妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】   作:ノイラーテム

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奇妙な解決の仕方

 神頼みをしてみたものの、都合よく神様が現れるわけがない。

実際に現われる可能性があるだけ僕は恵まれているが、まあ本拠にある洞府ならともかく隣村まで出現したらおかしいので妥当と言えるだろう。

 

ともあれ話が固まってから速攻で頭を下げに行った。

良い知らせと悪い知らせがあるのだが、良い知らせの方は不承不承ながら双葉が受け入れてくれたことだ。悪い知らせの方はとても沢山の要求を積み上げられた事である。要するに結婚話に関する話題は今回で終わりって事なんだけどね。

 

「せっかく作った村から出て行くのは論外! 面倒くさいし子供の時の約束まだ全部果たしてないよね? 少なくともプリンとアイスと何とかアラモードってのを食べさせて! あとあとお肉の食べ比べとか全部! いつでも食べたい時に食べるんだから!!」

「判った! 難しいのもあるけど、全部叶えるから!!」

 子供のころ、空に浮かぶ雲を指さしながらこの世界に存在しないお菓子の事を説明した。

あんな形でとっても甘く、柔らかくて頬っぺた落ちそうなくらいに美味しくて、しかも載せる物で無限に近いバリエーションが作れるという話だ。

 

夢のある話だとか、子供だましとか言ってはいけない。

この世界で同じことをしようと思うと凄まじいお金が掛かるのだ。しかし、いつか結婚して幸せになるはずだったのに、いきなり妾扱いで本妻が出現するとか言われたら激怒して当然である。このくらいは叶えなくて男の浪漫など語る事は出来まい。

 

「でもさ……。ちゃんと覚えててくれたんだね。しかも、ソレを条件にしてくれるなんて……ありがとう。そして、ゴメンね」

「あう……。ふーんだ。それだけじゃ誤魔化されないんだからね。夏も冬も居心地の良い家と綺麗な服も!」

 要求してることは全部、僕がやってみたいと言った事だった。

それを全部覚えていてくれて、公認浮気的な結婚話の条件にしてくれるとか僕は恵まれている。この際だから予算がどうのとか、材料的に難しいとか言うのは綺麗サッパリ忘れよう。それが可愛いお嫁さんに対する真摯な態度と言うものだろう。

 

それはそれとして、夏も冬も居心地の良い家なんて言ったか? まあどうぜそういう家が欲しいから作るけどね。

 

「あ……。あとあと! 新しいお嫁さん候補とか選ぶ時は、私の意見も参考にする事! どうせなら仲良い人を選びたいもんね! 昔に三軒隣にいたオババみたいのとか町に居た飲み屋の女給とか最悪だもん!」

「はは。流石にもうコリゴリだよ。複数人は重いってば。今回も選べそうなだけだし、向こうが最終的に決めるんだろうから」

 子供のころは子供なので無謀にハーレムとか簡単に言うけど、大人になったら無理である。

それこそ面倒くさいし、そのたびに双葉に新しい要求を突き付けられるとかは困る。可愛い我儘ならば普段から狙っても良いんだけどさ。

 

しかし滅多に他人の悪口を言わない双葉が最悪と言うからには、その二人の性格は悪かったんだろうな。

 

「選べるってどんな人たち?」

「詳しくは聞いてないけど、二人居るらしいよ。妹のどちらかを……って話。宴の席かなんかで口にしただけだと思うんだけどね」

 宴会で口を滑らせただけならば、そのまま忘れてくれれば良いのにと思う。

しかし残念な事に側近が侍っており、侯爵家にまで話が伝わっている以上は無理な話だろう。

 

そして女性に対してこう評価するのもどうかと思うのだが……。どっちでも良いって事は、おそらく能力的にも政略結婚の価値的にもどっちでも良いって事なんだろうな。

 

 

「妹君の性格ですか? ううむ……」

 緋家の近侍である七司に失礼でない範囲で聞いてみた。

どっちでも良いのであれば、双葉の性格に合う方を選びたいというべきか、あるいはお互いの家の負担にならない方と言うべきか。

 

しかしどうでも良い性格なのか逆にメリット・デメリットが極端なのか……。いや、マジで女性にする評価じゃないよね。ゲームのキャラデータじゃないんだし。

 

「まず長男の悌さまと次男の連さまの間に、二人おられると言いましたね? 連さまは銀殿より少し年下。だから年齢の方は察していただきたい」

「あれ? 言いたいことは判りますが、妙にアレですね。普通ならばとっくに結婚してません?」

 要するにどちらも二十歳+@だ。貴族ならばとっくに結婚している年齢である。

中央とゴタゴタしているとか、アンデッドの大量湧きがあった事を含めても少し妙な話だ。

 

何か大きな問題があって、名目上の結婚とか……まあ無理かなあ。仲良くは無理でも、せめて妥協して欲しいものである。

 

「姉の麗さまは悌さまの少し下で、一緒に中央に居られた。王家の姫に付いた侍女経験もあり聡明な方です。妹の爽さまは欠点の見当たらない優しいお方ですな。婚家に御不幸が無ければ今ごろは……」

(……説明になってないよ。……まあ判るけど)

 結婚して居ない理由は何となく理解できた。

姉の方は人質暮らしが長くて丁度良い相手が居なかったのだ。故郷では高嶺の花過ぎるし、中央では地方貴族の娘でしかない。

 

妹の方は結婚したものの旦那が亡くなって返されたか、今回のアンデッド大発生で婚家自体が消滅したのだろう。貴族は家同士の付き合いなので旦那が死んでもその弟が変わるはずなので、おそらくは後者だろう。生き残りの妹ごと引き揚げれば領地と財産を回収できるのだから。

 

(しかし、マジでどっちでも良いから嫁がせようって案件だよね。人質生活の問題で行き遅れたお姉さんに、旦那がアンデッドに殺された妹さん。どっちも可哀そうと言うべきなのか)

 自分が嫁ぎ先で無ければマジでどうでも良い話である。

そして自分の家に嫁ぐ嫁さんであるからこそ、何らかの美点を見つけようとかお家事情に振り回されて可哀そうだと僕も思おうとしているのかもしれない。

 

同情なんて失礼だと思わなくも無いので、この話はいったん打ち切ることにした。

 

「その辺りはお互いに知り合って追々でしょうね。妹君たちにもご事情がありそうですし……。まずは北上と緋雁原の相談でもしませんか」

「う、うむ! そうですな」

「……ええかっこしい」

 なあなあで済ませようとする僕と七司に対し、双葉は不満顔でボソリと口にした。

主家のお嬢さんの事情に対して、なんつー恐ろしい事を口にするのだろう。ホラ見ろ、青悟は笑ってるし、七司なんて固まってるじゃないか。

 

だが双葉は失言だと認めず、そのまま言い張る気の様だ。指を突き付けて言い放とうとすらしている。

 

「だいたい、それって失礼じゃない? 聞いたなら最後まで確認して、自分はこういう方を迎えたいと思っておりますとか、相手に遠慮するなら自分を好きになってくれる方とか。あとあと、誰も貰わないなら二人とも僕が面倒見ますとか言えない?」

「なんという大胆なハーレム宣言!? 都でもついぞ聞いたことのない男前ぶりだねえ」

「いや、結婚するのは僕でハーレム宣言してるのは双葉なんですけど」

 プンスカ文句を言う双葉に、笑いころげる青悟。

いや、確かに男前な言い分だが女の子がライバルに対して言うセリフじゃないよ……。まあそういう爽快なライバル宣言が好きな子も居るとは思うけどね。

 

それと青悟、笑ってないで何か妥当な案を教えて欲しいものだ。都に居て緋家にも最近出入りしてるんだし、ある程度はお嬢さんたちの事も知ってるんだろうからさ!

 

「あー。いいかい、男子の一言金鉄の如しと言ってだねぇ。いや、双葉君は女の子だけど。ライバル相手にそこまで譲っちゃっていいの?」

「愛し合うか憎み合うかはその時決めるもん。どうせ長い付き合いに成るなら、グダグダなのは面倒くさい」

「結局そこなのか……受け入れてくれるのはありがたいけどさ、もうちょっと歯に衣という物を……。いや、ありがとう」

 どうやら双葉は最初の段階で決着をつけるようだ。

妥協できる相手ならば妥協して、出来ない相手ならば一生顔を合わさずに生きていくくらいのつもりなのだろう。

 

こういう時まで省エネ重視とは、男前なのかそれとも……その決断を含めて僕を好きだから譲歩してくれているのだろうか? そう思うのは僕の傲慢では無いのだと信じたいところだ。

 

「七司殿、どうかなあ? 二羽君が結婚を言い交した女性が身分を弁えここまで譲歩している。そうお伝えするべきではと私は思うんだけどねえ」

「……そうですな。詳しい話は後日、我々の方で双葉殿にお伝えしましょう」

「はーい」

「いや、何で僕じゃなくて双葉が決めるって事に!?」

 なんでさ!?

わめく僕を尻目に、結婚話は良く分からない流れで決まりそうであった。

 

まあ双葉の性格に合う人を選ぶってんなら、負い目がある僕が文句言える立場じゃないんだけどね。

 

こうして良く分からない悩みを終えた僕らは、残った課題を片付けるべく情報収集に励むのであった。




と言う訳で、婚姻話の混乱は終了です。
次回からまたモンスター退治の話になります。
まあ政治物なら政略結婚のグダグダは無いとね……以上の話ではないし
どこかで結婚するなら、幼馴染の顔を立てるのかどうかの話ですね。

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