天才物理学者と筋肉バカのヒーローアカデミア   作:いぷしろん

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P(0)=P(1)=P(2)=1,P(n)=P(n-2)+P(n-3)⇒P(15)-P(0)=48話

「よっ、おかえり!」

 

時は遡り、襲撃事件直後。荼毘やトガ、コンプレスなどの開闢行動隊のメンバーがアジトへ続々と帰還してきた。そんな彼らに不気味な声で声をかけたのはシンイリだった。

 

荼毘「お前、いつ帰ってきたんだ。集合場所にいなかっただろ」

 

シンイリ「俺だけ特別だったんだよ。ラグドール(ネコちゃん)回収しなきゃだったしな。それより爆豪は…無事だな」

 

爆豪「誰だテメェ…!」

 

シンイリ「おお、怖い怖い。そんな顔で俺を見るなよ」

 

爆豪はシンイリを睨みつけた。しかしシンイリは戯けた様子でそう言い返し、それと同時に爆豪の顔に右手をかざした。そして掌から煙を生じさせると爆豪の意識は落ちて、爆豪の首がガクンと下に向いた。

 

シンイリ「あ、そうだ!そういえばお前たちにプレゼントがあったんだ!」

 

トゥワイス「マジか欲しい!いらねえよ!」

 

手をパンと叩いて気分を切り替え、揚々とそう言うとシンイリはそのまま部屋を退出。しばらくすると大きなものを担いで戻ってきた。

 

死柄木「コイツは…」

 

シンイリ「万丈龍我。たまたま近くにいたんで攫ってやったよ。確かコイツか爆豪のどっちかを捕まえたら帰るって言う作戦だったからなぁ。」

 

死柄木「それはお前が勝手に候補に入れてただけだろ」

 

どうやら万丈を拐ったのはシンイリらしい。万丈は気絶しており、床にゴロンと横たわっている。

 

死柄木「ともかくこれは都合が良い。コマが増えるチャンスだ。2人とも拘束して目覚めたら勧誘と行こう」

 

シンイリ「了解♪」

 

そうして万丈、爆豪の2人は椅子に座らせられて、黒いバンドで手足を囚人の如く拘束された。

 

死柄木「コイツらが起きるまでここで待機だ。」

 

シンイリ「ちょっと待て。俺はまたいつもの潜入に戻る。流石にいつまでもいなかったら怪しまれるからな。」

 

トガ「潜入〜?だいたいどこに潜入してるんですかー」

 

コンプレス「しかも素顔の一つも見せてないわけだしちょっと警戒するよね」

 

トガ、コンプレスはシンイリを睨みつけた。

入ってきたヴィランの情報は本名、血液型、"個性"、その他ありとあらゆる情報を網羅しているが、その本人の素性は素顔含め誰一人知らない。リーダーの死柄木もである。彼が素性を問われると口にするのは…

 

シンイリ「俺はムードメーカーだ。何度も言わせんなよ」

 

ただそれだけだった。当然他のメンバーが油断するのも仕方ない。

 

トガ「やっぱりアナタ嫌いです。べーっ!」

 

シンイリ「そりゃどうも。つーわけで俺は帰る。じゃあな」

 

死柄木「勝手にしろ」

 

トガはシンイリに対してベロを出して煽るがシンイリはそれを無視してドアを開け、そして帰っていった。

 

マグネ「いいの?彼身勝手すぎるけど。正直私もなんか彼のこと好かないっていうか…。」

 

死柄木「アイツはそんじょそこらの奴らとは違って強い。これでも俺は信用してる方だ。実際雄英の時や今回の時もアイツが情報をくれたしな。情報屋としては一番使える。」

 

スピナー「ってことはステイン様とも…」

 

死柄木「ああ。会ってる。なんなら戦って余裕で勝ってたな。」

 

スピナー「えっ!?」

 

死柄木のその言葉を聞いてトガやスピナーなどのステインに影響を受けたメンバーは驚愕した。

今まで信用出来ず、"個性"の一つも見せてないシンイリだったがその一言で彼の評価がガラッと変わったようだ。

 

荼毘「他にはなんかねえのか?」

 

死柄木「さあ?ここに来る前のことはよく知らん。というかアイツの話はもういいだろ。ちょっと寝る」

 

死柄木はため息混じりにそう言うと、頭をポリポリと掻きながら部屋を出ていった。その後、彼らが再び集まったのは2日後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お……おき……起きろ……起きろ!!!」

 

万丈「ん…」

 

自分を起こす声が微かに聞こえる。まだ寝ていたいが仕方がなく重い瞼を持ち上げた。するとそこは仄暗いバーのような場所であった。壁は赤く、カウンターに椅子が丁寧に並べられてある。

そしてその場には全く見知らぬ者が複数名。ただ一人、コンプレスの存在だけははっきりと分かった。つまりここはヴィラン連合のアジトだ。

 

死柄木「ようやく起きたか。」

 

万丈「お前誰だ…?っつーかなんだこれ!動けねえ!」

 

椅子に手足、そして首を括り付けられ、身動き出来ないようになってしまっていた。その場で解こうとしてもガタガタ椅子が音を立てるだけで何の解決にもならない。

 

爆豪「起きて早々うっせえんだよ!少し黙れクソ筋野郎!!」

 

万丈「ば、爆豪…!お前も捕まって…」

 

爆豪「少し黙れっつってんだろうが…!!!」

 

万丈「わ、わりい…」

 

一人で馬鹿騒ぎしてる万丈に腹が立ち、それにブチギレる爆豪。そしてその勢いに万丈は萎縮してしまった。

 

死柄木「起きて早々だが…ヒーロー志望の爆豪克己くんに万丈龍我くん。俺たちの仲間にならないか?」

 

万丈「仲間!?なるわけねえだろ!」

 

爆豪「寝言は寝て死ね!」

 

死柄木の勧誘を共に拒否。しかし相手方に取ってもこのことは想定済みだろう。死柄木は顔色ひとつ変えずにテレビのリモコンをつけた。

 

相澤『この度、我々の不義からヒーロー科1年生28名に被害が及んでしまった事、ヒーロー育成の場でありながら敵意への防衛を怠り社会に不安を与えた事、謹んでお詫び申し上げます。まことに申し訳ございませんでした。』

 

テレビをつけるとちょうど雄英の謝罪会見が行われていた。NHAなどのマスコミ勢から多数の悪意ある質問がなされた。

 

死柄木「不思議なもんだよなぁ。何故ヒーローが責められてる!?奴らは少ーし対応がズレてただけだ。守るのが仕事だから?誰にだってミスの一つや二つある『おまえらは完璧でいろ』って!?現代ヒーローってのは堅っ苦しいなァ。」

 

スピナー「守るという行為に対価が発生した時点でヒーローはヒーローでなくなった。これがステインのご教示」

 

死柄木「俺たちの戦いは『問い』。ヒーローとは何か、この社会が本当に正しいのか一人一人に考えてもらう。俺たちは勝つつもりだ。君らも勝つのは好きだろ?」

 

死柄木はそう問いかけた。スピナーの言うことは最もだし、それこそ戦兎が信条としているものである。最もらしい言い分。だからといって放っておくわけにはいかない。やり方が違えば犯罪だ。

 

死柄木「荼毘、拘束外せ」

 

荼毘「は?暴れるだろコイツら」

 

死柄木「いいんだよ。対等に扱わなきゃな。スカウトだもの。それに、万丈のベルトなら奪ってる。爆豪も俺たちなら抑えられる。この状況で暴れて勝てるかどうかわからないよう男じゃないだろ?雄英生」

 

死柄木はそう言って、万丈から奪ったビルドドライバーを見せつけた。これで変身できないとでも思い込んでいるのだろう。

荼毘はそれならばと死柄木に従って彼らの拘束を解いた。

その瞬間だ。爆豪は死柄木の顔面を爆破で奇襲した。

 

爆豪「馬鹿は要約出来ねーから話が長ぇ。要は『嫌がらせしてえから仲間になって下さい』だろ!?無駄だよ。俺はオールマイトが勝つ姿に憧れた。誰が何言ってこようが、そこァもう曲がらねえ」

 

万丈「そう言うわけだ。逃げさせてもらうぜ!」

 

万丈はもう一つのベルト、スクラッシュドライバー取り出し、腰に装着。ドラゴンスクラッシュゼリーを取り出した。

 

Dragon Jelly!

 

狭いバーの中でビーカーが展開。その中にどんどんとヴァリアブルゼリーが溜まっていく。

 

万丈「変身!」

 

潰れる!流れる!!溢れ出る!!!

Dragon In Cross-Z Charge!!!BRRRRRAAAAA!!!

 

そして万丈は仮面ライダークローズチャージに変身。死柄木からビルドドライバーを取り返した。

 

死柄木「ベルトは一つだけじゃなかったのか…」

 

万丈「爪が甘えんだよ!つっても少し前だったら危なかったけどな。」

 

万丈は余裕そうにそう言った。今やヴィラン連合の余裕は消失している。

死柄木は爆豪の爆破で落とされた片身の手を拾い、顔に装着した。

 

黒霧「いけません死柄木弔!落ち着いて!」

 

死柄木「分かってる。手を出すなよお前ら。こいつは大切なコマだ。出来れば少し耳を傾けて欲しかったな。君らとはわかり合えると思ってた」

 

爆豪「ねえわ」

 

死柄木「仕方がない。ヒーロー達も調査を進めていると言っていた。悠長に説得してられない。先生、力を貸せ」

 

『…良い、判断だよ弔』

 

死柄木はモニターに向かってそう言った。すると悍ましさの塊のような声が聞こえてきた。

 

万丈「お前がリーダーじゃねえのかよ…!」

 

死柄木「黒霧、コンプレス、また眠らせておけ」

 

爆豪「ここまで人の話聞かねえとは逆に感心するぜ」

 

彼らは全く聞く耳を持たなかった。しかしこのまま黙って眠らせられるわけにはいかない。

 

万丈(俺が今持ってるボトルはオバケ、掃除機、バット、スパイダー、冷蔵庫、あとドラゴンの七本…。これで一体どうやって戦えばいいんだよ!クソッ、全く思いつかねえ…。)

 

動かない頭を必死に回転させ、この絶望からどうやって抜け出すかを考えていた。ろくな考えが浮かばないようだが…その心配は杞憂に終わった。

 

「どーもぉ、ピザーラ神野店ですー」

 

その声と同時に何者かによってドアが豪快に破壊。ドアを壊したのはまさかのオールマイトであった。そこにいた者は驚き狼狽え、一瞬反応が遅れた。その遅れが仇となった。

 

シンリンカムイ「先制必縛…ウルシ鎖牢!」

 

シンリンカムイが樹木を生成。ヴィラン連合のメンバーを全員拘束。荼毘はその木を燃焼させようとしたようだが…

 

グラントリノ「逸んなよ。おとなしくしといた方が身の為だぜ」

 

と、荼毘の首を蹴り飛ばして荼毘は気絶。あっという間に制圧されてしまった。

 

オールマイト「もう逃げられんぞヴィラン連合!何故って!?我々が来た!!!」

 

お前たちはもう終わりだと言いたらしめんばかりに叫んだ。ヴィラン連合のアジトには既に大量のヒーローに包囲され、さらにエッジショットが玄関の鍵を開けたことでさらにヒーローがやってきた。

 

オールマイト「怖かったろうによく耐えたな…。爆豪少年に万丈少年…!」

 

オールマイトはゴツゴツした手で優しく彼らの頭を撫でた。一気に緊張感が抜け、肩の力が抜けた。爆豪も色々と張り詰めていたようで、強がりを言いながらも少し涙ぐんでいた。

 

死柄木「せっかく色々こねくり回してたのに何そっちから来てくれてんだよ。ラスボス…。仕方がない。俺たちだけじゃない。そりゃあこっちもだ。黒霧、持って来れるだけ持って来い!」

 

黒霧は脳無を呼んだ。しかし何も起こらなかった。もう一度脳無を呼んだ。しかし何も起こらなかった。

 

黒霧「すみません、死柄木弔…!所定の位置にあるハズの脳無が、ない…!!!」

 

その時にはもうすでに脳無格納庫は制圧されてしまっていた。ベストジーニストやマウントレディらの活躍により、脳無はすでに戦力外となってしまっている。

 

オールマイト「やはり君はまだまだ青二才だ。死柄木弔、ヴィラン連合よ…。君らは舐めすぎた。少年の魂を、警察のたゆまぬ捜査を、そして、我々の怒りを…!おいたが過ぎたな!ここで終わりだ!死柄木弔!!!」

 

脳無格納庫は制圧され、ヴィラン連合メンバーも拘束済み。黒霧はエッジショットにより無効力化。外には更なるヒーロー。どうすることもできない。

 

死柄木「終わりだと?ふざけるな、始まったばかりだ…!正義だの平和だのあやふやなもんでフタされたこの掃き溜めをぶっ壊す…!その為にオールマイトを取り除く!仲間も集まり始めた!ふざけるな!ここからなんだよ!こんなあっけなく…!ふざけんな…!」

 

死柄木は子供が癇癪を起こしたように騒ぎ立てた。自分の思い通りに行かなければむしゃくしゃし、途端に自傷行為や器物破損等に及ぼうとする。いわゆる子供大人だ。

 

死柄木「失せろ!消えろ!お前が!!嫌いだ!!!」

 

死柄木が叫んだ。その刹那、死柄木の両サイドから黒い液体が出現。そこからは脳無が2体、何もないところから出てきた。さらに追加の脳無がどんどんどんどん出現。あっという間に形勢が逆転した。

 

シンリンカムイ「脳無!?何もないとこから!?あの黒い液体は何だ!」

 

オールマイト「シンリンカムイ!絶対に放すんじゃ…」

 

オールマイトが警告した時だ。右隣から突如として嗚咽が聞こえてきた。

 

爆豪「オエッ!んだこれ…!身体がッ…!飲まれッ…」

 

万丈「うっ…オッ、オエエッ…!ちょっ、臭ッ!」

 

2人の口からも黒い溶液が溢れ出てきた。万丈はクローズチャージになっているため、マスク内に溶液が充満。さらに溢れ出てくる溶液は隙間を縫って全身から噴き出してきた。

 

オールマイト「2人ともッ!!!」

 

オールマイトは目をカッと見開き、2人に抱きつくが時すでに遅し。溶液に飲まれてそのまま消失してしまった。

 

トガ「うぷっ…おえっ…!」

 

さらにヴィラン連合のメンバーも黒いヘドロを次々と吐き出す。ここにいる誰もがこんな"個性"を知らない。

 

グラントリノ「マズイ、全員持っていかれるぞ!」

 

混乱による隙。それが仇となり、拘束していたヴィラン連合のメンバーらも全員消失。オールマイトは慌てて、せめて自分を連れて行けと言わんばかりに黒いヘドロを掴み取るも、虚しくオールマイトの転送は失敗に終わった。

そこに残ったのは無残な姿の脳無と、ただ飽和せんばかりの数のヒーロー。退治すべきヴィランなど消え失せていた。

 

オールマイト「すまないみんな。私は先に行かせてもらう」

 

グラントリノ「ああ。こっちは任せろ俊典!俺も後でそっちに行く!」

 

オールマイトはグラントリノにグッドサインをしたのち、足に力を込めて超音速で飛び立っていった。

しかしその間にももう彼の身体は限界を迎えようとしてしまっていた。

あと少し。奴を…オール・フォー・ワンを倒すその時までは保ってくれないか。オールマイトは心の中で"ワン・フォー・オール"にそう問いかけた。

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