天才物理学者と筋肉バカのヒーローアカデミア   作:いぷしろん

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2・3³-1=53話

戦兎「ここは…どこだ…?」

 

真っ白い空間に自分ただ1人。どうしてこんな場所にいるのかも分からない。

 

戦兎「確か俺はあの時、ハザードトリガーを使って…」

 

戦兎は仮面ライダービルド、ラビットタンクハザードフォームとなり、AFOと戦った。そして必殺技のハザードアタックを使おうとした時、頭痛が来た。そこからの記憶がないらしい。

 

戦兎「記憶がない…。やっぱり俺は…」

 

「そう、暴走した。」

 

戦兎「ッ!?誰だ!」

 

自分以外誰も、何もないはずの空間から声が聞こえた。聞いたことのある声だった。声の聞こえた方へ振り返ってみるとそこにいたのは…

 

戦兎「…青羽…」

 

北都三羽ガラスが1人、スタッグハードスマッシュこと青羽であった。前世界でかつて、戦兎はハザードフォームの暴走によって青羽を殺害している。だがしかし戦兎が殺害したという事実は変わらない。

 

青羽「お前はかつて俺を殺した。暴走する危険性があったにも関わらずハザードトリガーを使うことによってな。そしてお前は今回も暴走した。理性を失い、味方も敵も殺す兵器に成り下がった。」

 

戦兎「それは…」

 

何も言えない。言い訳できるほどの資格なんて持ってない。

戦兎を俯き、拳をグッと握った。

 

青羽「もしかしたら今、外では暴走したお前が誰かを殺しているかもしれない。俺みたいな被害者が出るかもしれない。」

 

戦兎「そ、それに関しては周りに人がいない状況で…」

 

青羽「本当にそうと言えるか?本当に…人はいなかったのか…?」

 

戦兎「…まさか…また…ッ!」

 

戦兎は膝から崩れ落ちた。

ここは現実世界じゃない。外の様子なんてわからない。もしかしたら今、自分が虐殺を起こし、青羽の時以上の被害をもたらしているのかもしれない。

それを想像するだけで、歯がガタガタと鳴り響き、全身の震えが止まらなくなった。

 

青羽「お前はいつもそうだ。暴走の危険を孕んでいるにも関わらず、それを使う。そうやって人を虐殺した暁には…お前はもう、ヒーローでも仮面ライダーでもない。」

 

戦兎「あぁ…そんな…俺は…俺は…」

 

首がふるふると横に震え、目はたじろいでいる。だんだんと動悸が激しく、呼吸も荒くなり、焦りと不安が突沸してきた。

 

青羽「お前は…紛うことなき破壊者だ」

 

戦兎「うわあああああああッ!!!!」

 

戦兎は勢いよく布団からガバッと身体を起こし、声を上げた。その瞬間、視界に映ったのはあの真っ白な空間ではなく、病室の景色であった。自分の左手には健康維持のための点滴が打たれており、体のあらゆるところが包帯で巻かれていた。そして机の上には自身のビルドドライバーとフルボトル、そしてハザードトリガーが置かれていた。壁にかかっているカレンダーをみるに、どうやらあの日から一日が経過してしまったらしい。

 

戦兎「はぁ……はぁ……い、今のは…夢か…」

 

万丈「よう戦兎、やっと起きたか」

 

隣のベッドには万丈が座っていた。彼もまた、体のあらゆるところに包帯が巻かれている。

 

戦兎「…ば、万丈、一つ聞きたいことがある。…もしかして…俺は…また…誰かを…」

 

今のが夢であってくれという希望的観測を願った。また人を殺したというのなら…夢の中の青羽の言う通り、もうヒーローを志す資格なんてない。そう思うとまた動悸が、震えが激しくなった。

 

万丈「いや、誰も殺してねえよ。その前に止めた」

 

戦兎「よ、良かった…」

 

肩の力が一気に抜け、戦兎は再びベッドに横たわった。恐れていたことが起きなかったのは不幸中の幸いと言えるだろう。

 

「何も良くはないぞ」

 

戦兎の安堵の声に反応したのか、ドアの向こうからそのような声が聞こえてきた。その声の主は病室のドアを開け、入ってきた。

 

戦兎「相澤…先生…」

 

入ってきたのは相澤、オールマイト、そしてローグこと幻徳の計3人だった。彼ら3人に驚き、戦兎はまた身体を起こした。

 

相澤「まあ本当にお前は色々やらかすよ。とんだ問題児だ。言いたいことも山ほどあるんだがまずは…」

 

オールマイト「ちょっと待ってくれ相澤くん。その前に彼らにはきちんと言っておかねばならない事が…。」

 

細々と痩せ細ったオールマイトはそう言った。

もう今の彼は以前の筋骨隆々だったオールマイトの見る影もない。

オールマイトはゴホンと咳払いした後、方を再び開いた。

 

オールマイト「戦兎少年、万丈少年。奴を…AFOを倒してくれてありがとう。本来なら、奴は私が倒すべき敵だった。それを私のせいで君たちにさせてしまった。まだまだ若い君たちに…。」

 

オールマイトは頭を下げた。正真正銘、心からの謝罪だった。

 

戦兎「…頭を上げてください。俺たちはあなたに礼を言われるほど大したことはしてません。いや、むしろ…俺が謝らなければ…」

 

戦兎はハザードトリガーを手に取って再び話し始めた。

 

戦兎「俺は…コイツの力に飲み込まれて暴走してしまった…。そしてその後の記憶がないんですが…おそらく…破壊のかぎりを尽くす兵器のようになってしまったんじゃないかと…。」

 

相澤「ああ。その通りだ。俺たちはその事について…いや、それも含めた"個性"の無断使用について、話に来た。どう言う意味か…分かるか?」

 

その時、やっと戦兎は自身のした行動が"違法"だと気がついた。それまでずっと、オールマイトを救うために、AFOを倒すために動こうとその事に頭がいっぱいだったためにその事が抜けていたのだろう。

 

相澤「その顔つきは…今気づいたって感じだな。全く、とんだ問題児だよお前たちは…。」

 

相澤は厄介そうに髪をくしゃくしゃと触った。

 

相澤「お前たちのやったことは…法律的にヴィランやヴィジランテのそれと全く変わらない。つまりお巡りさんはお前らに処分を与えなきゃいけない。万丈は"個性"使用の件や諸々を自己防衛のためと割り切って考えるとして、問題は戦兎、お前だ。お前は色々やらかしすぎた。そもそも正当防衛でもなんでもなかったからな。大雑把に三つ。器物損壊、"個性"使用、そして…()()()()

 

戦兎「殺人未遂!?」

 

戦兎は驚愕した。あと一歩のところで…青羽の言ったような過ちを犯していたのかと思うと、また手が少し震え出した。

 

万丈「…覚えてるだろ?香澄のこと。アイツが被害者だ」

 

戦兎「嘘…だろ…。香澄さんを…俺が…」

 

小倉香澄。前世界では万丈の恋人であり、スマッシュにされて殺された女性だ。この世界ではおそらくエボルトの遺伝子を持たない、もう1人の万丈龍我と恋人同士の関係にあると思われる。

 

相澤「幸い、彼女はこの件については不起訴とするらしい。理性なき暴走によるものだとすぐに理解を示してくれた。ホント彼女には頭が上がらない。そして器物損壊についてだが…」

 

オールマイト「それに関しては私のもあるし、元々壊されていたものが大半だからその分の費用は私が建て替えても良い。」

 

相澤「他のことらしい。ということで残るのは"個性"無断使用についてだ。」

 

"個性"についてもこの世界では使用制限があり、それが解除されるようになるには専用ライセンスが必要である。ヒーローになる免許の仮免を取得してようやく部分的ではあるが"個性"の使用が可能になるのだ。しかし流石の戦兎もそのライセンスは持っていなかった。

 

相澤「お前が寝てる間に色々議論を繰り返した結果だが…ひとまずお前には罰金と謹慎の二つが課せられる。金額はまだ決まっていないが…おそらく最大のものにはなるだろうな。」

 

戦兎「もう一つの謹慎とは…」

 

相澤「学校から行われる処置だ。本来なら除籍…のはずだが、今回は事件が事件だ。厳重注意にとどめて、お前ら2人はひとまず仮免取得期間まで、登校を禁止することにした。当然授業は受けられない。それと…まあごちゃごちゃしてまだ決まってないことも山積みだが、今はそんだけだ。異様に少ないのは、戦兎の行動を支持した市民が圧倒的に多く、警察が甘めに見てくれたから、そして後はオールマイトさんのおかげだ」

 

戦兎「オールマイト先生の…?」

 

戦兎は首を傾げた。特に何も思い当たる節がなかったからだ。何だろうと考えているとオールマイトが近くに寄ってきて耳を貸すように言った。

 

オールマイト「今回の事件は私のせいでもあるからね。私が戦闘指示を行ったというふうに説明してるんだよ。外に警察の人がいるからあまり大っぴらには話せないけどね。」

 

彼は小さな声でそう言った。通りで色々と処置が軽かったようだ。だがその分はオールマイトが色々と責任を負っているようで、現地でのヒーロー活動禁止や減給、その他諸々の処置を受けるようだ。とはいえオールマイトは事実上の引退。明日にはヒーロー引退の会見も控えているらしく、今後は教員の仕事やヒーローへの指示など裏方のサポートに達するらしい。減給処理も結構なされているらしいが、貯金などがあるため大丈夫とかなんとか。

 

戦兎「すみません…なんか色々と…」

 

オールマイト「はっはっはっ、大丈夫さ!ただ、責任を背負ったのは私だけじゃない。いろんな人が責任を負ってくれたんだ。そのことは忘れないでほしい。例えば…相澤くんとかね。」

 

相澤「俺の場合は元々非難が殺到してたからな…。お前が派手に暴れたせいで今ニュースじゃ雄英やお前の行動を賞賛する声も非難する声も上がってる。そのせいで俺は担任を辞めざるを得なくなった。雄英にはなんとかまだ勤められてはいるがな。」

 

戦兎「えっ、じゃあ誰が担任に…」

 

戦兎はふと幻徳の方をチラッと見た。すると幻徳は満面の笑みでウインクを返した。そして自らの着ている上着のチャックを勢いよく下ろし、下に来ている紫色のTシャツを強調した。

 

幻徳「担任は俺だ」

 

Tシャツには『俺、参上!』と白く達筆に書かれた文字が印刷されていた。相変わらずと言ったところだろうか、戦兎はため息をつき、同期の相澤も呆れた顔を見せていた。

 

相澤「そういうわけだ。俺は裏方に回るが基本学校にはいるし、二学期が始まるまでは形式上担任としている。それにヒーロー活動も制限されていないんで、ヒーロー活動も続けていく。減給とかは当然あるんだがな」

 

戦兎「本当に申し訳ないです…。」

 

頭が上がらなかった。自分達の後始末を全てやってくれていた。前世界では東都の首相と関わりがあったため幾分無茶できていたが…仮免取得まではなんとか抑えていかないといけない。

 

相澤「とまあ今決まってる処分はこんな感じだ。さらに追加されることもしれんが、今言ったことは確定事項だと思っといてくれ。それと話が変わるが…この連絡、親によろしく頼む。近々家庭訪問を行うからな。」

 

相澤は机にプリントを置いた。全寮制度についてのプリントだ。みんなには後々渡す予定らしい。

 

オールマイト「それじゃ、私たちはそろそろ行くよ。氷室くんはどうするんだい?」

 

幻徳「俺は話したいことがまだあるんで残ります。」

 

オールマイト「分かった。それじゃあ先行ってるね」

 

オールマイトと相澤はドアを開けて外に出た。この部屋に残ったのは幻徳、万丈、戦兎の3人。全員仮面ライダーだ。

 

幻徳「さて、ようやくいなくなってくれた。俺が話したいのは…このベルトのことだ。」

 

幻徳はそう言うとスクラッシュドライバーとクロコダイルクラックフルボトルを机上に出した。

 

幻徳「これはお前たちの"個性"のはずだろ?何故俺が使えているんだ。説明しろ。」

 

戦兎「やっぱこの質問かぁ…」

 

戦兎はうすうす気づいていた。というか万丈にクロコダイルのフルボトルを渡した時からなんとなくこの質問に当たる時が来るだろうと予想はしていた。

 

万丈「そうだ、今思ってたんだけどよ、ネビュラガス浴びてねえのに幻さんは変身してたよな?あれってどう言うことだ…?」

 

戦兎「いや、幻さんはネビュラガス投与されてるぞ。ほら、お前が期末試験で煙出しただろ?アレだよ。あとはエボルトの遺伝子改造だけど、アレは前世界での痕跡みたいな感じで俺やお前、幻さんとかは新世界でも残ってるから変身できたってわけだ」

 

万丈「なるほど…あん時か…!」

 

確かに期末試験時、万丈は誤ってスマッシュになれるだけのネビュラガスを噴出してしまっていた。しかし幻徳はスマッシュにならなかった。

その時の幻徳のハザードレベルはおよそ3.5ほど。一般人にしては異様に高すぎる値だ。このことから戦兎はエボルトの遺伝子改造については新たに更新されずに残ったままではないかと言う仮説を立てたのだ。戦兎や万丈は記憶や前世界での遺伝子情報を受け継ぐ理由がキチンとあったため、この仮説を証明するに至らなかったが、今回それを幻徳が証明した。実際、ロストフルボトルの実験台にされた人には痛々しい傷跡も残っている。遺伝子レベルならなおさらだろう。

 

幻徳「おいおいちょっと待て!仮面ライダーとかなんとかガスとか遺伝子改造とか…一体なんの話をしているんだ!?そんなの受けた記憶なんてないぞ!ちゃんと説明しろ!」

 

イマイチピンと来てない様子の幻徳。いつのまにか遺伝子改造やら何やらを受けたことになっていて話が自分を置いてけぼりで進んでいっているので理解が追いついていない。

彼にもやはりきちんと説明しなければならない。何が起きたのかを。

 

戦兎「分かった分かった!焦るなって。…一先ず、これから言うことは誰にも口外しないで欲しい。」

 

幻徳「…それは約束しよう。なにやら只事じゃない気がするからな。話してみろ」

 

心の準備ができたのか、幻徳は戦兎の目を見据えた。

 

戦兎「それじゃあ全てを話そう。まずは…」

 

戦兎と万丈は重々しく語り始めた。自分達が歩んできた、"仮面ライダービルド"の物語がどんなものだったのかを…。

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