戦兎「いい話だったな。仮面ライダー筋肉バカにしては」
万丈「お前それ何回言うんだよもういい加減聞き飽きたぞ…」
戦兎「だってイチオシだったんだぞ?」
万丈「んなもんイチオシにしてんじゃねえよ。ってか仮面ライダークローズってどう言う意味だ?」
戦兎「そりゃ出会った時からズボンのチャック空いてるようなやつがいたら『閉めてくれ』って言いたくなるだろ?それを英訳してクローズだよ。今もチャック開いてるし」
万丈「なっ!?いつから開いてた!?」
戦兎「演劇の最初からずっと」
万丈「マジかよ!?」
戦兎「何してんだよ全く…。あ、美空出てきた。と言うわけでどうなる第83話!」
万丈「チャック閉まった!」
戦兎「そんなことデカい声で言うんじゃないよ…」
「さて、次で最後の登壇者となります!1年普通科!石動美空さん!」
アナウンスが会場に響き渡る。会場の裾からついに美空が登場してきた。
戦兎「あ、美空出てきた…」
万丈「っておいおい…あの格好ってやっぱり…」
戦兎「あぁ。これはあれだな…」
2人は出てきた美空の格好を見て目を合わせながら唾を飲む。中央に立った美空は緊張した表情だったが、くるりんとその場で一回転。その瞬間表情はとてもにこやかなものに変わり…
美空「はーいっ♡みんなのアイドル〜♡み〜たんだよっ!ぷんぷんっ♪」
とほっぺたに手を当てて満面の笑みとウインクをみんなに見せた。もちろん格好はネットアイドル、みーたんの格好と同じものである。旧世界の記憶もなく、アイドルとしての活動歴もないはずだが、何故かこの格好に辿り着いたのは何かの因縁があるのだろうか…。
上鳴「うわっすっげぇかわいい!『nascita』で見かけた時も思ってたけどこう言う感じのぶりっ子ぶる感じもたまらんよなー!」
峰田「オイラにはちょっとお子ちゃますぎるな。もっとこう色々とデカくないとさ!」
八百万「低俗ですこと…」
戦兎「さすがアイドルやってただけあるな」
峰田には刺さらなかったようだが会場にいるほとんどの男子を虜にしている。それもそのはず、旧世界ではファンを日本中に抱えていたネットアイドルだったのだから。
万丈「どうよカズミン!かわいいだろ!…ってカズミン?」
隣にいる一海の方を見るが一海は何やら下を向いて黙っていた。何やら様子がおかしい。
万丈「おいカズミンいったいどうs」
一海「かわいいいいいい!!!!!」
一海は鼻から蒸気機関かと思うほどの鼻息を吹き出しながらそう叫んだ。あまりの声の大きさに周りのみんながこちらに注目するほどだ。
一海「な、なんだあの可愛さは…!一目見た時から心臓がドキドキバクバク!そんな言葉じゃ形容できませんねぇ…。だめだ…!これはもう突撃するしかない!」
戦兎「ちょっ、おいカズミン!」
一海は叫んだ瞬間にステージの方へまっすぐ駆け抜け、美空のいるステージへと乱入した。
美空「え、え、なに?だれ?」
あまりの非常事態に美空も困惑しているが、それにも構わずに一海はごほんと咳払いし、一気に空気を吸って口を開いた。
一海「猿渡一海!18歳!独身!たった今一目見た瞬間から心を燃やしてフォーリンラブでした!あ、握手してください!!!」
美空「はぁ!?」
一海は早口でそう言い合えると直角になるほど頭を下げながら手を差し出した。
「おおーっと!なんとあれは!ヒーロー科3年A組、雄英四天王の1人!猿渡一海がまさかの告白!?!?」
わぁーっ!と一気に会場が盛り上がる。女子は黄色い声援を、男子は嫉妬のような嘲笑のような野太い声をそれぞれ挙げていた。
戦兎「何やってんだあのバカ…」
万丈「あ?」
戦兎「お前じゃねえよ」
つい掛け合いをしてしまったがそんなことをしている場合ではない。なんとか一海を引き摺り下ろしてミスコンを元に戻さねば…と思っていたその時だ。
「待ちなさい!」
と舞台裏から声が響いてきた。どこかで聞いたことのある女性の声だ。ドタドタと足音を立てて登場してきたのは…
戦兎・万丈「「紗羽さん!?」」
なんと記者をやっている滝川紗羽が登場。いったいなぜ…?と混乱する間もなく紗羽が話し始めた。
紗羽「みんなのアイドルみ〜たんに無料で握手できるとお思いで?」
一海「いくら払えばみ〜たんと握手できますか?」
紗羽「五万円ね」
一海「ふっ、安いっすね」
一海はポケットから財布を取り出して50000円をすっと取り出すと紗羽に渡した。
戦兎「あ、あくどい…!」
万丈「ああ言うところは前の世界の時とは変わんねえんだな…」
美空「っていうか私握手するとか言ってないし!」
美空は差し出された一海の手をぱちんと叩き一海を一蹴。しかし何やら一海は満足げな様子だ。
一海「これで五万か、安いな。10万だとなにができますか?」
戦兎「これ以上求めようとするんじゃないよ。ほら戻るぞ」
一海「あっおい戦兎!いって!」
ここで戦兎も人をかき分けてステージへと登壇。そして一海の腕を掴んで無理矢理ステージから引き摺り下ろした。
緑谷「あの周りを巻き込んで去ってく感じ、戦兎くんたちらしいというかなんというか…」
八百万「半年前と何も変わってませんわね…」
ミリオ「ま、面白かったしオッケーだよね!」
一海をずりずりと引っ張りながら戻ってきた戦兎を見つつ緑谷はそう呟いた。
「さて、イレギュラーはありましたがこれで全参加者のアピールタイムは終了しました!結果発表は夕方5時!締めのイベントで行います!」
なんだかんだありながらもようやくミスコンが終了。痴態を晒した一海に一同は呆れながらもミスコン控え室へと向かった。
ミリオ「みんなミスコンお疲れ!」
ねじれ「通形!それにみんなも!上から見てたよありがとねえ!」
控室には着替え終わったねじれがいた。拳藤は着替え中で不在だったが、そこにはまだアイドル衣装の美空と紗羽もいた。
美空「あっ戦兎!ねえあの人なんなの!?急に上がってきて…」
戦兎「あー…まあ色々あんだよ」
一海「誤魔化すんじゃねえよヒーロー科の先輩で仮面ライダー同士だろうが。改めて、仮面ライダーグリス、猿渡一海だ。」
美空「げっ…なんでいるの…」
と美空は紗羽の後ろに隠れて一海を威嚇した。
戦兎「そうだ、紗羽さんはなんで雄英に…?そもそも部外者以外入らないはずだろ?」
紗羽「あれ、言ってなかったっけ?私雄英高校経営科のOGなの。取材のために根津校長に掛け合ってね。私フリーだし、外部に情報を漏らさないことを前提にね」
美空「それに紗羽さんはうちの常連なの。取材とかにウチの店使ってくれたりして。本当は友達が来る予定だったんだけど風邪ひいちゃって…。だから急遽私が紗羽さんに頼んでついてきてもらったの。」
戦兎「なんか意外なところで繋がってるもんなんだな」
一海「俺がみ〜たんと出会えたのも奇跡ってことか」
戦兎「良い加減黙りなさいよこのバカ」
万丈「あ?」
戦兎「だからお前じゃねえって。バカって言ったら反応するのやめなさいよ」
万丈「戦兎が毎日バカバカいうからだろうが」
紗羽「まあまあまあまあ!ほら喧嘩しないの!」
戦兎に詰め寄る万丈だったが、2人の間に無理やり体を割り込ませて喧嘩を鎮めた。
紗羽「せっかくの文化祭なんだし、色々回ってくれば?」
戦兎「そうだな…。つってもこの大人数で回るわけには…。」
確かに気がつけばそこそこな大所帯。あまりに大人数で回るのは迷惑かもと気が引けてしまう。
緑谷「僕は通形先輩とエリちゃんでこの後出店を回るよ」
麗日「うちもついていく!」
一海「俺もあの3バカと回るわ」
上鳴「俺も耳郎と用事あるからここで!」
峰田「オイラメイドカフェいくから!」
戦兎「そ、そうか…」
みんなこの後予定がある様子。誰かしら残るとは思っていたが立ち所にみんないなくなってしまった。
戦兎「俺はサポート科の展示見に行くけど、万丈はどうする?」
万丈「特に行くとこねぇし一緒行くか」
美空「さっきまで喧嘩してたのに…」
紗羽「男子はほら、単純だから…」
そう言って2人ははぁ…とため息をつき呆れた。
八百万「あ、あの…戦兎さん…?」
戦兎「ん?」
そんな中唯一残っていた八百万が戦兎に声をかける。
八百万「私もサポート科の展示に興味がありまして、よろしければご一緒してもよろしいですか?新しいサポートアイテムや機械の仕組みは"個性"に役立ちますし!」
戦兎「ああもちろん。天ッ才物理学者の解説もしてやるよ」
万丈「だからいちいち鼻につく言い方すんじゃねえよ」
珍しく八百万から誘われて少し機嫌が良い。というのも万丈相手ではサポートアイテムの良さや仕組みについて解説してもちっとも理解してくれないので、話のわかる八百万の方が解説しがいがあって面白いからだ。
戦兎「じゃあ早速…」
紗羽「あーまってまってまって!」
そんな中、急に紗羽さんが3人を呼び止める。八百万だけ引っ張って耳を貸してもらうようにジェスチャーをした。
紗羽「ね、君、もしかして戦兎くんのこと好きなの?」
八百万「なっ!?」
不意に変なことを耳打ちされてしまい面を食らったのか、八百万の顔は急に赤くなり、変な冷や汗が流れてきた。
紗羽「なるほどねぇ」
紗羽はニヤリと悪い顔をしながら万丈の方へと近づく。
紗羽「ね、万丈くん。君リューキュウ事務所にインターン行ってたんだってぇ?死穢八斎會の事件とかちょっと話聞きたいなぁ〜?」
万丈「んだよ回ってこいって言ったの紗羽さんだろ!?」
紗羽「良いから良いからちょっとだけ!ね?」
拳藤「うちの万丈がどうかしました?」
紗羽「実はね…」
愚痴を言っていると衣装室から拳藤が登場。紗羽はすぐさま耳打ちをして状況を共有。すると拳藤も軽く頷いて口を開いた。
拳藤「なるほどね、まあちょっとくらい良いんじゃない?ヒーローになったら取材とかあるし、その練習だと思ってさ」
万丈「まぁ…拳藤がそう言うんなら…」
紗羽「決まり!それじゃあお二人さんは文化祭楽しんで!ほら行った行った!」
紗羽はそういうと無理やり戦兎と八百万の背中を押して部屋の扉を閉めた。その直前、拳藤から送られたグッドサインとウインクにため息をつく八百万だったが、戦兎はそんなもの気にも止めなかった。
戦兎「よし、それじゃあ行くか!いったいみんながどんなものを作ったのか…楽しみだ!」
いつものようにアホ毛を逆立たせながら歩いていく戦兎に別の意味でため息をつく八百万。これからの文化祭に胸の高鳴りをそれぞれの意味で抱えていた…。
「よっ!久しぶり〜!」
「誰かと思えば…シンイリか」
シンイリ「正解!ようやく俺も覚えられてきたかなぁ?」
「いつも急に現れるからな。もう慣れた。」
某所、工場跡地。シンイリと荼毘の会合が行われた。
荼毘「お前はやるべきことがあったんじゃなかったのか?」
シンイリ「そっちはもう俺がいなくても良くなったんでねぇ。あとは時間が経てば勝手に解決してくれる。それより、今日はホークスとの密会なんだろ?」
荼毘「なんで知ってるんだ…。」
シンイリ「情報屋だからなぁ。俺に知らないことはない。」
荼毘は左目の縫い目をぽりぽりとかきながらそう言った。
シンイリ「おっ、噂をすれば来たみたいだぜ」
シンイリがそう言った瞬間、ホークスが地面に足をついた音がコーンと工場内に響き渡った。
ホークス「おいおい。取引は荼毘1人のはずだろ?そっちの赤いのはなんだ」
荼毘「イレギュラーってやつだ。俺もコイツに嗅ぎつけられて迷惑してる」
シンイリ「それについては悪い。俺のことは無視して話を続けてくれ。脳無の話だろ?」
荼毘「なんでも知ってやがんなコイツ…」
シンイリの情報網について呆れながらも荼毘は話を続けた。
荼毘「まあいいや。こいつの言う通り、お前には脳無の性能テストについて手伝ってもらう」
ホークス「性能テスト?」
荼毘「ああ。脳無は重要な戦力だが不安定でな。テストが必要だが、こっちはAFOが捕まり、八斎會が捕まった後だ。派手に動けない。そこでヒーローに脳無の性能を試してもらう。脳無が倉庫から逃げ出し暴れたことにしてヒーローに対応させればある程度の性能が把握できるだろ?」
ホークス「なるほど。そこで俺か。」
荼毘「ああ。俺たちに協力するからには拒否権はない。脳無を相手するのは…」
シンイリ「桐生戦兎…なんてどうだ?」
ホークス「桐生戦兎…?あの雄英の子か。ヒーローならいざ知らず、雄英生を引っ張り出すのは中々難しいな」
首を傾げながらうーんと悩むホークス。インターン中ではあるとはいえ、戦兎は今自粛中だ。何か特別な理由でもなければ自然に呼び出さない。
荼毘「適当な強いやつならなんでも良い。弱ければ性能テストにはならないからな。」
ホークス「わかった。それで、日時と場所は?」
荼毘「
ホークス「分かった。あんたたちの期待に応えられるよう頑張るよ」
シンイリ「期待してるぜ」
シンイリはホークスの方をトントンと叩いたと思うと、スーッと赤い粒子を出しながら霧散してしまった。
荼毘「話は以上だ。もちろん誰かに言えば…」
ホークス「分かってる。このことは
ホークスは荼毘に背を向けながらそう言い残すと羽を広げ、空へと飛んでいった。
荼毘「2人…ねぇ…。」
荼毘は右目の火傷傷を刺さりながら、荒廃した工場の中でぼそっと呟いた。