八百万「フィクションだから良いのですけど…かなり恐ろしいですわね」
戦兎「そ、そうだな。フィクション…だからな。そんな中、主人公の筋肉バカ、万丈龍我は恋人香澄の提案により物理学者、葛城巧の元へと向かうも葛城巧は何者かに殺されていて、万丈龍我は殺人の罪を着せられることに。」
緑谷「葛城巧って、あの葛城先生!?」
戦兎「んまぁ色々あんだよ。そして怪しげな場所に連れて行かれた万丈はなんと人体実験をさせられ、命からがら逃げてきたところにやってきたのは我らが天ッ才ヒーロー・桐生戦兎なのでありました!」
一海「『自分で天才とかヒーローとかイタいんだよ』とか言いそうだけどな。確かにイテえけどな」
幻徳「桐生戦兎にヒーローはまだ早い。真のヒーローは俺だ」
戦兎「ああもううるっさいよ!いい加減黙ってなさいよ!」
ミリオ「そうこうしてるうちに続き始まるみたいだよね。楽しみなんだよね」
戦兎「さぁ、どうなる第81話!」
鉄哲「よっしゃー!行くぜ行くぜ!」
鉄哲は地面を強く蹴るとスマッシュに向かって殴りかかった。ガチンと金属がぶつかるような鈍い音が会場に響く。スマッシュも大振りのパンチをするも、鉄哲はそれを避けてスマッシュを連打。そして繰り出された右拳をジャンプで踏みつけ背中側に移動。スチームブレードで格好良く斬りつけた。
一海「流石ヒーロー科、演劇でもアクションは完璧だな」
幻徳「ふっ、アイツらは俺が育てたからな」
戦兎「あんたA組の担任でしょうが。適当なこと言うんじゃないよ」
そんな雑談を交わしながら戦闘シーンを眺める戦兎たち。『俺ならもっとやれるな』などと話している。
鉄哲「早いけどこれでフィニッシュだ!」
鉄哲はそういうと天井スレスレまで飛び上がり、背中のコウモリの羽を使ってドリルのようなキックをスマッシュにお見舞いした。
それと同時にプシューっと煙幕と爆発音が響いてスマッシュを包み込む。すぐさまスマッシュは舞台裏に引っ込んだ。
万丈「すげぇ…」
煙幕が晴れるとそこにはスマッシュにされていた人物が横たわっていた。
万丈「あんた…俺を捕まえた警官の…!」
回原「なんの…話だ…」
万丈「ふざけんじゃねえ!」
スマッシュの正体は万丈を捕まえた警官の1人、回原だった。しかもどうやら記憶を失っている模様。そんな回原の胸ぐらを万丈は掴む。
万丈「ホントなんだ!俺もコイツも身体になんかされたんだ!信じてくれ!」
拠り所のない万丈は必死に信じてもらおうと鉄哲の肩を掴む。そんな時、遠くからパトカーのサイレンの音が響いてきた。
万丈「俺は無罪だ!…俺は馬鹿でクズだけど…そんなことは絶対にしねぇ…!どうして誰も信じちゃくれねえんだよ!!!」
苛立ちのあまり万丈は地面を強く叩く。しかし手がジーンと痛くなるだけだった。
鉄哲「…最悪だ。俺はきっと今日という日を後悔することになる。」
万丈「…助けてくれんのか…」
座り込んだ万丈に鉄哲は手を差し伸べる。
鉄哲「俺はお前を信じる。それだけだ。それに、本物の馬鹿は自分のことを馬鹿って言わねえんだよ。お前は嘘をつくような奴じゃねえ。」
万丈「…あんた、名前は…」
鉄哲「てつ…戦兎だ。それより今は逃げるぞ」
万丈「お、おう。」
鉄哲だ…と言いかけたところで慌てて役名である戦兎に言い換えた。別に大したことでもないが…舞台裏のみんなは少しヒヤリとさせられた。が、無事に鉄哲は万丈と共に舞台裏へと走って消えて前半は終了
まさに万丈と戦兎(鉄哲)の物語が始動した伝説のシーンだった。そして舞台は暗転。ガサゴソと次のシーンのセッティングが始まっている。
緑谷「なんとか間に合った!まだ演劇終わってない!?」
戦兎「これから後半って感じだな」
その際中、A組の片付けを終えた緑谷、麗日、八百万が戦兎たちの元にやってきた。
緑谷「よかった〜!B組の演劇楽しみにしてたんだぁ!」
八百万「ところでどう言ったあらすじになってますの?」
戦兎「それはだな…」
戦兎が事のあらましを3人に説明。何をどう説明したかは…もうみなさんお分かりだろう。
しばらくすると再び明転。
八百万「ここ、戦兎さんが寮に作った実験室じゃありませんか?」
戦兎「だな。」
舞台は『nascita』の冷蔵庫の隠し扉から入れる実験室。やはりこの場所がないと仮面ライダービルドとはいえない。
鉄哲「ついたぜ。ここが俺たちのアジトだ。」
戦兎たちから見て左側の舞台端から鉄哲と万丈が再度登場。万丈は見慣れない演技をするためだろうか、キョロキョロと周りを見ている。
骨抜「おかえり〜ってその子連れてきちゃったの?」
角取「バンジョーリューガ…殺人犯だよネ?」
万丈「だから俺は誰も殺してねえ!」
右側の舞台から骨抜と角取が登場。おそらくは石動惣一と石動美空だろう。
万丈は必死になって弁明しようとするも少し距離を取られてしまう。殺人犯なのだから仕方ない。
鉄哲「紹介するぜ。石動惣一と石動美空だ。こっちは刑務所を脱走した殺人犯の万丈龍我」
万丈「俺は殺しも脱走もしてねえ!」
鉄哲「そうやってわんわん泣いてすがるもんだから連れてきちまった」
万丈「泣いてねえし!」
骨抜「まあまあ、そのくらいにして…"スマッシュ"はどうだった?」
鉄哲「倒したけど…やっぱりダメだ。記憶忘れて何にも覚えちゃいねえ」
鉄哲ははぁ…とため息をつきながら椅子に腰掛けて机にトランスチームガンとフルボトルをおき、机に置かれてある食べかけのバタートーストを食べた。
万丈「ってかお前らなにもんなんだよ。あんなバケモノ倒したりして…。ってかなんで人間があんなバケモンになんだよ!」
鉄哲「お前も受けたろ人体実験。あれが原因だよ。」
万丈「でも俺はバケモンになってねえぞ!」
鉄哲「理由はわかんねえけど、たまにそういうやつもいるらしい。俺もお前と同じ、ヤツらに人体実験をさせられて記憶を失っちまった。…だから俺は失った記憶を探すために"赤いコブラの男"を探してんだよ。」
万丈「だからあんな必死に…。」
鉄哲は悲壮感漂う表情でそう言った。BGMを流す裏方の吹出もそれに合うビルドのいつものBGMをかけている。
角取「Yes!ワタシタチは3人ともファウストの被害者なのデース」
万丈「ファウスト…?」
骨抜「"赤いコブラの男"が作った犯罪異能集団のことだよ。美空が昔ファウストに捕まったことがあってね。僕がなんとか救出したんだけど、奴らはアジトを変えて人体実験をしてるみたいなんだ」
万丈「おっ、おう…」
骨抜は用意してあったホワイトボードを万丈に見せて説明する。関係が観客にもわかりやすいように視覚的な図で、基本的には旧世界の最初の頃の関係図が書かれている。が、万丈は理解できずにアホ面を晒していた。
鉄哲「こいつはそのファウストの幹部から盗んできたもんだな。人体実験を受けてもバケモノにならなかったやつだけが使える代わりに強くなれる。」
鉄哲はトランスチームガンとバットロストフルボトルを万丈に見せた。
骨抜「そしてそれを参考に僕が作ったのがこのビルドドライバーとクローズドラゴンだ。」
戦兎の天才は流石に鉄哲では再現し切れなかったのだろう。クラスでも学力的に優秀な骨抜が天才性をカバーすることになった。
骨抜はビルドドライバーを手に持って万丈に渡した。クローズドラゴンは機械音的な鳴き声を発しながら万丈の頭上を飛んでいる。
万丈「っつーことはこいつを使えば俺も戦えるし、俺に人体実験して殺人の罪を着せたあのコブラ野郎の正体を暴けんのか!」
万丈はぴょんぴょんとジャンプして飛んでいるクローズドラゴンを掴もうとするもなかなか手が届かない。届きそうなところで避けられてしまう。
万丈「なんだよコイツ!つかめねえ!…って熱ッ!!!ちょっ、熱い!熱いんですけど!」
面倒臭がられたのか、クローズドラゴンは火を吹いて万丈を威嚇。そのまま天井の棚の上に引きこもってしまった。
万丈「なんで逃げんだよぉ〜」
骨抜「そのクローズドラゴンはビルドドライバーと連携していてね。ビルドドライバーを持つ者が変身する資格があるかを判別しているんだ。」
万丈「資格…?」
鉄哲「変身する覚悟があるかってことだ。半端な気持ちじゃやってけねえからな。」
万丈「そんなので判別してんのかよ。」
万丈は舌打ちをして床に座り込んだ。悪態をついている。
鉄哲「それより、あの人体実験施設から逃げ出したんだったらまた覚えてんだろ?」
万丈「バッチリ覚えてる。俺じゃアイツには敵わねえけど、お前となら負ける気がしねえ!」
万丈は右拳をグーにしてバチンと左の手のひらに叩きつけた。気合い入れたその瞬間、角取のパソコンに大量の通知が入ってきた。
角取「大変デース!また"SMASH"の目撃情報が見つかりマシタ!」
鉄哲「マジか!俺の出番だな!」
鉄哲はトランスチームガンとバットロストフルボトルを持って急いで出ようとした。が、
万丈「おい待てよ!」
と万丈に左腕を掴まれてしまう。
万丈「コブラ野郎のところに突撃するんじゃなかったのかよ!あんただってなんで記憶を失ったのかとか知りてえだろ」
鉄哲「それとこれとは関係ねえ」
そう言って鉄哲は外に出ようと舞台の端の方へ向かう。
万丈「人助けのヒーローと自分の過去、どっちが大事なんだよ!」
鉄哲「決まってんだろ。ヒーローだ。」
そういうと鉄哲はスマッシュを倒しに舞台裏へと退場した。
万丈「クソッ!なんでだよ!」
苛立ちのあまり、万丈は置いてある椅子を勢いよく蹴っ飛ばした。
骨抜「…彼は記憶を失い、人体実験を受けてもなお孤独に戦い続けてきた。その中で生まれる不安や葛藤に悩まされてる。だからこそ、こうありたいという理想を、ヒーローを貫くことが今の彼にとってもっとも大事なことなんだ。」
万丈「…そうかよ。すげえなアイツは…。どうりで俺にはヒーローの資格なんてねえわけだ。」
初めて万丈が戦兎に敗北を感じたシーン。不安にさらされながらも愛と平和のために戦うヒーローに、自分勝手に動いている自分は勝てないと思った。
そんな時、万丈の持っている携帯電話から通話通知がやってきた。非通知だ。不思議に思いながらも電話に出る。
万丈「もしもし?」
『龍我!?龍我なの!?助けてお願い!!イヤァァァ!!!!!!!!』
万丈「香澄!!!」
電話の主は香澄役の小大だった。が、何か危機に晒されている様子だ。
『万丈龍我…。女に合わせてやる…。先端科学研究所まで来い』
万丈「香澄!おい!香澄!」
スタークの加工音声でそう伝えられた後、ブツッと通話は切れた。
万丈「行くしかねえ…」
角取「Wait!今行ってもdefeatできないデース!」
万丈「だからなんだってんだよ!香澄があぶねえんだぞ!!!」
角取「Wait!!!」
万丈は静止しようとする角取の手を振り払って舞台裏へ退場。後には2人残された状態で再び幕が降りる。
一海「いよいよフィナーレってとこだな」
ミリオ「最初に登場した女の子が出てくるってことだよね」
エリ「どうなっちゃうのかな…?」
6歳児ゆえに複雑なことは理解できないが、あの赤いコブラの男が悪役であることはわかっているようだ。
そして幕が上がると再び万丈が登場した。
万丈「はぁ、はぁ、ここか…。香澄!香澄ーッ!!!」
「ウゥ…ア…!」
万丈が叫ぶと反対側の舞台端からバーンスマッシュが登場。しかし何か虚ながらも一定の周期で何かの単語を話している。
万丈「香澄…?もしかして香澄なのか…?おい!俺だ!万丈龍我だ!分かるか!」
バーンスマッシュの肩を掴み声をかけるもスマッシュは暴れてずっと苦しんでいる。
鉄哲「万丈!大丈夫か!今助ける!」
【Bat…!】
鉄哲「蒸血!」
【Mist Match…!!!Bat…!Ba・Bat…!!! Fire…!!!】
鉄哲はトランスチームガンにバットロストフルボトルをセット。そしてトリガーを引くと再びナイトローグへと変身した。
鉄哲「離れてろ!そいつは俺が倒す!」
万丈「やめろ!アイツは香澄なんだ!」
鉄哲「大丈夫だ!お前も見ただろ!スマッシュを倒せば元の姿に戻る!」
ずっとその場をもがきながらもスマッシュは一向に襲ってくる気配がない。
「戦兎くんに万丈くん、久しぶり〜でもないか。」
鉄哲「コブラの男…!」
スターク「ブラッドスタークと呼んでくれ。」
スマッシュ側の舞台端から登場してきたのはブラッドスターク。とうとうボスが登場。物語は終盤へと突入していく。
スターク「それよりそのスマッシュを倒してもいいのか?そんなことをすればその女は消えてなくなるぞ」
鉄哲「なんだと…!」
スターク「体の弱い人間は人体実験を受けてスマッシュになった時点で肉体はほとんど死に至る。スマッシュの力を抜きだせば残った体は死体そのものだ。」
万丈「そんな…」
万丈はただ茫然と立ち尽くしていた。そんなのを気にも止めずにバーンスマッシュが火の玉で鉄哲を攻撃。受け流していた鉄哲だがそもそも"個性"のスティールは熱に弱い。我慢を迎えた鉄哲はスマッシュに殴りかかろうとするが…
万丈「やめてくれ!コイツは香澄なんだ!」
と万丈がスマッシュを庇うように鉄哲の前に出る。その瞬間…
香澄「うっ…あぁっ…うう…!」
バーンスマッシュの右手から発射される火炎で自らを攻撃し始めた。香澄の理性とスマッシュとしての本能が争い始めているのだ。
鉄哲「スマッシュにされたら記憶は無くなるはず…。なのにお前を傷つけまいとして自分を傷つけてんだ…。」
万丈「なんで…。」
万丈は当時考えていたことを思い返していた。なぜ戦兎は自分やみんなを助けてくれるのか。なぜ香澄は自分を傷つけまいとしていたのか。もちろん今なら分かる。自分がそうやって施されてきたからだ。愛と平和によって自分が生かされてきたからだ。だからそのサイクルをつなげるために自分も他人を助けてきた。でも当時は自分にメリットがないのになぜ助けるのかとばかり考えていた。
だからこそ伝えなきゃ行けない。愛と平和とは何か。人をなぜ救うのか。なぜ助けなきゃ行けないのか。そのために自分は今こうして昔の自分を演じている。そう考えると胸に熱いものが込み上げてきた。
万丈「…なぁ。香澄は…本当に助からねえのか…?だったらせめて元の姿に戻してやってくれ!頼む!」
万丈は鉄哲に頭を下げた。なぜ戦兎が戦うのか、それを理解した上での懇願だ。
鉄哲「あぁ、任せろ。」
万丈の願いを叶えるように低い声で了承した。
【Steam Break!!!Bat…!】
今もなお苦しみながらもがくバーンスマッシュに更なる苦痛を与えぬよう、狙いを定めて銃弾を放った。バーンスマッシュはその一撃を受けて爆発。煙幕が張られた隙にスマッシュの中の人役、宍田と香澄役の小大が入れ替わり、煙が晴れるとそこには小大が横たわっていた。
万丈「香澄!」
万丈は慌てて小大の元へと駆けつける。
小大「龍我…私が…あなたを…科学者の元に行かせたから…」
万丈「もういいこれ以上喋んな!」
小大は手をぎゅっと握るも次第に握る力が弱くなっている。別れが近いのが嫌でもわかってしまう。
小大「私と出会わなければ…もっと…幸せな人生があったはずなのに…」
万丈「ふざけんな!これ以上の人生があってたまるかよ!…俺は…お前に会えて最高に幸せだった…!」
小大「ありがとう…これからは…あなたの拳で…多くの人の力になってあげて…。遠くから見守ってるね…」
最後にそう言い残して小大の手の力は完全に消えた。
いつしか気付けば涙を流していた。香澄を失ったあの日を思い出して…。でも前を向いて歩いていかなきゃ行けない。メソメソしてるわけにも行かない。見守ってると言われたんだから情けない姿は見せられない。
万丈「…なんだよ…また一緒に桜見に行くんじゃなかったのかよ…」
ただその一言だけを呟き、万丈は再び立ち上がるのだった。