天才物理学者と筋肉バカのヒーローアカデミア   作:いぷしろん

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切島「なんだ…これ…」

 

塀の向こう側にいるのはオール・フォーワンと呼ばれるヴィラン。そして彼に攻撃され戦闘不能のベストジーニストや倒れたプロヒーロー。

痛感した。これはプロの世界なのだと。自分達にはまだ早かったのだと…。恐怖から身体が硬って全く動けない。

 

爆豪「ゲホッゲホッ…!んじゃこりゃ!」

 

万丈「くっせえ!オエェ…」

 

そこに爆豪と万丈、そしてヴィラン連合のメンバーがワープしてやってきた。彼の"個性"だろう。

 

AFO「また失敗したね、弔。でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。いくらでもやり直せ。その為に僕がいるんだよ。全ては君の為にある」

 

彼は死柄木に手を差し伸べた。

戦兎は考えていた。今がチャンスだと。誰も自分達に気付いてない。相手も油断している。何でも良い。とにかく助けに行かねば…仮面ライダーでは無くなってしまう。

足を一本踏み出そうとしたその時、左腕を誰かにがっしりと掴まれた。八百万だ。周りを見ると緑谷、切島、轟も同じように動き出そうとしていたが、飯田と八百万に止められていた。今行ってはダメだと恐怖に震えながら首をふるふると横に振った。

 

AFO「やはり来てるな」

 

彼はそう呟いて上空を見た。ヴィランアジトがある方角だ。その直後、ものすごい轟音を立てながらオールマイトがAFOに突っ込んできた。

 

オールマイト「全て返してもらうぞ!オール・フォー・ワン!!!」

 

オールマイトの登場。大抵のヴィランはこの時点で怯んだり逃げ出したくなったりするが、彼は余裕綽々の様子。しかも2人は面識があるようで何か話している。

 

オールマイト「5年前と同じ過ちは犯さん!オール・フォー・ワン!爆豪少年と万丈少年を取り返し、貴様を今度こそ刑務所にブチ込む!貴様の操るヴィラン連合もろとも!!!」

 

彼は感情に任せてAFOに亜音速で突撃。しかし…

 

AFO「それはやる事が多くて大変だな。お互いに」

 

AFOは冷静に考え、複数の"個性"を用いた超強力な空気砲をオールマイトに放った。すると200kg以上もあるオールマイトでさえ軽々と吹き飛ばされてしまった。街のビル郡に当たっても吹き飛んでいく速度は衰えることなく、あっという間に数kmも離れていってしまった。

 

万丈「お前、オールマイトに何しやがった!!!」

 

AFO「ちょっと吹き飛ばしただけさ。大丈夫、彼はこのくらいじゃ傷つかない。だからここは逃げろ弔。その子らを連れてね」

 

するとAFOは指の先から黒鋲を生やし、倒れ込んでいる黒霧の背中に突き刺した。黒霧の"個性"がAFOによって強制的に発動し、辺りに巨大なゲートが出現した。

 

死柄木「先生は…」

 

AFO「常に考えろ弔。君はまだ成長出来るんだ」

 

彼は死柄木にそう言い残すと、再び亜音速で戻ってきたオールマイトと戦い始めた。

 

コンプレス「行こう死柄木。あのパイプ仮面がオールマイトをくい止めてくれてる間にコマ持ってよ」

 

彼がそういうと今度は一気に爆豪、万丈に注意が集中した。このまま2人を拐って逃げる気だろう。

 

爆豪「分かってんだろうなクソ筋野郎…!」

 

万丈「当たり前だ。生きて帰るぞ…!」

 

2人は背を向け合ってヴィランと対峙した。相手は六人。全員警戒すべきだが、その中でも死柄木とコンプレスは特に警戒しなければならない。万丈に対して大した戦闘力を持たないスピナーやトゥワイス、トガなどは無視しても構わないが、彼ら2人は下手したら死亡する可能性すらある。

 

コンプレス「ほらほら、さっさと捕まってくれよ!」

 

万丈「捕まるわけねえだろ!」

 

コンプレスは小球をぽんぽんと投げては周囲に青い炎を放った。万丈にはさほど効かないが近づくのが目的なようで、視界を奪った隙に右腕を伸ばして触れようとした。しかし一歩下がって冷静にその攻撃をかわす。

 

トゥワイス「捕まれ!もっと逃げろ」

 

だがそれと同時にトゥワイスがメジャーを出して捕縛しようとしてきた。万丈はツインブレイカーにメジャーを絡ませられたが、落ち着いてツインブレイカーをビームモードに変え、そのままトゥワイスを撃った。彼が怯み、メジャーの拘束が緩くなったところを外し、さらにトゥワイスを蹴り飛ばす。

 

死柄木「バカかお前ら、ベルトを狙えベルトを」

 

死柄木は執拗に万丈を追いかけ回しては腰のスクラッシュドライバーを狙っていた。それさえ破壊できれば無力化できる。体育祭で轟がやっていた手段だ。彼は腰を低く眺めて特攻しては万丈に避けられてを繰り返していた。万丈は思うように反撃できず、少しでも指に触れればゲームオーバーだ。

 

万丈「くそっ、埒があかねえ!」

 

万丈、爆豪は共に逃げ回るだけ。どうしようもなかった。今ここでバットフルボトルを使って飛ぶこともできるが予備動作が大きすぎる。何かいいとっかかりがないのだろうか。

そう考えていたのは戦兎や緑谷らも同じだった。

 

緑谷「皆、あるんだよ…!決して戦闘行為にはならない。僕らもこの場から去れる。それでもかっちゃんを救け出せる方法が!」

 

まず切島、緑谷、飯田の三人で壁をぶっ壊し、その瞬間に轟が氷の道を作り、その隙に戦兎がホークガトリングフォームに変身。緑谷、飯田の加速で切島を担いで氷の道から高くジャンプして爆豪を救出。戦兎はホークガトリングでヴィランを牽制しつつ万丈の救出。

これが緑谷が考えた作戦だった。

 

緑谷「どうかな…。この作戦なら…」

 

戦兎「やってみる価値はある。たった一瞬、ヴィランに隙を作れれば2人ならそれだけでも脱出できるかもしれないし、リスクも少ない。」

 

飯田「何より成功すれば全てが好転する。やろう」

 

飯田の許可が降りた。今、ここでやるしかないんだ。

その思いを胸に、飯田、緑谷、切島は壁をぶち破った。その瞬間に轟は氷の道を形成。飯田の加速力と緑谷のフルカウルで一気に駆け抜けてゆく。

 

Taka!Gatling!Best Match!!!Are you ready!?】

 

戦兎「変身!」

 

天空の暴れん坊!!!ホークガトリング!!!イェーイ!!!】

 

さらに戦兎が仮面ライダービルド、ホークガトリングフォームへと変身。ソレスタルウイングを広げ、ヴィランの頭上へと羽ばたいてゆく。

今この瞬間、ヴィランらはただ音に反応して上を向くしかなかった。それでいい。ちょうどその反応が欲しかった。戦友を助けるために

 

戦兎・切島「来いッ!!!」

 

2人は同時に呼びかけた。ヴィランに生まれた一瞬の隙。そこをついて爆豪は最大火力の爆破を、万丈は全身にくまなく巡らされたヴァリアブルゼリー噴出口からゼリーを火山が如く噴き出し、上空へと飛び出した。

 

爆豪「…馬鹿かよ」

 

万丈「でもサンキューな!」

 

2人はそれぞれ切島、戦兎の手をがっちり掴んだ。轟、八百万はみんなが彼らに釘付けになっている間にその場から逃走。あとはそのままヴィランの手の届かないところまで逃げるだけ。

 

コンプレス「逃がすな!遠距離ある奴は!?」

 

スピナー「荼毘に黒霧!両方ダウン!」

 

マグネ「あんたらくっついて!!!」

 

しかしヴィランも彼らをそう簡単には逃がさせてくれない。スピナー、コンプレスはマグネの指示通りにピッタリとくっつき、彼ら2人にマグネが"個性"を付与。コンプレスは磁力の反発力を利用して、豪速で緑谷らを目掛けて飛び出した。

ところでマグネの"個性"は"磁力"。その名の通り、男にはS極を、女にはN極を付与する。

そしてこの世には磁性を持つ物体がいくつかある。最も有名なのが鉄だ。また、電流を流せば磁性を生じる。残念なことに、戦兎や万丈の使うライダーシステムにはそれらが多いのだ。

このことがもたらす結果。それすなわち…

 

戦兎「ひ、引き寄せられる…ッ!」

 

万丈「なんだ…これッ!!!」

 

磁力の発生である。戦兎と万丈、そしてコンプレスの間には磁力が働き、互いに引き合っている。コンプレスはスピナーとの反発力で数mも上空に飛べるほど強い磁力を持つため、引力もネオジム磁石のそれとは比にならないほど強力だ。

こうして彼ら三人は強く頭を打ちつけ合い、鈍い音が響いた。幸い、戦兎と万丈はグラっとする程度の衝撃で済んだが、コンプレスは一撃で気絶。仮面もぱっきりと割れてしまった。

 

緑谷「戦兎くん!万丈くん!」

 

緑谷はつい後ろを向いた。衝突により地面に落下する三人が見えた。

失敗だ。爆豪の代わりに戦兎を失った。背筋がゾッとしたが、今はこの場を去るしかない。

そして数秒後、空に飛び出した全員は着地した。

 

戦兎「いったたた…。やられたな…こりゃあ。」

 

万丈「んだよ、全然ダメじゃんかよ」

 

戦兎「しょうがねえだろ…って、呑気に話してる場合じゃねえか。」

 

万丈「そうだな。」

 

座り込んでいる戦兎、万丈を死柄木、スピナー、マグネ、トガ、トゥワイスの五人が囲っていた。このままじゃ再び拘束されて拉致されるだろう。

どうすれば脱出できるか、ヴィランらにジリジリと迫られる中必死に頭を回して考えていると、戦兎の腰あたりから突如として蒼白い発光が見られた。至近距離から光を浴びたせいか戦兎以外はみんな目を閉じた。

 

戦兎「今だ!」

 

その隙をついて、ホークガトリンガーでヴィランらの足元を銃撃。万丈を連れてヴィランの輪から抜け出した。しかし依然としてこの窮地からは脱出できない。また引き寄せられるだけだからだ。

 

死柄木「ったく、結局ふりだしかよ。」

 

「いや、違うな」

 

上空から枯れたような、それで持って力強い声が聞こえてきた。グラントリノ。オールマイトの師匠だ。

登場して早々、死柄木の脇腹を蹴り上げた。

 

グラントリノ「オレがコイツら引き止める!お前らはその隙に逃げろ!」

 

グラントリノはそう言ってヴィランたちを引き受けた。逃げるのにこれほど良いチャンスはそうそう巡ってこない。しかし普通に逃げようとしても、マグネが"個性"を使えばそれだけで逃げられなくなる。

 

万丈「なあ、今の光何だったんだよ」

 

戦兎「フルボトルだ。」

 

懐から取り出したのは青いフルボトル。先程の光はフルボトル生成時の発光で、当然その成分はマグネットだった。

 

戦兎「万丈、お前オバケ持ってただろ」

 

万丈「これか」

 

万丈は戦兎に借りていたオバケフルボトルを差し出した。戦兎は今セットしているフルボトルを外し、万丈からフルボトルを受け取り、セットした。

 

Obake!Magnet!Best Match!!!Are you ready!?】

 

戦兎「ビルドアップ!」

 

彷徨える超引力!!!マグゴースト!!!イェーイ!!!】

 

戦兎は仮面ライダービルド、マグゴーストフォームにフォームチェンジ。磁力を操れるこのフォームなら逃げることができる。

 

戦兎「いいか万丈。俺が合図を出したらバットフルボトルを使え。いいな?」

 

万丈「おう。任せとけ」

 

タイミングはグラントリノがマグネを攻撃した直後。今すぐ離れても良いが、念には念を入れて離脱すべき。今はまだその時ではない。

 

マグネ「アンタ、せっかくの奪還チャンスに何してくれてんのよ!」

 

グラントリノ「それはこっちのセリフだ!」

 

マグネが磁力を付与するために彼に触れようとしたが上空へ逃げられ、グラントリノはそのままマグネの首をカクンと蹴り上げた。

 

戦兎「今だ!」

 

Charge Bottle!潰れな〜い!Charge Crush!!!

 

万丈は指示通りにバットフルボトルを使用。コウモリの翼を展開し、戦兎抱えて飛翔した。

 

マグネ「あっ、ちょっ、待ちなさい!」

 

マグネは慌てて近くにいたスピナーに磁力を付与。強烈なS極を生み出したが、戦兎も左腕のU字磁石の先端をS極にすることで斥力を発生させ、さらに加速しながら遠ざかって行った。

 

グラントリノ「ようやく逃げやがったか、小僧ども」

 

これで本気を出せるようになったのか、さらに足からの空気圧を上げ、スピナー、マグネ、トゥワイスの後頭部を超スピードで蹴り上げた。その衝撃で一気に3人が気絶した。

 

AFO「やられたな。形勢逆転だ。」

 

奴はそう言いつつ、指先から"個性"を強制発動の黒鋲を生成。マグネに突き刺して磁力をヴィラン連合らに無理矢理付加した。

N極に帯磁したトガの元に引っ付こうとS極の男性陣が引き付けられ、メンバーらは半ば強引に黒霧のゲートへ突入。そのままヴィラン連合のメンバーは退場を余儀なくされた。

 

オールマイト「これで1対2。今度こそ逃がしはせんぞ!」

 

AFO「ははっ、笑わせないでくれよ。もう君の体はとっくに限界を迎えているはずだろう?6年前の戦いから疲弊し、4月のUSJでの脳無戦以降、力を何度も、限界を超えて使っている。I・アイランドでの活躍も聞いている。だが、そんな限界の身体で僕を相手にできると思うのか?」

 

オールマイト「それでも私はやらなきゃいけないんだよ!!!」

 

オールマイトは右腕にありったけの力を込め、デトロイトスマッシュを食らわせるが、彼もまたいくつもの"個性"で対抗したパンチを放ってきた。勢いはオールマイトが少し上回り、AFOが少しのけぞった。

 

オールマイト「貴様は人を弄ぶ!壊し!奪い!付け入り!支配する!私はそれが許せない!!!」

 

その瞬間、奴の左腕をがっちり掴み、顔面を思いっきりぶん殴った。奴のマスクがバリンと勢いよく弾け飛び、顔のような皮膚の塊がオールマイトのパンチを受け止めた。

 

AFO「実に感動的だな。だが無意味だ。その姿の貴様ではな」

 

その瞬間、たちまちAFOは腕を膨張させ、空気砲を放ってオールマイトを遥か上空まで吹き飛ばした。真隣に報道ヘリが見えるほど高く。

そしてそのヘリに映る自分の姿。それは…

 

グラントリノ「俊典!6年前と同じだ!そうやって挑発に乗って奴を捕り損ねた!お前のダメなとこだ!奴と言葉を交わすな!」

 

全身に汗をダラダラと垂らしながら落ちていくオールマイトをグラントリノはなんとかキャッチし、地上まで誘導した。

 

AFO「ったく、小蝿がついた。君は邪魔だ。」

 

そう言うとAFOは左腕を再び膨らませ、グラントリノに向かって衝撃波を放った。避けるままなく衝撃波をモロに受けたグラントリノは遥か後方まで吹き飛び、瓦礫に埋まってしまった。

 

AFO「これで一対一だ。オールマイト、現実的な話をしよう。もうそろそろ君は限界のはずだ。素直に諦めれば良いものを、何故そこに立っている?」

 

オールマイト「それは私が平和の象徴だからだ!どれだけ私が限界でも関係ない!その心は私から一欠片とて奪えるものじゃないんだよ!!!」

 

もう右半分しか筋肉を保てていない。あと少し、あと少しで自分の残り火は消えてしまう。それでも戦意を喪失するわけにはいかない。この右腕を下げるわけにはいかない。自分には多くを守らねばならないという使命が…

 

AFO「死柄木弔は志村菜奈の孫だ」

 

オールマイト「………ッ!!」

 

言葉が出なかった。右腕が宙ぶらりんと垂れ下がってしまった。頬も筋肉も痩せこけて、やつれてしまった。自分の師匠が残した家族を、彼自身を、真正面から否定してしまった。何も知らずに、勝ち誇ったかのように。

 

AFO「やはり楽しいな。人の心を砕くというのは。」

 

オールマイト「貴…様…ッ!!!」

 

悔しさと怒りと後悔と、勘定できない負の感情が募りに募ってゆく。でもそれは奴を倒すエネルギーになり得なかった。

 

AFO「そろそろ決着をつけよう。この力を持って、君を殺す」

 

今自身が持つありとあらゆる"個性"を全て右腕に集約させた。ありえんばかりに肥大化した右腕。一発で仕留めるためだけの右腕だ。戦意を失い、細々と痩せ細った彼には十分すぎるほどだった。

 

AFO「さよならだ。オールマイト」

 

AFOは思いっきり右腕を振りかぶって、最大の加速度を待って殴った。

グシャッと言う鈍くて低い音が虚しく聞こえた。

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