気がついたら脳内のプロットが二部構成になっていたので今回が一部の最終話となります。
あまり長く続けないって言ったのになぁ……
兎にも角にも今回もよろしくお願いします。
外から聞こえる海鳥の鳴き声にパチリ、と目を覚ます。
落ち着いて身支度を整えてテントの外に出ると相変わらず不機嫌そうに眉間に皺を寄せたアルの顔が視界に飛び込んでくる。
「新人どのは随分支度に時間を掛けるらしい。いいご身分だな。」
「そう言ってやるなよアル!今日は
ガマが皮肉ったアルを取りなす。
「そうだよぉ〜?ガマなんて丸一日寝てたこともあったんだしねぇ〜?」
「それを言うなよォ!」
そこにベタが茶々を入れ、そんなやり取りの傍らでデルが座っている。
いつも通りの光景。
けれどあの一戦以来変わったものも確かにある。
ベタは隻腕の銃手となり、未だに戦いの際にはずっと見てきた俺達には分かる程度のぎこちなさが残っている。
本人は「腕1本分軽くなって調子いいくらいだねぇ〜、それにオーガを守れたんだ、腕の1本や2本くらい、悔いはないよぉ〜」と嘯いていた。
けれど、しばらくの間毎晩のように痛みに呻き、魘されていたのを俺は決して忘れない。
「まあいい、それでは始めよう。」
そう言ったアルは、服の上からは見えないが胴体に大きな傷跡が残っている。
解毒薬と包帯で初期治療を速やかに行ったのが幸いしたのか後遺症は特になかった。
あの戦いが終わったあとで俺はアルに怪我のことを謝った。
アルは気にしていないとでも言うかのように手をヒラヒラとさせた。
赦しを得られたからこそ、俺はこの傷を一生背負って、反省の証として行こうと独りで誓った。
「鬼の猟団、もといデコボコの猟団の団員一同に問おう。この時点を持って見習い団員のオーガを正規団員とすることに賛同するものは拍手をもってその意志を示せ。」
アルの儀式めいた呼び掛けに3つ、いや4つの拍手がその場に鳴り響く。
「異論のあるものはいないようだな。これより団長の責務において、オーガを正規団員とする。」
「さて、悪いが認定証書などというものはこの団にはない。よって実利的な物を贈呈しよう。デル、例のものを。」
アルの合図に「ン」と答えながら黄色と赤と藍色が渦巻く炎のような太刀を献上するようにデルが差し出した。
あの戦い以来最も変化がなく、しかし最も大きく変化したのはデルだろう。
無口であまり表情を出さないところは変わらないが、稀に普通に話すようになったし時々嬉しそうに、或いは楽しそうにするようになった。
「先の百竜夜行並びに
銘を“飛竜刀【轟焔】”という。デルがお前のために打った一点物だ。これが使いこなせるようになるまでさらに精進するといい。」
あの日俺が
「これは俺個人としての言葉になるのだが」
続けてアルが前置きをして云う。
「あの時、あの瞬間まで気刃斬りも出来なかったお前が、俺の背中を預けられるまでに強くなったことを、俺は誇りに思う。」
熱くなっていた胸の熱が、目頭にまでも伝播する。
ポツリ、ポツリと水滴が砂浜を濡らす。
俺は気刃斬りを習得した上、碧い気刃を手に入れた。
アルはこの碧い気刃の事を黄色の気刃を習得した上で、自分以外の誰か、あるいは何かのために戦う覚悟と勇気を持った剣士だけが使えるものだと言っていた。
「おい、オーガ、要らないのか?それなら俺が使いたいくらいの大業物なんだが。」
他のみんなが微笑ましそうに見ている中、バツが悪そうにアルが言う。
「要る!要るよ!ありがとうアル!ありがとう皆!」
「って言っても主役が泣いてちゃぁ〜、締まりがないねぇ〜」
「泣いてない!!!」
茶々を入れたベタに涙声で言い返した俺をみんなが笑う。
変わっていくけれど、変わらない景色が確かにここにある。
俺はこの光景が永遠に続けばいいのにと思った。
それほど暖かい空間だった。
アルから受け取った太刀を抜く。
チリリ、と火花を散らしてその刀身が顕になる。
親父の形見である【神楽】をベースに二体の飛竜の素材で強化されたそれは陽の光を照り返して燦燦と輝き、ヌシ・リオレウスの焔が未だに宿っているかのように刀身には熱が籠っている。
錬気を込める。
刃が風を放って碧く輝く。
この空と海のような刃なら、この仲間たちとなら、どこまででも行ける。
そんな気がした。
※最終回ではありません。まだもう少し続きます。
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