一途な恋の弓矢   作:樂川文春

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第1話 七年目の恋心

 

 ウマ娘。

 

 それは異世界の魂と名を受け継ぎ、走るために生まれてきた少女たちのことである。

 

 人間によく似た見た目をしているのだが、不思議な耳としっぽを持ち、人間の何倍もの身体能力を誇り、美しい容姿を持って生まれてくる。

 

 ウマ娘という種族は女性しか生まれず、また、人よりもその絶対数がはるかに少なく、日本だと毎年7000人程度しか生まれない。

 少子化の進む日本ですら毎年80万人以上は新しい命が誕生しているのだから、割合でいえば1パーセント前後だ。普通の男女共学校であれば、一学年に数人ぐらいの割合でウマ娘がいるといったところだろう。

 

 珍しいけれど、異質というほどでもない。

 

 そこそこの規模の学校であれば、ウマ娘が10人以上はいる。独自に野良レースだって開催できるし、運動会といった恒例行事ではウマ娘だけを選手として集めた競技などもあり、人気をはくしている。

 人々のあいだではウマ娘というのはそれなりに身近な存在なのだった。

 

 さて。

 地元の野良レースでは他校のウマ娘にも競り負けたことがないようなウマ娘――そんな上澄みの少女たちだけを集めて、その走る才能に磨きをかけるための教育を施す養成機関が存在する。

 

 ――日本ウマ娘トレーニングセンター学園。

 

 ウマ娘の少女たちを受け入れ、学ばせ、鍛え、育て、トゥインクルシリーズと呼ばれる賞レースへと送り出すことを目的とする全寮制の中高一貫校だ。

 

 通称トレセン学園。

 

 ウマ娘養成機関というのは日本各地に点在しているのだが、ここトレセン学園はそのなかでも別格の存在だ。

 

 日本最大級の設備規模を誇っており、受け入れている生徒の数も国内随一の約2000人。一学年に350人程度と計算したとしても、毎年生まれてくるウマ娘の上位5パーセント前後しか入学することができない超エリート校だ――なお、高校卒業後も条件次第ではトレセン学園にそのまま在籍可能なので、実質的な割合でいうと毎年の新入生は300人ぐらいだろうか――。

 

 きわめて広大な敷地の中には巨大な校舎をはじめ、レーストラックやトレーニングジム、大きな飛び込み台も備えた全天候型のプール、ダンススタジオ、野外ステージなどが完備されている。ほかにも大食いが多いウマ娘たちの胃袋を満たせるほどの供給力を誇る食堂兼カフェテリア、品揃え豊富な購買部などが設置されている。トレセン学園で働く関係者の数は出入りする業者も含めれば数千と言われており、まさに日本のウマ娘界における一大拠点だ。

 

 トレセン学園では少女たちが日々勉学やトレーニングに励む。そして、レースでの勝利とその勝者のみが立つことができるウイニングライブでのセンターポジションを目指して切磋琢磨しているのである。

 

 

 

 

 

 早朝というには遅く、昼前というにはいささかか早い。そんな冬の朝のことだった。

 

 トレセン学園に所属する生徒であるナイスネイチャは朝のトレーニングを終えた帰りに、占い小屋を営むウマ娘、マチカネフクキタルとその助手メイショウドトウのもとを訪れていた。

 

 彼女らの占い小屋は校門の横に設置されていた。トタン板の屋根とベニヤ板の壁、木のつっかえ棒と荒紐、のれん代わりのカーテンといった素材で構成されている。素人の突貫工事くささが漂うちっぽけな掘っ立て小屋だ。

 

 そんな占い小屋の内部はうす暗く、簡素なパイプ椅子と折り畳み机が配置されている。その卓上では赤いミニ座布団に置かれた紫紺色の水晶球が得体の知れない光を放っていた。

 

「むむむむむ……」

 

 マチカネフクキタルは水晶球を睨み付けながら、両手をかざしている。

 

 マチカネフクキタルは栗毛の髪を外ハネさせたショートヘアに、レモンのような色合いの瞳を持つ少女である。

 右のウマ耳にだけ青と白のツートンカラーの布地に赤いラインが入ったイヤーカフをつけており、そのすぐ下に黄色い花びらを模した髪飾りをつけている。左のウマ耳はむき出しのままであるが、その根っこの近くには白い紙垂(鳥居などにぶらさがっている捻られた紙)を垂らした達磨風デザインの小さな髪飾りをつけていた。

 

 彼女の趣味は縁起物グッズ集めであり、その達磨の髪飾りもまたお気に入りの開運アクセサリーのひとつ。

 

 そんなマチカネフクキタルの特技は占い。よく当たると学園中のウマ娘から評判だった。

 

 マチカネフクキタルの背後にはメイショウドトウが立っていた。

 ミディアムの長さの鹿毛色の髪に桃色のヘアバンドをつけている。大流星と呼ばれる白いメッシュが前髪の中心に流れていた。右のウマ耳には群青色の細いリボンを結んでいた。ウマ耳が両方とも所在なさげにしょんぼりお辞儀をしている。紫色の瞳を常にうるうるとチワワのように潤わせる垂れ目がちな少女だった。

 

 頼まれると断りきれない性格の彼女はいつもここでマチカネフクキタルの助手をしているのだ。

 とはいえ、メイショウドトウとしてもそんなマチカネフクキタルとはもう何年もの付き合いになる。とても仲がいい。内心ひそかにソウルメイトと思ってすらいる。そんなわけなので嫌々手伝いをやっているというわけでもないようだ。

 

 二人は学園の冬用の制服姿である。濃淡の紫色のセーラー服にプリーツスカート。足元は黒色のニーハイソックスに茶色のローファー靴を履いていた。

 

 一方、対面に座るのはこちらはウマ娘のナイスネイチャ。トレセン学園指定のトレーニングウェアである赤いジャージ姿だ。つい先ほどまで走り込みをしていたので靴は蹄鉄つきのスニーカーである。

 

 やや赤みの強い鹿毛色の髪を両サイドでくくりツインテールにしていて、頭頂部でぴこぴこ動くウマ耳を赤色と緑色のクリスマスカラーのイヤーカフでおおっている。右のウマ耳の下に小ぶりな緑色のリボンをつけていた。

 

 ナイスネイチャはその灰色の瞳でじっと水晶をにらみ付けている。目の前ではマチカネフクキタルはむむむ、と唸り続けている。時おり「かむかむ、ほーれんそー、ほーれんそー」と謎の呪文が口から飛び出す。

 

 かれこれ五分はその様子が続いていたのだが――。

 

 いい加減焦れてきたナイスネイチャは、

「それで……フクキタル。どうなの……アタシの……」

 そこで言いよどむ。

 

 もぞもぞと所在無さげに首を振った。ぱたぱたと手のひらで自分を仰ぎ、視線を宙にさ迷わせる。

「その……」

 頬が赤く染まり、うつむく。観念したように声を落とし、ぽつりと訊ねた。

 

「……恋愛運」

 

 呪文がぴたり、と止んだ。

 一瞬の静寂。

 マチカネフクキタルが顔をあげた。目の奥に決意したような光が灯っている。

「ナイスネイチャさん……」

 

 ごくり、とナイスネイチャは喉を鳴らした。

 

「貴女の未来は……」

 

 どきどきどきどき、と胸の奥が早鐘を打つ。ナイスネイチャは卓上に置いた手をぎゅっと握ると身を乗り出した。

 

 くわっ、と目を見開くマチカネフクキタル。

 

「……わかりませんっ!」

 

「んなああっ!」

 ずこーっ、と机に突っ伏すナイスネイチャ。

 

「なんじゃそりゃーー!」

 ナイスネイチャが悲鳴をあげた。アタシのドキドキを返せー、って叫んだ。

 

「いやー! それがですね! シラオキ様にナイスネイチャさんの恋愛運、つまり、未来を訊いてもですね! 教えてくれないんですよ! 弱りましたねー!」

 

 シラオキ様とはマチカネフクキタルが信仰するウマ娘の女神様のことだ。未来予知の能力を持っていて、言い伝えではウマ娘を導くとか助けるとかいわれている。

 

 ほかにもたとえば、時間を越える力を授ける――。

 などといった眉唾物の逸話すら存在する。

 

 そんなシラオキ様の力を借りた占いをしてもらってまで知りたいことがナイスネイチャにはあった。

 恋愛運を知りたいのだ。とはいえ出会いを探しているわけではない。すでに好きな人はいる。すなわち、意中の人との恋愛は成就するのか否かということだ。シンプルな理由である。

 その算段はあえなくご破算となったわけだが――。

 

「もー。シラオキ様そりゃないって……」

 

 脱力してうなだれて机に突っ伏したナイスネイチャ。ウマ耳がへにょりと垂れていた。パイプ椅子の隙間から見えるしっぽの毛先も弱々しく地面を掃いていた。ウマ娘の感情はウマ耳としっぽに現れるのだ。

 

 マチカネフクキタルの後ろに控えていたメイショウドトウが首をかしげる。

「はうう……不思議です~。どうしてなんですか? シラオキ様がお告げをくれないなんて。今までこんなことなかったですよねー?」

 と、肩を落とす。

「ネイチャちゃんごめんねー」

 とも言う。

 ナイスネイチャは慌てて上体をあげた。

 

「あ、ドトウ気にしないで。あはは……あー、えーと。ほら、さ。シラオキ様的にはもしかしたら占いなんかに頼らないで自力でがんばれってことなのかも……」

 

 それを聞いたマチカネフクキタルが頬をふくらませる。

「占い、なんか、とはなんですか、なんかとは!」

 

 ナイスネイチャは慌てて手を振ったあと、

「あ。ごめん! そーいうつもりじゃなかったんだ。占ってもらっといてそんな言い方はないよね。本当にごめんね、フクキタル」

 今度は拝むように手を合わせて謝罪する。

 

「むう。まあいいでしょう。シラオキ様は慈悲深いウマ娘の神様ですから。こんなことで怒ったりはしません……それに私が何も占えなかったのは事実です」

 

 マチカネフクキタルは首を振る。だが、次の瞬間には両手を前に突きだし親指を上に向けて立てると、

「けど……しかーし! これは! ひとえに! 私の祈りの力が足りなかったのやもしれません! もう一度! 気合いを入れて! 祈れば! しからば! ずんば!」

 

 水晶球に手をかざす。

 

「はー! ふんにゃらはっぴー! ほんにゃらはっぴー! さんきゅーシラオキ! さあナイスネイチャさんの未来を教えてください! シラオキ様!」

 

 シラオキ様のお返事は――来ない。

 マチカネフクキタルはかくっ、とうなだれる。

「……出ません。おっかしいですねぇ」

 

 ナイスネイチャは気づかうように笑った。

「いいのいいの。うん、やっぱり自分の力で運命を変えてしまえってことなのかも。ありがとうフクキタル、ドトウ。アタシいくね。あ、お代は千円だっけ……?」

 

 ポケットから財布を取りだそうとするナイスネイチャにマチカネフクキタルは首を振った。ひらいた片手をびしっと通行止めのように突き出した。

 

「お代は結構ですっ!」

「え、でも……」

「これでもこのマチカネフクキタル、占い師のはしくれ! 何も占えていないのにお代をいただくなど、できようはずがありませんっ!」

「や、時間を割いてもらっといて、そんなの悪いよ……」

 

 渋るナイスネイチャにメイショウドトウがおずおずとした上目遣いで意見を差し込む。

 

「あの、ネイチャちゃん……フクキタルさんにも譲れないものがあるの。だから……」

「そうです! そうなのです! ですから本当にお代は結構です! お構い無く! ナイスネイチャさん! いえ! むしろ!」

 

 そこでマチカネフクキタルは妙案を思い付いたらしく、人差し指を電球でも灯すかのように天に向けた。

 

「お詫びといってはなんですが、この開運グッズをお渡ししましょう。……これですっ!」

 

 マチカネフクキタルはそう言うと、彼女がにゃーさんと呼んでいる招き猫の形をしたバッグから何かを取り出した。Uの字の形をした金属製の物体。

 開運グッズなのだといわれれば、なるほど、うっすらと神秘的な光を放っているような気がしないでもない――いや、やっぱり気のせいか。ナイスネイチャは訊いた。

 

「なにそれ。蹄鉄?」

「はい! ナイスネイチャさんは蹄鉄がラッキーアイテムだということをご存知ですか?」

「知らない。そうなの?」

 

 ナイスネイチャが首をかしげる。

 マチカネフクキタルはうんちくを語りだした。

 

「そうなんです! たとえばですね! ヨーロッパでは蹄鉄を贈られた夫婦は幸せな結婚生活を送れる、という言い伝えがあります!」

「け、結婚!」

「恋愛運が欲しいのならもってこいこい福来たれなアイテムだとは思いませんか!」

「た、たしかにそー……かも?」

「というわけでこれはお詫びです! どうぞ持っていってください! ドアに飾ると魔よけにもなるそうですから寮室の扉にでもつけるといいかもしれませんね!」

 

 そう言って胸を張ったマチカネフクキタル。右手に持った蹄鉄をナイスネイチャの前に差し出す。ナイスネイチャの視線が蹄鉄に吸い寄せられる。

 

「……いいの?」

「ええ! さあどーぞ!」

「じゃあ、もらっていこうかな……」

 

 蹄鉄を受け取ったナイスネイチャ。指先に持った蹄鉄をまじまじと見つめた。無意識だろう。ぽそりと呟く。

 

「結婚……夫婦、か……ふふっ」

 口もとをゆるめる。やや間があって、顔を上げた。

 

「ん、ありがと。今度こそ、アタシいくから」

 

 ナイスネイチャは蹄鉄をポケットにしまい込むと、占い小屋のカーテンをくぐり去っていった。マチカネフクキタルとメイショウドトウは手を振って見送る。室内に二人の沈黙が流れる。

 やがて、ぽつりとメイショウドトウが呟いた。

 

「あの~……フクキタルさん訊いてもいいでしょうか~?」

「はい? なんでしょうか?」

 

 マチカネフクキタルが振り返り、メイショウドトウを見上げた。

「……蹄鉄ってウマ娘だったら誰でも持っていますよね~? 今さらご利益とかないんじゃ……?」

 

 そう言って唇に指先を当てて、眉をひそめるメイショウドトウ。そんな彼女にたいして、マチカネフクキタルは自信満々な顔つきで指を振る。

 

「ちっちっち。甘いですよ。メイショウドトウさん! あれはただの蹄鉄ではありません。なんと! シラオキ様が実際に使っていたという曰く付きの使用済み蹄鉄なんですっ!」

「……ふぁ?」

 

 口を三角にしてポカーンとするメイショウドトウ。

 なんだか急に胡散くさいワードが飛び出してきた。有名人(神)使用済みグッズなんて、それ典型的な……。

 マチカネフクキタルは御利益がありそうな開運グッズ集めが趣味である。福がありそうなグッズを片っ端から買い続けた結果、彼女の寮室はがらくたで溢れかえっている。でっかい金のシャチホコとか意味不明なものも数多い。

 

「あの~……そんなもの、どこで手に入れたんですか~……?」

「Umazonで入手しました!」

「うまぞん……」

 

 あ、だめだこれ。メイショウドトウはそう思った。

 

「あのコダマという出品者には感謝しないといけませんね! 何十枚もまとめ売りしているんですから!」

「……」

 

 メイショウドトウは無言のまま、傍らにおいてあったにゃーさんバッグのファスナーを開ける。

 

 蹄鉄がいっぱい入っていた。

 ほろりと涙が出そうになった。

 そっと閉じた。

 

「救いはないんですね……」

「ん? なにか言いましたか?」

「いえ、なにも……」

 

 二人のあいだに海の底のような静けさが訪れる。やがて、マチカネフクキタルがあご先に指を当てて首をひねった。

 

「それにしてもシラオキ様が何も言わないだなんて……」

 

 メイショウドトウも横で首をかしげている。

「不思議ですよね~?」

 

 マチカネフクキタルがぽそりとぼやく。

「そういえば……死期が近いウマ娘の未来は占えないって聞いたことがあるような……」

 

「え~! 救いはないんですか~?」

「だ、大丈夫です! そ、そうだ! メイショウドトウさんを占ってみましょう! さっきはきっと私の調子が悪くて占えなかっただけです! ふんにゃらー、ほんにゃらー、ハイ! 出ました! 大凶!」

 

「ひどい~」

 

 

 

 

 

 同時刻。

 

 暖房を入れた室内は暖かく、陽射しが結露した窓ガラスを通して室内に入り込んでいる。床に置かれた加湿器がうっすらと蒸気を放つ。つけっぱなしのテレビの音。

 

『トゥインクルシリーズの情報をお届けするウマ娘総合情報番組UMAナミ・ズQN! はじまりましたー!』

 

 しかし、その画面を見つめるものはいない。

 

 テレビの前には足の短いガラステーブルと革製のソファーが置いてある。部屋の中央には長方形のテーブルとパイプ椅子が二つ。

 壁際には移動用のキャスターのついた大きなホワイトボードが置かれていた。

 そのホワイトボードには中山レース場の見取り図を印刷した紙がマグネットで張りつけられており、その紙の横のホワイトボード部分にはマジックでこう走り書きされている。

 

 

 目標レース 有馬記念(12月25日)

 

 本日 12月11日

 ナイスネイチャのトレーニングプラン

 

 午前 ダートコース 5周

 課題 ギアの切り替え

 

 午後 ジムにて筋トレ

 課題 瞬発力の強化

 

 追加事項 本日 午前10時45分からUMAテレビ主宰による模擬レース有り

 

 右回り芝2500メートル

 天候 晴れ バ場状態 良

 

 ナイスネイチャはトレーニング専念のため出走辞退

 だが、本番の参考のために観戦を予定

 

 

 と、こんな情報が書かれていた。

 

 

 ――みんなー! 声出していこー! おー!

 

 ――ふぁいおー、ふぁいおー、ふぁいおー……。

 

 

 外からは練習中のウマ娘たちの声が聞こえてくる。蹄鉄を着けたシューズが地面を叩きつけるどどど、という音の振動が窓の下を通りすぎていった。

 

 空に千切れ雲が流れる。陽射しが窓辺の花瓶に光を落とす。そこにさされていたのは真っ赤なポインセチアだった。開花するのは十一月から十二月。市場にもっとも出回る時期はクリスマスの頃であり、その特徴からクリスマスフラワーなどと呼ばれることもある花だ。

 

 ここはトレーナー室。

 トレセン学園に所属する各トレーナーにはそれぞれ、仕事部屋も兼ねた担当ウマ娘が活動するチームの部室が与えられる。それがトレーナー室だ。

 

 ちなみに外観はただの安っぽいプレハブ小屋だ。

 

 トレセン学園の敷地内のとあるエリアにはこんなプレハブ風の四角い小屋のデザインのトレーナー室が約十練ほど並んでいる。

 なお、ここだけではなく、トレセン学園の東西南北の各エリアにこのような集落じみたトレーナー室群が存在していた。

 

 もちろん校舎内にもトレーナー室は何十室もある。

 ――だが、トレセン学園に入学する生徒数というのは年々増えており、今やその総数は二千人近くにものぼる。

 

 そのせいでトレーナー室も校舎内の部屋だけでは物理的に足りなくなり、このように敷地内に雨後の筍のごとく乱立するようになったというわけだ。

 

 さて、このトレーナー室。

 正式には33号トレーナー室という名称だが、この部屋のたった二人の住人には単にトレーナー室とだけ呼ばれている。以前は校舎内のトレーナー室を使っていたのだが、二人だけではもて余す広さだったので三年ほど前にこちらへ移ってきたという経緯がある。

 

 トレーナー室の住人の一人は中肉中背の男だ。

 彼は学園に所属するトレーナーだった。

 

 男は――トレーナーは作業机に置かれたノートパソコンを使って仕事をしていた。

 担当ウマ娘のトレーニングプランの作成をはじめ、各種書類や稟議書の申請、グッズ販売やライブ運営に関する業務などやるべきことは多岐に渡る。ましてや、年末というのはだいたいイベント事が多く、やらなければならないことは山積みだった。

 さらにそこに担当ウマ娘との交流やメンタルケアなども入ってくる。当然それも疎かには出来ない。

 

 トレーナー業のことをよく知らない一般市民のあいだではウマ娘との交流など必要ないのでは? という意見も存在するのだが、じつはそれは違う。

 

 ウマ娘というのは実に不思議な存在であり、トレーナーとの信頼関係を深めることによって、レースで実力以上の力を発揮する。例をあげるならば、完全にスタミナが切れていたはずなのに驚異的な粘りをみせただとか、普段以上の切れ味を見せてライバルを差しきってみせただとか、そんな現象がちらほら発生しているのだ。

 

 心の強さや精神的な成長がそのような力をウマ娘に授けているのではないか、と識者のあいだではまことしやかにささやかれている。そして、その力を引き出すことが良いトレーナーたる条件ではないか、とも。

 

 とはいえ、そういった事情があろうとなかろうと、ウマ娘に真摯に向き合うトレーナーは数多い。本気で交流した結果、担当ウマ娘とトレーナーのあいだに恋愛感情が生まれる例はないこともなく、そのまま結婚までゴールインしてしまうだなんて話もあるとか――。

 

 室内にいるのは現在ただひとり。つけっぱなしのテレビからは音声が流れている。誰も観ているものはいないが、トレーナーとしてはラジオ代わりにつけているのだった。

 

『さあ、いよいよ二週間後に迫ってまいりました。暮れの大一番グランプリ有馬記念!』

 

『今日の特集では有馬記念に出走する有力ウマ娘たちからインタビュー映像を頂いてまいりました! それに加えて――』

 

『なんと! UMAテレビの特別企画として有馬記念と同じ距離である芝2500メートルの模擬レースを開催します!』

 

『本番の有馬記念に出てくる有力なウマ娘も何人か出走しますよ! 模擬レースのほうは生放送ですから、一足早く、まるでグランプリを観戦するような興奮が味わえそうですね! 実況はご存じお馴染みの赤坂アナウンサーです! チャンネルはこのまま!』

 

『……ではいったんここでコマーシャルでーす!』

 

『プリン! プリン! プリンにしてやるの! 美味しいにんじんプリンはみやこ製菓! 新商品プリンニシテヤルノ! 全国のスーパー、コンビニ、UMAストアで好評発売中!』

 

 

 

 キーボードを叩く音が止まる。

 マウスのボタンをクリック。データを送り込まれた複合型の印刷機がプリントを次々と吐き出し始めた。トレーナーは凝り固まった肩をほぐすように背伸びする。ようやく仕事に一段落がついた。

 

 ちらりと壁にかけられた時計を見る。

 そろそろナイスネイチャはトレーニングを終えて帰ってくる頃だろうか? などと考えているとトレーナー室の扉が開き、一人の少女が室内に入ってきた。

 

「ほーい、トレーナーさん。午前のトレーニング終わったよー」

 

 赤みがかった鹿毛の髪をツインテールにして両肩に垂らしているその少女はナイスネイチャ。トレーナーの担当ウマ娘だ。午前のトレーニングを終えたあと着替えたのだろう。トレセン学園の冬の制服姿だった。

 

「おかえり、ネイチャ。ごめんな、トレーニング見てやれなくて」

「ん、いいっていいって。忙しいんでしょ、もうすぐクリスマスだもんね」

 

 彼女はウマ娘としてはベテランにあたるシニアクラスの階級に所属しており、今年でトゥインクルシリーズに参戦してから七年目になる。

 だいたいのウマ娘が競走能力のピークを発揮できる期間の関係もあって、四~五年で引退することが多いから、かなり息長く走っているほうだ。

 

 もっとも、そのナイスネイチャも最近は調子を落としていて連敗が続いているのだが……。

 

 トレーナーはナイスネイチャに声をかける。

 

「冷蔵庫にスポーツドリンク入ってるぞ」

「ほんと? 喉渇いてたんだよねー」

 

 ナイスネイチャは冷蔵庫を開けた。澄み渡る景色の先へ、というコマーシャルのキャッチコピーで有名なスポーツドリンクを取り出す。

 休憩にはちょうど良い頃合いだろうと判断したトレーナーはソファーに向かった。いつものように右端に寄って、隣に人が座れるスペースを作る。ネイチャがそこにやってきて、ごく自然にその空いた左のすきまに腰を降ろす。ふたりとも無意識の行動である。距離感が近い。ナイスネイチャはシャワーを浴びたばかりなのか、ふわりと花のようなシャンプーの匂いがした。

 

「いやー、若いもんに混じってトレーニングするのは大変だわー。ネイチャさんもうクタクタですわー」

「なにいっているんだ。ネイチャだってまだ若いだろうに」

「いやいや、もうイイトシですって。商店街の皆さまからはネイちゃんもそろそろ結婚しなよ、なーんて言われるぐらいよ。お節介な親戚かっていうの? あははぁ……」

 

 結婚、か。

 トレーナーはその言葉を胸中で反芻しながら、壁に吊るされた外套に意識を向けた。

 

「まあ、あの年代の人たちは早婚も多いからなあ。それに結婚をして一人前みたいな価値観だったりするし」

 

 あの外套のポケットには指輪の入った小箱が収まっている。ナイスネイチャに渡したいと思っていた。いわゆる、そういう、左手の薬指的な――そんな意味の指輪だった。ちゃんとN.Nとも彫ってもらった。

 

 ナイスネイチャから雑談のついでといったふりをして指のサイズをさりげなく調べるのには苦労したものだ。

 

 買った指輪は飾り気の少ないシンプルな指輪だった。決して安物ではないが、ちょっと地味ではある。だが、一目で気に入って買ってしまった。ナイスネイチャは派手なものよりもこういったデザインを好む気がしたからだ。

 

 いまだに渡せていないが――というか、まだ告白すらしていない。恋人未満、というやつだった。なかなか関係を変える勇気を持てないというか。なのに先に指輪を買うというのはあまりにも先走りすぎだと自分でも呆れる。

 

 トレセン学園において、トレーナーと担当ウマ娘が恋人関係になることは必ずしも禁止されてはいない。ただ、推奨もされてはいない。学園側としては問題を起こさず節度を持ったお付き合いが出来るなら黙認するという程度だ。

 だから、障害はない。障害はないはずだ。

 トレーナーは考える。たぶん、向こうも同じ気持ち――好き、という気持ちではあるんだろう。あると願いたい。ならば告白を――だが、言い出せない。

 もし勘違いだとしたら? なのに指輪だけは買ってしまうだなんて恋人ですらないのになに舞い上がっているんだ? 順序があるだろう? とは自分でも思うのだが。

 

 ちらりと横目でナイスネイチャを見つめる。

 

 容姿はそりゃウマ娘だから整っている。でも、惹かれたのはそこではない。

 その心、在り方だった。

 口では自分なんかと否定しておきながら、いつだって勝ちたいと一生懸命に努力するところ。応援してくれる人たちの期待に応えてあげたい、喜ばせてあげたいと願う愛情の深さ。人の幸せを一緒になって喜んであげることのできる素直さ。

 

 とても魅力的な女性だった。いつの間にか夢中になってしまうぐらいに。

 

 ナイスネイチャと二人三脚で何年も駆け抜けてきた。まだ自分が新人だった頃から苦楽を共にしてきた。

 トレーナーはナイスネイチャ以外のウマ娘を担当したことはない。そんな彼に対して、チームを作らないか、という声は学園側から何度もかけられている。

 

 最近は負け続きだが、ナイスネイチャはかつてURAファイナルズの中距離部門で優勝したことがあった。

 彼女をそこまで導いた手腕をほかの娘たちのためにもふるう気はないか? そう問われるたびになんだかんだと理由をつけて断ってきた。自分はまだ未熟者だから担当ウマ娘ひとりのトレーニングを考えるのが精一杯だと。嘘だった。本当はナイスネイチャの隣で、ずっと――。

 

 学園理事長の秋川やよいはそんなトレーナーの気持ちを汲んで、できる限りの便宜を図ってくれた。

 

 だが、秋川理事長が庇えば庇うほど、ほかのトレーナーやウマ娘からは不満の声が上がる。

 

 制度上、ウマ娘は担当トレーナーがつかないとデビューが出来ない仕組みになっている。だというのに、トレーナーの数は限られている。担当がつかず、デビューすらままならずにひっそりと消えてゆくウマ娘もいるぐらいだ。つまるところ、学園は慢性的なトレーナー不足なのだ。

 

 そんな貴重なトレーナーをひとりのウマ娘が独占している――トレーナーが新人の頃なら、まだいい。経験の浅く未熟なトレーナーならば一対一でノウハウを積んで――というのはよくある話だ。だが、彼はもうベテラン。しかも、担当ウマ娘を頂点にまで育て上げた辣腕の持ち主。

 

 その横にいるウマ娘は連敗続きで落ち目の元王者ときた。一人占め、往生際が悪い、さっさと引退したら? かような妬みと僻みがナイスネイチャに向けられていた。

 

 それでももう一度頂点に立つべくトレーナーとナイスネイチャは努力し続けていたのだが――。

 

 ある日、秋川理事長はトレーナーを呼び出すと申し訳なさそうにこう告げたのだ。

 

 ――通達ッ! ナイスネイチャと二人でいられるのは今年の有馬記念のあいだまでとする。君、来年は必ずチームを組んでくれ。これは理事長命令だ。すまない……もう私では他のものたちの不満を抑えられそうにないのだ、と。

 

 頷くしかなかった。

 だから今年はナイスネイチャと二人で挑む最後の有馬記念なのだった。

 

『さて、それでは有馬記念に出走予定の有力な各ウマ娘とその担当トレーナーにインタビューをしてきましたその模様をVTRで放送いたします』

 

 テレビでは番組の放送が続いている。

 

 画面が切り替わり、そこにナイスネイチャとトレーナーの姿が映った。

 これは確か、四日ほど前に来た取材だっただろうか。リポーターは乙名史悦子。本業は月間トゥインクルという雑誌の記者だったはずだが、最近ではこんな風にテレビのリポーターもこなすようになっていた。

 なんというか、その独特のユニークなキャラがテレビ向けだということでどこかの敏腕プロデューサーに電撃起用されて以降、人気に火がついて今や押しも押されぬ売れっ子記者兼リポーターであった。

 

「あ、これこの前のやつだよね。って、うわ。アタシ寝癖ついてんじゃん。はっずー……」

 

 ナイスネイチャは頬をかいている。照れているときに無意識にする仕草だった。

 

「早朝の取材だったか? あの日はスケジュールが立て込んでたからなあ。ばたばたしてたから仕方ないよ」

 

『有馬記念連続出走記録がかかります、ナイスネイチャ選手とその担当トレーナーさんです。ナイスネイチャさん、六回連続出走というのは偉業ですよね! ご存じですか? 毎回ファン投票がすごい数になっていますよ? どうですか? 有馬記念に向けて! 調子のほどは?』

 

『えーっと、まあまあ……かな? うん、悪くは……ないデス』

 

『ありがとうございます! まさに天を突くほどの登り龍! だい! だい! 大! 絶好調、とのことです!』

 

『や、そんなこと一言も言ってないし……」

 

『続いて、トレーナーさんにもお話を伺ってみましょう。トレーナーさん? どうでしょう、やはり連続出走記録というのは担当トレーナーとしても嬉しいものなんでしょうか?』

 

『はい、有馬記念っていうのは暮れの特別なレースですから、ネイチャがそこに出られることは素晴らしいことです。だって、それだけファンの皆さまに応援して頂けているということですよね? それって、本当に凄いことですよ。ネイチャのトレーナーをやってきて良かった、嬉しい。俺はそう思います』

 

『とのことですが……愛されていますね、ナイスネイチャさん?』

 

『ふぇっ? あ、いや、そのー、あはは。参ったな。ありがとう……ございます?』

 

『それでは全国のファンに向けてナイスネイチャさんとその担当トレーナーさんにそれぞれ一言ずつメッセージを頂きたいと思います』

 

『ナイスネイチャさんファンの皆さまに一言』

 

『えーっと、まあ、勝ちたいって気持ちはあるんで応援……してくれたら嬉しいかなー、って思います。ハイ……』

 

『担当トレーナーさんからも全国のナイスネイチャさんのファンに向けて一言お願いします』

 

『レースでもライブでもうちのネイチャが一番になりますっ! なんせ、みんなの期待を裏切らない最高のキラキラウマ娘ですから!』

 

『ちょっ! トレーナーさんっ!?』

 

『す、素晴らしい! 担当ウマ娘のためならたとえ雨のなか風のなか! 勝利の暁には全財産を使い果たす覚悟! 都心の高級寿司のお店を貸し切り盛大に祝う用意がおありだなんてー! 以上、ナイスネイチャさんとそのトレーナーさんのインタビューでした!』

 

 相変わらず乙名史記者の飛躍しまくりの妄想癖は変わっていないようだ。テレビは次の場面に映る。

 

『さて、次に紹介するのは有馬記念の大本命と目されている――』

 

「勝利の暁に、か……」

 ナイスネイチャがぼやいた。トレーナーは振り向いた。目をそらされた。うつむき加減。ウマ耳が垂れている。

 やがて、ささやくような声音で言った。

「ねえ、トレーナーさん……」

 少しだけ、口にするべき言葉を探すような気配。

「……トレーナーさんは嬉しいの? その、有馬記念に連続出走してくれると。いや、連覇とかならわかるよ。でも、ただの連続出走で新記録ってさ」

「……嬉しいよ」

「そうなんだ……」

 

 テレビ番組は次の選手の紹介に入っている。

 そこには小柄な黒髪の――正確にいうならば黒みがかった栃栗毛(とちくりげ)の髪の――少女が映っていた。長い髪をツインテールにしている。髪の量が多いので大きな革製の髪留めでボリュームのあるテールを作っていた。右のウマ耳に大きな赤いリボンを結んでいる。

 

 彼女はマーベラスサンデー。ナイスネイチャのルームメイトであり、親友でもある少女だ。そして、いま日本でもっとも注目を集める現役最強ウマ娘でもある。

 

『アタシ、すっごく調子がマーベラースなの! きっと有馬記念でも最高にマーベラスな走りを見せるから応援してねー! マーベラース!』

 

 マーベラスサンデーは笑顔でカメラを見つめながら、両手を握りしめて、身体をゆらゆら、しっぽもゆらゆら。元気いっぱいにコメントを残していた。

 

『レースにかける意気込みと自信がコンセントレーション! じつによく伝わってきますね! 続いては――』

 

「頑張ろうな、ネイチャ」

「……うん」

 

 そのあと、言葉は続かず、二人は黙ってテレビを見続けた。マヤノトップガンやヒシアマゾンといった有力なウマ娘が次々と紹介されてゆく。それらも一通り終わり、映像が切り替わる。そこにはトレセン学園のレーストラックが映っていた。テロップが表示された。

 

 UMAテレビ特別企画! 模擬レース! 勝利はどのウマ娘の手に!? 

 

『間も無く模擬レースが始まります! トレセン学園の特設レースコースと中継が――』

 

 今日は模擬レースが組まれていた。

 

 このレースには有馬記念に参戦予定のマーベラスサンデー、マヤノトップガン、ヒシアマゾンという現役トップクラスを含む有力なウマ娘が数人、それから学園内の有志から募ったウマ娘たちが参加する。

 

 聞くところによるとこの模擬レース、どうもテレビ局側からの要請で組まれたものらしい。特別企画にするのだとかなんとか。有馬記念に出走予定の現役トップクラスウマ娘を含む模擬レースの生放送。たしかに視聴率は青天井を見込めるだろうな、とトレーナーは思った。

 

 もちろん有馬記念が控えている大切なこの時期に模擬レースをするのはどうかという意見もあった。

 だが、テレビ局は各種レースのスポンサーでもあり、メディア関係者との付き合いというものもある。

 つまり、ごり押しが通った、ということだ。

 

 噂によると秋川理事長に土下座し、足元にすがりつく番組プロデューサーがいたとかなんとか。驚愕ゥッ!? と、ドン引きで叫ぶ涙目の理事長がいたとかなんとか。視聴率を稼ぐのも大変なんだな、と考えさせられる話ではある。

 

 とにもかくにも。

 いわゆる大人の事情……なのは間違いないのだが、肝心のウマ娘たちからは反発は起きていない。

 

 レースに出る学園側の有志のウマ娘たちにとっては全国に自分の名前をアピールするチャンスでもあるし、有馬記念に出走するウマ娘たちにとっては実戦に近いトレーニングが出来るのは悪くないように思われたらしく、意外と好感触のようだった。

 それにウマ娘という種族は多かれ少なかれレース中毒な傾向がある。レースを求める本能が勝ったのかもしれない。

 

 ちなみにナイスネイチャにも声はかかったのだが、トレーナーはそれを断った。出しても良かったが、トレーニングスケジュールの都合を優先することにしたのだ。

 模擬レースをするとその日のメニューを大きく変更することになる。トレーナーによって、練習方針に対する考え方はそれぞれあるが……べつに何が正解というわけではない。リズムを崩さないことを優先したということだ。

 

 いや。

 最近、ナイスネイチャが調子を落としているから、万が一出走させて負けたらメンタルに悪影響があるかもしれないと考えたことも決して否定できないが――。

 

「あ、始まるね」

 

 ナイスネイチャの声でトレーナーは物思いから帰ってくる。その声につられて画面に目をやれば、枠入りは順調に進み、最後のウマ娘がゲートに入るところだった。

 

 レースは間もなく始まろうとしている。

 

 

 

 

 

 




12月21日 追記
指摘して頂いていたメイショウドトウの二人称を修正。やっぱり改善するべきだと思い直して。

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