刃に忍ばせる心の色   作:初代小人

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遅くなってしまって申し訳ないです。
ちょっと色々忙しかったりでなかなか書けなかった……
今回もよろしくお願いします。


弐ノ段 下

「これが、“気刃斬り”……」

「腹は決まったようだねぇ〜?」

「ああ。ありがとう、ベタ。」

「気にしなくていいよぉ〜?それより、来るよォ〜?」

 

「応!」

そう言って2人揃ってその場から飛び退いて怒り狂うティガレックスの噛みつきを回避する。

どうやら頭に当たったとはいえ“居合抜刀気刃斬り”だけではその強靭な体に致命傷を与えるには至らなかったようで、ティガレックスはむしろ自らを傷つけられたことでより強い怒りを孕んだ目でこちらを睨めつけている。

 

次いで突進を横飛びで回避して、止まったところに突きを入れる。

ティガレックスが右翼を振りかぶる。

俺はもう一度突きを繰り出して、伸びきったで太刀を引き戻す際にティガレックスの翼脚に動きを合わせて同時に体も引いて勢いを殺す。

 

そこから刀を構えなおして横一閃。そのまま前に縦斬り、即座に気合いを込めて刃を返す。

"錬気"が甲高い音を立てて刃に宿る。

 

先程までぼんやりと宿っていた刀身の白い光がより強く、確かなものになる。

 

 

振りぬいた太刀は確かにティガレックスの頭部を切り裂いた。

恐るべきはそのうえでまだ死にきれずにまだ起き上がろうと藻掻くティガレックスの生命力だろうか。

 

 

俺はゆっくりとティガレックスに近づく。

激闘の直後だというのに不思議と心は落ち着いていていっそ感謝すらある。

 

 

一刀、右上から左下に袈裟斬り。

二刀、先程と線対象になるように左上から右下へ斬撃を走らせる。

三刀、右から左へ一文字に切り裂く。

 

そうして溜めた錬気を縦に半円を描くように振り下ろして、それから反対に返した刃にすべて込める。

リィン!という高い音と共に三度“気刃斬り”が放たれ、刃を明るい黄色に染めた。

 

そして初めて俺が闘った好敵手であるティガレックスの巨体は、ついに大地に身を伏せ、動かなくなった。

 

 

大きく息を吐きだす。

後ろからパチパチと手拍子が響く。

 

「初狩猟、おめでとぅ~。自身はついたかい~?」

「あぁ。ありがとう、ベタさん。ベタさんがいなければ今頃やられてた。」

「いんやぁ~、わっちはちょこ~っと背中を押しただけさねぇ。それで決心して出した実力は間違いなくオーガ自身のものよぉ~。誇るといい。」

 

最後だけ一瞬俺に発破をかけた時の鋭い眼光を宿してベタはそう言った。

もちろん本心からの言葉なのだろうが、照れ隠しも多分に含まれているであろうそれに俺は場違いにも嬉しくなった。

 

「これから本当ならオーガの祝勝会と洒落こみたいところなんだけどねぇ~、どうにもそうもいきそうにないねぇ~。」

そう言いながらベタが銃口でひょいと指したところには百竜夜行に抗う三つの影があった。

 

三人ともかなり善戦してはいるのだが、多勢に無勢なのかじりじりと押し込まれて当初本隊があった所よりもかなり近いところで戦っており、その軌跡を描くように大型モンスターの死体や血痕などが残されている。

 

「さて、もうひと頑張り、出来そうかい~?」

「応!」

 

そう応えた彼はもう見習いなどではなく、鬼の猟団の一員としての確固たる自覚をもって駆け出した。

 

 

 

 

─────────

 

 

 

終わりの見えない戦いの中、確かに疲労がたまっていく。

空から襲い来るリオレウスの蹴りを半身交わして脚を両断する。

その刃には既に眩いほどに黄色い光を宿している。

 

ここで押し込まれるわけにはいかないという意地が気合いを生み、弟子にいつも言っている気合いの力を体現していた。

 

背後にはデルが重弩を構えて中遠距離のモンスターを迎撃して、アルのもとに迫るモンスターの数をなるだけ減らしているが、弾薬も無限ではない。

使用している弾丸のレベルが徐々に下がっていっていることがそのことを如実に表していた。

 

 

ガマはというと空中を飛んでいるモンスターの上を器用に跳びはねては武器を振るって撃墜させ、動ける敵の数を減らしている。

 

しかし、如何せん数が多すぎる。

それに、”赤”は使うわけにはいかない。

その状況が冷静にしようと意識するアルの思考を徐々に鈍らせ、それに比例して体の動きも悪くなっていく。

このままではいけないとはわかっている。しかし後一手足りない、そんな状況で拮抗しつつあった百竜夜行本隊を、二つの黄色い閃光が切り裂いた。

 

 

「苦労してるみたいじゃんか師匠!助けてやるよ!」

「とりあえず鬼人弾を撃っておくとするかねぇ~」

 

 

 

「遅かったな。轟竜一匹ごときにずいぶん苦戦したと見える。

待ちに待った足りない”一手”の到来にアルはいつものように憎まれ口で応じた。

 

 

「言ってな!」

しかし彼はそれにすら全くひるむ様子もなくアルの後ろに立った。

男子三日会わざれば刮目して見よとはよく言ったもので何か一皮むけた様子のオーガはアルと同じ色の光を放つ刃を抜いて構えた。

 

(ティガレックスとの戦いで吹っ切れたか)

そう考えて静かに口角を上げる。

 

 

「要は全部倒せばいいんだろ?俺たちなら余裕だろ!」

「足を引っ張るなよ!」

 

そうして師弟が背中を合わせての攻防戦が始まる。

右、左、上、左、右。

 

”気刃斬り”について教えた日から今日にいたるまでアルの狩猟風景を見学してきたオーガにとって、アルの動きは頭の中で何度も、癖になるほどにイメージしてきたものであり、それに合わせて動くことは容易であった。

 

空を覆う色とりどりのモンスターの群れを斬って、撃って、(たお)したその先で、彼らは嵐の曇天を見上げた。もはや見渡す限りの地面に血のないところは見当たらなかった。

 

 

最初に戦闘態勢を解いたのはガマだった。

遊撃隊として運動量も多く、鬼人化でより疲労を溜めていた彼こそ、最も消耗してもはや限界を超越していたのだった。

デル、ベタの両人はもはや使える弾薬を撃ち尽くし、これまでにないほどまでに熱されたバレルを冷やしている。

 

 

その様子を見てオーガは太刀を収めて座ろうとしたその時だった。

「伏せろ!」

鋭い指示が飛んだ。

しかし初戦闘、更に歴戦のハンターですら精魂尽きるほどの長丁場で疲労していたオーガの体は反応できない。

 

 

ドン、と鈍い音がして地面をひときわ鮮やかな赤が散った。

 

 




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