天才物理学者と筋肉バカのヒーローアカデミア   作:いぷしろん

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一海「ほくと!…じゃなくて東北の仮面ライダー!猿渡一海だ!…俺の出番二年半ぶりな気が済んだけど気のせいじゃねえよな」

赤羽「二年半ぶりって、カシラ!俺たちついさっき八斎會のところ乗り込んでバラバラにはぐれちまったばっかじゃないっすか!」

一海「んーそりゃそうなんだけどよそうじゃねえっつーか」

青羽「ヴィランにやられてカシラおかしくなっちまったんじゃねえのか?」

一海「んなわけねえだろこっちにも色々あんだ。っつーわけで久しぶりに前回のあらすじといくか!なぁ環!」

環「えっ、僕も喋るの…」

一海「俺とお前2人で八斎會のヴィラン3人ぶっ倒したんだ。当然だろ」

黄羽「みんなでしゃべった方が楽しいでしょ!」

環「ぐ、グイグイくる………帰りたい…」

一海「…そっぽ向いちまった…。いつものか、仕方ねえ。それなら俺がいつものやつ言ってやるか。っつーわけでどうなる第70話!!!」














min{weird number}=70話

万丈「…ここどこだ…?」

 

一海らがちょうど戦闘を始めた頃、治崎が作った大穴に落ちた万丈が目を覚ました。落ちた衝撃か、変身もすっかり解除されてしまっている。体になんの痛みも残らなかったのは幸いであろう。

しかしあたりをキョロキョロと見回してみても周りには誰もいない。どうやら自分だけらしい。

 

万丈「なるほど、もしかして…アイツら迷子になっちまったのか!?」

 

否、迷子になったのは万丈である。

 

万丈「まあいいや。とにかく戦兎とか仲間のヒーロー探さねえとな…。おーい!誰かいるかーっ!」

 

仄暗い廊下で万丈の声がこだまする。やっぱり1人なのかとちょっとだけ寂しくなった。

しかしその声を聞いたからなのか、何か足跡のような音がこちらに迫ってきた。

 

切島「おっ!誰かと思えば万丈じゃねえか!」

 

手を振りながらニコニコと駆け足で近づいてきたのは切島だった。

 

万丈「切島!!!よかった〜!地面割れてさ、他の奴らが迷子になっちゃったんじゃねえかってヒヤヒヤしたぜ!」

 

切島「迷子は万丈もじゃね…?」

 

己もアホだと自覚している切島だが、その自分よりもアホっぽそうな発言をする万丈に軽く苦笑いした。

 

万丈「っつーかお前1人か?あの丸い人はどうしたよ、黄色のパーカーのやつ」

 

切島「ファットさんだろ?俺もはぐれちまってよ!今探してんだ…。分断されちまうし治崎がどこ言ったのか分かんねえし、こりゃ結構やべえな…」

 

治崎が意図してかどうかはわからないが、床下を"個性"で分解、徒に再構築したせいで、ナイトアイが下調べした治崎までの道のりが分からなくなってしまった。さらに八斎會が他組織からの侵入を阻むため、地下は複雑になっている。それを破壊して再構築したのだから余計に入り組んでいてもはや限界をとどめていない。その上で仲間とはぐれてしまった。今ヴィランに遭遇すればひとたまりもない。

 

万丈「けど今はとにかく歩いて誰か探すしかねえな。ヴィランなら倒せばいい!」

 

切島「それもそうだな!馬鹿みてえだけど一番速ぇ!嫌いじゃないぜそういうの!」

 

切島はニカッと笑いながらガシッと手を万丈の肩に回した。その時だった。ドシンッ!というような振動と音が前方から響いてきた。それも何度も、何度も。

 

切島「なんだ今の!」

 

万丈「多分誰かがバトってんだろ!俺たちも行くぞ!」

 

慌てて2人は駆け出した。

音と振動の大きさと異常なほどの頻度。味方にはこんなに強く速い攻撃ができるものは存在しない。これは間違いない。ヴィラン、それも、とてつもなく協力な敵だ…。

頼む、間に合え、間に合ってくれ。2人の心中はそれでいっぱいだった。

しばらくすると、前に扉が見えた。

 

万丈「大丈夫かッ!!!」

 

万丈は扉を蹴破った。そこは10畳ほどの何もない部屋だった。

ペストマスクをつけた着物の青年が1人。そして同じくペストマスクをつけ、異常なまでに肥大化した筋肉を持つ大男が1人。そこに立っていた。そして…

 

切島「…ファットガムッ…!!!」

 

ファットガムが大男の下に疼くまっていた。ボロボロであらゆるところを殴打され動かない。

 

「見たか天蓋!矛盾勝負は俺の勝ちだ!」

 

「二対一で勝つのは当たり前だ乱波。」

 

「だから俺にバリアはいらねえ!」

 

乱波と呼ばれた大男のヴィランと天蓋という着物のヴィラン。おそらくファットガムを倒したのは乱波の方だろう。

 

万丈「…お前ら…ただじゃおかねえからな…!」

 

沸々と怒りが沸いてきた。プロヒーローのファットガムをこうも簡単に倒してしまうほどのヴィラン。しかしそんなものはどうでもいい。一発顔を殴ってやらないと気が済まない。今万丈はその衝動に駆られている。

力強く腰にベルトを当てがい、ドラゴンスクラッシュゼリーを懐から取り出した。

 

Dragon Jelly!

 

ドラゴンスクラッシュゼリーをスロットにセット。万丈の足元からビーカーが生え、万丈を覆った。

 

天蓋「乱波!変身される前に倒せ!」

 

乱波「分かってらァ!」

 

その瞬間、乱波は地面を蹴り、わずか3歩で万丈との距離をぐんと縮めた。

 

万丈(まずいッ!今攻撃されるわけにはいかねぇッ…!)

 

ビーカーも所詮はガラス質の物体。強靭な肩を持つ乱波にとってこれを殴り破ることなど容易い。しかも今攻撃されると生身の万丈に拳が直撃。ネビュラガスによる身体強化を行っているとはいえ、ファットガムを倒すほどの敵だ。多少の傷では済まない。しかも万丈が先にダウンしてしまえば切島1人になってしまう。1人にはしておけない。一刻も早く変身しなければ…。

 

万丈は急いでレバーに手をかける。万丈がレバーを押し下げ、変身が終わるのが先か、それとも乱波の拳が万丈に届くのが先か。否、そのどちらでもなかった。

 

切島「安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)!!!」

 

ごく僅かな差で変身中の万丈を庇うように、切島が乱波の前に割り込んできた。ガチガチに硬化した全身に腕をクロスさせることで防御力を上げようとしている。

 

万丈「…ッ!?変身ッ…!!!」

 

その直後、万丈がレバーを下ろし、変身装置(ケミカライドビルダー)が再生され始める。だがまだ時間はかかる。ヴァリアブルゼリーがビーカー内に充填され、万丈の代表を素体で覆ったのち、硬化したヴァリアブルゼリーで各部位を生成するまでが変身の工程。そんなものをヴィランが待ってくれるはずもない。

 

乱波「俺の邪魔をするなッ!!!」

 

万丈に当たるはずの拳は切島に全て与えられた。比類なき異常なまでの拳の速さ。一撃一撃が体表を抉り込むような重さ。未だ未熟な切島にはとても耐えられたものじゃない。しかし耐えなければならない。万丈が変身が終わるまでは…。

 

切島「ぐッ…!」

 

だが体はもう限界だった。全身はもう銃で撃たれた水晶のように細かくひび割れている。自身の最高硬度も保てない。硬化した体表の下はただの人間。ひび割れた隙間から血は吹き出し、筋組織が見え隠れしている。

 

潰れる!流れる!!溢れ出る!!!

Dragon In Cross-Z Charge!!!BRRRRRAAAAA!!!

 

そしてようやく万丈の変身シークエンスが終了。切島のおかげで邪魔はされなかった。

 

切島「ガハッ…!」

 

だがここで乱波が連打を終え、切島を壁へと殴り飛ばした。壁はひび割れ、切島が背骨を強打。そのまま壁をずり落ちて地面に座り込んだ。

 

万丈「切島ッ!!!」

 

変身終了直後、後ろを振り向き、切島を見る。ピクピクと動いており、浅く早い呼吸をしている。全身が割れ、今にも硬化が解けそうだ。

しかし近くに駆け寄ればその隙に攻撃されやられる。今は敵から目を離せない。

 

天蓋「変身される前に倒したかったが…仕方なし。」

 

乱波「道具を使う奴は嫌いだが、変身されちまったもんは仕方ない!…ケンカならなんでもいい!やるぞ!」

 

腕をブンブン回す乱波。こちらはもう1人しかいない。

 

万丈「ったく、ニ対一は卑怯だろ!」

 

乱波「それもそうだな…このままじゃケンカにならないぞ?」

 

適当な愚痴を吐いたところ、何故かやけに乱波は頷いた。

 

乱波「おい天蓋!バリア出して邪魔すんなよ!」

 

天蓋「はぁ…好きにしろ。どのみち勝てる。」

 

天蓋という男の"個性"はおそらくバリア。まだバリアを張っているところを見たことがないため、どのようなものか万丈には分からなかったが、とにかく守るものであることだけはわかる。

バリアを使わないとは言っても、危なくなればバリアを出してくる。こちらとしては警戒せざるを得ない。

 

乱波「これでタイマン…!今度こそ骨のあるやつだよな!」

 

万丈「そりゃそうだろ!元格闘家の俺がタイマンで負けるわけがねえ!」

 

乱波「格闘家!いいなお前!!!」

 

そういうと乱波は万丈に向かって大きく振りかぶった。

拳の軌道が丸見え。避けられる。しかしそう思った時にはすでに当たっていた。

 

万丈「なッ…!」

 

異常な速さだ。来ると分かっていても拳に反射速度が追いつかない。さらに次の拳も超速でくる。高速で次々と繰り出されるパンチを受け止めたり弾いたり、時にはそのまま食らい、その直後には次の攻撃の対処をしなければならない。

今の万丈にとっては、攻撃力自体はそこまで高くはないが、塵も積もれば山となる。これが続けばいずれは耐えられなくなってしまう。しかし反撃を繰り出そうとしても、その間に次の攻撃が来る。防戦一方になるしかない。身動きが取れないのは厄介だ。

 

乱波「オラオラどうした!負けねえんじゃなかったのかァ!?」

 

万丈「うるせえ!」

 

しかも問題は切島とファットガムを庇いながら狭い空間で戦わなければならないということだ。打開しようと下手な攻撃を放てば部屋は崩壊。壁付近にいる2人は崩壊に巻き込まれる。打開しようにもできない。

 

切島「はぁ…はぁ…」

 

そんな中、少し回復した切島はゆっくりと立ち上がった。

自分と同期の万丈が、プロでさえ負けた相手に立ち向かっているのを見て、少し自分が情けなくなった。しかし自分にはそんな芸当できやしない。戦兎や万丈、緑谷、爆豪…彼らはなぜああも立ち上がれるのか、立ち向かえるのか、不思議だった。

 

切島(クソッ…必殺技だったのに…通じなかった…!次あれ食らえば俺はッ…)

 

自分が今、足手纏いなことくらい分かっている。万丈が防戦一方になっているのは間違いなく自分を庇えないからである。

強くなった気でいた。戦兎や緑谷、爆豪たちと肩を並べた気がした。…気がしただけだった。あんなにすごい力なんてもっていない。

 

乱波「ほらほらもっと速くなんぞ!倒れんなよ!肩あったまってきたとこなんだ!!!」

 

万丈「倒れるわけねえだろッ!!!」

 

威勢を張るが、実際はそんな余裕などない。さらに乱打の速度が上がる。

一つ、二つ、三つ、速すぎて残像が見える。阿修羅にでも殴られているような感覚だ。今まで避けたり弾いたりできた攻撃も段々と頰を掠め、身体に直撃するようになってきた。

 

切島(まずいッ…万丈が殺られるッ…!)

 

早く足を出さねば、万丈の代わりに戦わねば。心でいくら自分を鼓舞しようとも、足が震えて前に出ない。何もできない。鼓舞はいつしか自責になり、万丈を見ていた眼はいつの間にか地面を映し出していた。

中学生の時もそうだった。ヴィランに遭遇したときも足が前に出ない。AFOの時もそうだ。切島鋭児郎は動けなかった。

俺は…また…

 

万丈「諦めんなッ!!!」

 

乱波の攻撃を防ぎながら万丈は叫んだ。

 

万丈「その変身解いたらもう動けなくなんだろ!」

 

万丈は知っている。心が折れた時に仮面ライダーの変身が解けたら、次立ち上がるのに相当な時間が必要なこと。もう一度拳を上げるのに、顔を上げるのに、とてつもない勇気がいること。

自分の弱さを知っているからこそ、容易に変身を解いてはいけない。

 

万丈「今はまだ動けなくてもいい!でもな!諦めんのは違えだろ!また立ち上がるためにはなぁ、偽モンの仮面でもつけなきゃなんねえだろうが!!!」

 

切島「ッ…!」

 

バッと上を向き、今にも崩れそうな顔で万丈を見る。まだ負けてはいない。動けなくていい、身体を硬く維持することくらいならできる。

 

切島「…安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)…!」

 

不完全だが、それでも身体を硬化させ、己を奮い立たせる。いつか動くために、立ち上がるために。

 

天蓋「赤髪の方はもう動けない。貴様も乱波の攻撃を弾くので手一杯。それを今更鼓舞してどうしたというんだ。」

 

万丈「昆布かなんだか知らねえけどよ、昆布くれんなら俺もお返ししてやんねえとな!」

 

乱波の繰り出すパンチに合わせて万丈は後ろに跳んで下がった。そしてその隙にツインブレイカーを装着。ビームモードにして天井を撃ちまくった。すると天井が崩れ、瓦礫が次々と落ちてきた。

 

天蓋「撹乱…このためか!」

 

天蓋は自身と乱波を覆うようにバリアを出した。そしてその隙に万丈はファットガムの前に駆けつける。一方切島は慌ててしゃがみ込み、その瓦礫をモロに食らうことになる。

しかし崩れ落ちたのは天井だけではない。防戦一方だった万丈の戦況もまた崩れ落ちたのだ。

天井が落ち、上から微かに光が差し、その光は僅かに万丈の右拳を照らした。

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