刃に忍ばせる心の色   作:初代小人

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前回からそのまま続きのお話になります!
よろしくお願いします!


壱ノ段 下

少しの沈黙の後、アルが再び話し始めた。

「“気刃斬り”はそれその物が強力な攻撃である他に、武器の気迫と使用者の気合が混ざり、練り上げられた“錬気”が刀身に宿ることが特徴として挙げられる。先程俺が言った“気刃斬り”の後に刀身に光が宿ると言ったのも、錬気の余剰エネルギーが光となって放出される為に起きる現象だ。」

「で、錬気が刃に宿るとどうなるんだ?」

 

という質問するとアルは俺を一瞥してから

「間抜け面で聞いているのか心配だったが少しは聞いていたようで安心した。

逆に聞こう、どうなると思う?」

「え……なんか強くなる?」

「お前に期待した俺が馬鹿だったようだ。答えを見せてやるからこっちへ来い。」

 

 

そう言ってアルは近くにあったアルの身長よりも遥かに高い砂岩に向かって歩き出した。

俺も慌てて立ち上がり、アルの向かう方へと走り出す。

 

 

俺がアルの元に辿り着いたその時だった。

背中から刀を抜き、そして構えたかと思うと縦振り一閃。

流麗な動作で放たれた太刀筋は目の前の砂岩を真っ二つに切り裂いた。

切られた岩はそのまま崩れて、砂になっていく。

 

「……は?」

「“錬気”は気の刃だ。人は太刀を振るう時に目の前のものを断ち切ることに全力を込める。その気合いが、気迫がこうして刃に宿り、本来その刃では切れない物をこうして容易く切り裂く。

理論は全て教えた。あとはお前の気合を自分の得物に同調させることを体で覚えろ。こればかりは教えようがない。」

「コツとかもねぇのかよぉ!」

あまりに荒唐無稽な話に俺はつい声を上げた。

 

アルのことだからどうせ「気合」とか言うんだろうと思っていた。

しかし予想は覆された。

「お前はなんのためにその形見を振るうのか、次からは素振りの時にでも考えろ。」

そういったアルの顔は今までに見た事もないような険しい顔だった。

 

 

 

 

──────────

 

 

砂漠に剣戟の音が響きわたる。

相対する1人は小ぶりのカタナ、いわゆる忍者刀を構えており、もう1人は対照的に大ぶりな身の丈ほどもある太刀を振るっている。

 

その大きさに反してかなりの速度で振るわれる太刀を小さなカタナで次々弾いていく鎖帷子の男。

とはいえやはり手数では忍者刀の方が優るのか徐々に攻め手の数が逆転していき、太刀を持った男は武器を弾かれついに決定的な隙を晒してしまう。

 

首筋に添えられた忍者刀を見て男─────オーガは両手を上げた。

 

 

「ギブギブ、やっぱ太刀と小刀じゃ打ち合いになんねぇって」

「そうだな、本来は太刀の方が優位な筈なんだが、鍛え方が甘かったか?」

傍らで見ていたアルが口を出す。

 

 

「まあ俺もでこぼこの猟団の一員だしね、見習いにはまだまだ負けられねぇよ!」

「と言ってもオーガが入ってくる前はガマも見習いだったけどねぇ〜?」

「それは言うなよ!俺は最高にかっこいい兄貴分で居たいんだよ!」

「それ、本人の前で言っちゃおしまいだと思うよォ〜?」

 

 

そんなベタとガマの応酬をオーガは途中からあまり聞いていなかった。

ガマにも見習いの時代があった、その事実にオーガは驚きを隠せなかった。

 

「じゃ、じゃあガマもこの猟団で修行をしたのか……?」

口をついて出た質問に答えたのはガマ本人ではなくアルだった。

 

「いや、ガマはある程度鍛錬を積んでから入ったからな。お前が特殊な例なのもあるが俺たち教える事など殆どなかった。」

「そっか……」

「ところで休憩は済んだか?なら早くもう一本稽古をつけてやれ。」

「いや、もうちょっと休ませてくださいよ団長〜、小刀で太刀を打ち返すのって案外疲れるんだぜ?」

「そうか、お前も見習いに戻りたいらしいな、ガマ。これらはオーガ共々鍛え直してやろう」

 

「いや!疲れてなんかないっす!ほらオーガも立って!早く始めるぞ!!!」

「マジかよ……」

 

その日の修行は日が暮れるまで続いたという。

 

 

 

 

──────────

 

 

日中の疲れで体は重いのに一向に眠りに付けず、オーガは自分のテントから這い出た。

 

 

灼熱の砂漠も夜は冷え込む。

そのためと夜行性の小型モンスターを避ける意味合いもあって、でこぼこの猟団では交代制で火の番をすることとなっていた。

 

「おう、オーガ。眠れないのか?」

今日の火の番、ガマはそんなオーガに少し小声で声をかけた。

 

 

「うん、昼間にアルが言ってたこの親父の形見を振るう理由ってのがわかんなくてさ。ずっと考えちゃって寝付けないんだ。」

「そうか……」

「ねぇガマ。ガマはなんの為に戦うの?」

 

そう質問したオーガだったが、珍しく返答が帰ってこないのでガマの顔を覗き込んだ。

ガマは額を抑えて、考え込むような表情で少しの間考え込むと、その表情のままオーガを見つめてポツリ、ポツリと話し始めた。

 

「自分の信念を貫くため。自分の大事なものを守るため。自分の欲しいものを手に入れるため。武器を振るう理由なんて、人の数だけある。

なあオーガ。アルは厳しいけどさ、きっと無駄なことはしないって俺は思うんだ。だから、アルが教えなかったのはその答えをきっとオーガ自身に見つけて欲しいからだと思うよ。」

「そっか……」

 

「って、柄にもなく真面目なこと言っちまったなぁ!大丈夫だって!オーガならやれるやれる!なんせ俺の弟分なんだから!」

二度、三度ポンポンと叩かれた背中の温もりに、答えは出なかったけれど納得は出来たような気がして、俺はガマにお礼を言って、テントに戻って眠りについた。

 

「戦う理由……かぁ……俺にも、誰にもわかんねぇよそんなの……」

頼れる兄貴分の頼りない独り言は砂漠の夜闇に溶けて呑まれていった。




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