刃に忍ばせる心の色   作:初代小人

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なんとか書きあがったので投稿。
今回もよろしくお願いします。


焔ノ段 紅

「は……?」

一瞬の出来事に掠れた声が漏れ出る。

視線の先には俺を庇ったアルが地面に倒れ伏している。

 

 

その原因となったモンスター、異常なまでに成長し、別物のような貫禄を以て“鬼の猟団”に相対するその火竜、ヌシ・リオレウスは、しかし狙った獲物を仕留め損ねたことを不満がるように口元に(あか)い炎を燻らせていた。

 

 

この火竜が、先程まで戦っていた百竜夜行を追い立てていたのだと本能的に理解させられ、オーガは身震いをした。

こんなの、勝てっこない。そんな心情を示すかのようにオーガの刃から色が失われていく。

 

 

その時、立ち上がる影がふたつあった。

「オーガ、逃げな。さっき言っただろ。殿(ケツ持ち)位はしてやる。お前さんをわっちら老いぼれの道連れにするには余りにしのびないからねぇ〜?」

「ン!」

わざとらしく最後だけ不真面目に伸ばされた語尾は、心配するなというガマの気遣いで、それに応えたこれまでで1番のデルの声はきっとただの強がりで。

それは気炎万丈といった様子の2人ですら勝ち目が薄い───いや、勝ち目がないことを示していて。

 

 

「嫌だよ!」

泣きそうな声を上げたオーガの頭にベタとガマが順番に手を置いて、不器用に撫でる。

「言ったろう、オーガ。甘えるな。甘ったれるな。全ての戦いに犠牲なく勝てるわけじゃない。俺達はそうやってこれまでやってきた。

それに頭領───アルが居ればきっと“鬼の猟団”は終わらない。そうだろ、俺たちの希望の星。」

「でも、でも……」

このままではアルですら助けられない。

「ああ、そうだ。最期に一つだけ聞いておこうかねぇ〜?オーガ、俺と、俺達と旅したこれまでは楽しかったかぃ〜?」

 

これまで2人と過ごしてきた時間が脳裏で走馬灯のように駆け巡ってもう言葉にもできず、首を縦に振ったオーガを見た2人はヌシ・リオレウスに向き直り、駆け出した。

「死に場所には悪くない、そうだろデル。」

「ン。」

そんな会話をオーガは立ち尽くしながら聞くしかない。

 

 

 

そんなオーガの肩に手を置いてふらふらとアルが立ち上がる。

見れば腹に包帯を巻いて、手には空き瓶がある。

その隣ではガマがアルに肩を貸している。

 

 

「対毒処置くらい自分で出来る。俺を見くびるなよ新入り」

「まあ、包帯は俺が巻いたんだけどな!」

 

口振りとは裏腹に弱々しいアルが、ベタとデルに背を向けて歩き出そうとする。

それと逆方向にベタとデルがヌシ・リオレウスを引き付けて、どんどん距離が離れていく。

 

 

「行くぞオーガ、引き際を間違えた俺達の負けだ」

「いや、だ」

「オーガ、アレは無理なんだよ、普段ならともかく今は俺もアルも動けない。俺だってこうやって歩くだけでもキツいんだ、ベタとデルの弾薬だってもう殆ど残ってないはずなんだ、グズグズしてたらあの二人の覚悟を無駄にすることになる!」

「それでも!」

「調子に乗るな!」

 

ガマに反駁したオーガを、更にアルが怒鳴りつける。

「轟竜とは訳が違う!お前が少し強くなろうが勝てる相手じゃないんだ!分かったら行くぞ!」

手を引いて歩き出そうとしたアルの手をオーガはそれでも振り払った。

 

 

「甘えるな、甘ったれるな。ベタは俺にそう言った。確かに俺はまだまだ甘いかもしれない。それでも今は、アルが2人に甘えてるように俺は思う!」

そう言って太刀を抜いて駆け出したオーガの後ろ姿を見て、アルは瞠目して呟いた。

 

「そっくりじゃないか……」

「ああ、そうだな。」

そう言葉を交わした2人の声はこれまでにないほど穏やかだった。

 

 

──────────

 

 

オーガが戦場に舞い戻った時、ヌシ・リオレウスは何かを咀嚼していた。

果たして何を、そう考えた時にヌシリオレウスの口元から所々が赤く染まった黄色い布が覗いて、ハッとして視線を向けたベタの左腕がないことに気づいてオーガはむせ返りそうになったのをすんでのところで堪えた。

 

 

ベタが険しい顔で痛みに耐えながらも戦いながら言う。

「何しに帰ってきたんだ、ここに手前(テメェ)がいても勝ち目はない、そう言わないと伝わらないほど阿呆だとは思わなかったが。」

「それでも、二人に甘えてはいられない。仲間というなら、猟団というなら、俺もここで死んでやる!」

そう言ったオーガに二人は思わず苦笑いをこぼした。

尤も気を休めている余裕はないのだが。

 

 

「それで、わっちらはもう揃って弾切れだが、勝算はあるのかねぇ~?」

「ない!でも大事なのは気合いだって、アルはいつも言ってた!」

 

2人はそれを聞いてしみじみと「アイツそっくりに育ったな……」と呟いていた。(デルはン、と相槌しただけだったが。)

 

そんな二人の前に立って、ヌシ・リオレウスに向き直る。

 

 

ヌシ・リオレウスは体に少しばかり傷がついてこそいるがその威容に衰えはない。

 

ヌシ・リオレウスは大した脅威でもない獲物が増えたことに舌なめずりをしている。

その次の瞬間ヌシ・リオレウスが咆哮を上げ、立ち竦んだオーガに後ろからピシャリ、と冷たい液体が浴びせられる。

 

「取っておきの鬼人硬化弾Lv2だよぉ〜。硬化薬の効果も入っているだけに高価だからねぇ〜?せめてもの助けになるといいんだけどねぇ〜?」

ベタは不敵に笑い、デルはもはや何も言わずにサムズアップする。

そんな二人を見てオーガは鬼人硬化弾のおかげだけではなく、疲労困憊のはずの体に力が漲る。

 

 

()ァァァアアア!」と雄叫びを上げながら斬り降ろすオーガの刃をヌシ・リオレウスはその発達した爪で受け止める。

彼我の純粋なパワー比べの勝負はヌシ・リオレウスに軍配が上がり、押し返されたオーガは体制を崩す。

それを好機と見たヌシ・リオレウスは反動をつけて既に突き出していた双脚で蹴りを繰り出す。

 

しかしオーガもエンジンが掛かり直している。

すんでのところで刀を収め、鯉口を甲高く鳴らして“居合抜刀気刃斬り”を繰り出す。

 

 

斬斬斬(ザザザン)と3つの斬撃が走りヌシ・リオレウスの爪に浅くではあるが確かに傷が入り、オーガの刃にはその気概も味方して即座に黄色の光が確りと宿る。

これなら、とオーガは勝ちの目を見出す。

 

しかし、ヌシ・リオレウスもこれまでに幾度も死線をくぐった歴戦の強者。

力押しは有効だが接近戦は危険と見て距離を取り、大きく開いた(あぎと)から爆炎を吹き出した。

地面を沿って迫る爆発の(あか)い壁の前にオーガは為す術なくその体を地面に投げ出した。




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