破壊兵器ビルドが今にもこちらに向かって歩いてきている。そんな中、駆けつけたのは氷室幻徳であった。
万丈「幻さん…何でこんなとこに…」
幻徳「そんなことはどうでも良い。暴走してるんだろ、桐生戦兎は…。止める方法はあるのか?」
万丈「ある。アイツのベルトについてる赤いヤツを外せれば良い。でも今の戦兎は俺たちを躊躇なく殺しにくるぞ」
幻徳「だから何だ。戦わなければ勝てない。違うか?」
そう言って幻徳はトランスチームガンを取り出した。
幻徳の問いかけに万丈は黙ったままだった。今の幻徳の装備じゃダメだ。確実に死ぬ。ならば…
万丈「待ってくれ幻さん!」
幻徳「なんだ」
万丈「今のアンタなら…。コレ使ってくれ!」
万丈は腰につけていたスクラッシュドライバーを外し、幻徳に差し出した。戦兎が事前に開発していた
幻徳「…ふっ、いいだろう。」
幻徳は万丈の手からスクラッシュドライバーを取り、腰に装着した。
【Danger!】
クラックフルボトルのシールディングキャップを正面に合わせると、ボトルの表面が割れたように赤く発光すると同時に音声が流れた。そして幻徳は左手をポケットに突っ込んだまま、クロコダイルクラックフルボトルをパワープレスロットにセットした。
【Crocodile!】
その音声と共に等身大のビーカー、その外側にワニのような歯形がついた枠が出現。下部から紫色のコロイド溶液が溜まっていく。
幻徳「変身…!」
【割れる!食われる!!砕け散る!!!
Crocodile In Rogue!!!
OOOOORRRAAAAAAAA!!!】
ドライバーのアクティベイトレンチを押し下げるとワニの歯型の枠が一瞬開き、ビーカーを噛み砕き、ガラスの破片が砕け散ると同時に中の溶液が溢れ出し、全身に硬いクロコダイラタンアーマーを纏った。さらにマスクの外側に付いている紫色のセルフェイスクラッシャーが真っ黒の頭部装甲を食い破り、
万丈「頼んだぜ…。仮面ライダー…ローグ…!」
彼は幻徳に希望を託した。ビルドに対抗できる唯一のヒーローとして、そして仮面ライダーとして、氷室幻徳は新生ローグの産声を上げた。彼はゆっくりと前に歩き、ビルドと対峙した。
幻徳「桐生戦兎。こんな形でお前とは戦いたくなかったんだが…仕方ない。正義のための…犠牲となれ…!」
幻徳がそう宣言すると同時に二人は駆け出し、共に両者の頬を右ストレートで殴った。さらにビルドは左、右とジャブを繰り出すが幻徳はそれを弾き返し、腹に一撃、重い蹴りを打ち込んだ。
さらに幻徳はクロコダイルクラックフルボトルの成分を利用した特殊な煙を噴出させてそれを拳に纏い、何度も殴りつけた。
万丈「強え…。もしかしたらこのまま戦兎を正気に戻せるかもしれねえ…!」
少し体を休ませながら、万丈は幻徳の戦いを間近で見ていた。"個性"で力を強化しつつ、クロコダイルクラックフルボトルで自身を強化している。これならば…と希望を感じていたが、そう上手くはいかなかった。
ビルドは幻徳の重い右ストレートを左手でがっしり掴んで受け止めた。さらに幻徳は左でパンチを打ち込んだがそれも受け止められ、ついに膠着状態となった。
幻徳「目を覚ませ桐生戦兎!こんなことをしている場合じゃないだろ!」
戦兎「………」
幻徳は何とか説得しようと試みるもビルドは全く聞く耳を持たず、幻徳の手を払い除けると右脚で幻徳のアーマーを蹴り飛ばした。
さらにビルドは蹴り飛ばされた幻徳を追従。幻徳の右足をがっしりと掴んだ。
幻徳「ならば…!」
幻徳は左脚にクロコダイルの成分と"個性"を纏い、何度も何度もビルドの頭をガシガシと容赦なく蹴った。脳に何度も衝撃を与えられたせいか、ビルドは少しフラフラして、幻徳の足を離した。
幻徳「悪いな万丈龍我、ボトルを使わせてくれ。」
万丈「分かった!」
ビルドに隙が生まれている間に、万丈は適当にボトルを選び、すぐに幻徳に投げ渡した。取ったのは偶然か必然か、バットフルボトルであった。
【Charge Bottle!潰れな〜い!Charge Clash!】
幻徳はヴァリアブルゼリーを背中に纏い、ナイトローグの時のような羽を展開。空高く舞い上がって翼で自身を包み上げ、脚を先端とする円錐のようにしてドリルが如くビルドを突き刺さんとした。
しかしビルドはその幻徳の進行方向を手で逸らし、地面に突き刺ささったところを得意の蹴りで背中を蹴り飛ばした。
幻徳「ウグッ…!!!」
仮面ライダーローグは、攻撃を受けた瞬間、ダイラタンシー状のアーマーが凝固し、防御力が飛躍的に上昇する。いわゆる防御力に特化したライダーである。しかしそんな性能を無に返してしまう性質を持つのがハザードフォームだ。その性質とは、接触した物体を分解・霧散させる性質である。つまり殴られたりするだけでジワジワと防御力が削られているのだ。
幻徳「強いな…。このままじゃマズイ…!」
着々とダメージを与えられているローグ。そしてダメージが伝わっているかすら不明なビルド。いくら戦況はマシになったとはいえ、長期戦に入ればスタミナが切れ、ビルドには勝てない。せめて誰か1人でも居てくれれば…
万丈「だったら…俺が…!」
全身傷だらけ、ダラダラと右肩から血を流しているが、それでも万丈は立って、幻徳の横に並んだ。
幻徳「お前…身体はもう良いのか?」
万丈「んなこと言ってられる場合じゃねえだろ!仲間のためなら…何度だって立ち上がってやる!」
【Wake up!Cross-Z Dragon!!!】
万丈はビルドドライバーを腰に装着。そしてドラゴンフルボトルを取り出し、クローズドラゴンと共にビルドドライバーへとセットした。そしてベルトのボルテックレバーを回転させてフレームを構築した。
【Are you ready!?】
万丈「変身!!!」
【Wake up burning!!!Get Cross-Z Dragon!!!Yeah!!!】
決死の覚悟で万丈は仮面ライダークローズへと変身した。
幻徳「一気にたたみかけるぞ…万丈龍我!」
万丈「ああ!」
ビルドの前に、クローズの力じゃ到底及ばないかもしれない。しかしそれでも仮面ライダーの根源は人を助けたいという強い思いにある。そしてそれがビルドドライバーを突き動かし、ハザードレベルを上昇させる効果を持つ。
事実、万丈は連戦に次ぐ連戦のおかげか、ハザードレベルが著しく上昇。戦兎もハザードレベルは上昇しているがその上がり方は万丈の方が急で、万丈は現在ハザードレベル4.7である。幻徳は4.1、戦兎がハザードトリガー抜きで4.4程度なことを考えるとその値は大きい。これくらいのレベル差があれば、少しは戦えるようになるだろう。
万丈と幻徳は共にビルドの前に立ちはだかった。戦兎を救う。その思いをかけて。幻徳はトランスチームガンを取り出し、バットロストボトルをスロットへセットした。
【Steam Break!!!Bat…!】
トランスチームガンの銃口から何百羽もの小さな蝙蝠のエネルギー体が出現した。蝙蝠は大勢でビルドに襲い掛かり、ビルドを撹乱させている。
幻徳「今だ!」
その合図と共に幻徳はドライバーのアクティベイトレンチを押し下げ、万丈はグルグルとボルテックレバーを回転させた。何か来ると気配を感じたのか、それとも計算で何か来ると予測したのか、ビルドもボルテックレバーを回し、必殺技の準備に入った。
【Crack up Finish!!!】
【Ready Go!!!Dragonic Finish!!!】
【Ready Go!!! Hazard Finish!!!】
3人は地面を蹴って空高く舞い上がった。そしてビルドは漆黒の霧を、万丈は
幻徳「万丈龍我!もっと力を入れろ!このままじゃ押し返されるぞ!!」
万丈「うるせえ!!!これでも俺は本気でやってんだよ!!!」
2:1というこの状況。万丈はもうとっくの昔に疲弊し、幻徳も慣れない変身で体力を削られている。
それでも互いに拮抗しているだけでまだマシとでも言えよう。ただここからビルドを倒すほどの打開力は…
「ならば…私も手伝おう…!」
掠れた力強い声が聞こえてきた。八木俊典だかオールマイトだかよく分からないが、搾りカスほどの力しか持たない最強のヒーローの声だ。
彼はほんの一瞬だけ右足に力を込めて上昇。そして残りの全ての力を己の右腕に込めた。
オールマイト(さらばだ…ワン・フォー・オール…。)
心の中で別れを告げた。しかしこれは悲しいことではない。だって次世代のヒーローの卵はもういるのだから。
「UNITED STATES OF SMASH!!!」
人生の、ヒーローの、平和の象徴の先輩として、オールマイトは万丈らの背中をそっと押すように、戦兎の道をそっと正すように、右腕に眠るワン・フォー・オールをビルドに解き放った。
オールマイトが加えた衝撃、そして2人のライダーキック。それらを合計し、ようやくビルドを貫いた。ビルドは空中で大きな爆発を起こし、ついに強制変身解除を発動せざるを得なくなっていた。ビルドドライバーやハザードトリガー、二本のフルボトルは空中で散乱し、気絶した戦兎と共に自由落下した。
万丈「はぁ…はぁ…はぁ…なんとか…やったぞ…戦…兎…」
あまりの疲労と負傷からか、それともやりきったという達成感からか、脳内で放出されていたアドレナリンの効果も切れて眠り込むように万丈も気絶。
その場に残ったのは、全ての力を失ったオールマイト。そして、新たに仮面ライダーとして生まれ変わった氷室幻徳だけであった。