脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~ 作:みずがめ
俺の目の前には身を縮こまらせた美少女がいる。
亜麻色の髪をツインテールにしており、年齢よりもちょっとだけ幼さを感じさせる。
だが薄く色づいている唇からは、ちょっとだけ色気を感じてもいる。
子供っぽくあるが、大人っぽくもある危ういお年頃。見覚えのある端正な顔はこっちを恐々とうかがっている。
「今の状況、自分がどんな立場にいるのかわかってるな?」
「……はい」
高圧的な言葉をかければ、彼女はさらに身を小さくした。
口元が緩まずにはいられない。顔面に力を入れて笑ってしまいたい衝動を抑えた。
真面目ぶった顔を作ったからって、次の言葉が変わることはないのだが。
「なんでもするって、言ったよな?」
「い、言いましたけど……」
「けど?」
「……いえ、なんでもないです」
どうやら抵抗はないようだ。
俺に抵抗できない美少女。そんな状況になったとしたら? そりゃあやることは決まっている。
服越しでもわかる均整の取れたスレンダーな体。露わになっている脚は美しい。
彼女はメイド服を着ていた。清楚で可愛らしく、とても似合っている。
俺は怪しい笑いを零し、勢いよく頭を下げた。
「俺の彼女になってください!」
◇◇◇
受験生だってのに、今回のテストでは見事な赤点を取ってしまった。
おかげで放課後になってまで担任からお叱りの言葉をいただいてしまった。一言でまとめれば「受験生としての自覚はあるのか」ってこと。
担任の慈悲により、追試を受けることが決まった。あー、とても嬉しいですぅ……。
「はぁ~……」
くそでかため息は誰にも聞かれなかった。
とっくに部活動が始まっており、帰宅部は真面目に帰っているであろう時間帯。
廊下を歩くのは俺一人だけだ。しかも外は雨模様。なんだか俺の心を表しているかのようだ。我ながらどんだけ落ち込んでんだよ。
下駄箱にたどり着いたころには雨の勢いが増していた。まさにバケツをひっくり返したような、と言ってみたくなるほどだ。
だが天気予報のチェックをかかさない俺に死角はなかった。持ってきた傘を差す。
「はぁ~……」
横からくそでかため息が聞こえた。
目を向ければ、亜麻色の髪をツインテールにした少女が立ち尽くしていた。後輩だろうと予想する。
周りに誰もいないと思って油断したのだろう。乙女にしてはでかすぎるため息だった。これ恥ずかしいやつだろうな。
後輩少女(仮)は外をにらんでいるようだ。どうやら傘を忘れたらしい。にらんでも雨は止まない。
昇降口には俺と後輩少女の二人だけ。部活をしているらしき声は聞こえるが、こっちに近づいてくる様子はなかった。
雨が地面を激しく叩く。それを眺めて、俺はうんと頷いた。
「これ、使えよ」
「え?」
後輩少女に傘を差し出す。急に声をかけたからかビクリと肩を跳ねさせていた。ごめんね、影が薄くて。
なかなか受け取ろうとしないので、半ば押しつける形となった。後輩少女は大きな目をパチクリさせる。
「あ、あの……受け取れません」
どうやら慎ましい心の持ち主のようだ。
「俺さ」
「はい?」
俺は最高のキメ顔でこう言った。
「今、雨に打たれたい気分なんだよね」
後輩少女が止めるのも聞かず、俺は走り出した。
外は雨。もちろん濡れた。思った以上の大雨で、すぐに全身びしょ濡れとなってしまった。
男には、無駄に格好つけたいときがある。
それは俺にも当てはまったようだ。言い訳をさせてもらえば「体が勝手に動いた」ってやつである。悲しいことに正義の心ではなかったが。
「やんなきゃよかったやんなきゃよかったやんなきゃよかった……!」
だが、我に返って恥ずかしくなるのもお約束である。
たぶん自分に酔ってたんだろうな。間を置いて客観視すれば、自分がどれだけ恥ずかしいことをしたのかを突きつけられる。なんだよあのキメ顔。絶対キモいやつじゃん。
後輩少女に傘を渡すシーンをリピートされたら何度死ねるかわかったもんじゃない。本当にギャラリーがいなくてよかった。危うく学園中の笑い者になるところだった。
激しい後悔に苛まれながら、家まで走り切った。羞恥心は持久力を凌駕するらしい。
雨の日、後輩少女とベタな出会いをした。
それが俺と