赤羽「俺達三羽烏!ってわけだ!」
青羽「カシラいるところに俺たちありってな。」
黄羽「僕たちがいないとカシラは何もできないもんねぇ〜」
一海「うっせえぞお前ら。だいたい俺は1人でもやるときゃやるんだよ」
戦兎「でもお前俺と初めて会った時遅刻してたじゃんか」
一海「そりゃ日課の土いじりしてたらしょうがねえだろ。農家の一日は土の様子見るとこから始まるんだよ」
戦兎「いやアンタヒーローでしょうが!」
一海「んなこたぁどうでもいいんだよ!さっさと第六十六話始めんぞコラ!!!」
戦兎のインターン先が決定した翌日。再び戦兎は事務所を訪れていた。もちろんインターンである。
一海「だいたい分かってると思うが、俺たちの仕事は街のパトロールが第一の仕事だ。ヒゲみたいにメディアに出たり協力要請が来るのはヒーローになってある程度認知され始めたらの話だな。」
インターンの地は愛知。それなりにインフラ整備が整っているため人もヒーローも、そしてヴィランも多い。ヴィランが活性化するのは夜からということでそれまでは基本、サー・ナイトアイに依頼されたデータ分析、簡単な慈善活動などであった。
一海「つーことでまずはパトロールにいくぞお前らァ!!!」
三羽烏「「「エイエイオー!!!」」」
戦兎「お、おー…」
と言うことで19:00からパトロール開始。
一海たちの勢いに初っ端からついていけなくなりそうな予感を感じた。まずは三羽烏のノリになれることから始めねば…と思い知らされた。
そしてしばらく歩くこと数十分。特段誰かから話しかけられるでもなく、ただ平々凡々と歩く姿はただの一般人であった。
一海「あー暇だな〜」
赤羽「そうっすね〜」
街のカフェでアイスコーヒーをストローで啜りながら2人はそう呟いた。
別に何の仕事もない平和な街。ヒーローの仕事はない方がいいんだろうが、こうもやることがないと退屈になってくる。
戦兎「結局一海たちがなんで変身できるのかもわかんないし…謎だな…。」
歩きながら事情聴取をしたのだが、結局心当たりは何一つなし。変なガスを吸引した記憶もなければ人体実験を受けたこともないとのこと。三羽烏たちにも念の為に事情を伺うがそれでも心当たりなし。
戦兎「そういえば…今さらなんだけど、一海たちはコスチュームとかないのか?万丈からベルト渡される前は身一つで戦って来たんだろ?」
一海「俺はあったんだが、あの仮面ライダーになってからは使ってねえな。ライダーになった方が便利だし」
戦兎「ふーん…。お前達は?」
黄羽「僕たちはないよ。僕たちには必要ないし」
戦兎「ん?必要ない…?…もしかして…」
以前戦兎が考えていた仮説が当たっているのなら…三羽烏たちももしかしたら…
「キャーッ!!!助けてーッ!!!」
「うわぁぁぁ!!!」
その時だ。街の北側から大勢の人の叫び声が聞こえ、地面が大きく揺れ始めた。
戦兎「なんだ!?」
戦兎達が急いで駆けつけると、そこには大きく鋭い角を持ったサイのような巨大なヴィランが、ありとあらゆる飲食店に突撃している。全長はおよそ3mほどだが、タックルで店舗を壊しているあたり質量は重く、もはや自我を持たずに突っ込む姿はまるでメタルゲラス*1のようだった。
一海「ヴィランのお出ましか…。」
赤羽「カシラ!ここは俺たちに任せて救助の方を頼みます!!!」
赤羽がそう言うと、他の2人も赤羽の隣に並び、三羽烏はメタルゲラスの前に立ちはだかった。
青羽「見とけよ戦兎。これが俺たちの戦い方だ。」
青羽が得意げにそう言うと、三羽烏は懐から突然ロストフルボトルを取り出した。もちろん黄羽はフクロウ、青羽はクワガタ、赤羽はキャッスルである。3人ともフルボトルを振って成分を活性化させ、キャップを正面に合わせた。
戦兎「待て!それを使えばスマッシュに…!」
彼らを止めようとしてももう遅かった。3人は左腕にロストフルボトルを突き刺し、体内にボトルを挿入。黒いモヤに包まれると硬い装甲を纏って再度出現。黒光りするその身体はまさにハザードフォームのようだった。
戦兎「ハザードスマッシュ!?なんで!?」
黄羽はオウルハザードスマッシュに、青羽はスタッグハザードスマッシュに、赤羽はキャッスルハザードスマッシュに変身。ハードスマッシュではなく、何故か彼ら全員はハザードスマッシュまで進化していた。しかも当然自我はある。
一海「おい戦兎!ぼーっとすんな!お前もいけ!デビュー戦取られちまうぞ!」
戦兎「わ、分かった!」
つい気を取られてしまったが今やるべきはヴィラン退治だ。一海と戦兎もベルトとボトル、ゼリーを各々取り出した。
【Robot Jelly!】
【Gorilla!Diamond!Best Match!!!Are you ready!?】
一海・戦兎「「変身!!!」」
【潰れる!流れる!!溢れ出る!!!
Robot In Grease!!!BRRRRRAAAAA!!!】
【輝きのデストロイヤー!!!ゴリラモンド!!!イェーイ!!!】
一海と戦兎もそれぞれ仮面ライダーグリス、仮面ライダービルド、ゴリラモンドフォームへと変身。一海は被害者の救助を、戦兎は三羽烏のあとを追うようにメタルゲラスの元へと向かった。
黄羽「びゅんびゅーん!!!」
青羽「オラァ!」
戦兎が変身を済ませた頃にはもうすでに黄羽は両手を広げて空を飛び回ってタックルをかまし、青羽はクワガタの角のような2本の刀、ラプチャーシザースで乱れ斬りを炸裂。そして…
赤羽「チャージ完了!2人ともどけ!」
赤羽の合図で黄羽、青羽が一時的に離脱すると、フルチャージされたカタプルタキャノンから高密度エネルギー弾を放出。メタルゲラスにクリーンヒットし、ヴィランはピクピクしていた。
赤羽「どうだビルド!これが俺たちの力だ!」
戦兎「どうだ!じゃねえよ!せっかくのデビュー戦なのになんで倒しちゃってくれてんだよ!」
黄羽「あっ、忘れてた…。まあ次頑張ろ!」
結局三羽烏たちの活躍によってメタルゲラスは討伐…されたかのように思われたが、実際はそうはいかなかった。
「ウォォォォォォォォ!!!」
その雄叫びを聞き、みんなは一斉に振り返った。左腕を見るとメタルゲラスはなにか注射のようなものを、それも一本ではなく複数本使用していた。そのせいか、さらに身体は鋼鉄のような装甲に覆われ、角も1mほどの巨大なものへと変化している。
一海「おいお前ら!まだ片付けてなかったのか!」
赤羽「違うんすよカシラ!コイツ、たった今ブースト薬を何本も服用して…!」
戦兎「ブースト薬による中毒症状が出てる。だからアイツは意味不明な行動ばかり…!」
戦兎も以前は"個性"の研究をしていたのでブースト薬がどんなものか、その危険性も把握している。特に粗悪なブースト薬は違法薬物として出回っており、服用し過ぎれば大麻などのように中毒症状を及ぼし、脳に影響を与える。身体が耐え切れないほどの"個性"強化を施しているのだから当然だ。
一海「ビルド、お前の出番だぞ。アイツ倒して来い!」
戦兎「言われなくても!」
「ウゴォォォォ!!!」
戦兎は突進してくるメタルゲラスを幾層ものダイヤモンドシールドとゴリラの剛力をもって受け止める。そしてサドンデストロイヤーでダイヤモンドシールドごとメタルゲラスを打ち抜いた。
戦兎「今日は気になることがたくさんあるんだ。早めに終わらせるぞ!」
戦兎はよろめいたメタルゲラスに、ゴリラの体重を利用した高重量キックを喰らわせる。足裏の重みがズシズシとメタルゲラスの装甲内部にまで響き渡る。
【Ready Go!!!Vortex Finish!!!イェーイ!!!】
再びレバーをグルグル回して必殺技を発動。左手でメタルゲラスの中にある炭素原子を全てダイヤモンドに変換すると同時にメタルゲラスを上空へと蹴り上げる。そして重力に従って落ちてきたメタルゲラスをサドンデストロイヤーで粉砕。爆発が起こってメタルゲラスのヴィランは気絶した。
戦兎「ふぅ…終わった終わった。お、サイフルボトル!ひゃっほう!!!」
一海「ん?何やってんだアイツ」
赤羽「さぁ…?アホなんすかね」
戦兎「誰がアホだよ!」
気絶したヴィランを拘束後、たまたま採取できたサイフルボトルにテンションが上がっている戦兎。その様子を初めて見た一海及び三羽烏は案の定少し混乱していた。
戦兎「って、それよりも三羽烏!どうしてお前達がスマッシュに、それもハザードスマッシュになってるんだ!そもそもそのロストフルボトルは…」
一海「まあまあ落ち着けって!」
怒涛の勢いで三羽烏に迫る戦兎を一海が制止した
しかしこの北都メンバーはどうにもおかしな点ばかり。ハードスマッシュなら一歩譲って理解できるが、何故かハザードスマッシュ。一海がネビュラガスなしで変身できたのもおかしいが、やはり彼らもおかしい。
赤羽「このボトルは俺たちが小学校入学の時だから…だいたい11年くらい前に手に入れたんだ。そっからだな。ボトル使い始めたのは。」
青羽「俺たちは元々"無個性"だったけど、これ拾ってからはずっとこのボトルの力を"個性"として扱ってきてる。」
黄羽「最初はカラフルだったけど、ちょうど2年前の今と同じくらいの頃だったかな?突然真っ黒になっちゃってさ。びっくりしたんだけどその分スピードとパワーがアップしたんだよね〜」
11年前…。やはり他のビルドメンバーがボトルを拾ったのとほぼ同じだ。戦兎が新世界に来て意識を取り戻したのも11年前。ホワイトパンドラパネルも戦兎の手にあったんだから、このロストフルボトルは全て旧世界産のものであるのが自然である。それが三羽烏が変身できる理由にはならないが…。
戦兎「ちょっとハザードレベルを測ってみるか…」
戦兎は測定器を取り出してその場で軽くハザードレベルを測定。すると思いもよらぬ数値が出た。
戦兎「赤羽が5.1、黄羽が5.0、青羽が5.1…。一海だけじゃなくお前らまで…!どうしてこんなに高いんだ…?」
やはり明らかに高すぎる数値。だがその数値のせいで彼らが変身するのはハードスマッシュじゃなくハザードスマッシュになっているのだろう。
一海「どうした?もしかしてコイツらもなんかおかしいのか?」
戦兎「ああ。どうも納得がいかない。もしかしたらネビュラガスに似た別の成分を浴びてるのか…?それもかなり昔に…。」
三羽烏によると、小学低学年頃にはもうすでにカラフルなハードスマッシュに変身できていたらしい。とすればネビュラガスを浴びてからすでに約10年ほどになると考えられる。一海たちのハザードレベルはある程度になると頭打ちになってしまってそこからはあまり上がらないのだが、10年の月日を経ているのであれば、あの圧倒的ハザードレベルの高さには納得がいく。
一海「まあとにかく難しいこと考えずに、ひとまずは帰ろうぜ。」
戦兎「あ、ああ…」
ちょっとしたモヤモヤを抱えたまま本日のインターンは終了。残り2日のインターンもそこまで大きなことが起こるわけでも、大発見があったわけでもなく、ただただ悶々とした日々が続くだけだった…。