鉄は熱いうちに打てという先人の知恵に従い、書けるときに書いていく所存なので宜しくお願い致します。
睨み合いが続く。
霧の中、オオナズチの出方を探る。
ペイント弾のおかげで大まかな位置は分かるが、今どのような態勢でこちらを観察しているのか、あるいは今にも打って出ようとしているのかが分からなかった。
その時、ふわりと風が起きた。
攻撃の予兆に後ろに一歩飛び退いて回避すると、先程まで自分がいたところに土煙が舞い、見えない何かに押しつぶされたように小ぶりなクレーターのようなものが作られる。
死神の鎌が首筋をなぞったような感覚に思わず再び身震いをする。
再度風が起きる。
また同じ攻撃。
今度こそ仕留めるつもりか。
ならばと俺は刀を納め、今度は半歩身を引く。
そこから踏み込んで一閃。
恐怖はない。気の盾が攻撃を逸らしてくれると、理解ではなく感覚がそう言っていた。
再度鯉口から甲高い音が鳴り響く。
数舜遅れて三つの斬撃が走る。
手元の刀身の白い光が更に濃くなる。
悲鳴が上がり、紫色の鱗があらわになる。
そうしてオオナズチは向き直って首を、全身を前後に揺らしながら一歩、二歩、ゆらゆらと俺との間合いを図る。
口が小さく開く。
また道具を盗むつもりか。
そう思った直後、大きく開いた口から飛び出た長い舌が高速で唸りを上げて振るわれて、俺の体をしたたかに打ち付けた。
最初に道具を奪うところからフェイクで、本命はこの攻撃だったのか。
俺は受け身を取りながら歯噛みをする。
衝撃のせいで揺れる世界を振り払って、太刀の柄に手をかけなおす。
向こうの姿が見えている間に、今度はこちらからだ。
左足で踏み込む。
ズドン、と重い音がして視界がぶれる。
その中央に捉えたオオナズチを斜めに切り払った。
つもりだったがしかし、オオナズチはここまで見せたことのない俊敏な動きでそれを紙一重で回避し、翼をはためかせて強風を起こして俺を吹き飛ばす。
それに合わせて空中で体勢を立て直して再び切りかかる。
狙うは翼。
反撃の風圧を防ぐための布石は見事に成功し、右翼が切り裂かれて勢いよく鮮血が噴き出す。
さらに連続して剣戟を続けるうちに刃には黄色い閃光が宿り、霧も払われていく。
霧に身を隠せなくなったオオナズチは頭を上げ、再度霧を吐き出そうとした、その時だった。
ズドン、と鈍い銃声が鳴り響いて、オオナズチの右の目玉が弾ける。
翼の傷のせいで逃げられないオオナズチは、不意のことに対応しきれずにのけぞるばかり。
その好機を見逃さず俺はオオナズチの左の目玉に対して太刀を振り抜く。
そうして返す刀で光を失ったオオナズチの首を断ち切る。
ゴロン、と無残な肉塊と化した頭が地に落ちて、胴体は大量の血を噴き出しながら倒れた。
やりきった、という達成感と疲労感が同時に襲い掛かってきて、俺は血の匂いが染み込んだ草原の上に倒れ伏した。
「おう、よくやったな小僧。」
見た目の上ではそうでもないが、満身創痍に変わりはないベータが体を引きずってこっちに来て、俺の隣に転がって言う。
「ひでぇ様子だな、おっさん。」
「うるせぇ、俺はこれでも20代だぞ。それに自分のこと見て見ろよ。テメェの方がよっぽど重傷だ。」
「それもそうか。」
どちらからでもなく、笑い声が漏れる。
「これでクエスト達成か?」
「あれが生きてるように見えるならもうひと頑張りしなきゃなんねぇがな。」
「にしても、最後にいいとこだけ持っていきやがったな。」
「テメェが不甲斐ねぇからだろ?虎の子の滅龍弾使わせやがって。高ぇんだぞ?あれ」
「まあ俺には関係ねぇからいいか。」
「んだとテメェ、帰ったら殴り飛ばしてやるからな。」
「そういうことは帰還信号打ってから言おうな、オジサン?」
「調子に乗りやがって……」
ベータが悔しそうにうなったのを最後に沈黙が訪れる。
「あのさ、悪かったよ。何も考えずに胸ぐら掴んでぶん殴ってよ。」
「いんや、気にしてねぇよ。」
「そうかよ。あ、撤収用の飛行船が来たらしいな。やっと帰れる。」
「早く帰ってシャワー浴びてぇな。」
「そんじゃ、行くか。」
そう言って二人は再び立ち上がり、タラップを伝って飛行船に乗り込んだ。
読了いただきありがとうございます。
感想、高評価並びにお気に入り登録頂けると作者が泣いて喜びますのでよろしくお願いいたします。