感傷という名の間章に入ります(激うまギャグ)
今寒いと感じた人は後で校舎裏。
それではよろしくお願いします。
感傷・壱
俺は正義のヒーローになりたかった。
男の子なら一度は抱くような幼稚な願望。
村のみんなを困らせる、怖がらせるモンスターは悪で、それをやっつけるハンターは正義。
二元化された幼稚な善悪論で、俺はハンターを目指した。
物心がついた頃には現役でハンターとして活躍していた父に師事して太刀を握っていた。
とはいえその年の俺は持ち上げるのも大変で、暫くの間は父がくれたお下がりの鉄刀を正しく握って持ち上げる事だけを練習していた。
縦振りの素振りが一日千回容易にこなせるようになったら基本的な太刀の振り方、斬り方を教わってそれをそれぞれ千回ずつ。
最初は不満もあったが徐々についていく筋力という結果に文句も言えなかった。
そして素振り数種類を陽が昇り切る前にできるようになった八歳のある日。
父が俺に庭へ来るように言った。
「これから教えることは太刀を振るううえで最も大切な技であり生き抜くすべだ。お前はなんのために戦うのか、これからも鍛錬を重ねながら考えるといい。」
そう言って父は俺に太刀の真髄である鬼刃斬りを見せ、錬気のことや気迫の重要性を教え、それからたまに俺を狩りに同行させるようになった。
錬気は戦う理由を明確に持っていないと刃には宿らず、したがって気刃斬りもできないと父は言った。
そのはずだった。
その日父が何を狩るために狩場に出ていたかはもはや覚えていない。
ただこれまで何度か見てきた中でも一番静かな日だった。
静かすぎて不気味だ、と当時の俺ですら感じたほどで、父は険しい顔で辺りの様子を窺っていた。
「やはりおかしい……小型モンスターすら見当たらない……」そう父が言ったその時だった。
リオレウスの咆哮、いや悲鳴が遠くから轟いてきた。
走り出した父を追う。
そうしてたどり着いた先には鮮やかな血と一層赤い甲殻、それらを貪る赤黒く肥大した蜥蜴のような生き物なのかも怪しい怪物がいた。
「恐暴竜……しかも暴走状態じゃないか……」
そう言ってチラリとこちらを見た父が今までにない悲壮な決意のこもった表情で太刀を抜いてからその先、暫くの記憶が俺にはない。
気が付けば足元には苦悶の表情を浮かべて焼き切られたように上半身だけになった父だったモノと折れた鉄刀、それから蜥蜴の化け物の死体が転がっていて、俺の手には直視できないほどの眩しい黄色の光を放つ父の形見の鬼斬破刀が血まみれの状態で握られていた。
「帰ろ……」
そう言った俺は簡単に持ち上げられる程に小さくなってしまった父の遺体を運んで重い体を引き摺って村に帰った俺を待っていたのは泣き崩れる母、そして心無い言葉だった。
夫を愛し、夫に愛されていた母にとって、その夫が上半身だけになって帰ってきた事は耐え難い事だったようで、ことの成り行きを説明した俺に母は「なんでそれなら最初からそうしてくれなかったの……あの人を返して……」と泣き崩れるばかりだった。
父を見捨てた薄情者。それが当時の俺の肩書きで、俺があれほどまで忌み嫌っていた「悪」に俺自身が身を堕としていたのは皮肉な事だった。
噂が広まるのは早いもので明くる日にはもう村中にことの経緯が知れ渡っていた。
家の外に出れば同情混じりの目で後ろ指を指される。
家に帰れば悲嘆にくれる母に罵られる。
小さい村にしては大きめの家には何を書いてるか読みたくもないような落書きがされ、窓は投げられる石で全て粉々となった。
この村に俺の居場所なんてどこにもない。幼いながらに俺はそう思った。
だから俺は村を出ることにした。
父の形見の鬼斬破刀、それから何着かの服と、父のボックスに入っていたいくつかの物資を袋に詰める。
「行ってきます」
夜明け前の静けさのなか、最後の挨拶を誰にでもなく零す。
返事も期待していなかったそれに、しかし返ってきたのは魘される母のうわ言。
「あなた……×××……行かないで……」
父ともう思い出せもしない俺の名前を呼ぶ母の声に後ろ髪を引かれる。それでもここはもう自分の居る場所じゃないんだ、と決意を改めて1歩踏み出す。
さようなら、お母さん。
僕はお母さんのシチューが大好きだった。
溢れる涙が点々と来た道を示して、それが乾いて無くなった時にとうとう俺は帰る術を失った。
鬼斬破刀の雷の力で火花を散らして枯れ草に火をつける。
父から教わった知識で食べられる野草を見分けて煮込んで食べる。
焚き火で追い払えない大型モンスターは太刀で軽く傷をつけて追い払う。
それでも逃げない相手は討伐する。
モンスターを討伐すると近くを通る移動商会に売ることで物々交換をして貰えた。
母を悲しませたモンスターをに対する復讐も兼ねた戦いは徐々に討伐する割合の方が多くなって行った。
瀕死で逃げるモンスターに追いすがってとどめを刺すこともあった。
憎悪が錬気を、俺を強くしていった。
商会で補充しきれない物資は点在する街や国で補充していく。
そうしてまた目的のない旅に出る。
そんな日々が何年も続いたある日の事だった。
「そこの旅の方、アナタ相当血を浴びて生きてきていますよね?そんなアナタを見込んでお願いがございます。」
その後の人生を大きく変える分岐点が唐突に目の前に現れたのだった。
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