妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】   作:ノイラーテム

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第一部
そうだ、城主になろう!


「と言う訳で協力してくれないかな? みんなが協力してくれればこの辺の魔物くらいは何とかなりそうなんだよね」

 この世界に転生し、成功と失敗を繰り返して故郷から逃げ出すように傭兵になった。

できれば冒険者がよかったのだけれど、まだないみたいなので仕方がない。

 

そして腕を磨きつつ、神さまとの契約通り布教するには何が必要かを考えた。

その果てに実感したのが、拠点の重要性だった。

何しろ力が無ければ追い出されたり、成果を奪われることはよくあったからね。

 

「なんじゃい。突然に」

「突然じゃないさ。前から計画してたし、何人かにはその頃から声を掛けてるよ」

 前からの計画だが今回決断したのは理由がある。

冒険者ギルドなんかないので大規模な依頼がある時は、口入れ屋の仲介で幾つかのチームが手を組んで魔物退治を行うのが定例だ。目を付けていた場所の一つが依頼に含まれていた事と、何より手を組みたいメンバーが揃っていた事が大きい。

 

いま疑問の声を上げてるドワーフなどは特にその一人だ。

この地方出身者であり職人でもあるので、彼を味方に出来れば心強い。

 

「そういえばそんな話を聞いた覚えもあるわね。てっきり夢の話かと思ったけど」

「夢は酷いな。現実味を帯びた計画さ」

 この女エルフも狙っていたメンバーの一人だ。

やはりこちらの出身者で森にとても詳しい。僕も郷里では山暮らしの田舎者であったが、彼女の知識と技術は比較にならない。

 

現地の知識込みで是非とも味方にしたかった内の一人だ。

とはいえ都合よく揃うなんてチャンスは今までなく先延ばしにしていた。その為に臨時にパーティを組むことがあっても、今日まで決行の日が長引いたわけである。もし二人とも難色を示すならば次の機会を待つか、まったく別の場所を狙う事になるだろう。

 

「とりあえず領主からは前々から話を持ち掛けられてるんだ。今みたいに大規模な魔物退治の度に金を払いたくないから、この辺の荘園主にならないかってね」

「呆れた。あの話を信じたの? それに、ここにどれだけ魔物が流れ込むと思ってるのよ」

 貴族の言う事を真に受けるのは間違っているのは確かだ。

実にもっともな話なので、ソレを何とかする為にも目の前の二人に『協力する』と口にしてもらわなければならない。

 

何気に時間を掛けて候補地を調べた後、ここに絞った理由は幾つかある。

それがこの二人の協力を得られれば何とかなりそうな事と、何より魔物からの防衛に関して一計を案じられる事が大きかった。

 

「魔物に関して言えば『だからお城を建てよう』って話さ。この辺に限らず魔物に関しちゃ僕はかなり詳しいからね」

「そりゃあまあ……そうだがな。そこんところはワシらも認めとる。だが、それとこれとは別だぞ?」

 この世界では才能に任せて魔物退治をする人間の方が圧倒的に多い。

転生者である僕と違って、一人一人に神の祝福がある。この祝福がそこそこ強い上に、僕では無理な上級魔法なんかも学べば何とか覚えられるのは羨ましい。

 

それだけに相手の魔物をちゃんと調査し、メタを張って魔物退治する僕の様な人間は割りと少なかったのだ。知識だけなら僕より上の連中ですら大抵の敵は上級魔法で片付けられるため、雑魚退治に作戦を組み上げようとはあまり思わないのも影響しているだろう。

 

「まあまあ話は聞いてよ。損はさせないからさ。僕が嘘を吐いたことはないでしょ?」

「そんな奴ならつるんじゃおらんさ。だが儲け話で釣られると思うなよ。こればっかりは酒じゃ動かんぞ」

 僕は神様の信仰を広めなきゃならないので嘘は吐かない。

ついでに言うと弱いから大言壮語を吐くことも無い。出来ることを増やして、その出来る範囲で誠実に物事を進めるだけだ。

 

まあ……同じ郷里から出てきた幼馴染が、僕の言う事に大抵賛成してくれるので二票分確保しているというのも大きいのは確かだ。傭兵たちは荒くればかりで気の合う合わないの差は大きいし、その場限りのことを平気で言う奴も多い。要するに僕は嘘を吐かないことで信用を確保していたとも言えるのだが。

 

「損はさせないって言ってるけど、私たちが頷くほどの利益って何よ?」

「仮に僕がこの辺りの城主というか荘園主になったら、それぞれの一族と角付き合わせる事になるでしょ? その取り分……というかうちの領民が開拓する権利を売るよ」

「なに?」

 当たり前と言えば当たり前の話なので、きちんと説明しておくことにする。

これは将来の禍根を今の内から絶つという事であり、ドワーフとエルフを味方につけるために必要な事だ。

 

ちなみにこの二人は名うての傭兵だが、それぞれの種族を守るために傭兵になっている。外に出て経験を積み、いろんな視点で魔物から種族を守る為だ。もちろん発言権と名声があるのは確認している。

 

「このまま魔物から荘園を取り戻したらさ、そしたら絶対に開拓地争いの問題が出るよね? そこで人間の取り分を『ドワーフに対して、エルフの了承付き』で売る。逆に『エルフに対して、ドワーフの了承付き』で売っても良いと考えてる」

 条件を決める事に他の種族が立ち会うというのがミソだ。

この世界ではドワーフとエルフは別に仲が悪いわけでは無いが、生活圏が被るとどうしても角突き合わせていがみ合う事がある。

 

そこで人間が得る筈の取り分を、エルフの領域ではエルフに売り、ドワーフの領域ではドワーフに売る。その取り決めにお互いの種族が意見を出せるという事は、譲歩の仲介を僕が行えるという事である。少し違うかもしれないが大岡裁きの『三方一両損』に似ているだろうか?

 

「判らんな。確かにワシらが口を聞けば族長も頷くかもしれん。だが、それで一体おヌシに何の利益が残る?」

「そうよ。貴方の取り分が無いと信用できないわ。これは未来に関わる話だし、今までの信用があるからってのは無しね」

 案の定、二人はこの話に喰い付いてきた。

二人は族長でこそないものの、相談役の一人くらいの立場にはある。この辺りの魔物は今の処退治しきれてないが、いつか退治して人間と隣り合わせになるのは自覚していただろう。

 

そこへ今回の話を、それなりに信用していた僕が持って来たという訳だ。完全に信用するかは別として、ヨタ話ではなく真面目に検討する余地があると思ったのだろう。

 

「まず城主に成れるよね? 前に話したと思うけど、僕らは故郷から逃げ出した身だからね。人に命令する気はないけど、それなりの地位と拠点は欲しい」

「そこは認めてあげるわ。『女を盗られるくらいなら!』って逃げ出して来たんでしょ」

 え? そんな話したっけ? 半分くらい事実ではあるけれど……。

と思って幼馴染の方を向くと、ポーカーフェイスを浮かべて口笛を吹いているのが見えた。

 

あいつ……外堀を固めてきやがった!?

そりゃ嫌いじゃないしむしろ好きだけど、いつの間にそんな話をしてたんだ?

 

「そ、それはともかくさ。まずはここを拠点にできればひとまず安心できる。次にお互いの寿命の差を考えて欲しいな」

「寿命じゃと?」

 この世界のドワーフとエルフは無限でこそないが寿命は長い。

ドワーフで人間の二倍、エルフで三倍以上くらいに見積もってもらえば分かり易いだろうか。出生率の差と幼児の死亡率があるので、種族的には人間の方が栄えているというのはこの世界でも同じであるのだが。

 

「魔物討伐して開墾初めて、余裕ができるのは何時の話さ? それこそ僕らの子供か孫のころだよ。でもこの話がまとまれば別だ、できるだけ次世代に禍根を残さない方法で生活を楽にしていけばいい」

 ハッキリと言ってしまおう。

この世界の生活環境はよろしくない。転生前の現代社会と比べて酷いし、それはそれとして職人たちの新技術アレルギーは似たようなものだ。

 

ゆえに自分の領地でも無ければ好き勝手に開発することも出来ない。

そして現代社会めいた生活を目指すならば、余計な開拓とかはすべきではないのだ。先行きが明るい程度、閉塞感がない程度に開拓の余地が残って居れば良いとも言える。そもそも僕の目的は女神さまの信仰なので土地は二の次だと言っても良い。

 

「どうだい? 人間の取り分になるはずの薪や鉱石があれば、好きに鍛冶ができるんじゃない? 何だったら理由を付けて城の一角にあんた専用の工房を設置してもいい」

「……こいつは痛い所を突いてきおった。こいつが居る時を狙ったのはその為か」

 前からこのドワーフの愚痴に付き合って話を聞いていたのだ。

エルフとの諍いを起こさないために、必要以上の薪を採ることができない。鉱石も山やら地面を無闇に掘り返すと、やはり土壌が荒れるから限界がある。そして新技術にアレルギーがあるのはドワーフの職人も同じであった。

 

要するに旅で見た他種族の技術を取り入れ、色々試してみたいこのドワーフには魅力的であるはずなのだ。

 

「そして何処の木ならいいかって、私たちが決める訳ね?」

「そうそう。ついでに言うと、鉱山から出た汚水の処理とかも僕らが仲介するよ。それと確か……その手の話はエルフでもあったはずだよね?」

 真面目な話、エルフが完全に環境的なクリーンであるわけがない。

森を大事にしているから分かり易いだけで、似たような問題はエルフにも存在している。もちろんドワーフとの諍いを避けて目に見える形ではやってないだけだ。その事を人間がイメージしてないだけで、エルフとドワーフは互いに監視し合っていた。

 

そしてだからこそ僕が人間の取り分を渡し、仲介することでお互いの妥協線を利益が出る方向に書き換える事が可能なのだ。

 

「ちゃんと確認しておかないと何だから、念のために聞いておくわね。口約束じゃ何の意味も無いし、かといってあんたの子供に泣きつかれても困るわよ?」

「そりゃあそうじゃのう。信任状を発行するなら、未来の取り分を売ってくれる分はまあ良しとしよう。ソレを返せと言われても困るぞ? 分配に馴れた後で元に戻すのは今よりもよほど難しい」

 二人のツッコミも当然だった。

だがこのツッコミは前向きになった証拠でもある。ここでちゃんとした方法を示せば、二人は協力してくれる可能性はかなり高いだろう。

 

そして、この地を選んだ理由はその辺もあったのだ。

何と言うか、先ほどからドワーフとエルフの諍いの話をしているのに、人間の話をしていないのに気が付いただろうか? そう、今の人間の安全圏はかなり後退しているのである。

 

「別にこっち側の森や山にだけ開墾する必要はないだろ? もし余裕ができたら反対側の領地を復興させに行くよ。持ち主の一族が文句言ったら精々高く売りつけてやるね」

 この辺りの領地は元もと数名の領主が居た。

だが魔物の侵攻で周辺が荒らされた時、領主の一族が全滅した所もあれば、王都方面へ逃げ出した貴族も居る。

 

それらの領地は人が居ない訳でもないが、どこも荒れ放題だ。

だからこそ領主は魔物退治の費用を抑えるために、僕の様な傭兵数名に声を掛け、荘園主にならないかとリクルートしていたのである。

 

そんなわけで、最初から荘園主数枠分を頂くつもりだった。

開拓するのは森側だとばかり思っているだろうが、魔物だらけの場所を僕が回収して復興させても問題ないはずだ。もちろん二人に説明している様に、最終的に利益が出るなら元の持ち主に売っても良い。どうせ欲しいのはより良い生活でしかないのだから。




 実験的に始めてみます。
オリジナルは要望あるか分からないので、何処まで続くかは不明です。
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