもらわなければ…割に合いません!」

 

サムは怯えながらそう言った。ただ名誉などを失った代わりに金をくれという醜い欲望が彼にこのような行動をさせたのだ。

 

ウォルフラム「約束の謝礼だ。」

 

彼は懐から銃を取り出し、サムの右手を撃った。血が溢れると共に自然とスーツケースから手が離れ、サムは倒れ込んだ。

 

サム「な、なぜ!約束が違う!」

 

ウォルフラム「約束?忘れたなぁ…。これは謝礼だよ。」

 

下衆のような笑みを浮かべて銃口をサムに向ける。そしてトドメを刺すためトリガーを引いた。その時だった。

 

デヴィット「ガハッ…」

 

メリッサ「パパ!!!」

 

なんとデヴィットがサムを庇って自らを身代わりにウォルフラムの弾丸を受けた。胸を貫通し、ドロドロと血が溢れ出る。

 

ウォルフラム「今更ヒーロー気取りか?どんな理由があろうとアンタは悪事に手を染めた。俺たちが偽物だろうが本物だろうがアンタが犯した罪は消えない。俺たちと同類さ。あんたはもう科学者でいることも研究を続けることもできない。ヴィランの闇に堕ちていくだけだ。」

 

万丈「んなわけねえだろ!!!」

 

万丈は頭部の発熱強化装置(ドラゴンフェイスモジュール)を使って自身の装甲を融解寸前まで加熱させることで自身を覆う金属柱をウォルフラムに気付かれぬようにゆっくりと融解。そして解放された万丈は勢いよく地面を蹴ってウォルフラムを殴りつけた。

 

ウォルフラム「コイツ、いつの間に…!」

 

急いで地面に手を当て、再び金属で万丈を拘束しようとする。しかし万丈は十分に帯熱しているため、金属で拘束しようとしても水飴のようになってしまう。

そこでウォルフラムは作戦を変え、拘束を解くと同時に幾多もの金属壁を作り出した。これなら万丈と金属との接触面積を少なくでき、より妨害できるからだ。拘束を解いたおかげか、緑谷も自由になった。

 

緑谷「メリッサさん、今のうちに制御室へ…!ここは僕たちが対処します!」

 

メリッサ「わ、分かったわ!」

 

万丈と緑谷がウォルフラムらを引きつける間にメリッサに警備システムを解除してもらおうという計画だ。しかし問題はウォルフラムらをたった2人で相手出来るかということだ。

 

万丈「いくぞ緑谷!」

 

緑谷「うん!」

 

緑谷はOFAを、万丈は融解寸前の熱を全身に巡らせた。さらにビートクローザーをも取り出してその剣も帯熱させる。

万丈は右から、緑谷は左からウォルフラムに攻めようとするが、金属を操る"個性"によって繰り出される金属柱が幾本も自分達に押しつけられる。その度に熱で溶かし、OFAで破壊しても無尽蔵にやってくる。次第に生成速度が処理速度を著しく上回るようになって押しつぶされた。

 

ウォルフラム「手こずらせやがって…。いくぞ」

 

ウォルフラムは手刀でデヴィットを気絶させると肩にかつぎ込んで出ていった。その時だ。外からガシャンガシャンという音が聞こえた。シャッターが上がる音だ。メリッサが警備システムを解除してくれたらしい。

しかし緑谷、万丈も金属柱に押しつぶされ行動不能。無事に装置を奪い返せるのだろうか…。

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