ふぁんたじい!

作者の所属するサークルで行った「作者人狼ゲーム」で発表した作品を投稿します!

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『くればあしょっぴんぐっ!』

 早朝の大通り。

 街一番の商業区域、そこの朝市。

 両脇には声を荒げて客を呼び込む店主達の声が響き、その店々に大勢の人だかりが出来て大賑わいしている。

 その人ごみの中を進む、二人組の若い男女。

 

「ホンマ、やっとられんでっ、しかし。素材屋のハゲ、うちらの足元見くさってからに・・・こちとら命張って冒険者しとるっちゅうんじゃ!」

 むくれる金髪の魔女っ娘が、隣を歩く男に向かってボヤく。

「そもそもやっ! あんたが物を大事にしなさすぎるんやわっ、うちの作ったポーションはガブガブ飲むし、刀やってポキポキポキポキ折りまわってからに、ふ菓子とちゃうんやで」

 魔女っ娘が、ネチネチ説教を垂れても、

「お姉ちゃんかわいいね~ どこ行くの~ 俺実は冒険者なんだよね~ え、ウッソ君も⁉ 運命じゃん。ちょっとそこでお茶して行かな痛ででででで」

 青年にはどこ吹く風。

「われぇ・・・いちびんのも大概にせえよ。去勢されたいんか」

「だってかわいい娘が歩いてたら普通声かけるでしょ!」

「かけんわ! スケベッ」

 魔女っ娘にドスの利いた声で脅され、胸倉を掴まれている状況にも関わらず、若い冒険者の男は一切怯むことなく、足早に去っていくビキニアーマーの女性を物惜し気に横目で追っていた。

「あんたって人はッ!」

「あーわかったわかった。俺が悪かったよ、謝るよ、ごめんて。朝から怒鳴るなよ  なぁ、せっかくのべっぴんさんが台無しだぞ~ ほらスマイルスマイル☆ ああほら目当ての店もすぐそこだ。とっとと買うもん買っちまおうぜ」

 若者はヌルヌルと娘の拘束を逃れ、人のいい笑みを浮かべながらとっとこ薄暗い雑貨屋に消えていった。

「ナメクジみたいなやっちゃな」

 

 二人は建付けの悪い引き戸をこじ開け、薄暗い店内に入って行く。

「オヤジー いるかー アランだ。【番外】のアラン・ルピナスが来てやったぞー」

 返事がない・・・・・・

 

「ユリ。奥の寝床に2、3発撃ち込んでやれ」

「おーけー」

 魔女っ娘が店の奥に向かって手を掲げ、ブツブツ呪文を唱えると、その掌にはバチバチと雷光迸るエネルギー体が出現した。

「サンンダぁぁぁーッ‼」

「ま、待て待てっ、おきる、おきるからあッツ」

 魔女っ娘の魔法を遮って、店の奥から寝巻姿のおっさんが飛び出してきた。

 

     ***

 

「ほな、うちは二階におるさかい、済んだら呼びに来てやぁ」

「んー」

 2階の魔法コーナーへの階段をのぼりながら、階下の男たちに段取りを告げる魔女っ娘。

 若者が気のいい笑顔を浮かべて、手をひらひら振っている間、雑貨屋のオヤジは不機嫌そうにカウンターに肘をついていた。

「んで、今日はこんな朝早くに何の用だ?」

「何の用だとはずいぶんじゃないか、お得意様に向かって」

「ケッ、何がお得意様だ。こちとら日曜のチャリティバザーでもなけりゃ、ましてやボランティアでもないんだ。今日こそ値札に書いてある通おりの値段で買ってもらうからな」

「おーらい。んで、今日来たのは他でもない、また冒険者用の装備を一式揃えて欲しいんだ」

「はあ?」

 オヤジが訳が分からないという顔をする。それもそのはず、若者の装備は7日前全て新調したばかりだからである。鳩豆鉄砲な顔をするオヤジを気にする事も無く若者は注文を続ける。

「この、ボウガンを仕込んだ盾はなかなか良かった。でも、もうちょっと強度が欲しいかな。まがいなりにも盾なんだからさ。工房に言っといてね。あ、これ残骸ね。それと【バルログの鎧】は着てて単純にあっつい。炎熱耐性ならユリの魔法でもなんとかなるし。次はなしで。でもデザインはいい。かっこいい。あ、これ残骸ね。後はこの基礎筋力を底上げしてくれるっていう【竜人の腕輪】これは結構良かった。次もこれ頼むわ。これ残骸」

 カウンターには、真っ二つになった丸盾、バラバラにになった鎧、木端微塵に砕けた金ピカの腕輪が次々と並べられていった。

呆れ顔でそれらをつまみ、大きなため息をつく雑貨屋のオヤジ。

「おまえさん、ちょっとは物を大事にしたらどうよ」

「ユリにも言われた。んで、新しい剣の話なんだけどさ」

「ミスリルソードも折ったのかッ!」

「今度はもっと硬い金属で打って欲しいんだ。例えば・・・・・・それとか」

 若い冒険者は指さす。

店主の後ろにある、この汚い店には不釣り合いな程、絢爛豪華に装飾された棚に飾られている金属塊を。

 オヤジは一瞬苦い顔をしたが、しぶしぶ戸棚に向かい、これでいいのか? と、赤褐色の金属を取って向き直ると、若者は申し訳なさそうにニヤニヤしながら、人差し指を立てて上の棚をクイクイやっている。オヤジはまたしても鳩豆鉄砲顔をし、あきれた様子で棚に向き直り、今度は青褐色の鉄塊を取って向き直るとまたクイクイ。「これでもか!」と金褐色のインゴットに手を置くとまたクイクイ。やけくそに全ての金属に手を置いていき、最終的に【オリハルコン】の塊に行きつき、「これか⁉」と無言で返答を求めるとニタァと笑ってゆっくり深く頷いてくる。オヤジは伝説級の金属塊を掴んで「アホ抜かせ」と若者の頭をぶっ叩いたのだった。

「痛ってぇッ‼」

「バカかてめえ。お前みたいな万年金欠冒険者にこんな高級品売れる訳ねぇだろう」

「金の心配はしなくてもいい。当てならある」

 若者は急にまじめな表情を浮かべる。

「この前のクエストで相当レベルも上がったから、これからは高額報酬の案件もバンバン受けられる。

 でも、それは同時に命の危険度も上がるって事だ。

 俺は、如何せん武器の扱いが荒い・・・

こ の前も後一歩でユリが死ぬかもしれなかった。

 肝心な時に剣が折れてたら困るんだよッ。

 だから俺の戦闘スタイルでも耐えられる、肝心な時に仲間を守れる頑丈な武器が欲しいんだ」

 普段飄々としている若い冒険者が、珍しく声を荒げ真剣な表情を浮かべる。

「なあ、アランよお。オリハルコンの剣だって折れる時は折れるぜ。それより武器への負担を減らす事を考えるんだ。また俺が教えてやるよ。もちろん優良だけどな。だからこれはお楽しみで取っときな。」

 オヤジは若者の肩に手を掛け、優しく諭した。

 

「オヤジィ・・・・・・これやるからかっちょいいオリハルコンの剣、俺にくれよぉ」

 若者はいまいち納得していない顔で、店のオヤジに縋り付き、懐から【これ】を出す。

「だから別に適当な合金でも・・・ってぇ! おいッ、こ、これは⁉」

雑貨屋のオヤジは、若い冒険者が懐から出した、超激レアアイテムに目が釘付けになっていた。

「正真正銘ユリオプス・デージーの私物だ。しかも本日脱ぎたて」

「ぬ、脱ぎたてッ⁉ いや、でも、うーん、いやあ、ヘッヘッヘ」

「オヤジィ、これで一つ俺にオリハルコン制の剣を~ 」

「しょ、しょうがねえなぁ~ 今回だけだぞぉ~」

「やったぁーありがとうオヤジィ」

 二人してウキウキの男共。

 

「おい。おんどれら、何さらしとんねん」

 そこへ、頭上からドスの効いた声が・・・

 とっくに買い物を終えていた魔女っ娘は、一階に降りてくる途中で、若者の仲間思いの一面に胸を打たれ、さらに弟子を気遣う師匠の姿に感動し、しばらくその師弟愛に見惚れていたが、当の若者が懐から自分の肌着を取り出し、それをオヤジと取引してしている現場を目撃。日頃のストレスと、偏った食生活による慢性的なカルシウム不足によって怒りが爆発。戦略級の超高威力術式を詠唱しながら、ゆっくり階段を降りてくる。

「ま、待て、ユリ! これは実に高度な値下げ交渉の一つでだな・・・」

「そ、そうだユリちゃん。一旦落ち着こう! ほら、王都産の高級ふ菓子もあるよ!」

「うちの・・・うちの【くつ下】をどうするつもりやァァァァァッツ‼‼」

 

「「うぎゃあああああああああああああああああああああっっ‼」」

 

 

 

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

 

 

 

 


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