刃に忍ばせる心の色   作:初代小人

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今回も自己解釈が炸裂しまくってますが許してください。
既出というかなんなら千番煎じ説まであるけど書きたくて仕方なかったんや……


壱ノ段 上

砂漠に掛け声が響く。

 

「994、995、996、997、998、999、1000!」

「終わったか。次は斬り下がりだな。」

「アル、少しくらい、休ませてくれよ」

 

俺が鬼教官(アル)に息も絶え絶えでそう言うと「そんなものは気合で乗り切れ。太刀使いに最も必要なものは気迫だ。お前は大型モンスターに囲まれてる最中にでも疲れたら休憩するのか?」と、耳にタコができるほど言われた台詞が返ってきた。

 

「そろそろ“気刃斬り”を教えてやろうと思ったんだがお前にはまだ早かったか」

という言葉に飛び起き、修行を再開する。

「1、2、3、4、5……」

 

 

他のみんなの暖かい視線は……今だけ無視することにしよう。

見てるなら助けて欲しい、俺はそう思いながらいつも通りの素振りを続けるのであった。

 

 

────────

 

 

「さて、今日の素振りは終わったようだな。」

「終わらせて、やったよ!」

「座れ、ここからは座学の時間だ。」

「なん……だと?」

 

 

「今日のテーマは“気刃斬り”について、だ。」

「は?」

「なんだ、不満か?」

聞き間違いかと思って思わず間抜けな声を出したらいつも通りの棘のある口調が返ってくる。

 

 

 

「いや、だってこれまで何回教えて欲しいって言っても教えてくれなかったからさ……」

「……3歳の頃から太刀を持ち上げて握らせ、それが容易になってからは一日千回の素振りを始めさせた。縦振りの素振り千回が容易になると太刀の基本的な斬り方をいくつか教え、それぞれ千回ずつ素振りするよう言いつけた。

これが日が高くなる前に出来るようになったら元々教えるつもりでいた。不満か?」

「いえ滅相もない!」

 

 

不機嫌そうな声を慌てて否定する。

 

「なら続ける。

ハンターの用いる太刀は太刀と言っても東方の国で使われている「カタナ」とは異なるということは教えたと思うが、何が違うか答えてみろ」

「えと、攻撃対象が人ではなくモンスターであるため、長大な刀身とそれに伴って柄も大きくなっている、だっけ?」

「それに加えて強力なもの程狩った死体から作られているためその魂、気迫が篭もるって所かねぇ〜?」

「ベタ、修行の邪魔はするなと言ってあったはずだが?」

「えぇ?水汲みなんてわっちがしなくても他のふたりで十分でしょうよぉ?」

 

 

相も変わらず間延びした口調で適当なベタに、アルはため息をひとつ零す。

 

「砂漠での水は貴重だ。多いに越したことはない。オアシスがあるなら汲めるだけ汲んでこい、そう言ったはずだが?」

「へいへい、わっちは邪魔者だってことねぇ?それじゃあ師弟水入らずの修行に水を差すのも悪いしわっちは行ってくるねぇ?水汲みだけに水入らず、ふふっ……」

後半は何を言っていたか分からないがベタはそうして水汲みに行った。

アルはそんなベタの背中が見えなくなってからコホン、と咳払いをひとつ落としてから仕切り直した。

 

 

「続けるぞ。

モンスターはこの星において最も強大な存在と言ってもいい。故にその気迫は他の素材にない効果を及ぼす。

これは太刀に限らない。例えばガマが使う双剣は、武器に込められた気迫と使用者の気合を同調させることで鬼人化し、使用者の身体能力をスタミナを代償に引き上げる。」

「ああ、あの赤くなるやつか。」

「そうだ。」

とアルは首肯して話を続ける。

 

「太刀にも似たような物がある。それが“気刃斬り”と呼ばれる類の攻撃だ。これは武器の気迫に使用者の気合いを乗せることで発生し、様々な応用が出来る。」

「例えば?」

「例えば……そうだな」

そう言ってアルは自分の得物を鍔から先端にかけて藤紫から竜胆色にグラデーションが掛かった美しい鞘から抜いた。

 

「今この刀身には何も宿っていないが」

そう言って腰の鞘に刀を納めたすぐ後、地面が唐突に揺れ始め、俺は姿勢を保てず足元に手をついた。

アルはというと姿勢を変えず、目を細めて何かを狙っている。

 

 

その瞬間だった。

地面を割って二本の角が現れ、それと同時にアルが抜き手も見せず太刀を体を大きく横に半回転させながら振り抜く。

刀身がそれに呼応するように青い光の粒を振り撒き、攻撃を仕掛けてきた当の本人の角を一刀で断ち切る。

 

一連の動作が終わった時にはアルの手にある太刀の刀身には白い光がぼうっ、と宿っていた。

今回の下手人─────ディアブロスは攻撃を仕掛けたはずが一瞬で攻防が入れ替わったことに慄いたのか、はたまた自分の自慢の角が失われたことに動揺したのが少しの間地に落ちた自分の角を見下ろして困惑したように立っていた。

 

と、その時だった。

斬斬斬(ザザザン)という音を立ててディアブロスの頭から鮮血が噴き出した。

低い唸り声を上げたディアブロスは我に返ったように砂に潜った。

振動が遠ざかっていくことから逃げていったらしかった。

 

 

ふぅ、と息を吐いてアルが刀を納め、肩に背負う。

「今のが“気刃斬り”の極致のひとつ、“居合抜刀気刃斬り”だ。鞘に収めた刀に気を溜め、相手の攻撃に合わせて解き放つことで攻撃を受け流して、その勢いをそのまま返す技だ。更に太刀本体で切りつけたところに気の刃────今後は気刃と呼ぶぞ───を埋め込み、切りつけた数秒後に内側から炸裂させる技だ。

……何を惚けている?」

 

「すっげぇ……」

思わず漏れた声にアルは眉間に皺を寄せながら言葉を続けた。

「この程度に憧れるな。お前も当たり前のようにできるようになって貰うからな。

続けるぞ。“気刃斬り”にはいくつか種類があるが、共通点がひとつある。“気刃斬り”を当てると刃に濃密な気迫が急速に乗ることになる。これには二段階あり、一段階めは先程見せた白い光を放つ状態であり、二段階目はさらに色が強くなり、黄色い光を放つようになる。

さて、ここまでで質問はあるか。」

 

その問いかけに俺は手を挙げて質問をした。

「“気刃斬り”を習得すれば、死んだ親父のような剣士になれるかな」

聞いた瞬間に、アルの顔がこわばり、眉間どころか顔全体に皺が寄る。

 

 

「いいか、死者はお前の前を歩かない。息子が父親を尊敬するのはいいが、間違っても憧れるな。」

突然吐き出されたアルらしからぬ感情の籠った言葉に、俺は何も返すことが出来なかった。




一応補足しておきますが気刃斬りを当てた後の刀身の色の変化(錬気ゲージ)の段階を黄色までとしているのはわざとです。エアプしてる訳ではありませんのでそこのところよろしくお願いします。
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