妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】 作:ノイラーテム
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城主に成りたい理由はより良い生活と言うばかりだけでもない。
契約した神様の布教を行う為には守り易い場所と、敵対しない宗教との共存が不可欠であった。
最初は独力で頑張るつもりだったのだが、今回の成功を得るために妥協したとも言える。
「夢としては魅力的な話だったわ。で、最初の質問に戻るんだけど領主が取り上げてご破算ってのはやめて欲しい所ね」
「そうじゃのう。下の者がやりました、上は知りませんと言うのは人間の得意技じゃからの」
エルフやドワーフからみれば信じられない話だった。
外に出る者はある程度の実力と発言力を兼ね備える者が多く、村人ですら意識の共有も行われているので極端な意見の相違はない。
対して人間はその逆であり、意見の相違があるどころか……立場が違うから約束が無効であるとか平然とやってのけるのだ。
「その辺はコネのある保証人を立てるから大丈夫。うちの隊に司祭が居るだろ? あいつ貴族のボンボンでさ、これが重要なんだけど伝道師なんだよね。まとめて保障の希望者を受け入れるって」
本当は現地宗教の関係者は引っ張り込みたくなかった。
しかし貴族に物を聞かせるには、現地宗教以上の権力集団はない。その中でも他宗教に寛容だった事と、今回の保証をさせる意味で妥協することになったのだ。土地の方は時間を掛けて複数の候補を探せたが、コネばかりはどうしようもないのだから。
それだけに信用力は抜群だ。何しろその保証の元に契約書を作ったのに、約束を反故することは宗教全体を敵に回すことを意味する。もちろん上層部と取引することもできるだろうが、宗教にも派閥があるから多重の保証になるのだ。
「ふむ。そういう事ならまあええじゃろ。精々証書をばらまいといてくれ。……最後の質問じゃが魔物にどうやって対処する?」
証書という物は偽物だと言われたら意味がない。
その為に印章だとか花押という物があるのだが、それだって誤魔化しようはある。だからこそ同じ物を複数用意して、多方で分散保管するという手法があった。
そういった手段を教えると同時に、もっとも重要な質問が来る。
今の計画はあくまでこの地を発展させるのが大前提なのだ。溢れる魔物に住民も城主も討ち取られたでは笑い話にしかならなかった。そうでなくとも数年どころか数十年掛かって魔物を退治するのでは約束した人物が死んでしまう可能性もあるのだから。
「んー。こいつは計画の肝だから領主に持ち込まれても困るんだけど……まあ二人だから大丈夫か。他所で話をしないでよね」
「当たり前でしょ。あんたならまだしも良く分からない連中を信用する気にはなれないわ」
二人ともツッコミは辛辣だが話を本気で聞いているのは判る。
悪い話ではないと納得し、乗る意味があると理解しているからこそ手が抜けないのだ。
そしてこんな二人だからこそ、仲間として引き込む意味があるのだろう。
「いいかい? この地方に入り込んでる無数の魔物って実はパターンがあるんだ。僕より年上にいう事じゃないけどね」
「年上は余計よ。……穀倉地帯から流れて来るアンデッドが何種類かよね」
中央から西側に広がる穀倉地帯がアンデッドによって分断されている。
この話を聞いた時点で国が傾いている理由もお察しであろう。そんな状態で食事事情が良いはずもなく、山から都会に出た後はむしろ食事が貧しくなったほどだ。
ちなみに魔物はもう一種、獣タイプも居るのだがエルフはまるで数に入れていない。普通の獣よりも強い程度であることもあり、恐ろしいとも思ってないのだろう。
「うん。他にも居るには居るけど害と言えるのはアンデッドだよ。でもこいつらは数が問題であって、一部を除けばそれほど強くは無いんだよね」
「その数が問題なんじゃろ? 幾らでも古戦場から湧いて出よる」
かつてこの国では穀倉地帯を巡って何度も戦いが起きた。
魔王に率いられた魔物たちの侵攻があった後、その古戦場を放置するはずがない。かくして邪悪な儀式が実行され、古戦場からはアンデッドがワラワラと湧き出て来る羽目になったという事である。
そして魔王を周辺諸国と共に排除したもののこの国はそれ以来、衰退の一途を辿っている。その一端が無限湧きするアンデッドのせいなのは間違いないだろう。
「だからさ、全部いっぺんに対処するんじゃないんだよ。頭が悪いんだから流れを誘導してそいつらは食い止める。一足先に壁を抜けて来る連中を片付ける。それだけの事だね」
「「あ……」」
考え方の差だが、無限湧きする敵と正面から戦えと言う方が無理だ。
領主たちが穀倉地帯のアンデッドを掃討しようとしても、途中からまた出て来るのだからどうしようもない。なので自分の領土にやって来る大部分だけを討伐して、あとは僕らのような傭兵が対処することになっているという訳だ。
そんな感じで分類しているのである。
歩いてくるゾンビやスケルトンの流れを障害物で誘導し、先にゴーストやレイスを始末してしまえば楽なのだ。残った歩兵組は壁にも籠ってゆっくりと片付ければ済むのだから。
「実際に中央の城塞都市はそんな感じで守ってるでしょ? どうしてもっと守り易いこの辺でやったら駄目なのさ」
「そりゃあ……」
「……そうなんだけどね」
コロンブスの卵と言う奴だろうか?
この辺は森や山々で平地は寸断されており、一部が盆地として耕作地になってる程度だ。エルフやドワーフだけに森や木々を壁や掘で閉鎖するという考えが成立し難いのかもしれない。異世界ファンタジーの小説では躊躇しない種族も居るが、それはそのストーリーが人間並みに追い詰められているから、逆にこの世界では人間ほどに追い詰められていない事が影響しているのだろう。
という訳で魔物の種別ごとに各個撃破。
全体方針としては敵軍を誘導して待ち構える和風の城建築になるだろうか? 平和に成ったら外苑に向けて、アンデッドの進軍ルートを逆様に辿って壁やら堀を設置しけばいい。
(そこまでやってようやく神様の布教を再開できるのかもね。特殊能力どころか助言もいただけない日々は早く卒業したいよ)
だいたい僕が祝福無しで上級魔法も覚えられないのは、純粋に信仰が弱いせいである。
仮に転生したのに『生前の記憶を保っている』事を祝福だと諦めるとしよう。しかし上級魔法が覚えられないのは非常に困る。
故郷を追い出される前はまだマシだったので、せめてそこまでは早期に回復したいところだ。
「話……終わった?」
「終わった終った。全部上手く行ったらだけど、あの二人も協力してくれるってさ」
雰囲気を察して幼馴染が声を掛けて来る。
こいつは基本考える事が嫌いで、難しげな話題は全て僕に一任している。頭が悪いわけでは無くズボラなだけなので、さっきみたいに外堀を埋めて来るだけの厄介さはあった。
ちょこんと後ろに座って背中越しに会話。
そんな状況だけでうれしく成れるのだから、こいつのことを僕は好きなのは間違いない。できればこいつもズボラだから近くにいる僕を選んだのではなくて、好きだから僕と一緒に居るのだと思って欲しくはあった。
「お風呂……早く造れるといいね、双羽」
「双葉は風呂好きだもんな。なんでこっちには温泉ないのかね」
僕らの住んでいた北領はほとんど山だったが、それだけに温泉があった。
元日本人の転生者としてはその点はとてもありがたかった。混浴の文化とか大人が子供が成人する時にグフフ……な教えをする文化もあったので、もう数年地元で過ごせていたらブラボーだと評価していたかもしれない。
良い機会なので、この国の名前の付け方や名乗り方を説明しておこう。
僕らを例にするとまず出身地の北領。次に苗字は出身地のランドマークから取るので、銀嶺山脈から『銀』だ。そこから派生する山や川の名前がそのまま村の名前でミドルネームで、うちだと双子山なので『双』となる。そこに先祖から連なる家業にちなんだ名前を付けるのが定番。僕なら狩人の家系なので『羽』となるから、北領銀嶺群は双山村の人、銀双羽である。幼馴染の方は薬師の家系なので『葉』で銀双葉だ。
「小さい頃の約束、おぼえてるか? 滑り台とか隠し通路のある秘密基地を作るんだぜ」
「……もうそんなに子供じゃない。それより果物たくさん食べられるほうが重要。いっぱい食べさせてくれるって忘れてないよね?」
どっちが子供なんだよと言いながら僕らはじゃれ合った。
今では遠い故郷での思い出の一ページというやつである。うちは本村から離れた支邑なので過疎気味であり、小さいころから連れ合いになるのを何となく意識していたから心やすいのもある。
ちなみに逃げ出したのは双葉が悪代官に妾として見初められたからだが、いずれ自分の嫁になると思って綺麗な飾りを与えたり着飾らせたのは僕である。美人と言う程美人ではないが、何もない田舎に着飾った娘が居れば綺麗に見えてしまうのも仕方なかろう。要するに全力で僕のせいなのだ。前世の感覚を思い出しながら見栄えを工夫したのもマズかったかもしれない
と言う訳で
最初なので、書き溜めた分を使ってサクサク。
今回は布教に来たはずなのに、城主に成りたい理由付け。
実際にその辺を書くとしたら、一章分を終えて「あの時……」と過去変やる時でしょうか?
先にそちらから入ろうかと思いましたが、転生前から延々と説明続きとか
実力を付けるまでやるのも面白くなさそうだったので、活躍シーンから入った感じです。
●名前
受けるかどうかわからない話なので、理屈だけは設定して居て適当な名前。
苗字の付け方、ミドルネーム、名前の付け方を書いて終わり。
東洋系なのはエドワードだとかマリーだとかに飽きたのと、布教するに際して
封神演技っぽく教主として「天君」を付けたかったため。
なので主人公はいずれ、銀天君と呼ばれることになるでしょうか?