ガキンと金属同士の強くて鈍い音が鳴り響いた。
戦兎「なんとか間に合ったみたいだな。」
オールマイト「桐生少年…!」
オールマイトに迫り来る巨大な金属柱を
緑谷「戦兎くんに万丈くん!良かったぁ…!」
緑谷は万丈とオールマイトの安否がわかったからか、ヘナヘナとその場にへたり込んでしまった。無理矢理8%にまで引き上げたせいか少し身体が軋む。
万丈「いや、まだ何も終わってねえ。あの化け物、無茶苦茶に強いぞ」
戦兎「俺たち4人でなんとかするしかないな。」
戦兎はそう言うと万丈、オールマイト、緑谷の3人を暖かい炎で包み込んだ。ジワジワと傷が治っていく。全回復…とまではいかないが、それなりに戦えるまでにはなんとか回復したようだ。
万丈「そういや戦兎、お前アレ持ってねえか?」
万丈は盗んできたものを取り出してジェスチャーをしながらそう言った。
戦兎「…一応予備の分ならあるけどまさか…」
万丈「そのまさかだ!」
戦兎「自信満々に言うんじゃないよ!この筋肉バカ!」
はぁ…と大きなため息をつきながら戦兎は懐からとある物を取り出し、投げ渡した。
戦兎「お前、盗むだけ盗んどいてそれ忘れるのはないだろ。…今のお前なら十分使える。これで勝てないとか許さないからな。」
万丈「分かってるって。今の俺は負ける気がしねえからよ!」
力を回復させた万丈は戦兎の隣に並ぶ。そして戦兎と万丈の隣にそれぞれオールマイト、緑谷が並び、4人でウォルフラムの前に立ち並んだ。
ウォルフラム「ふん。雑魚がいくら何人増えようと今の俺には敵うまい。」
万丈「うるせえ!俺は…俺たちはお前を倒さなきゃなんねえんだよ!じゃなきゃ博士にもメリッサにも笑ってもらえなくなんだろうが!」
そして万丈は戦兎から盗んできたスクラッシュドライバーを腰にあてがい、戦兎から受け取ったドラゴンスクラッシュゼリーのキャップをカチッと回した。
それと同時に戦兎は懐からラビットタンクスパークリングフルボトルを取り出してシャカシャカと振り、プルタブを開けた。
【Dragon Jelly!】
【RabbitTankSparkling!!!】
そして2人ともボトルとゼリーをそれぞれスロットにセット。待機音声が流れ始める。戦兎はボルテックレバーを回し、万丈は胸の前で腕をクロスさせた後にゆっくりと腕を下ろして2人ともファイティングポーズを取った。
【Are you ready!?】
戦兎・万丈「「変身!!!」」
叫ぶと同時に万丈は右腕をグッと下げ、アクティベイトレンチを押し下げた。ゼリー内の成分が押し出されてドライバー内部にエネルギーが溜まっていく。アクティベイトレンチを押し下げると足元に万丈を囲うようなビーカーが出現。
【潰れる!流れる!!溢れ出る!!!
Dragon In Cross-Z Charge!!!BRRRRRAAAAA!!!】
【シュワッとハジける!!!
RabbitTankSparkling!!!イェイイェーイ!!!】
収縮したヴァリアブルゼリーは万丈の上部で弾け飛ぶと同時に万丈の体に白銀の素体を形成。さらに頭部の
そして万丈は仮面ライダークローズチャージ、戦兎は仮面ライダービルド、ラビットタンクスパークリングフォームへと変身した。
ウォルフラム「所詮は姿が変わっただけ…。お前らは圧死する運命なんだよ!」
ウォルフラムは数多くの金属柱をまたもや生成し、万丈たちに襲いかかってくる。しかし万丈は左腕にヴァリアブルゼリーを纏わせてツインブレイカーを装備。アタックモードの状態でドラゴンフルボトルをスロットにセットした。
【Single!】
少しの間待機音声が流れる。それと同時に万丈は左腕に力をためながら構えた。
【Single Break!】
そして金属柱にツインブレイカーを突き刺す。点で接したツインブレイカーの先端、レイジングパイルが超高速回転と超攻撃力で金属柱を次々と破壊。
ウォルフラムは金属柱を諦め、金属で巨大な右腕、左腕を組み立てた。ざまざまな金属が混ざっていて黒っぽくなり、所々紫色のチューブのようなものが巻き付いていた。
ウォルフラムはそんな右腕を大きく振りかぶった。これでめった打ちにするつもりだろう。
戦兎「万丈!これを使え!」
万丈「分かった!」
戦兎はタカフルボトルを投げ渡した。万丈はタカフルボトルをキャッチし、すぐにスロットにセット。アクティベイトレンチを押し下げた。
【Charge Bottle!潰れな〜い!Charge Crush!!!】
万丈はヴァリアブルゼリーを背中に纏わせてソレスタルウィングを生成。すぐさま飛んで避けた。戦兎やオールマイト、緑谷も泡を足場に空中へ逃げたり"個性"を使ったりして避けた。ウォルフラムは次々と両腕で殴り続けるもみんな空中をぴょんぴょんと飛び回り攻撃が当たらない。それどころか本体の方へ近づきつつある。
ウォルフラム「ちょこまかするんじゃねえ!!!」
彼は激怒し全方位に高密度の金属柱を発射。流石に避けきれない。これは破壊するしかないと思っていたが…
ウォルフラム「なっ、何だッ!!!」
突然金属柱が凍り始め、動きを停止し始めた。さらに凍結した金属柱が次々と爆発し始め、ボロボロと地面に金属柱が落下し始めた。
轟「大丈夫か!」
爆豪「テメェら何クソダセェラスボスにやられてんだ!ああ!?」
最大火力で爆破したせいでズキズキと痛む右手を押さえながらそう叫ぶ爆豪。
さらに下には他の仲間もいた。
轟「この金属は俺たちに任せろ!」
万丈「サンキュー!これでアイツに攻撃できる!!!」
万丈たちの進行を妨げようとしても爆豪らが全て邪魔をしてしまう。そのおかげもあり、ついに本体に攻撃できる距離まで近づけた。そして万丈はクローズドラゴンを呼び出しツインブレイカーに装填した。
【Ready Go!Let's Break!!!】
万丈は体から出現させた
万丈「オラアアアアア!!!」
大きな叫び声と共に強力なパイルの一撃を相手に叩き込む。あまりの激しい攻撃に周囲を閃光が包み込んだ。
その瞬間、ウォルフラムがニヤッと笑ったように見えた。
戦兎「万丈が…倒したのか…?」
咄嗟に瞑った目をゆっくりと開ける。するとそこには…
ウォルフラム「ふぅ…危ない危ない。一時はどうなるかと思ったが…思いの外シンイリのくれた力は強いようだな。ふっはっはっはっは!!!」
万丈「クッソ…」
右手でパイルを受け止め、左手で万丈の首根っこをがっしりと掴んでいたウォルフラムの姿があった。変身はまだ維持できているが、連戦ばかりでさらにクローズチャージの負荷もある。限界が近いようだ。
戦兎「その手を離せ!!!」
戦兎は全身にラピッドバブルを巡らせ、超高速で金属柱を渡ってウォルフラム本体の元へ接近。それと同時に緑谷もまた、戦兎同様にワン・フォー・オールを巡らせて急接近した。
緑谷「スマーッシュ!!!」
戦兎「ハァァァァァァァッ!!!」
戦兎は左腕にインパクトバブルを纏わせ、戦車が如き強烈な一撃を緑谷と共に顔面に放った。ノーガードで攻撃を受けたウォルフラムはよろめき、万丈を掴む左手の力が一瞬弱まった。その瞬間にオールマイトが超スピードで万丈を奪い去った。
オールマイト「大丈夫か、万丈少年。」
万丈「大丈夫っす…。少しヘマしちまったけど…。」
と言いつつ、身体は限界だ。万丈のハザードレベルは4.0ちょうど。暴走は前世界の記憶もあり克服できているとはいえ、身体的慣れが皆無なので体にガタが来ているのだろう。
万丈たち4人はガタガタになっている地面に着地し、ウォルフラムを見上げた。
ウォルフラム「くたばりぞこないが…。そこまで死にたいのなら殺してやる…。後悔するが良い…!」
ウォルフラムはそう言うと、自身が纏っている金属や配線などを超高密度に圧縮。6mほどの機械鎧を着用しているかのようになり、その分頑丈さが激増した。さらに金属と共にウォルフラムの身体は若干赤みを帯び、金属越しでも分かるほど筋肉が肥大化。そして両手にはデカいハンマーが二つついており、胸部は高密度のエネルギーを蓄えているためか、黄色く発光している。
緑谷「あの筋肉の膨張…金属によるものじゃない…!」
オールマイト「まさか…」
ウォルフラム「ああ。この強奪計画を練っている途中、あの方から連絡が来た。是非とも協力したいと言ったよ。なぜかと聞いたらこう言った。『オールマイトの親友が悪に手を染めるというのなら是が非でも手伝いたい。その事実を知ったオールマイトの苦痛に歪む顔が見られないのが残念だけどね…』とな。」
オールマイト「オール…フォー…ワン…!」
オールマイトは深刻な顔をしてウォルフラムを睨みつけた。怒りが少しずつ込み上げているのだろう。いつも笑っている顔も今回ばかりは笑えなくなっていた。
"筋力増強"。それが彼の受け取った二つ目の"個性"だ。さらにシンイリからのハンマーロストフルボトルによるスマッシュ化。そのことには戦兎たちは気がついていないが、勝機が見えてこないのは分かる。
万丈「オール・フォー・ワン?なんだそれ、学級目標かよ」
戦兎「んなわけないだろ?文脈から考えてヴィランの名前以外ないでしょうが!」
万丈「だったらぶっ潰しに行かなきゃだな。」
緑谷「ちょっ、2人とも今そんな話してる場合なの!?」
万丈「だっておっさんの話長えし…。」
能天気な会話をしている万丈たちに思わずツッコミをしてしまった緑谷。万丈たちはオール・フォー・ワンのことを知らないため退屈になるのは分からんでもないが、それにしては緊張感がなさすぎる。
万丈「つーかぶっちゃけそのオールなんたらっつーのは後回しで良いだろ。今はソイツぶっ飛ばしてみんな助ける方が先だ。そうだろ?オールマイト先生?」
オールマイト「ああ…。そうだ、そうだとも!私は人を救うヒーローだ!ヤツがなんだと言ってられないよな!万丈少年!」
オールマイトは再び笑みを取り戻した。
辛くても笑うんだ。それがお師匠からの教えだから。
オールマイト「行くぞッ!!!」
その掛け声と同時に地面を蹴り飛ばし、息をつく間も無くウォルフラムは殴り飛ばされた。それでもウォルフラムは少しのけぞる程度。しかし間髪入れずに彼の後を追う者がいた。
緑谷「デトロイトスマーッシュ!!!」
【Ready Go!!!Vortex Attack!!!】
100%の力でウォルフラムを殴りつける緑谷、そしてユニコーンフルボトルとドリルクラッシャーの力を使って腹の装甲をガリガリと削り取る戦兎だ。腹部はただの鉄で覆われているだけ。比較的すぐに削り取れている。
さらに戦兎はインパクトバブルを右足にまとわせ、そこでもまた装甲を削り取りながら強大な力で蹴り飛ばした。
ウォルフラム「小癪な真似を…!」
ウォルフラムは右腕を一振りして緑谷たちを弾き飛ばすが、その瞬間に万丈が急接近。戦兎が削り取った拳二倍ほどの大きさの装甲の穴に照準を合わせた。
【Single!Twin!】
ドラゴンフルボトルとドラゴンスクラッシュゼリー、二つのボトルを装填。パイル先端に蒼白い超高熱の炎をコーティングした。
【Twin Break!】
そしてそのまま装甲が削り取られたところにパイル先端を突き刺した。内部のウォルフラム本体まで攻撃が行き届いたためか、ウォルフラムは大きくノックバックした。
万丈「一気に決めんぞ!」
その掛け声と共にオールマイトと緑谷の2人は右腕に持てる力、"個性"を100%集中させ、戦兎と万丈はそれぞれボルテックレバーとアクティベイトベンチを回したり押し下げたりして必殺技を発動。2人は空高く舞い上がった。
【Ready Go!!! Sparkling Finish!!!】
【Scrap Break!!!】
戦兎と万丈は三種のバブルとクローズドラゴン・ブレイズをそれぞれ右足に纏う。さらにワームホールのような図形が宙に出現。小さい方の穴の先にはウォルフラムの装甲の穴がある。
「「ダブル・デトロイトスマーッシュ!!!」」
オールマイトと緑谷は戦兎の開けた装甲の穴に向かって右腕で殴りつけ、戦兎と万丈はそれぞれ炭酸とゼリーの推進力でワームホールの中を勢いよく通り抜けていく。
そして四つの力が今、一点に集中した。
ウォルフラム「負けて…たまるかァァァァァァァッ!!!!!」
そう叫びながらウォルフラムは一点に加わった力の衝撃で遥か彼方にぶっ飛ばされながら大きな白色光が周囲を包んだ。
その時、ウォルフラムからは融合していたデヴィット博士が分離。その時、微かにオールマイトの意思を継承する次世代のヒーローの緑谷、戦兎、万丈、生き生きとした姿が目に映った。
飯田「やった…のか?」
峰田「やったんだ!ヴィランをやっつけたんだ!」
離れたところから見ていた飯田たちはそこにウォルフラムの姿がないことを確認し、喜びはしゃぎまくった。もはやガラクタにすらならないスクラップの上でだ。
そんなスクラップに緑谷たち3人は頭から突っ込み、埋もれてしまった。
メリッサ「デクくん!戦兎くん!万丈くん!無事だったのね!」
万丈「なんとかな…」
と言いつつも3人とも身体はすでにボロボロ。血を流していたり、上半身服が消失していたり、変身解除していたり、まともな状態ではない。緑谷はメリッサから受け取ったフルガントレットを壊してしまっており、デヴィットの元に駆けつけたオールマイトも右半分はトゥルーフォームだ。
そしてメリッサに加えてとある人物も飛行しながら下からやってきた。
幻徳「大丈夫か!お前ら!」
戦兎「幻さん!一体どこ行ってたんだよ!」
メリッサ「他の人を避難させてたの。制御室でセキュリティーを解除した後に私が頼んだわ。マイトおじさまを通じてね。」
ウォルフラム戦では戦いに参加しなかったものの、ヒーローとしては人命救助が最優先であるため、そういう意味ではきちんと仕事をしたと言えよう。
メリッサ「そうだ。パパは…!?」
不安そうに周囲を見渡した。すると自分達の立っている瓦礫の下に負傷したデヴィットとやつれたオールマイトのコスチュームをきた金髪の男性がいた。
メリッサ「パパ!マイトおじさま!」
戦兎・万丈「「マ、マイトおじさま!?」」
メリッサはなんと金髪の痩せこけた男性のことを『マイトおじさま』と呼んだ。2人は口をあんぐりと開けて驚いた。確かにオールマイトに通じるところはいくらか見当たるが、お世辞にもそっくりとも言えない、むしろ血縁関係とも思えないような風貌をしている。
オールマイト「…流石に誤魔化すわけにはいかないな。戦兎少年、万丈少年。実はこれが私の真の姿だ。」
ハキハキとした威圧感のある声ではなく、少ししゃがれた穏やかな声でそう言った。そして彼は6年前のオール・フォー・ワンとの決戦で大怪我を負い、すでに2時間も"個性"を使えないほどに弱っていることを話した。
万丈「マジかよ…」
2人とも呆然とした。少しも弱っている様子を見せるそぶりすらしないオールマイトがこれほどまでに弱っていると思いもしなかった。
オールマイト「しかしノープロブレムだ。なぜって?君たちヒーローの卵がいるからさ!まだまだ未熟だが、それでもヒーローとしての素質は十分ある。私を超えるヒーローになってくれよ。」
そういうとオールマイトは3人の背中をバシンと叩いた。なんだか励まされて心地が良かった。
しかしオールマイト、平和の象徴が崩れ去るのも近いのかもしれない。
ーーー数時間後
ウォルフラム「ガハッ…ゲホッゲホッ…」
ウォルフラムはビルの最上階から飛ばされ、I・アイランド内のとあるパビリオンに墜落していた。混乱が生じたため、近くに人の気配はない。とはいえ身体は"個性"の限界使用や疲労で動かない。他のメンバーもすでにヒーローらに確保されていて、己が見つかるのも時間の問題だろう。
「おお…これはこれは…。誰かと思えばウォルフラムじゃねえか。」
ウォルフラム「その声は…シンイリか…!助けてくれ…!」
相手の顔はよく見えないが、特徴的な声でシンイリだとわかった。こんなときに来てくれるとはラッキーだと考えながら彼に縋ろうとする。
シンイリ「『助けてくれ』だと…?流石にそれは虫が良すぎるんじゃねえか?"個性"二つ持ちに"個性"強化装置、おまけにロストスマッシュにもしてやったのに、アイツらにも勝てないなんてなぁ…。裏切られた気分だ。裏切り者には…罰を与えないとな。」
シンイリはウォルフラムの顔を覗き込みながら彼の胸部に刀を突きつけた。
ウォルフラム「お前…ッ!!!」
シンイリ「Ciao〜♪」
ニヤッとほくそ笑みながらシンイリは刀を突き刺した。心臓部から黒い雪のような粒が溢れてきて、天に上り、やがてその場に残ったのは彼がつけていた装置と一本の真っ黒なボトルだけだった。