刃に忍ばせる心の色   作:初代小人

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遅くなって申し訳ないです。
戦闘シーン難しかったんです。ごめんなさい


焔ノ段 碧

黄色の刃を地面に突き立てて体を起こす。

乾きかけた血の粘り気のある嫌な感触を振り払ってヌシ・リオレウスを睨みつける。

 

まだ負けていないと言わんばかりの気迫に猟団の仲間たちですら固唾を飲んだ中でようやく戦場に追いついた男が、「アレは力押しでは絶対に勝てない。いいか、真正面から受けるな。わかったな」と言った。

 

名前も呼ばれていない師の教えに、弟子も武器を構え直して敵に向き直ることで返事とする。

 

 

 

極限まで研ぎ澄まされた感覚の中で刃を振るい、身を躱す。

 

 

 

 

「太刀は大剣のような破壊力はなく、片手剣や双剣ほどの手数もない。ランスほどの頑健さもない。

しかし太刀にはそれらには無い強みがある。それが(しな)やかさだ。」

「しなやかさ?」

「太刀は細く長く精巧に作られている分靱やかに曲がる。熟練の使い手ほどその靱やかさを活かして戦い、相手の攻撃を殺して身を守る堅さを持っているものだ。」

 

 

いつかの会話が脳裏に甦る。

 

靱やかに……攻撃の勢いを殺して……受け流す……

それだけを考えて無心で体を動かし続ける。

 

 

火球を受け流す。

背後で爆発が起きて地面を揺らす。

頭上から真っ直ぐ踏みつけてきた鉤爪を一歩下がって回避して切り上げる。

思わぬ反撃にヌシ・リオレウスは身を仰け反らせ、それから怒りを顕にして咆哮をあげる。

思わず耳を抑えたオーガに、ヌシ・リオレウスは容赦なく追撃を加える。

 

両脇をV字の炎に塞がれ、正面に鉤爪が迫る。

 

 

 

絶望的な状況に、目を瞑って太刀を縦に構える。

 

 

バシュン、と衝撃波が音を立ててなお、来るべき衝撃が訪れないことに目を開き、瞠目する。

────何が起きたんだ……?

 

戸惑う俺を他所に刀身が透明な何かが渦を巻いて纏う。

黄色い光は消えているが、そこに錬気がある感触は確かにある。

 

 

まさか、刀身で弾いたのか?

双方が困惑しつつ再び相対し、ヌシ・リオレウスは様子見程度に火球をひとつ放った。

 

 

 

躱そうと思えば躱せる攻撃。

しかし俺は中段に構えて動かない。

そして切り上げ一閃。

 

パキィン!と甲高い音を立てて火球が割れて後ろに落ちる。

そして今まで渦巻いていた何かが猛烈な勢いで解き放たれ、俺を、いや親父の形見である神楽を中心に局所的な暴風となって吹き荒れる。

ヌシ・リオレウスも思わず体制を崩し、不時着じみた様子で地面に降り立つ。

 

断続的な嵐の中心。

そこには碧く輝く刃があった。

 

 

離れたところにいるはずのアルが息を呑む音が聞こえる。

それどころか周囲に吹き荒れている風の音までもがしっかりと聞こえ、、普段の数倍の情報量が耳から雪崩込む。

あまりの負荷に脳が軋む。

 

 

しかし意識は驚く程に明瞭で、何をすればいいのか、どうすべきかが手に取るようにわかる。

一歩、二歩と歩みを進める。

 

優勢なはずなのに何故か追い詰められるような感覚に陥ったヌシ・リオレウスが再び大地を離れ、立て続けに数発火球を吐くために羽ばたきのリズムを乱したのを聞き取って駆け出す。

 

左、右、とジグザグに回避し、正面に来たものは叩き斬る。

距離はどんどん縮んでいき、零となった瞬間飛び上がる。

反応しきれなかったヌシ・リオレウスの頭に張り付き、更に跳び上がって落下の勢いも全て乗せて太刀を振り下ろす。

その傷口に植え付けられた錬気の刃が少し遅れて炸裂する。

 

斬斬斬斬斬(ザザザザザザン)と、間隔が細すぎて数えられないほどの斬撃音が迸る。

ヌシ・リオレウスの(からだ)はその痛みに耐えきれず地に堕ちた。

そのまま立ち上がろうと藻掻(もが)くヌシ・リオレウスに静かに歩みよる。

 

 

この力、碧い刃が何なのか、俺には分からない。

でも、もしあり得るとしたら。俺はあの世の父を想った。

 

 

なあ、親父。見てるんだろ?

この太刀にはきっと親父の錬気が何度も篭められたんだよな。

だから、俺の大事な場所、大事な人達を守るために力を貸してくれたんだよな。

 

ありがとう親父。これからも、よろしく。

 

 

 

一刀、二刀と繰り出す気刃斬りに込める想いは感謝。

決して楽な闘いではなかった。

決して犠牲のない闘いでもなかった。

それでも、俺はこの闘いのおかげで成長できた。

 

 

甲高い金属音が、ヌシ・リオレウスの生涯を断ち切った。

ひとつ違えば真逆の結果が待っていてもおかしくない死闘だった。

 

 

空を覆っていた雲は晴れ、東の空から朝日が昇り、死が支配していた戦場を照らし出す。

 

嗚呼、疲れたなぁ……

オーガはゆっくりと意識を手放した。




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