刃に忍ばせる心の色   作:初代小人

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滅茶苦茶遅くなってしまいましたがエタってないよっていう生存報告も兼ねて投稿。
多分もう今年は投稿できないので来年もよろしくお願いします。


感傷・拾壱

ベータの握る太刀に宿った紅い光はそこだけにとどまらず、軌跡を描いて花弁のようにベータとガンマの間の空間に舞った。

 

少し遅れて、ガンマが倒れ伏す。

「安心しろ、峰打ちだ。」

俺を手で制して視線はガンマに向けたまま、ベータはそう言った。

 

 

「いや、あれ当たってたのか?」

俺の問いに、ベータはふうっと息を吐き出してから「練気でぶん殴っただけだ。お前もそのうちこのくらいできるようになる。」と何でもないように答えた。

 

 

俺は何も言えなくなって、ベータの方へ視線をやった。

眠っているかのような穏やかな顔に、先ほどまでの凶行の気配は感じられない。

 

「帰るか。」そう言ったベータに首肯すると、ベータはガンマを右肩に担いで歩き出した。

 

 

 

「そういやベータ、ヤクザだったんだな。」

無言の帰路が気まずくなったアルファはそんなことを聞いた。

「ヤクザじゃねえ、マフィアだ。」

「どっちでもいいけど何でそんなとこに入ってんだよ。」

そう訊いた瞬間だった。

ベータのこめかみに青筋が浮かび、その左腕が俺の胸ぐらをつかんだ。

 

「あそこは、鬼龍會は俺の唯一の居場所だ……いや、もう居場所だったって言った方がいいか。」

そう言ってベータは胸ぐらから手を離した。

 

 

 

そこで、俺とガンマが鬼龍會を壊滅させたことに思い当って、俺は何も言えなくなった。

「ああ、気にしなくていい、どうせあの奇人が裏で糸引いてんだ。元凶でもない餓鬼を責める程俺も堕ちてねえよ」

 

 

それからしばらくしてからベータは徐に話し出した。

「なあお前、スラム街ってどんなとこか知ってるか?」

「え?」

 

「夏は腐った食い物を食って、冬には自分が先から腐りだす。満腹なんて感覚をそもそも知らない人間があぶれて暴れる気力もなく死んでいく。そんな地獄を見たことがあるか?」

俺は想像もしたことのない状況に俺は絶句した。

 

 

「そんな中で親父は凍えてる俺に手を差し伸べてくれた。スラムの皆にあったけぇ飯を食わせてくれた。

スラム街を、鬼龍會を見て、知った上で悪くいうのは構わねぇ。俺たちはヒーローでも善人でもねぇ。ただ、聞いただけで実情を知らずに決めつけるのはこう……納得がいかねぇ。」

「悪かった……」

「まあ大人がガキ相手にムキになった時点で俺の負けだわな。詫びとしてこの後の処理は俺がやっておく。お前は帰ったら自分の家でいろ。それと、しばらくの間はその刀、肌身離さず持っておけ。」

 

それからベータは適当な竜車を捕まえてヒッチハイクして、俺を家まで送った。

 

 

────────────────────────

 

 

ドサリ、と重いものが床に落ちる鈍い音が響く。

 

「こいつとアルファをウチにけしかけたのは、お前だな?」

「さて、なんの事でゴザイマショウ?」

「さしづめ鬼龍會(俺たち)が今内部抗争で不安定って情報を仕入れて今が好機と踏んでアホふたりに何も伝えずに差し向けたってところ。もっと言うならガンマはお前らお抱えの暗殺部隊出身の人間、だろ?」

 

そこまで一息で言ってのけたベータのさっきを受けて尚、男は薄笑いを浮かべている。

そのまま組んでいた腕を徐に解いて、パチ、パチ、パチと手を叩き始める。

 

「いやはやお見事、そこまでお見通しとは……さすがは()()()()()様でゴザイマスね。」

「もう『元』総長だよ。テメェらのせいでな……」

「おや恐ろしい……」

 

殺気をより一層強めたベータに男はそう言ってのけた。

 

「適当なことばっか抜かしやがって……

まあいい、ともかく俺の要求はひとつ、俺に文句があるなら直接俺を殺しに来い。ガキ騙して差し向けるとか胸糞悪ぃことしてんじゃねぇ、分かったな!」

 

最後には怒鳴るように男に言いつけてベータは足音荒く部屋を去った。

 

残された男は暗い部屋に舌打ちを一つ落として、今後の計画を再調整し始めるのであった。

 




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