天才物理学者と筋肉バカのヒーローアカデミア   作:いぷしろん

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density of arrangement of close-packing of equal spheres≒74話

 

戦兎「さあ、実験を始めようか!」

 

戦兎は左手でドラゴンとロックの二つのボトルを振りながらそういった。

 

【Hazard on!】

 

そして右手で懐からハザードトリガーを取り出し、BLDハザードスイッチを押す。そしてドライバーのBLDライドポートにセットした。

 

Dragon! Lock! Super Best Match!!!】

 

レバーを回すと鋳型のようなハザードライドビルダーが戦兎の周辺に展開される。

 

【Are you ready!?】

 

戦兎「変身!」

 

戦兎がファイティングポーズを取るとハザードライドビルダーが一つに合体。そして神野以来、2度目となる漆黒のビルドがそこに現れた。

 

【Uncontrol Switch!!! Black Hazard!!!ヤベーイ!!!】

 

そして戦兎は仮面ライダービルド、キードラゴンハザードフォームへと変身。その様子を見ていた幻徳と相澤は息を飲んだ。

 

相澤「またあの黒いビルド…!止めるぞ!」

 

幻徳「まあ待て。今回は何かあるみたいだ。それに暴走しても直後なら今の俺でも止められる。」

 

幻徳はスクラッシュドライバーを手にそういった。

 

戦兎「エリちゃん。しっかり捕まってるんだぞ」

 

戦兎の言葉にエリちゃんはこくりと頷くと、その小さな手で精一杯戦兎の肩をつかんだ。さらに激しい動きをしても離れないよう、キードラゴンの施錠によってエリちゃんを自身に縛りつけた。

 

治崎「神野の時の…!そうやって自分が暴走するリスクを孕んでまで壊理に執着するのか…!」

 

治崎は活瓶を吸収して得た巨大な両手を、戦兎を覆うようにして掴もうとする。しかし戦兎はビートクローザーを召喚して、目にも止まらぬ剣技で両手を切断した。

 

戦兎「一昔前の俺ならそうしていたかもしれない。でも今は違うッ!」

 

戦兎は左手で治崎の襟を掴み、右手でベルトのレバーを回す。

 

【Ready Go!!! Hazard Attack!!!】

 

蒼黒く輝く炎を纏った右拳は治崎の顎に命中。そして漆黒のドラゴンが治崎を咥えて天へと昇ってゆく。

 

戦兎「約束したんだ。俺は必ず生きて帰る!誰も死なせないって!」

 

Panda! Rocket! Super Best Match!!!Are you ready!?】

 

戦兎「ビルドアップ!」

 

【Uncontrol Switch!!! Black Hazard!!!ヤベーイ!!!】

 

そして次はパンダとロケットのフルボトルをベルトにセット。素早くレバーを回転させて、仮面ライダービルド、ロケットパンダハザードフォームへと変身。左腕に黒いロケットを出現させると、そのロケットから炎を出して治崎を追うように空を飛んだ。

 

治崎「…英雄症候群どもが…!」

 

治崎は腕をさらに巨大化。合計8本の腕を使って空中から強烈な拳のラッシュを放つ。しかしそれをなめらかに回避。そして右腕に巨大な爪(ジャイアントスクラッチャー)を発現させるも…

 

戦兎「ウグッ…がぁ…!」

 

途中で全身に強烈な痛みを感じ、地上へ墜落。なんとか変身強制解除は発動しなかったが、治崎にダメージを回復されてしまった。

 

治崎「力が制御できてないんだ。拍子で発動できたものの、止め方が分からないんだろう!?」

 

治崎は地面に触れて戦兎にストーンエッジで攻撃を仕掛ける。それをジャイアントスクラッシャーで引き裂いて攻撃をいなす。

 

治崎「壊理の巻き戻しは生物の進化の過程そのものを巻き戻すこともできる。そのまま抱えていればいずれ消滅するぞ…!」

 

戦兎「その理論だと俺が絶えず進化し続けていれば消滅はしない!俺が今エリちゃんを抱えていても消えないのがその証明だ!」

 

戦兎の言う通り、常人なら消えているであろう巻き戻しの影響を戦兎は受けにくい。あくまで戦兎の仮説だが、先に説明したようにハザードレベルの上昇は人間の進化と同義であり、ハザードレベルが高いものにとって生物的退化とはハザードレベルの減少を意味するからだ。戦兎のハザードレベルは3.9。かなり下がったが、それでもまだ形を保てているのは戦兎のハザードレベルが高かったおかげだ。しかし無茶はできない。3.0を下回ればビルドに変身することすら不可能になるのだから。

 

だがそれを防ぐ術はある。簡単な話だ。ハザードレベルが下がるのなら、ハザードレベルを上げればいい。無理矢理ハザードレベルを上げるには、多少の危険を冒してでもハザードトリガーを使うしかなかった。

 

戦兎の目論見通り、ハザードトリガーを使うことでハザードレベルは4.2程度にまで回復し、そのまま平衡状態を保っていた。それと同時に強化剤が脳に闘争本能を呼び覚ます前に時を戻すため意識を失うこともない。

 

治崎「強がっても無駄だ。その体の痛みでわかっているんだろう?壊理の"巻き戻し"の力が強くなっていることを…!」

 

しかし"個性"の使い方が分からないエリちゃんは、まるでブレーキペダルと間違えてアクセルを踏み切ってしまうように、その能力を加速させていた。その結果、再びハザードレベルが下がり始める。

 

戦兎「だったら、俺がそれを上回るスピードで進化すればいい!」

 

【MAX Hazard on!】

 

戦兎はハザードトリガーのスイッチをもう一度押した。ラビットラビットでもタンクタンクでもないのに意図的に押したのは初めてだ。おそらく普通のベストマッチなら意識が持たない。が、賭けに出るしかなかった。

 

Lion! Soujiki! Super Best Match!!! Are you ready!?】

 

戦兎「ビルドアップ!」

 

三度展開されたハザードライドビルダーは勢いよく戦兎に向かって合体。そして…

 

【Ready Go!!! Over Flow!!!………ヤベーイ!!!】

 

戦兎は仮面ライダービルド、ライオンクリーナーハザードフォームへと変身が完了した。

 

治崎「そんな破滅的な方法で壊理は克服できない!いずれ壊理はお前を破滅へと導く!」

 

治崎の身体はさらに肥大化。腕も背中からもう6本生え、合計12本の腕で戦兎に触れ崩壊させようと襲いかかる。

 

戦兎「避けきれない!」

 

なんとか治崎に触れないように攻撃を避けて続けていた戦兎も、12本の腕を避けるのには限界があった。せめて触れる時間だけでも短くしなければという抵抗で治崎の腕を殴った。しかしその右拳は治崎によって手のひらで受け止められてしまった。

 

治崎「触れたな」

 

戦兎「しまった!」

 

"オーバーホール"は手のひらが対象に1秒でも触れれば崩壊させることができる。数秒触られてしまった戦兎はここで死を覚悟したが…

 

治崎「崩壊しない…?」

 

治崎は確かに触れているはずなのに戦兎のボディは崩壊しなかった。

 

戦兎「いまだ!」

 

治崎が崩壊しない戦兎に戸惑っている隙に左手で素早くボルテックレバーを回す。

 

【Ready Go!!! Hazard Finish!!!】

 

必殺技を発動させると、掴まれた右拳にある攻撃装置(ゴルドライオガントレット)から治崎の体が吹き飛ぶほどの衝撃波が発生。治崎は再び地下に叩きつけられた。

 

戦兎「あっぶな…死ぬところだった…」

 

戦兎はほっと胸を撫で下ろし、治崎が落ちたであろう下へと向かう。

治崎に掴まれても崩壊しなかったその理由はハザードフォームの特性にある。実はハザードフォームのグローブやシューズには触れた物質を崩壊、霧散させる機能がある。それにより戦兎は無意識的に治崎の手のひらをわずかに崩壊させていたため、治崎の手のひらと戦兎の拳の間には微小ながらに空間が生成され続けていた。

 

治崎「どいつもこいつも…ッ!なぜ大局を見ようとしない…なぜ分からない!!!」

 

戦兎「コイツまだ…!」

 

地面に強く打ち付けられ、四肢を飛ばされてもなお、治崎は意識を保ち続けていた。完全に意識を落とさなければダメージなんて無かったことにされてしまうが、ここまで耐えられるとは戦兎の想定外だった。とは言え治崎も身体を回復させるのには時間がかかるようだった。

 

戦兎「早く倒さないといけないのに…!身体が…!」

 

さらにエリちゃんの巻き戻し出力が上がる。それに耐えきれず戦兎は膝をついた。終始優勢だったがここまで長引かれると体が持たない。もはやオーバーフロー状態でもハザードレベルを維持できなくなりつつある。

 

エリ「ごめんなさい!私が!止め方分からないから!」

 

エリちゃんは大粒の涙をボロボロと流しながら謝る。それが戦兎の肩にぽたぽたと落ちる。

 

戦兎「大丈夫!それにまだ打つ手はある!」

 

今できることで前世界ではやらなかったことがまだ一つある。ごくわずかでも意識を保てないと判断してやらなかったことだ。しかし今、エリちゃんの力を使えば、それに耐え得るのかもしれない。

 

戦兎「だからそのために力を貸してくれないか?」

 

エリ「うん…!」

 

戦兎はエリちゃんの溢れる涙を優しい手で拭った。そして…覚悟を決め、もう2回ハザードトリガーのスイッチを押した。

 

【MAX Hazard on!】

 

待機音が流れ始めると同時に戦兎はボトルを取り出した。

 

Rabbit Tank Sparkling!!! Build up!!!】

 

戦兎はラビットタンクスパークリング缶を取り出してプルタブを起動。そしてベルトにセットする。

 

戦兎「うぁ…あぁ…い、意識が…」

 

その瞬間ラビットタンクスパークリングの出力に合わせてハザードトリガーが自動的に強化剤(プログレスヴェイパー)の投与量を増やした。その結果、エリちゃんの巻き戻しをも凌駕し暴走へと至ろうとしていた。

 

麗日「先生!戦兎くんの様子が!」

 

幻徳「まさかまた暴走を…!」

 

神野の再来。あの場にいた唯一の人物である氷室幻徳は一目でそれを感じた。

 

ナイトアイ「…やっぱりこうなる定めか…。」

 

麗日「定めってどういうことですか…?」

 

ナイトアイの介抱をしている麗日は質問した。

 

ナイトアイ「私が見た未来の話だ…。これから…桐生戦兎は…暴走して止められなくなる…。」

 

まさにナイトアイの見た未来が裏付けられたかのように戦兎は頭を抱えてしゃがみ、苦しみ始めた。

意識が遠のく。視界が暗く曇ってゆく。エリちゃんの力を持ってしても意識が持っていかれそうだ。

 

蛙吹「相澤先生!今すぐ戦兎ちゃんたちの"個性"を消してあげれば助かるんじゃ…」

 

相澤「いや、俺の"個性"は戦兎には効かない。エリちゃんの"個性"だけ消せばそれこそ戦兎が暴走するぞ。」

 

そして戦兎は今、エリちゃんのおかげで意識をかろうじて保っている状態。そんなことをすれば間違いなく暴れる。とは言え加勢しようとすれば下手に戦兎を刺激して暴走させたり巻き戻しを喰らったりしてしまうかもしれない。

 

ナイトアイ「いずれにしろ…ビルドは暴走して…みんなが殺される。終わりだ…」

 

万丈「ふざけんじゃねえ!!!」

 

たった今、ここまで辿り着いた万丈がそう叫んだ。隣には一海と環もいる。

 

万丈「戦兎のこと知らねえからそう言えんだ!!!アイツは…戦兎は…自分を犠牲にするし、バカみてえにお人好しで、自意識過剰な奴だけど…俺たちが信じれば必ず応えてくれるような奴なんだよ!今俺たちにできるのはアイツを信じることじゃねえのか!!!」

 

麗日「万丈くんのいう通り、もしそんな未来が見えていたとしても信じてみな分からんやろ!」

 

蛙吹「そうよ。それに私…戦兎ちゃんと約束したもの。『たとえ何が起きたとしても…俺は生きて帰ってくる。』って!」

 

蛙吹は神野の事件の後のことを思い出す。そして戦兎もまた、消えゆく意識の中で約束したことを思い出していた。

 

戦兎(ここで…意識を失うわけには…)

 

もう手の力も抜け、足も膝をついている。

 

一海「頑張れ戦兎!!!負けんじゃねえ!!!」

 

ねじれ「戦兎くんがんばれ!!!」

 

みんなの応援の声が聞こえる。ぼんやりとだが確かに自分を鼓舞する声が聞こえる。

 

幻徳「頑張るんだ…桐生戦兎!」

 

相澤「今度は俺もちゃんと視ていてやる!だから負けるな!」

 

次第に意識が明瞭になってくる。黒かった視界も、だんだん色づきを取り戻し、光が眼に射し込む。

 

エリ「がんばれ…がんばれ!」

 

震えながらも戦兎の耳に届くように、小さな少女は大きな声で叫んだ。それを聞いた瞬間、しっかりと目の前に広がる光景を捉えられるようになった。

 

戦兎「…待たせたな…!自意識過剰な正義のヒーローの復活だ…!」

 

弱々しく、ただし胸を張って希望をみなに持たせるように声を発した。まだ油断していたら意識が持っていかれそうだが、それでも声援のおかげで戦う力が湧いてくる。

それを示すかのように力強くボルテックレバーをつかんだ。いつもの待機音声と共にレバーを回転させると、鋳型のようなハザードライドビルダーが展開。しかしその鋳型も四角ではなく、ラビットタンクスパークリング変身時の丸いものが黒く染まり上がったようなものだった。

 

【Are you ready!?】

 

戦兎「……ビルドアップ!」

 

ファイティングポーズを取るとハザードライドビルダーが合体。圧縮されてハザードライドビルダーがゆっくりと元に戻っていく。

 

【Ready Go!!! Over Flow!!!シュワッとハジける!!! Rabbit Tank Sparkling!!! イェイイェーイ!!! ヤベーイ!!!

 

そして戦兎は仮面ライダービルド、ラビットタンクスパークリングハザードフォームへと変身。装飾はほとんどラビットタンクスパークリングとほとんど一致しているものの、スパークリングフォームにあった赤と青の意匠は複眼を除いてハザードフォームのように全て黒く塗りつぶされている。しかし弾ける炭酸が如き白の意匠は健在であり、白と黒の新たなビルドが爆誕した。

 

治崎「…ようやく復活できた…肉片が散らばると一つ一つくっつけなきゃいけないから大変なんだ…!さぁ、エリを返してもらおう!!!」

 

それと同時に治崎も復活。10mほどの巨体となって現れた。

 

戦兎「渡さない!」

 

戦兎は地面を強く蹴ると一瞬にして治崎の間合いへと入り込む。治崎の腕を掴みつつ、黒く洗練された強炭酸の力で治崎の蹴飛ばすと、治崎の腕はぶちぶちと音を立てて千切れ、治崎は土壁へとめり込む。

 

治崎「ぐああッ!!!」

 

戦兎「まだまだ!!!」

 

赤黒い泡の力で音速を超えるパンチを何十、何百と打ち込む。その度に再生しても衝撃が加わり再生できない。何度も何度も耐え難い痛みを食らいながらも治崎はまだ気絶できずにいる。

 

戦兎「これで終わらせる!!!」

 

そして戦兎は両足を掴んで治崎をぐるぐると回転。そして勢いよく空へと打ち上げ、ベルトのレバーを回転させた。

 

【Ready Go!!! Hazard Finish!!!Sparkling Finish!!!

 

そして強く地面を蹴ると打ち上げられた治崎よりもはるかに上空へと跳んだ。それと同時に治崎を真っ黒な弾ける泡が充填されたワームホールの様な図形の中に閉じ込める。

 

戦兎「はぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

そして治崎に向かってライダーキックを放ち、地下まで治崎を蹴りつけた。エリの力が強まっているからだろう。キックを喰らった治崎は意識を失うとともに身体が崩壊して治崎と2人の活瓶に分離。そのうち一方の活瓶はドロドロに溶けて消え、もう一方は気絶。治崎と共に地面へと倒れ込んでいた。

 

ナイトアイ「…私が見た未来とは違う未来…。まさか未来は…変えられるとでもいうのか…!」

 

戦兎が殺戮兵器となり皆殺しにする世界。それがナイトアイの見た未来だった。しかし今見ている景色は違う。確かに今桐生戦兎は意識を持って立っている。戦兎が誰一人として殺さずに治崎を倒した世界。そんな未来が確定した瞬間だった。

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