妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】 作:ノイラーテム
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計画を立て直したことで、優先順位を決めて行動を開始。
まずは町割りを見直して、城の縄張りを調整していく。こればかりは魔物の脅威が残っている方が良い。対人戦闘は念のためではあるが、魔物がいなくなってからでは口実も無くなってしまうからだ。
事実、住民たちに仮目的で魔物用だと説明すると受け入れられた。
彼らが労役で作った煉瓦を使って作った防備設備で、彼ら自身を守れるというのだから当然だろう。立ち退く家に大して、空いている場所に家を移す際も便宜を図るなど色々な保証をしているのもある。ついでに労役後は銭湯を無料開放したら喜ばれた。
「冒険者ギルドに大地母神の教会、領主館と倉庫兼作業場……そして見張り小屋。ひとまずこんなもんか」
村の北西部、洞府のエリアに冒険者ギルドは確定。
結界の中に入れて資料を守り、会議室の活気を取り入れるのは当然だろう。その上で青悟との約束を守るという形で教会を建て、領主館や蔵ともども防衛施設化する計画だ。
村ごときで煉瓦造りの建物なんか普通はやらないし、向こうの費用で建てるわけでは無いから文句を言われる筋合いはない。扉が頑丈だったり窓のサイズが防衛施設にしか見えないのは御愛嬌というものだろう。場所だって村の中枢なので嘘はついていない。
「そういえばエルフやドワーフの領域には魔物は居るの?」
「居らんわけじゃないが」
「対処に困ったことは……滅多に無いわよ」
村長が戻って来たので仮事務所を明け渡し、仮設住宅で会議。
念の為に剛盾や紅梓に尋ねると、こんな回答が返って来た。二つの異種族の領域である南端側は基本的に安全らしい。この間のオオトカゲが例外で、それも滅多に無いのだとか。
あるいは魔物への対策が何百年単位で行われており、僕がやってるような事は既に実行済みなのかもしれないが。
「ということは南に防壁は要らないかな。大繁殖が起きてこっちに逃げ込んで来ることあるなら作るけど、不要なら予算と資材を使いたくないし」
「あったら助かるのは確かじゃが、そのイザちゅう時を思い浮かばんのう」
「それこそドラゴンでも出てこない事にはないわよ」
籠城戦を目指すならばグルっと一周欲しい所ではある。
しかしそこまでの余裕が僕の所には無いし、異種族相手に警戒しているように見えなくもない。彼らと協力体制を築いていると見せたいならば、むしろ壁などない方が良いだろう。
それに東側は山が連なり、西には川が流れている。警戒するならばそちらを突破して来る無茶なレンジャー集団かもしれない。
「なら無しの方向で。もらった資材で精々立派な壁でも立てるよ。後は東西に見張り小屋を兼ねた避難小屋くらいで」
「そうしてちょうだいな。出来るだけ樹は切りたくないんだから」
「こっちは別に構わんが、買ってくれた方がええのは確かじゃな」
エルフとドワーフは基本的に今回の計画に賛成とのことだ。
魔物が流入してくるのは主にこちら側だし、、僕が防備を重ねた城を用意すればするほど彼らの安全圏も確保される。交易しているのは自分で見定めた人間……僕が居れば良いという事だろう。
利用されている事になるが、こちらも彼らを利用しているので構わない。交易はそもそもwin-winでなければ成り立たないし、何度も繰り返すが彼らとの友好は翻って僕を助けるからだ。
「剛盾さんに頼んだカタパルトは、相手がアンデッドや獣くらいなので威力はそんなに要らない。ただ広範囲にばらけるか、遠くまで飛ばせたら助かるかな」
「任せて置け。飛距離だけなら簡単じゃわい」
これら対人戦共用で使えるので問題ない。
カタパルトこと投石器は汎用性が高く、幽霊系以外の敵に有用だった。飛距離があり範囲攻撃可能ならば、遠くから牽制する事が可能なので一本道を守るには十分だろう。それぞれの防衛施設から放てば同じ場所に降り注がせることができる。
あえて言うなら穀倉地帯奪還戦用に持ち運び重視だろうが、そんなのは遥か先でしかも不確定な話でしかない。
「その辺は良いのじゃが、あの鋳型は何に使うんじゃ? カタパルトの弾には小さいし、そもそも石で良かろう」
「あれは新しい保存食用だよ。お菓子も作れるけどね」
「お菓子? どんな味なの?」
剛盾には他にも頼んでおり、銅板を挟み込む簡易鋳型を注文していた。
甘い物に目がない紅梓は、面倒な会議には出席しない事の多い双葉を警戒してキョロキョロしている。
確か前にガレットを焼いた時に同じように双葉も警戒していたはずだ。妙な所がソックリさんだと思う。女の子が甘い物に弱いとしても、そこまで露骨に警戒してお菓子を抱え込まなくても良いと思うのだが。
「元が鋳型だからね。雑穀を水で溶いて中に適当な具を入れて焼くんだ。お菓子として食べるなら甘蔦とか芋の汁を多めに入れたり、余裕が出来たら卵を混ぜても良いかもね」
いわゆるグラノーラーバーとかなんとかメイトの類だ。
水気は途中で飛んでしまうからこそ長持ちするし、糖分も混ぜるから栄養補給にもなる。卵を入れる場合はベビーカステラになるだろう。
そしてベビーカステラがお菓子として定着すれば、様々な具を入れた大判焼き・今川焼に発展させることができる。それらのバリエーションを工夫して行けば、それなりにお菓子の文化もできるのではないだろうか?
「じゃあさ、さっき言ってた見張り小屋作る所の偵察行ってあげるから多めに頂戴! もちろん甘蔦の汁はたっぷり入れてね♪」
「チャッカリしてるなあ。いいけど好評だったらエルフの里からの交易料を増やしてもらってね」
甘味の代用品である甘蔦はこの辺りではあまり採れない。
貴重かどうかはともかく交易品なのでパパっと使える物ではなく、今の処はこんな感じで携帯食用がメインだ。季節ごとの果実が庶民にとってのおやつであった。
ちなみに小麦の代わりに雑穀を使ってるのは主に売値の問題。世間では食料が慢性的に足りないので販売用に殆ど回してしまい、残るのは来年用の種やお祭り用である。もちろん雑穀自体も量があるわけでもないので、米の糠や小麦のフスマにあたる物を混ぜて嵩増しして居る。
「鋳型で制作か……これはこれで面白いんだけどな。鉄器に煉瓦に携帯食に……後は何が作れたっけ。中身で言うと使ってないのはコンクリ?」
同じ型に流し込めば誰でも同じ物ができる。
レベルの低い武器ならそれで十分だし、煉瓦は鋳物ではなく木の枠で作るが似たようなものだ。そして今回の携帯食も中身を変えることで煎餅やら何やらできるだろう。
だがコンクリートを鋳型で作って何を作るかと聞かれたら少し悩む。村レベルならば煉瓦ですら過剰なのだ。道路側溝でも作って、水はけでも良くしろとでも言うのだろうか。山登り出来ない法面にしてもよいが、剥がされて矢避けの盾に再利用されるオチまで見えた。
「あとうちに足りない物って言ったら皿だけど……無いな」
この辺りではお皿は木の板を削って使っている。
昔は平たいパンを皿にした時代もあったそうだが、今では別の意味でもそうすることはないだろう。穀倉地帯が国土に復帰したら話は別だが、そこまで待つなら他所から陶器の器でも購入した方が良い。
「でもなあ。陶器の器とかは夢もまた夢だよね。どんな土がいいのかまるで知らないし、薪とか全然足りないんだし」
文明の地を目指すとしても、元に無い物は仕方がない。
転生前にやったことは無いし、北領からこちら生憎と縁が無かった。もし陶芸職人が難民とか株分けで町を移動するなら迎え入れようかと言うレベルである。
開拓権を譲っている事もあって薪が豊富に採れるわけでもないので、迂闊に試すわけにはいかない。もしドワーフが扱っているなら、そちらから購入した方が早いまであるだろう。
(内側の防御設備が整う前後で前進防御でもするかな。隣村の領域までいかなくても、その途中途中に守り易い場所があるかもしれない。その範囲に林とか山があれば理想的だけどね)
戦略シミュレーションでは安全地帯を作りながら進むのは当然の手法だ。
これ同時に複数守らなきゃならない場所を造らず、一か所でまとめて守れる場所を増やすことで、徐々に守る戦力を一本化する戦略である。
それとは別に手元で延々と守るのではなく、守るべき前線を一気に前に出すことで後方を守りつつ、中間層を取り込む戦略も存在した。これは回り込まれたり突破されると大変だが、領地を増やすという意味では一つの手である。
(とはいえ今のところ困ってるって訳でもないし、将来発展する可能性を考えたら無理するほどじゃないんだよね。……あくまで辿り着くアンデッドを減らす為のついででいくか。領主が文句言ったら返すつもりでいればいい)
剛盾と紅梓には、必要だったら向こう側を取り込めばよいと言った。
彼らに譲る開拓権に信憑性を持たせる為だが、何のかんのと言って自分たちが暮らす分には困ってはない。
いろいろ面白い物を作ろうとしたら、もう少し薪やら資材が欲しいと思う程度だ。四方に不信感を持たせてまで領地が欲しいわけでは無いのだから。
「剛盾さん。梯子とか戸板は補充してたっけ?」
「しようと思ったが、他の連中が欲しいと言っておったから止めておいた」
ここを開放する時に梯子を即席のバリケードにした。
重宝したが使えば損耗するのは当然だ。下級アンデッドにパワーなどないが、それでも積み重なって押し込んで来たら所詮は木製なのでひとたまりもない。あの時に使った材料費はお互いが手に入れる荘園の為と言う理由で出し合ったものなので、既に終わった僕が迂回潰す訳にはいかなかったのは確かだ。
ということは最低限の数でやりくりする必要があるだろう。当然ながら一気に隣村まで到達する余裕がない。
「何じゃ。また何処かに出かけるんかいの?」
「うーん。今の処はその予定はないかな。領主さんや口入れ屋に金を積まれたら別だけど。ただ……守っているだけよりも、安全な範囲を広げたいって思ってさ」
現時点でやって来るアンデッドは減っている。
他の荘園主仲間も頑張ってるし、今のレベルなら堀と壁による障害物で十分なのは確かだった。
しかし隣村との中間にある適当な場所……山やら谷やらを利用して障害物を作っておけば、もっと減るのは確かだった。それこそ今作っている防衛施設まで到達する可能性は殆どなくなるだろう。
「なら暇な時でええか?」
「それでお願い。アンデッドには困ってないし、紅梓さんが見張り小屋の候補地を見てきたら、守りたい場所も変わって来るしね」
隣村は北だが、見張り小屋は迂回路と言うべき場所に作る。
当然ながら北東・北西側なので、真っ直ぐ北向きだけに前進防御と言う訳にもいいかないだろう。
エルフとドワーフの領域を守る形で延ばす方が良いだろうし、お互いの見識も一致するはずだ。特に急ぐわけでもないこともあり、僕はやっても損のない決断を先延ばしにしてしまった。
まさかあんな馬鹿馬鹿しい行き違いがあるとも思いもせずに……。
と言う訳で鋳物やら防衛施設やら型にはめて作る話です。
労役で煉瓦を作り、その煉瓦で村を守り、労役で働いた人は無料でお風呂に入れる。
これだけ見れば凄いwin-winな気もしますが、現代で言うと役所の箱物建設かな?
魔物が存在する世界なので防御施設があれば安心感は出ますし
こういう事をして村を守ってくれるお館さまなので、一応は主人公も歓迎されてます。
今までは労役とかあんまりなかったけど、逆らうよりも従った方が得なのは判る感じ。
(村の寄り合いで共同作業はあったので、労役自体はゼロではないので)