拳藤「ヴィラン役の人ってリューキュウだったんだよね?アンタ職場体験で行ってたとこの人じゃん」
万丈「おう、リューキュウだったけどめちゃくちゃ強かったな!常にドラゴン状態だから押し潰されるかと思ったぜ…」
鉄哲「っていうかお前もドラゴンじゃねえか!龍VS竜とかめちゃくちゃテンション上がるなァオイ!!」
鱗「いや俺も"個性"的にはドラゴンみたいな感じなんだけど…」
宍田「私だって"ビースト"ですぞ!万丈氏や鱗氏には負けません!」
物真「負けるも何も君はそもそもドラゴンじゃないでしょ。」
万丈「いいじゃねえか!勝負なら受けて立つぜ!第六十二話でも負ける気がしねえ!!!」
芦戸「ついに合格発表…!ドキドキするぅ〜!!!」
切島「基準点超えてるといいんだけど…!」
A組はようやく二次試験を終え、ついに合格発表の時間が始まろうとしていた。雄英高校合格発表時ほどドキドキが止まらない。
そして一方、別の試験会場では…
取陰「緊張する〜!」
万丈「ヤベェ…俺全然救助してねえぞ…!」
拳藤「あーうん、アンタ途中でどっか行っちゃったからね…。」
A組とほぼ同時期にB組も合格発表を待ち構えていた。A組、B組、共に全員合格できるのか…。
目良・武田『『えー…、それではこれより、合格発表者を発表したいと思います。採点基準についてですが、我々公安委員会とHUCのみなさんによるダブルチェックにて、危機的状況でどれだけ正しい行動を取れたかを減点方式で審査しています。合格者はモニターに五十音順にて名前が表示されますので、今の言葉を踏まえた上でご確認ください』』
それぞれの会場でほぼ同時に結果がモニターに映し出された。五十音順に並んである名前をみんな食い入るようにじっくりと眺める。
切島・鉄哲「「うぉぉぉ!!!あったァァァァッ!!!仮免取ったどォォォォォ!!!!」」
真っ先に、誰よりも早くほぼ同時に雄叫びを上げたのはやはりこの2人であった。別会場にいるのにも関わらずほぼ同時にである。これが一心同体というものだろう。
物真「当然僕の名前もあったけど?」
青山「僕の名前がキラめいてる☆」
瀬呂「あったぁぁぁ!!!よかったぁぁ!!!」
泡瀬「よっしゃ!あった!」
次々と雄英生徒が自分の名前を発見していく。一年生にも関わらずほとんどがモニターにその名を連ねていた。
八百万「やりましたわ!私の名前!」
拳藤「私もあった!」
そしてA組副委員長、B組委員長もそこに名前を連ねている。そしてまだ確認していないのは…
八百万「戦兎さんはまだ確認なさってないのですか?」
戦兎「ちょっと緊張しててな…。」
拳藤「万丈は名前あった?」
万丈「いやまだ見てねえ…!モニター見るの怖えよ…!」
共に仮面ライダーで、ヴィランを打ち破った戦兎と万丈であった。2人とも意外にも張りつめた糸のように緊張していた。
戦兎「桐生…桐生…」
万丈「万丈…万丈…」
戦兎は最初から、万丈は最後から順番に名前を手繰るように見ていく。じっくりと、丁寧に、見過ごしがないように、一文字ずつ…。そして…
戦兎・万丈「「…あったぞ…俺の名前…!!!」」
ほぼ同時に2人は自分の名前を発見。堂々と、まるでそこに載るのが当然であったかのように、2人の名前もそこにきちんと載っていた。嬉しさのあまりか、戦兎も万丈も見事に舞い上がり、戦兎は八百万と、万丈は拳藤とハイタッチ。よほど嬉しかったのだろう。
目良・武田『『え〜、お名前の確認はお済みになりましたでしょうか。では次にプリントを配布します。採点内容が詳しく記載されていますのでしっかり目を通しておいて下さい。全員100点からの減点方式で採点しております。ボーダーラインは50点です。』』
A組、B組のいる会場それぞれに採点の詳細表が配られた。どの点が減点対象になったのか、隅々と書かれている。
八百万「戦兎さん!点数で勝負しません?私自信がありますの!」
戦兎「俺も負ける気はしないぞ?」
少しぷりぷりと可愛らしい雰囲気を醸し出しながら八百万がそう言ってきた。
八百万「では私から行きますわ。私は…94点!」
戦兎「俺は95点だな」
八百万「ま、負けた…一点差で…」
勝てると思ったのだろうが、奇しくも一点で八百万の負け。高度な戦いだ。
戦兎の失点はギャングオルカと対峙した際、彼のサイドキックに対してはそこまで対応しておらず、それによって更なる被害が生じる可能性があった…というものだ。幸い、他の生徒や緑谷がサイドキックの対処をしていたため、減点は控えめである。
緑谷「ごめん、点数きいちゃった。戦兎くん受かったんだね!僕たちも無事に受かったよ!」
緑谷、飯田、麗日の3人も合格報告をしにこちらへと駆け足で走ってきた。
戦兎「だと思った。おめでとう!」
そんな中、こちらへ歩み寄ってきた者がもう2名…。
轟「…流石だなお前らは…」
爆豪「…チッ…」
その2人は轟、爆豪であった。A組のほぼ全員が合格を喜ぶ中、その結果が芳しくなかったようだ。そして…
イナサ「ない…か…。」
轟と小競り合いをしたイナサも名前がなかった。やはり敵前で喧嘩をするような真似をしたことが原因だろう。
戦兎「その様子だと轟は…」
轟「…ああ。落ちた。これで戦兎とは明確に差がついちまったな。次の仮免試験で合格できるようにまた…」
イナサ「轟ィィィ!!!」
会話途中、ドデカイ声の持ち主が轟の名を叫びながらこちらに向かってきた。
イナサ「すまなかった!アンタが合格できなかったのは俺のせいだ!俺の心の狭さの!!!ごめん!!!」
イナサは本当の意味で頭を他につけてお辞儀をして謝罪した。
轟「よせよ。元々は俺が蒔いた種だ。」
イナサ「でも…」
それでもイナサはまだ燻っている様子だ。しかしこれ以上は謝ったって仕方がない。2人とも次の仮免試験に向けて訓練あるのみ。
その一方、万丈たちはというと…
拳藤「86点!思ったより高いかも!万丈は?」
万丈「80点!結構余裕で受かってんな!」
拳藤よりも点数は低いものの、万丈はボーダーラインが50点である中での30点オーバーで合格していた。合格発表前の不安は杞憂だったようだ。
万丈「俺はアレだな、全体的に雑なのとボス以外の雑魚ヴィランに対処ができてなくて点引かれてるな。あっ、でもリューキュウ倒したのは結構高得点みてえだ!」
拳藤「えっ、ちょっと待ってリューキュウ!?ヴィランってリューキュウだったの!?んでアンタ倒したの!?」
万丈「ん?ああ、言ってなかったっけ?まあ重りとかたくさんつけてたし多分本気じゃねえんだろうけど、にしても強かったなぁ…」
拳藤「アンタ…本物のバケモンだね…」
万丈に若干引いている拳藤。だが点数では拳藤の方が上回っている。救助面においては拳藤の方が優れていると言える。
拳藤「そういやA組の結果はどうなんだろう…。一応B組は全員受かったけど…。」
万丈「もし落ちた奴いたら物真がうるさくなりそうだから連絡するのやめとくか…」
B組はA組とは違って全員合格。万丈の予想通り、後々A組の結果を知った物真は二学期の始業式時にイキリ散らかすのだが、今ここでそれをされるのはちょっと困るということで戦兎に連絡するのはやめておいた。
目良・武田『『合格した皆さんは、これから緊急時に限り、ヒーローと同等の権利を行使できる立場となります。しかしそれは、君たちの行動一つ一つに、より大きな社会的責任が生じるということでもあります。今回はあくまで仮のヒーロー活動認可資格免許。半人前程度に考え、更なる精進に励んでいただきたい!』』
まだスタートラインに立ったばかり。法的に多少の無茶をしても許されることにはなっているが…それでもハザードトリガーを無闇矢鱈に使うような戦闘はできない。早く二本目のラビットフルボトルを探さねばなるまい。
目良・武田『『そして、不合格となってしまった方々。君たちにもチャンスはまだ残っています。三ヶ月後の特別講習を受講の後、個別テストで結果を出せば…君たちにも仮免許を発行するつもりです!!!』』
大々的に宣伝された特別公衆の存在は、奇しくも落ちてしまった彼らの心を奮い立たせた。
目良・武田『『学業との並行でかなり忙しくなるとは思いますが、君らの至らぬ点を修正すれば合格者以上の実力者に育つ者ばかりだ。これからの君たちにも期待したい…。』』
戦兎「良かったな轟、爆豪」
轟「すぐ…追いつく。」
爆豪「黙れや…ボトル野郎…!」
負けた悔しさを、受かった喜びを、それぞれ噛み締めながら、今日という日を彼らは終了したのだった。…動き出す不穏な影に気づくことなく…。
「それで…結果はどうだったんだ?」
低く、枯れた声で若者2人にそう語りかけるのは杖をつき、椅子に座った老父であった。
「それが…万丈龍我に接近できましたが…奴の力にはヘルブロスでも敵いませんでした…。」
鷲尾兄弟が1人、風がそう答えた。一次試験での敗北。最終兵器と自ら豪語していた割には恥ずかしい戦績だと、彼ら2人は恥じずにはいられなかった。
「そうか…。まあいい。それも想定内だ…。ヘルブロスはまだ試作段階…。改造次第でまだ強くなる見込みはあるんだろう?なあ、内海?」
内海「ええ、まだ彼には提供してもらっていない専用武器もありますし、約三週間で作り上げたので、まだ基礎スペックの更なる進化が期待できるでしょう。」
リモコンブロスやエンジンブロスが弱いとされていたのはおそらくこの影響かもしれない。だがしかし、これから先、ヘルブロスらがもっと強くなるとすれば…いずれは万丈龍我や桐生戦兎を倒すことも夢じゃない。
「AFOもオールマイトもいなくなった今、舞台は大きく変わった。君たちには活躍を期待している。是非とも頑張りたまえ。」
内海・風・雷「「「全ては…難波重工のために…」」」
全ては難波重三郎率いる大企業、難波重工が世界の全てを支配し、富と権利を掌握するため。オールマイトという者の失脚を受け、ついに悪の秘密結社が動き始めた。
「よぉ死柄木!久しぶりだなぁ!」
死柄木「シンイリ、お前はもう少し静かにしろ。というかお前呼ばれてないだろ」
シンイリ「呼ばれてなくても行くのが俺だ。」
某刻、某所の廃工場で、ヴィラン連合は再び会合した。荼毘がいなかったりするが、都合のつく奴をトゥワイスが集めたらしい。しかしトゥワイス含めこの連合の誰もがシンイリの連絡先を知らない。
少し話していると、ガコッと扉を開ける音が聞こえた。
「大物とは…皮肉が効いてるな、ヴィラン連合。」
やってきたのはペストマスクに白い医療用手袋を着用した青年であった。
シンイリ「おやおや、これは誰かと思えば…。『死穢八斎會』若頭、治崎廻じゃねえか…。」
死柄木「とんでもねえ大物連れてきやがったな…トゥワイス…!」
通称オーバーホール。所謂ヤクザと言われる道の人だ。かつて"個性"社会以前は裏社会を牛耳っていたが、今となっては廃れた時代遅れの天然記念物で、ヴィラン予備軍である。
治崎「久々だな、そこの赤いの。」
トガ「知り合いなんですか?」
シンイリ「ヴィラン連合に入る前にな。俺は元々取り憑ける先を探しててな。いろんなヤクザ共やヴィラン団体を見て回った。俺の中にあるのは今も昔も破壊のみ。現行制度も、社会も、この世界も、何もかもを壊したかった…。だが治崎は俺の思想に反し、社会の支配を目的とした。その点死柄木は破壊に興味を持ってたよ。だから俺は死柄木と手を組んで今に至るってわけだ。」
シンイリはヴィラン連合加入以前、治崎にも接触していたようだ。八斎會に入ることはついぞなかったが、検討はしていたらしい。
シンイリ「あ、一応言っとくが治崎、お前はヴィラン連合を傘下にしようとしてここにきたんだろうが無駄だ。ここにいる奴らはお前なんかに支配されるタマじゃあない。そもそも死柄木自身がそういうの一番嫌いだろ。」
治崎「なんだ、バレてるのか…。その通り、俺は俺の支配のために"ヴィラン連合"の名が欲しい。傘下に入れ。」
死柄木「シンイリの言う通り、俺はお前みたいな奴が嫌いだ。帰れ」
その言葉から1番に動き出したのはマグネだった。大きな磁石でできた鈍器を肩に担ぐと治崎に磁力を付与した。
マグネ「ごめんね極道くん。私たちは何にも縛られずに生きたくてここにいる。私たちの居場所は私たちが決めるわ!」
鈍器のN極に引っ張られてきた治崎の頭をそれで思いっきり振り下ろし、治崎は後頭部にものすごい衝撃を受けた。しかしそれと同時にマグネに左手の人差し指がちょんと触れた。するとその瞬間、たちまちマグネの上半身は風船が破裂するかのように飛び散り、舞い上がった血がボタボタと降り注いだ。
コンプレス「マグ姉!!!」
治崎「先に手を出したのはお前らだ。ああ汚い…!」
治崎はマグネの返り血を浴び、体をゴシゴシと擦っている。極度の潔癖症によるものだ。しかしその態度がさらにMr.コンプレスを激昂させた。思わずコンプレスは地面を蹴って飛び出した。
シンイリ「おい待てコンプレス!」
"圧縮"で治崎をなんとかしようとコンプレスは左腕を伸ばすも、突如として"個性"が使用不可能に。そしてコンプレスが治崎に触れた瞬間、シンイリが慌ててコンプレスを引っ張って遠くへ放り投げる。その直後…
治崎「触るな!」
治崎は左腕を振り払ってシンイリを"分解"した。赤い粒子が周囲に飛び散り、シンイリの影は無くなった。跡形もなく…。
死柄木「お前ッ!!!」
その直後、憤怒に塗れた死柄木が治崎を破壊しようと手を伸ばすも、突如として横から人が出現。治崎の肉壁となり、死柄木の攻撃を防いだ。
「危ないところでしたよ。オーバーホール…!」
どこからともなく声が聞こえる。天井だと気づいた時にはもう遅かった。周囲の壁面から治崎の手下であろうペストマスクをつけた屈強なヤクザが数名出現。数でもこちらが多少不利になった。
治崎「穏便に済ましたかったよヴィラン連合…。こうなると冷静な判断を欠く。戦力を互いに削り合うのも不毛だ。死体に関しちゃこちらが1人多く殺してしまったが…」
トゥワイス「何が1人多くだ!お前らの肉壁とこっちのオカマ、あと赤い変なのは価値が違う!殺すぞテメェ!!!」
「まあそう熱くなるなよトゥワイス。というかそもそも俺を勝手に殺したことにするなよ」
ブチギレたトゥワイスであったが、どこからか聞き馴染みのあるうざったいその声が聞こえたことにより、少し冷静さと混乱を抱いていた。
シンイリ「俺は死んじゃいない。"個性"上アイツの攻撃が俺には無効なんだ。それより死柄木。せっかくの仲間勧誘のチャンスなんだ。後日また改めて考えればいい。」
先ほど霧散した赤い粒子が再び集結し始め、シンイリの体を成してゆく。そして全て言い終わる頃には完全に復活していた。
死柄木「ああ。そうしよう。それで文句はないよな。」
治崎「かまわない。冷静になったらこの番号に連絡してくれ。」
治崎は連絡先の書かれた簡単な名刺をサラッと死柄木の足元に投げ、廃工場を出ていった。それに続き、治崎の部下も工場から出て行き、再び静寂がここを支配し始めた。
悪のうねりは動き始める。ヒーローの知らないところで、穏やかに…大きく…。